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巻 頭 言
今日、開発途上国を中心に貧困、紛争、テロ、感染症、環境問題など数多くの問題が山積しています。このような状況の下、国際社会では、2000年にとりまとめられた「ミレニアム開発目標」の実現に向けた取組が強化されています。また、冷戦後の国際環境の変化に伴い、平和の構築や人間の安全保障といった新しい開発課題や考え方が注目されるようになってきており、実際にイラク復興支援のように、ODAの実施に当たって発想の転換が求められる新たな現場があらわれています。
一方、国内においては、厳しい経済・財政状況の下、ODAに対して国民の皆さまの支援と理解を得る必要性はますます高まっています。こうした観点から、私は、一昨年2月の外務大臣就任以来、ODA改革に精力的に取り組んで参りました。
ODAを巡るこのような新たな現実を踏まえ、今後のODAのあり方について我々が出した答えが、昨年8月に閣議決定した新しいODA大綱です。ODA大綱は、日本のODA政策の理念を明確に示すとともに、ODA改革の成果と方向性を包括的に盛り込んだ文書です。政府は、新しいODA大綱の着実な実施を通じ、ODAの戦略性、機動性、透明性、効率性を高めるべく取り組んでいるところであり、国民の皆さまの幅広い参加を得て、日本の援助がより良いものとなるよう努力していきたいと考えています。
今年のODA白書は、ODA大綱が11年振りに改定されたことを踏まえ、ODA大綱の改定の背景や、新ODA大綱の内容及び最近の実施状況を説明するとともに、新しいODA大綱が目指す日本のODAの方向についてできるだけ分かりやすく記述するよう心がけました。また、そうした説明とともに、シニア海外ボランティアの活躍、日本のNGOによる緊急医療支援、母子手帳の普及といった日本の経験と知見の活用事例などを取り上げ、具体的に紹介しております。本書が、途上国の開発問題と日本のODAに対する国民の皆さまの理解を深める上で少しでもお役に立つことができれば幸いです。
2004年4月

外 務 大 臣
川 口 順 子