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7.オランダ
(1)援助政策等
オランダは貧困削減を援助政策の主要目的としている。国際的取り決めではミレニアム開発目標(MDGs)を自国援助政策のガイドラインと位置づけ、2015年までの極度の貧困の半減、初等教育への子女の参加確保のテーマを特に重視している。
内閣においてはこれまで外務大臣とは別個に無任所の開発担当大臣が任命されてきた(現内閣では閣外大臣へ格下げされたが実質上権限に変更はない模様)。ODA規模はGNI比0.8%が政策目標として設定されており、2002年7月に締結された現内閣連立合意でも維持された。また、援助政策と貿易政策(具体的には被援助国産品の欧州市場へのアクセス強化)との間の一貫性が重視されている。
また、援助実施の重点項目として、以下を掲げている。
(イ) 政策の統合性:援助政策と他外交政策、例えば紛争予防、平和構築との関連づけの強化。
(ロ) 地域アプローチ:紛争予防・平和構築における地域毎アプローチと同様に、国毎ではなく地域別の援助政策により効果を高める。
(ハ) アフリカ重視:外交政策一般におけるアフリカ重視と同一歩調。西側的価値(人権、良い統治)の押しつけではなく、NEPADに見られるようなアフリカ諸国の自助努力を重視。
(ニ) 民間部門の重要性:援助国及び被援助国の市民社会、企業が果たす役割を重視。雇用の確保、産業及び投資の促進が貧困削滅に果たす効果に注目。
(ホ) 一貫性:不適当な貿易政策・農業政策によって援助政策の効果が減殺されることを懸念し、オランダ、及び欧州連合、国際機関において援助政策と貿易政策との一貫性が保持されることを確保。
援助対象国は、前政権下の99年に作成された「新二国間援助政策」に基づき、「二国間構造援助」として三つの基準(社会・経済政策、統治、貧困レベル)に基づき選定された22か国の「ターゲット国」(当初17か国、2001年以降22か国に拡大)に絞り、長期の二国間援助が実施されている。右に加え、「テーマ別援助」として、環境、民間部門(主にオランダ製品の輸出促進)、人権、平和構築、良い統治といった特定分野に焦点を当てた援助が約30か国を対象として実施されている。
オランダの経済協力実績は、2001年には31億7,200万ドル(DAC報告べ一ス)であり、金額面で世界第6位の援助国となっている。ODA対GNI比では0.82%の規模であり、OECD諸国内ではMDGsで設定された0.7%目標を達成する数少ない国の一つである。さらにNGOによる援助活動も活発であり、経済協力予算の約10%はNGOを通じて実施されている。地理的には、サハラ以南のアフリカが約30%を占め最大の援助対象地域となっている。
(2)援助実施体制
外務省で開発援助に携わる職員の数は約1,050人(2003年。在外公館に勤務する職員を含む)であり、同省には外務大臣に加えて、援助政策専任の開発協力大臣ポスト(現内閣では閣外大臣)が設置されている。
援助政策の基本的枠組みは外務省が決定し、その他、他省との協力を要すべき主要な政策は閣議によって決定される。閣議の準備会合として、事務方レベルの「国際協力問題関係各省連絡会議」(議長は外務省国際協力総局長)及び大臣レベルの「関係大臣会合」(議長は開発協力大臣)が開催される。両会合における各省の権限は等しく、仮に各省間の意見の相違が右会合で調整されない時は、大臣レベルで決着がつくまで調整が行われ、閣議にて最終的解決がなされる。参考として、ODA予算の約9割が外務・財務の両省に計上され、残り1割が経済省を含む他省庁に分散計上されている。
外務省は援助政策の実施に関し主要な責任を有し、援助実施は三つの主要なチャネル、つまり、二国間援助(大体が政府間のセクター別援助)、多数国間援助(国連等の国際機関)、民間機関(NGO)を通じて行われる。
経済援助実施上の手続代行機関として、オランダ開発途上国投資銀行(NIO:オランダ国立投資銀行(NIB)の100%出資機関)があり、二国間援助すなわち贈与の支出を政府に代行して行っている。
(1)ODA上位10か国
(2)地域別割合の推移(外務省分類)
(3)分野別割合の推移