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[2]独立行政法人 国際交流基金(The Japan Foundation)
1.事業の開始時期・経緯・目的
1970年代初め、日本と海外との文化交流事業の必要性が内外で高まる中で、大規模な基金を有し、かつ強力な実施組織を備えた文化交流機関として、その設立準備がはじめられ、1972年10月、国際交流基金法に基づく特殊法人として設立され、2003年10月、独立行政法人国際交流基金となり、新たなスタートを切った。
本基金の目的は、独立行政法人国際交流基金法第3条により、「我が国に対する諸外国の理解を深め、国際相互理解を増進し、文化その他の分野において世界に貢献し、もって良好な国際環境の整備ならびに我が国の調和ある対外関係の維持及び発展に寄与することを目的とする」と定められている。
2.事業の仕組み
概 要
国際交流基金は、日本初の国際文化交流の専門機関として、日本研究、知的交流、日本語教育、芸術、出版・映像メディア、スポーツ、生活文化など幅広い分野で、人の交流を基本とした文化交流事業を実施しているが、自ら企画・実施する主催事業と内外の機関・団体・個人が実施する文化交流事業に対し主として資金援助を行う助成事業に大別される。
審査・決定プロセス
主催事業については、基金本部、海外事務所、在外公館等を通じて収集する諸国・地域の情報や文化事情、諸分野の有識者の意見等に基づいて企画し、関係機関・団体との交渉、協議、調整等あるいは共催契約締結を行い、実施する。助成事業については、プログラムガイドラインや広報資料等による広報・公募を行い、海外事務所及び在外公館等を通じて申請を受けた後、申請機関・団体の適格性や実績、当該分野における申請事業の意義、事業内容及び予算計画の適正性、助成効果等について、海外事務所、在外公館及び諸分野の有識者等の意見を含めて検討し、助成対象事業を決定する。なお、2000年12月に事業評価システムに関するガイドラインを整備し、同ガイドラインに基づく事業評価を行い、審査・決定プロセスにおける客観性の向上を図っている。
決定後の案件実施の仕組み
助成対象事業が決まると、助成対象者名(機関・団体の場合は代表者名を含む)、対象事業の名称・期間、助成対象項目、助成金額等を明記した通知書を、助成金の適正使用、対象事業に関する各種変更の際の通知、事業終了後の報告等の助成金交付条件とともに助成対象者に対し発出し、助成対象者による条件の受諾等の確認手続きを経て助成金を支払う。
対象事業の実施に際しては、本部、海外事務所あるいは在外公館により適宜現地視察・確認を行い、また、事業終了後は、各助成対象者から実施状況、反響及び自己評価等の報告を受ける。
3.最近の活動内容
活動の概要
日本のODA対象国との文化交流事業のための政府補助金予算(2003年度下半期以降は運営費交付金予算)は、2003年度が65億9,740万円、2004年度は64億1,762万円である。事業分野別では、日本語普及事業に必要な経費が最多(43%)であり、次いで文化芸術交流事業に必要な経費(30%)、日本研究・知的交流事業に必要な経費(17%)の順である。
地域別・国別実績
2002年度と同様に2003年度も、アジア地域との文化交流事業が件数、金額ともに最多。事業実績額上位5か国は中国、インドネシア、マレーシア、タイ、ブラジルとなっている。
主要分野別実績
◆文化芸術交流の促進
ODA対象国への日本文化紹介や文化芸術交流を通じた相互理解促進、文化芸術分野における国際貢献を行うため、人物の派遣・招へい、文化協力、市民青少年交流、造形芸術・舞台芸術・メディア交流など、さまざまな事業を実施した。
人物の派遣・招へいでは、日本文化を紹介するため、文化人、芸術家を海外に派遣する一方、海外の一流の文化人や専門家グループの招へいなどを行った。
文化芸術分野での文化協力は、途上国における文化遺産保存・修復や人材育成のため、日本からの専門家派遣やワークショップ開催等を行った。また、剣道・柔道等のスポーツ専門家の派遣事業を実施した。
市民青少年交流は、アジア各国の市民レベルの交流事業約40件を助成したほか、中学・高校教員グループを招へいした。また、イラク復興を支援するため、日本との親善サッカー試合に参加するイラク・ナショナルチームの渡航費を助成して、両国の友好を盛り上げた。
造形芸術・舞台芸術・メディア交流では、アジア現代美術個展シリーズ「イ・ブル展」「東南アジア美術展」のほか、タイ映画祭、海外日本映画祭の開催、「プロジェクトX」「おしん」などの日本のTV番組提供、出版・翻訳協力や図書展参加などの事業を実施した。
◆海外における日本語教育・学習への支援
日本理解と国際相互理解を深める観点から日本語教育・学習を支援するため、途上国の日本語教育機関におけるネットワーク形成と強化、日本語能力試験の海外実施、海外日本語教師の訪日研修、海外の日本語学習者向け支援などの事業を実施した。
2003年度に基金が実施した海外日本語教育の実情調査によると、海外の日本語学習者数は235万人であり、これは5年前の調査結果に比べ約25万人、10%以上増加しており、わが国の支援がさらに重要となっている。ちなみに、被援助諸国の学習者数は、中国(香港を含む。)、インドネシア、タイ、ブラジル、ベトナム、マレーシアの順となっている。各国での日本語教育にあたるため、日本語教育専門家や青年教師を大学や教育省、日本センターなどの海外の教育機関に派遣した。また、附属機関の日本語国際センター及び関西国際センターにおいて、日本語教師研修、専門日本語研修(外交官・司書・研究者・大学院生等)、日本語学習奨励研修を実施し、被援助国からも多くの研修生を招へいしている。日本語能力試験は、海外38か国88都市で約22万人が受験した。(被援助国は、24か国、55都市で、約12万人が受験。)また、インターネットを活用した日本語教育情報を提供しており、ホームページの年間アクセス件数は50万件を超えている。
◆日本研究と知的交流の促進
海外の有識者層の対日理解やわが国と海外の有識者層の相互理解を促進するため、途上国における日本研究支援や、知的交流のさまざまな事業を実施した。
日本研究では、海外日本研究機関への客員教授派遣、日本研究拠点機関に対する包括的支援、教育職新規雇用のための経費助成、教育・研究機関が実施する国際会議への経費助成、奨学金の支給など事業を実施した。特に中国については、中国国家教育部との合意に基づき北京日本学研究センターを運営している。同センターは、85年に開設され、現在、北京外国語大学及び北京大学の2ヶ所において日本研究・日本語教育学の専門家の派遣、大学院生・研修生の招へいのほか、教材や研究用図書の寄贈、機材の寄贈等を行っている。
知的交流では、2003年度は、国際共同研究協力(「南アジアの貧困者向け金融ネットワーク構築プロジェクト」への助成、「21世紀のアジアを考える日中研究者フォーラム」開催支援)、知的交流セミナー・会議等開催(「アジア・メディア・フォーラム」)などを実施した。
◆中東及びアジア向け事業
なお、2003年度から中東向けの事業を強化し、日本と中東地域間の対話と相互理解を深めるため、2003年9月に「伝統と近代化」をテーマとして中東文化交流・対話ミッションを派遣したほか、「日・アラブ対話フォーラム」(日本、エジプト、サウジアラビアの有識者が参加し、各国政府に具体的提言を行った。)、「日本と中東イスラム世界‐共生の時代‐」などのシンポジウムを開いた。また、女性編集者グループ招へい事業等、文化協力・青年交流促進、中東理解増進等の事業を実施した。
また、1995年から実施しているアジアセンター事業については、知的交流のためのセミナー・会議等の開催、共通課題を扱う共同研究への協力、文化財保存への支援、伝統文化振興の担い手育成事業への助成等を引き続き行っている。
4.より詳細な情報
書籍等
●「国際交流基金年報 2003年度事業報告」
●「平成15年度(2003年度)国際交流基金 事業実績」
ホームページ
●URL:http://www.jpf.go.jp