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(5)アジア地域等の調査研究等事業
1.事業の開始時期・経緯・目的
開始時期
1960年7月
経緯及び目的
1960年、アジア経済研究所は、「アジア経済研究所法」に基づき、アジア地域等との貿易の拡大及び経済協力の促進に寄与することを目的とする特殊法人として設立された。
1998年7月には、「アジア太平洋地域等との通商経済上の協力体制の整備等を図る観点から、アジア経済研究所と日本貿易振興会とを統合する」との閣議決定(1995年2月24日)に基づき、日本貿易振興会と統合し、貿易・投資振興並びに地域・開発・経済協力研究を推進する新ジェトロの附置研究機関として位置づけられた。
日本貿易振興会アジア経済研究所は、引き続き、アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカ、オセアニア、東欧諸国の経済、政治、社会に関する諸問題について基礎的かつ総合的な調査研究を行い、その成果を普及し、もってこれらの地域との貿易の拡大及び経済協力の促進に寄与することを目的としている。
また、「国の行政機関等の移転について」の閣議決定(1988年7月19日)に基づき、1999年8月に千葉市幕張地区において新施設が竣工し、同年12月移転が完了した。
さらに、「特殊法人等整理合理化計画」の閣議決定(2001年12月19日)に基づき、2003年10月には独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所として設立された。
2.事業の仕組み
概 要
独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所の事業は次の4本柱からなっている。
(1)調査研究:開発途上国・地域を対象とする現地主義、実証主義に基づく基礎的総合的調査研究
(2)研究交流:国際、国内共同研究、研究交流活動の拠点としての場の提供
(3)資料情報:開発途上国・地域に関する図書、雑誌、地図、法令、統計など各種資料を収集し、社会に提供するアジア経済研究所図書館の運営
(4)成果普及:成果普及のための、総合分析情報誌や学術雑誌の刊行及び各種講演会や国際シンポジウムの開催
(5)開発研修:開発途上国・地域の経済社会開発に携わる人材を育成する経済開発研修事業の運営
「政府開発援助日本貿易振興会事業費補助金(経済協力費計上分)」は、上記活動を遂行するための事業費、その事業活動に従事する職員の人件費、組織運営のための管理費に係る経費に充当されており、そのすべてがODA予算として計上されている。
審査・決定プロセス
日々のレファレンス内容、調査研究懇談会及び研究業績評価委員会における意見等により最新の社会的ニーズを把握し、それらを踏まえた上で調査研究方針を決定する。それに基づき提出される各調査研究課題案を研究企画委員会において審査し、最終的に研究所が決定する。
決定後の案件実施の仕組み
各調査研究課題をベースに研究会を組織し、研究会活動、海外共同活動、現地調査、資料収集等を実施し、その研究成果を報告書等として刊行する。
3.最近の活動内容
概 要
(1)調査研究
開発途上国・地域及び開発問題に関する基礎的かつ総合的研究、政治・経済動向分析、経済協力調査、統計解析等の調査研究を実施した。
(2)国内外との研究交流
国際研究交流促進、在外職員派遣及び海外客員研究員受入の各事業を行い、海外との研究交流及び海外における研究を一層深めた。
(3)資料・統計の整備
開発途上国・地域の専門図書館として、対象地域に関する基本的文献、新聞、雑誌などの最新資料・情報等を収集し、これらを閲覧、複写サービス等により利用者に提供した。
(4)成果普及
調査研究及び資料・情報活動などの成果を国内外に広く普及するため、定期刊行物、単行書等を刊行するとともに、講演会及びプレスリリース等を行った。
(5)経済開発研修
開発途上国・地域の経済開発に携わる人材を育成するため、日本人及び外国人研修生を受け入れ研修を実施した。
地域別実績
独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所は、その目的にあるように、基礎的・総合的研究の実施、資料収集活動等を行う社会科学系の研究機関であり、当該補助金は、日本の経済協力関係統計では、すべて政府開発援助の中の技術協力として計上されてはいるものの、二国間協力としての資金協力、技術援助活動等を行うものではない。
ここでは、研究会数、客員研究員受入数、講演会開催回数等を地域別に計上する。
(地域別実績の推移)

主要な事業
主要な事業としては、(イ)調査研究事業、(ロ)国際研究交流事業、(ハ)研究基盤整備事業、(ニ)機動分析情報事業、(ホ)成果普及事業、(へ)経済開発研修事業があるが、その実績は下表のとおりである。

(1)調査研究事業
(イ)開発途上地域総合研究
開発途上地域に関する諸問題について、長期的視野に立った地域及び開発研究を総合的に行なう基盤事業として、以下の5本の柱に基づく調査研究を行った。
・開発途上国に関する基本的な課題(「インドの民主主義体制における選挙と政党政治」等)について、研究会等を組織して、国別、地域別、事項別の調査研究を行った。その成果を研究双書等として刊行した。
(2001年度:「韓国、台湾の金型産業における技術発展と国際競争力」等)
・アジア諸国等を対象として、これら諸国等のカレントな情報に基づき、国別の動向分析を行い、その成果を「アジア動向年報2002」に取りまとめた。
(2001年度:「アジア動向年報2001」)
・中東、中南米及びアフリカ諸国の経済・政治・社会問題等に関する総合的研究(「中東諸国における政権権力基盤と市民社会」等)及び資料収集を行った。その成果を定期刊行物(「現代の中東」、「ラテンアメリカレポート」、「アフリカレポート」)、研究双書等として刊行した。
(2001年度:「中東における政治経済的自由化の検証」等)
・地方の国際化、地域産業振興策の国際比較、地域間交流・ネットワーク形成等に関する研究(「中国・東南アジアの台頭と日本の地域産業及び地域企業の将来像」)を地方自治体等(千葉県等)と共同して行い、その成果を調査研究報告書として刊行した。
(2001年度:岐阜県「岐阜県製造業のアジア諸国におけるグローバル展開の将来像」)
・開発途上国の経済開発問題等を研究している先進諸国の研究機関と共同研究(「知識集約型社会における部品調達・産業立地・集積形成」)を行い、国際ワークショップを開催するとともに、その成果を報告書として刊行した。
(2001年度:「情報通信:階層型からネットワーク型グローバリゼーションへ」)
(ロ)CLMV開発展望研究
カンボジア、ラオス、ミャンマー、ベトナムのASEAN後発加盟国4か国(CLMV諸国)を対象として、各国がAFTA(ASEAN自由貿易地域)の実現過程において直面する課題について調査研究を行い、その成果を調査研究報告書として刊行した。
(新規事業:「地域経済統合とベトナム:発展の現段階」等)
(ハ)アジア諸国の産業連関構造研究
ASEAN5か国(タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、シンガポール)、韓国、台湾、中国、日本及び米国を含めた「2000年アジア国際産業連関表」を作成するため、各国の貿易統計を収集するとともに、国連の各種データの推計及び収集を行った。また、中国における地域間交易データの収集及び、調査・推計作業を行うことにより、「中国地域間表」を作成した。
(2001年度:「2000年アジア国際産業連関表」作成着手)
(ニ)アジア工業圏予測事業
韓国、台湾、香港、シンガポール、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、中国、ベトナムのアジア10か国・地域を対象としてマクロ計量モデルに基づいた経済予測を行った。また、その成果を、「2003年東アジアの経済見通し」としてプレスリリースするとともに、報告書として刊行した。
(2001年度:「2002年東アジアの経済見通し」)
(ホ)経済協力総合研究
日本の経済協力に資するため、地域研究、開発研究を踏まえて、開発途上国を対象に、貿易・投資の自由化等によるグローバリゼーションの中での官民の経済協力のあり方について、「アジア諸国の経済社会変化と法」等をテーマに総合的な視点から経済協力研究を実施した。その成果を「経済協力シリーズ」等として刊行した。
(2001年度:「経済危機と援助政策―アジア通貨危機下のインドネシア」等)
(ヘ)流動研究
緊急及び特定テーマに関する調査研究を実施するため、速やかに研究体制を組織し機動的に調査研究(「第十六回党大会後の中国-世代交代と政治・経済システムの変容」)を行い、その成果を「アジ研トピックリポート」及び「IDE Spot Survey」として刊行した。
(2001年度:「中国の公企業民営化」等)
(2)国際研究交流事業
(イ)国際研究交流促進
開発途上国の経済開発研究に関する国際的な調査研究動向及びニーズの発掘を行い、開発問題研究機関相互の意見交換を図ることによって、世界の研究諸機関との関係強化及び国際研究交流の深化に務めた。具体的には、日本とアセアンの経済連携の推進に資するべく、2002年10月25日にバンコクにて「日・アセアン研究機関会合」を開催した。
また、開発途上地域の研究者等(中国等12名)を招へいし、研究会への参加、比較研究、意見交換等の研究交流を行い、その成果を「Visiting Research Fellow Monograph Series」として刊行した。
(2001年度:タイ等13名)
(ロ)在外職員派遣事業
職員(28名)を海外の大学、研究機関等に長期派遣し、調査研究、現地語の修得、現地事情の把握及び派遣地諸機関との連絡等を行った。
(2001年度末:29名)
また、ASEAN諸国等に派遣した調査員を主査として、当該国の専門家と研究会(「インドネシアにおける地方分権化政策と地域経済・社会発展」等)を組織し、多角的・総合的な観点から経済開発政策研究を実施し、その成果を「ASEAN等現地研究シリーズ」等として刊行した。
(2001年度:「中国の市場経済化による環境問題の進展とクリーンエネルギーの普及条件」等)
(3)研究基盤整備事業
(イ)統計作成
UN、OECD、台湾等から継続して貿易統計CD-ROM等を購入し世界貿易統計データベースの維持・更新に努めた。さらに、最新版機械可読データを収集し、人口統計時系列の整備を図った。
(ロ)図書館運営事業
アジア、中東、ラテンアメリカ、アフリカ等の開発途上地域の経済等に関する図書、雑誌、新聞、地図、マイクロフィルム、ビデオテープ等の最新の資料・情報、及び開発途上地域の統計資料を収集した。また、国内外の諸機関からの交換・寄贈による資料収集を積極的に行い、現物の入手が不可能なものについては、写真複製により収集した。こうして収集された図書等はインターネットOPACを通して検索の便に供された。
さらに、開発途上国・地域に関する諸事情、参考文献等についてレファレンス・サービス等を行い、外部利用者に提供した。
(ハ)研究情報システム
情報システム基盤の整備・維持及び研究・資料情報・業務運営システム等の開発・維持を行った。また、現地調査管理システムの2次開発を行った。
(4)成果普及事業
(イ)研究成果普及活動
研究所の研究活動及び資料・情報収集活動等の成果を国内外に普及させるため、「アジ研ワールド・トレンド」、「アジア経済」、「The Developing Economies」 等の出版物の刊行、講演会等の開催を行った。さらに、各地方の商工会議所等との共催で地方講演会、ジェトロセンター等と連携して海外講演会を実施した。
(5)経済開発研修事業
日本人研修生に対して、アジア等の地域研究についての実証的研究、経済開発理論、英語研修等を行った。外国人研修生に対しては、日本経済、日本の産業政策論等に関する実証的研修、経済開発理論、経済協力論及び日本語研修等を行った。
また、既に研修を修了し自国で開発関連分野の業務に携わっている開発途上国の行政官等を対象に自国で直面している諸問題の解決に寄与するため、インドネシアのジャカルタにおいてフォローアップ研修を実施した。
(2001年度:フォローアップ研修(フィリピン・マニラ))
4.より詳細な情報
書籍等
アジ研ワールド・トレンド(月刊)等、定期刊行物を発行している。
発行している刊行物については、下記のホームページに一覧として示している。
ホームページ
http://www.ide.go.jp