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4.持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)「実施計画」(仮訳、開発部分抜粋)
IX.実施の手段
75. アジェンダ21の実施と、ミレニアム宣言及びこの行動計画に含まれるものを含む、国際的に合意された開発目標の達成は、リオ原則、特に、
「各国は、地球の生態系の健全性及び完全性を、保全、保護及び修復するグローバル・パートナーシップの精神に則り、協力しなければならない。地球環境の悪化への異なった寄与という観点から、各国は共通のしかし差異のある責任を有する。先進諸国は、彼らの社会が地球環境へかけている圧力及び彼らの支配している技術及び財源の観点から、持続可能な開発の国際的な追求において有している責任を認識する。」
との共通だが差異ある責任の原則を充分考慮に入れつつ、各国が自国の開発に一義的な責任を有し、また、国内政策と開発戦略の役割は強調され過ぎることはないとの認識に基づき、各国自身及び他の国際社会の双方による取組の実質的な強化を必要としている。ミレニアム宣言、アジェンダ21及びこの行動計画に含まれるものを含む国際的に合意された開発目標は、これらの目標とイニシアティブを達成するために必要な合意された期限内に、開発途上国によって作成された国内政策および計画の実施、改善された貿易機会、相互の合意に基づいた、譲許的ないし特恵的なベースでの環境にやさしい技術へのアクセスと移転、教育及び意識向上、能力構築、並びに意思決定と科学的能力のための情報提供を支援するためには、モンテレイ合意で結実したように、新たな追加的資金を含め、特に開発途上国に対する資金フローの相当の増加を必要としている。この目的への進展のためには、第3回国連LDC会議において採択された行動計画や国連島嶼開発途上国持続可能な開発地球規模会議のような主要な国連会議の結果や1992年以降の関連する国際的合意、特に開発資金国際会議及び第4回WTO閣僚会合の合意を、国際社会が実施することが必要であり、それは持続可能な開発を達成する過程の一環としてこれらを礎にすることを含んでいる。
76. 貧困を除去し、社会条件を改善し、生活水準を高め、我々の環境を保護するために、資金を動員し、より効果的に利用すること及びミレニアム宣言に含まれるものを含む国際的に合意された開発目標実現のために必要な国内及び国際的経済状況を達成することは、21世紀が万人にとって持続可能な開発の世紀となることを確保するための我々の最初の一歩となるであろう。
77. 成長、貧困撲滅及び持続可能な開発という我々の共通の追求において、重要な課題は公共部門・民間部門双方の国内貯蓄の動員、生産的な投資の適切なレベルの持続、及び人的能力の向上に必要な国内条件を確保することである。重要な任務は、マクロ経済政策の効果、一貫性及び整合性を高めることである。これらを可能にするような国内環境は、国内資源を動員し、生産性を向上させ、資本逃避を減少し、民間部門を促進し、国際投資・支援を惹きつけ、効果的に利用するために不可欠である。このような環境を作るための取組は国際社会によって支持されるべきである。
78. 以下の特定の行動を通して、インフラ開発を含む、開発途上国の持続可能な開発のための活動を支援するために海外直接投資を拡大促進し、開発途上国が海外直接投資から得ることのできる利益を高める:
(a)持続可能な開発にとり極めて重要な開発途上国、特に後発開発途上国への海外直接投資の流れ、特に、国内資源を補完するためそれらの国におけるインフラ開発及び他の優先分野に対する海外直接投資の流れの相当の増加を円滑にするために必要な国内及び国際的な条件を創出すること。
(b)持続可能な開発に役立ち得る輸出信用を通じ、開発途上国及び移行経済国への海外直接投資を慫慂すること。
79. 開発途上国が、ミレニアム宣言に含まれるものを含む国際的に合意された開発目標を達成するためには、ODA及び他の資金の大幅な増加が必要となると認識する。ODAに対する支持を築くために、我々は以下の行動をもって、国内的及び国際的に政策と開発戦略を一層改善することに協力し、援助の効率を高める。
(a)開発資金国際会議においていくつかの先進国により発表された増加されたODAの約束を利用可能にする。GNPの0.7%を開発途上国への政府開発援助(ODA)とする目標を未だ達成していない先進国に、それに向けた具体的な努力を行うよう、また、後発開発途上国のための行動計画のパラ83に含まれる先進国の後発開発途上国向けODAに関する約束を効果的に実施するよう慫慂すること。我々はまた、開発資金国際会議の成果に従い、開発途上国が開発目標を達成する上でODAが効果的に活用されるようにするためのこれまでの進捗を更に前進させるよう奨励する。我々は全てのドナー国の努力を認め、ODAがこれら目標を凌駕している国、目標に達している国、これら目標に向けてODAを増大させている国を評価し、これら目標を達成するための方法と期限を検討するための試みの重要性を強調する。
(b)受入国及び供与国、並びに国際機関に対し、貧困撲滅、持続的な経済成長及び持続可能な開発のためにODAをより効率的で効果的なものにするよう奨励する。この点、モンテレイ合意パラ43に従い、特に受入国のオーナーシップの下での各国の開発ニーズや開発目標を考慮しつつ、受入れ国の取引コストを減少させ、ODAの融資と執行をより弾力的かつ開発途上国のニーズに応じたものにするために、開発金融機関の援助実施手続きを最も高い水準で調和化し、また要請がある場合には援助供与の一手段として、開発途上国によって策定・執行され、貧困削減戦略ペーパーを含む貧困削減戦略を具体化した開発の枠組みを活用するために、多国間及び二国間の開発金融機関による取組を強化する。
80. 全てのレベルにおける以下の行動を通じることも含め、既存の資金メカニズム及び機関を充分かつ効果的に利用する:
(a)国際経済に関する意志決定プロセス及び機関への開発途上国の効果的な参加、並びに金融国際基準の策定へのこれら諸国の効果的かつ衡平な参加を可能とするような、透明、衡平かつ包括的なシステムを醸成するために、現在進められている既存の国際金融アーキテクチャーの改革の取組を強化すること。
(b)とりわけ、資金の提供国及び受取国双方において国際金融環境の安定に貢献するため資金の流れに関する透明性と情報を改善するための措置を促進すること。短期資本移動の過度な変動による影響を緩和する方策は重要であり、検討されるべきである。
(c)国際機関の持続可能な開発活動、プログラム及びプロジェクトのために、資金が、適切な場合には、これら機関に対し、タイムリーな、より確実かつ予見可能なものとして確保されるよう努めること。
(d)多国籍企業、民間財団、市民社会組織を含む民間部門が開発途上国に資金援助及び技術支援を行うよう奨励すること。
(e)メカニズムの透明性と説明責任を確保しつつ、特に小規模の起業家、中小企業及び地域共同体に基盤をおく企業に資するとともに、それらのインフラを改善するために、開発途上国及び移行経済国に対する新規及び既存の公的/民間部門の融資メカニズムを支援すること。
81. 新たな及び既存の対象分野の資金要求に対処すること及び受益国、特に開発途上国のニーズと懸念に引き続き対応していくことを可能にした、地球環境ファシリティ(GEF)の成功裡かつ大幅な第3次財源補充を歓迎するとともに、GEFに対して主要な公的及び民間機関からの追加的資金を動員し、より迅速かつ簡素化された手続きにより資金の管理を改善し、また、プロジェクト・サイクルを簡素にするよう奨励する。
82. モンテレイ合意パラ44に記されているように、特別引出権(SDR)の配分を開発目的に利用するとの提案に留意し、先進国にとって不当な負担に繋がるものではないことを条件に、開発目的のための新たな公的及び民間の革新的な資金源を創出する方法を模索する。
83. 開発途上国、特に最も貧しく最も債務が重い国々の債務問題に包括的に対処するために、債務救済、適切な場合に限り債務帳消し、及び他の革新的なメカニズムを通じ、持続不可能な債務負担を削減する。したがって、債務持続可能性に貢献し持続可能な開発を促進するために、債務救済措置は、パリ・クラブ、ロンドン・クラブ及び他の適切なフォーラムを含む場において、適切な場合には、精力的かつ迅速に追求されるべきである。その際、債務者と債権者は持続不可能な債務状況を予防し解決するための責任を分担しなければならないこと、また、対外債務の救済はその後に持続可能な成長と開発の達成と整合的な活動に振り向けられることのできる財源をもたらす点で重要な役割を有することを認識する。したがって、我々は対外債務に関するモンテレイ合意のパラグラフ47から51までを支持する。債務救済の方策は、他の開発途上国に不公正な負担を課さないように行われるべきである。最も貧しく債務に脆弱な国々に対しては、無償資金の活用が拡大されるべきである。各国は、国内の脆弱性を減ずる上で鍵となる要素として、対外債務を監視・管理するための独自の包括的な戦略を策定するよう慫慂される。この点に関し、以下の行動が求められる。
(a)債務残高を削減するためにとられた既存のイニシアティブを考慮しつつ、自然災害、交易条件の深刻な悪化または、紛争によって持続不可能な債務負担を負い経済状況が根本的に変化した開発途上国の経済状況に対処するための措置を適切な場合には考慮に入れ、追加的な資金を十分に手当てし、拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアティブを迅速、効果的かつ十分に実施すること。
(b)まだ参加していないすべての債権者に対し、HIPCイニシアティブへの参加を慫慂すること。
(c)国際的な債務者及び債権者を共に適切な国際的なフォーラムに集め、適切な時期に効果的に、持続不可能な債務の再編を行う。その際、適切な場合には、債務に起因する危機の解決に民間部門を関与させる必要性を考慮すること。
(d)特に例外的な状況に直面している一部の非HIPC低所得国の債務持続可能性の問題を認識すること。
(e)中所得国及び移行経済国を含む開発途上国の債務問題に包括的に対処するために革新的なメカニズムを追求することを慫慂すること。そのようなメカニズムは、債務・持続可能な開発スワップを含み得る。
(f)援助供与国に対し、債務救済に充てられる資金のために、開発途上国が得られるものとして意図されていたODA資金が減少することがないように確保する措置をとるよう慫慂すること。