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column II-22 ODAの現場を視察して


フィリピンの子供たちと笑顔で接する佐藤さん(写真提供:国際協力推進協会(APIC))
フィリピンの子供たちと笑顔で接する佐藤さん
(写真提供:国際協力推進協会(APIC))

インドの病院を視察する松本さん(写真提供:国際協力推進協会(APIC))
インドの病院を視察する松本さん(写真提供:国際協力推進協会(APIC))

 ODA民間モニターは、日本のODAを支えている国民の皆様にODAの現場を直接視察していただき、ODAに対する理解を深めていただく制度です。2004年度には、合計59名の方が6か国(東ティモール、中国、カンボジア、インド、フィリピン、インドネシア)に分かれて視察を行いました。その中から、佐藤菜穂子さん(講師・フィリピン視察)と松本茂治さん(会社員・インド視察)に、視察後の感想をいただきました。

●佐藤菜穂子さん
 フィリピンの視察はどこに行っても「日本の皆さん、ありがとう」の歓迎の言葉で迎えられました。私自身にはフィリピンのために何か支援をしているという実感はありませんでしたが、現地の人々の感謝の気持ちがうれしかったです。
 フィリピンは貧富の差が大きい国です。都市には高層ビルが林立する一方、道路沿いには延々とバラックの家々が連なっています。生きることに精一杯の人々と豊かさを享受できる人に二極分化しているのです。
 貧困層の置かれている状況を改善するためには、その地域の人々が自身の力で生活する力を育てていく必要があります。その指導者の役割を担っているのが、青年海外協力隊や専門家です。まさに日本の顔だと思います。
 こうした顔の見える援助こそが、今後の発展と、日本のよきパートナーとしてのフィリピンを支えていくのではないでしょうか。民間モニターを終えて、ODAの意義を改めて認識することができました。

●松本茂治さん
 世界人口の約16%を占めるインドでは約3分の1の人達が貧困生活の状態です。そんなインドで私はODAの視察をし、次のように感じました。
 まず地下鉄・放送大学の建設など、国家的事業から農村部の改革・貧困層を対象とした病院・障害児施設への機器の提供など、バランスの取れた事業展開が行われていること。そして、その事業は多くの人々に感謝されていることでした。
 次に「箱物ばかり作って、やりっぱなし」という日本のODA事業に対する一般的な認識が間違っていたことにも気がつきました。ODA事業は開発途上国などの要請に基づき行われ、終了時に当該国などに引き継がれますが、私も視察する前までは、その後の当該国の対応ミスをODA施策のミスと感じていました。注)
 今後のODAの課題としては、資金協力も必要ですが、現地の人達と汗を流す人的協力・交流が特に必要と感じます。引き続きODA関係者の努力、そして、私たちの理解と支持の必要性も強く感じました。

注)これはインドの病院を視察した際に、ODAにより供与されたX線CT装置が修理されないままの状態であったことに関しての記載である。なお、現在、病院側が同装置の交換部品を購入する方向で、政府関係機関と予算の調整を行っている。



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