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6 カナダ

(1)援助政策等
 現クレティエン政権は、1995年2月に新たに外交政策報告書(“Canada in the World”)を発表し、その中でカナダのODAの目的を「貧困を解消し、より安全、公正かつ繁栄する世界に貢献するために途上国の安定的成長を支援する」と規定した。その際、援助目的のキーワードとして「貧困削減」を全ての援助活動の優先項目に反映させることを決定した。カナダ政府は、こうした援助方針と共に、援助の優先項目として、[1]基礎生活分野(BHN)、[2]途上国における女性支援(WID)、[3]インフラ整備、[4]人権、民主主義、良い統治、[5]民間セクター支援、[6]環境、の6分野を挙げている。
 このほか、近年、カナダは、緊急人道支援、貧困削減を目的とする長期的開発協力、衡平で持続可能な成長、人権、民主化、良い統治の推進等の開発課題への総合的な取組を通じて、紛争予防や平和構築支援にも貢献していくとのアプローチを打ち出している。この関連では、地雷基金(Landmines Fund)を通じた地雷除去関連プログラムの実施のほか、平和構築基金(Peace-building Fund)を通じたプログラムの実施が挙げられる。
 さらに、カナダ政府は援助のあり方に係わる方針として、[1]ODAの目的・優先活動分野の明確化、[2]開発パートナーシップの強化、[3]より効率的な援助活動に向けた更なる改革、[4]援助結果の適切な報告の4項目を国民に対する公約として発表し、援助活動への国民の理解を深めるよう努めている。
 なお、2000年9月、カナダ国際開発庁(CIDA:Canadian International Development Agency、1968年設立)は、今後5年間で総額28億加ドルを、[1]保健・栄養、[2]基礎教育、[3]HIV/AIDS、[4]子どもの保護(Child Protection)の4分野への援助に対し優先的に配分することを柱とする「CIDA社会開発優先策(CIDA's Social Development Priorities)」を発表した。
 また、2002年9月、CIDAは新たな援助政策(“Canada making a difference in the world”)を発表し、9か国に援助を重点化するとともに、他の援助国とより緊密に連携することによって、援助効率を高めていく方針を示した。
 2002年のカナダの援助実績は、20億600万ドルである(DAC統計ベース)。援助予算は、1993年以来の行政改革の一環として1990年度を通じて削減傾向が続き、ODAの対GNI比は、1990年代初頭の0.5%から2001年には、0.22%まで落ち込み、2002年は0.28%であった。しかしながら、2002年3月に開催された開発資金国際会議において、クレティエン首相は、カナダの国際支援について毎年少なくとも8%増額し、8-9年後には、倍増するとの方針を表明した。この表明を受けて、2003年度及び2004年度の予算においては、前年比8%増が確保され、次年度以降も引き続き8%の増加が予定されている。
 2002年度のCIDAの実績の内訳(出所:CIDA業績報告)によると、二国間援助が73.5%、国際機関を通じた援助が26.5%となっており、分野別では、[1]社会開発(40.7%)、[2]経済的福祉(33.9%)、[3]良い統治(16.4%)、[4]環境(7.8%)の順となっている。なお、援助額は多くないものの、自然災害や紛争による被災民の支援といった人道支援、平和構築分野での協力にも積極的にイニシアティブを発揮しており、1999年3月に、カナダ独自の債務救済策である「カナダ債務イニシアティブ(Canadian Debt Initiative)」を発表する等、最貧国の債務救済にも取り組んでいる。

(2)実施体制
 1996年1月の内閣改造で新設となった国際協力大臣の管轄下にあるCIDAにODA予算全体の約8割が計上されており、残りの2割については、世銀グループを管轄する大蔵省や、カナダ国際開発センター(IDRC:主に途上国も含めた内外調査活動)やカナダ連邦奨学金(Canada Commonwealth Scholarship)等を管轄する外務・国際貿易省に計上されている。但し、ODA予算全体について議会に対する責任はCIDAが負っている。二国間援助(技術協力を含む)、国際機関を通じた援助ともCIDAが中心となっており、外務・国際貿易省、大蔵省等と協議しつつ、政策の立案及び援助の実施に当たっている。
 カナダの援助の特徴は、無償援助の比率が高いこと、二国間援助の実施に際してその多くをNGOに業務委託していること等に窺われ、援助実施に際しNGOと密接な連携をとっている。
 なお、1994年にPerformance Review Policyを作成し、ODAの評価体制を強化したほか、日本を含むドナー間、被援助国との間の援助協調の一層の促進を図る等、援助の一層の効率化に取り組んでいる。

表

図

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