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第10節 ●我が国の主要な開発関連イニシアティブ



1.沖縄感染症対策イニシアティブ



平成12年7月
 外 務 省

1.基本理念



(1)開発の中心課題としての感染症への対処
 感染症(*1)は、単に途上国住民一人一人の生命への脅威という保健上の問題にとどまらず、今や途上国の経済・社会開発への重大な阻害要因(*2)となっている。特に、貧困層への影響は甚大であり、途上国における急速な人口増加、貧困、性別(ジェンダー)(*3)による格差、脆弱な保健医療システム、予防・看護・治療サービスの不備、安全な水供給の欠如、栄養不良等の問題が感染の危険を高めており、また、健康の悪化が貧困を深刻化させるという悪循環についても断ち切る必要がある。感染症対策は、途上国の開発、特に貧困削減計画の中心課題の一つである。

(2)地球的規模での連携と地域的対応
 感染症問題は地球規模の問題として捉え、地球規模での連携(パートナーシップ)をもって取り組む必要がある。他方、感染症対策を効果的に実施するためには、プライマリー・ヘルス・ケア(PHC)(*4)の理念に基づいた地域レベルでの対応が必要であり、地域開発の促進(community development)を目指した包括的なプログラムの中に感染症対策を有機的に組み込んでいくことが重要である。

(3)公衆衛生活動と連携させた日本の経験と役割
 日本が世界の感染症対策に積極的に貢献することは、途上国の人々の健康を守るだけではなく、ひいては日本国民の健康にも関係する。日本は戦後、保健所制度の確立、保健婦の育成、母子保健の普及、学校保健の徹底等により、戦後の短期間で乳幼児死亡率を減少させるなど大きな効果をあげた。感染症、寄生虫症対策についても多大の努力を行い、例えば、戦後の公衆衛生活動と連携した結核対策により結核による死亡を激減させた。沖縄自身においても、マラリアやフィラリア等の疾患の撲滅に成功した歴史を有している(*5)。このような取組みの原点に立って、日本の経験を途上国において応用、普及する支援の方策に努める。その際、近年著しい進歩を遂げている情報通信技術(IT)の可能性を踏まえ、遠隔医療の活用を進めていく。

2.感染症対策の方針


 上記の基本理念を踏まえ、以下の方針に沿って協力を進める。

●途上国の主体的取組み(オーナーシップ)強化
―途上国による主体的な取組み(コミットメント)の強化・支援
―政策対話と保健制度・政策等のソフト面での協力
―コスト・リカバリーの観点からみた持続可能な保健・医療セクター改革

●人材育成
―途上国の感染症専門家・公衆衛生専門家の育成
―日本人専門家との連携

●市民社会組織、援助国、国際機関との連携
―本邦・現地NGO、国際NGO等との連携によるきめの細かい対応
―援助国、WHO、UNAIDS等国際機関との連携強化

●南南協力
―途上国同士の知見・経験の交流支援
―日本を含めた先進国・途上国における成功例や教訓の共有

●研究活動の促進
―感染症に関する世界の研究機関間のネットワーク構築に向けての支援
―貧困層に裨益すべく貧困国の感染症研究活動の推進
―ワクチン研究・開発に向けた国際協調の推進

●コミュニティレベルでの公衆衛生の推進
―基礎教育における学校保健を通じた支援
―安全な水供給の確保
―地域保健の機能強化

3.我が国の支援する主な感染症対策



●HIV/AIDS
―途上国間の知見の共有:南南協力(ソーシャル・ワクチン(*6)対策の成功例(タイ等)の他国への応用)
―避妊具や安全な注射器の供給などの予防施策及び治療薬配布に関連した支援
―リプロダクティブヘルス(*7)と連携した若者に対する教育・啓発プログラム
―エイズ孤児に対するケア及びカウンセリング
―母子感染対策、ハイリスク・グループ(性産業従事者、長距離トラック運転手等)対策
―安全な血液の供給
―ワクチン開発に係る国際的な努力への協調
―HIV/AIDS・結核重複感染対策

●結 核
―DOTS(直接監視下投薬)(*8)戦略の拡大及び着実な実施:
 WHO西太平洋地域における結核対策の推進
―多剤耐性結核(*9)に対するDOTSプラスの開発(調査、耐性検査、監視)
―PHCに基づいたDOTSのアクセスや効果改善のための実践的研究

●マラリア・寄生虫
―WHOのロールバック・マラリア・イニシアティブ(*10)と連携し、国際寄生虫対策としての「橋本イニシアティブ」(*11)推進
―南南協力(例:メコン・プロジェクト(*12))
―マラリア疫学調査(サーベイランス)
―マラリア対策の評価のための調査・研究(オペレーション・リサーチ)
―安全な水供給の確保

●ポリオ
―西太平洋地域のポリオ野生株根絶確認
―南アジア、アフリカ地域におけるポリオ根絶に向けた協力強化

4.ODAを通じた感染症対策支援の強化


 上記2.及び3.の協力を積極的に進めるため、「人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブ(GII)」(*13)をも踏まえ、各援助スキームにおける感染症分野及び右に関連する社会開発分野への協力の取組みを強化することとし、無償資金協力、技術協力を中心に、また、相手国のニーズを踏まえ、必要に応じて、円借款による支援の可能性についてもその役割に留意しつつ検討していくこととする。具体的には、一般無償(子供の福祉無償を含む)、草の根無償、JICA開発福祉支援事業、JICA開発パートナーシップ事業、技術協力、開発調査、国際機関への拠出等を活用して、個別の感染症対策支援、公衆衛生の増進、研究ネットワーク構築、初等・中等教育、水供給等の分野での協力を強化することとし、今後5年間で総額30億ドルを目途とする協力を行う。
 また、感染症分野における支援を地域の人々まで行きわたらせるためには、途上国におけるNGOの役割が重要であり、国連に設置された「人間の安全保障基金」を活用して協力を行っていく。


沖縄感染症対策イニシアティブ【注釈】

(*1)主な感染症
●HIV/AIDS
 国連エイズ合同計画(UNAIDS)報告によれば、99年末現在のHIV/AIDSの感染者数は3,430万人(また、これまでのAIDSによる死者は推定1,880万人)、99年のHIV新規感染者数は540万人、AIDS死亡者は過去最高の280万人にのぼる。その大部分は途上国で生じている。特に、サブ・サハラ・アフリカへの影響は最も深刻(感染者2,450万人。例えば、ボツワナでは成人の35.8%が感染)。平均余命の顕著な短縮(国連開発計画(UNDP)報告によれば、HIV感染率が10%を越えるアフリカ諸国で平均寿命が17年縮まったと推定)のみならず、労働者人口の減少や社会経済開発の停滞を惹起している。
●結核
 世界最大の再興感染症。アジアをはじめとする途上国を中心に18億人の感染者がおり、WHOによれば、年間800万人の新患者、約200万人の死亡が見られる。不適切な治療による多剤耐性結核菌の増加、HIV感染による結核患者数の増加等新たな課題も生じている。
●マラリア
 WHOによれば、世界で年間約3億人の新たな発症が見られ、100万人以上が死亡。その大部分がアフリカに集中している。2000年4月、ナイジェリアにおいて、アフリカ・マラリア・サミットが開催され、マラリアがアフリカの開発と貧困削減の障害となっている旨強調している。
●ポリオ
 小児麻痺。世界のポリオ患者は1980年代後半、3万人を超えたが、1990年代に入って着実に減少し、WHOによれば、1999年には6,659例(アフリカ及び南アジアが中心)。我が国は、東アジア及び西太平洋地域を援助の重点地域として積極的に協力を行ってきた結果、2000年10月、京都において開催予定の国際会議において西太平洋地域ポリオ終息宣言が出される見通し。
●寄生虫症
 フィラリアや住血吸虫、メジナ虫(ギニア・ウォーム)、回虫・鉤虫・鞭虫などの消化管寄生虫があり、途上国住民には高率に感染している。

(*2)感染症の開発への影響
 HIV/AIDSについて言えば、労働人口の感染死亡の結果、個人レベルでの種々の苦難、医療負担による家計収入への影響のみならず、国家レベルでも人的損失による平均余命の低下、孤児の増加、社会構造の変化、マクロ経済・財政等に大きな影響を及ぼしている。例えば、サブ・サハラ・アフリカでは生まれつつある中産階級に打撃を与えているため、国造りそのものを阻害している。

(*3)ジェンダー
 各々の社会で共有されている価値観や、各個人の考え方などによって規定される「社会的・文化的な(男女)性差」。

(*4)PHC
 1978年の「PHCに関する国際会議(アルマ・アタ会議)」でWHOとUNICEFにより提唱された概念。地域社会に住む誰もがその発展の程度に応じた負担で身近に利用でき、科学的にも適正かつ社会的にも受け入られているやり方に基づいた人々の暮らしに欠くことのできない保健医療。

(*5)沖縄におけるマラリア、フィラリア対策
 公衆衛生的アプローチの結果、沖縄のマラリアは1962年に新規発生ゼロ、フィラリアは1978年に防圧に成功している。

(*6)ソーシャル・ワクチン
 HIV感染率を抑えたタイが90年代に実施した予防教育、避妊具使用の徹底化、地域住民の啓発などを組み合わせた総合的なパッケージ。

(*7)リプロダクティブ・ヘルス
 性と生殖に関する健康。人口・家族計画問題を基礎保健医療、エイズ対策、初等教育、女性の権利などとの関連で捉える包括的な概念。

(*8)DOTS
 DOTS(Directly Observed Treatment, Short Course:短期化学療法を用いた直接監視下治療)

(*9)多剤耐性結核
 抗結核薬の乱用により抗体をもち、薬に対し強い耐性を持つ結核。

(*10)ロールバック・マラリア
 WHOの推進するマラリア対策イニシアティブ。包括的な保健システムの構築、2010年までにマラリアによる負担の50%削減、多剤耐性菌対策等を目的とする。

(*11)国際寄生虫対策(「橋本イニシアティブ」)
 98年のバーミンガム・サミットにおいて、橋本総理(当時)は、国際寄生虫対策を効果的に進めるために、アジア(タイ)とアフリカ(ケニア及びガーナ)に「人造り」と「研究活動」のための拠点をつくり、WHO及びG8諸国とも協力して、このような拠点を中心とした国際的ネットワークを構築し、寄生虫対策の人材育成と情報交換を推進していくべきことを提案。98年10月のアフリカ開発東京会議(TICADII)において、これら拠点を人材育成などの南南協力の推進拠点とする旨表明し、現在、この拠点づくりに向けた準備を進めている。

(*12)メコン・プロジェクト
 メコン川流域6ヶ国(中国雲南省、ミャンマー、ラオス、タイ、カンボジア、ベトナム)を対象とするマラリア対策。WHOの進める「ロールバック・マラリア(*10参照)」の下、WHO、UNICEF、UNDP、ADB等の国際機関と日本を含む主要援助国が協調してマラリラ対策を進めている。

(*13)「人口・エイズに関する地球規模問題イニシアティブ(GII)」
 94年2月、我が国の独自のイニシアティブとして発表。94年度から2000年度までの7年間にODA総額30億ドルを目途に人口・エイズ分野に対する援助を推進していくもの。GIIの実施においては、リプロダクティブ・ヘルスの視点を踏まえ、人口・家族計画等に直接資する協力に加え、基礎保健医療、初等教育、女性の地位向上等を含めた包括的アプローチをとっている。また、その実施に当たり、「日米コモン・アジェンダ」の枠組みの下、日米連携を図るとともに、NGOとの連携を重視している。

2.途上国の女性支援(WID)イニシアティブ



 我が国は第4回世界女性会議(1995年9月4日~15日、北京)において、WID分野の今後の取り組みを示すために「途上国の女性支援(WID)イニシアティブ」を発表しました。以下はその要旨です。

 開発援助の実施に当たり、就学、就業、出産、経済・社会活動といった女性の一生のすべての段階を通じて、女性の地位の強化(empowerment)と男女格差の是正(gender equality)に配慮し、特に、教育、健康、経済・社会活動への参加、の3つの分野を重視し、開発途上国及び他の援助国、国際機関、NGOとも協力しつつ、WID分野の開発援助の拡充に努力する。各分野の具体的な目標と協力の例は次のとおり。

1教 育
 2005年までに、開発途上国における6歳から11歳までの男女格差をなくし、また、2010年までに開発途上国の6歳から11歳までの女子のほぼ全員が男子と同様に学校教育を受けられることを目指す努力を支援する。
(例)女子教育の教科書、教材の作成、普及/教員の養成/女子教育、訓練のための施設、設備の整備/成人女性の識字教育の促進

2健 康
 2010年までに、妊産婦死亡率(出生10万人当たりの妊産婦の死亡者数)を200以下に下げることを目指す努力を支援する。また、出産に対する圧力を軽減するという観点から、2015年までに、乳児死亡率(出生1,000人当たりの1歳未満の子供の死亡者数)を35以下に下げることを目指す努力を支援する。
(例)基礎保健医療体制の整備、強化/母子保健サービスの強化(乳幼児の健康診断、予防接種、栄養相談)/家族計画の普及/基礎データの整備能力の向上

3経済・社会活動への参加
 女性のための適正技術の研修・訓練の場の提供、女性の労働環境の改善、女性問題関連の法律、制度の整備のための協力を行う。また、経済活動への女性の参加を促進する上で、女性の起業家が多い零細企業の育成を支援していくことが有益であるため(我が国は、既に、インド・小企業育成計画に対する円借款供与、バングラデシュ・グラミン銀行に対する円借款供与等の実績あり)、かかる女性に対する支援制度の導入を支援し、また、資金協力等の積極的支援を行う。
(例)組織化のための助言、指導(例:機材供与や貸付の対象となりうる同業組合の設立)/零細企業の育成、その他経済・社会活動への参加に資する機材供与(例:縫製業支援のためのミシンの供与)/零細企業に対する支援制度への資金協力


(開発援助による社会全体への波及効果)

3.民主的発展のためのパ一トナーシップ(PDD)


 ~Partnership for Democratic Development~

1.基本的考え方

 民主主義、発展並びに人権及び基本的自由の尊重は、相互に依存し且つ補強し合うものである。人権の擁護・促進のため民主化を支援することは国際社会共通の重要な課題であると考えている。我が国は、途上国の民主的発展及び人権の擁護・促進のためには政府自身の意思のみならず、適切な制度、機関及び人材が必要であるとの考えの下、法律・統治・選挙・マスコミ等さまざまな分野における制度づくりを側面から支援している。また、かかる支援を行う際には、特に人権の擁護と促進という要素を常に念頭に置いた施策を実施すべきであると考える(被支援国に対し「人権」の側面を前面に押し出すか否かについては個別に判断すべき)。この点、人権状況に問題が残ると思われる国であっても、その改善に努力している国に対しては積極的にこれを評価し、かかる動きを支援してゆくことが、結果的に人権の擁護・促進という目標の達成に効果的に結びつくものと考える。

2.PDDの発表

 我が国は、96年のリヨン・サミットに際し、法・司法制度や選挙制度の整備のための支援、司法官・行政官・警察官の研修、人権の擁護・促進のための協力等に代表されるこれまでの日本の取り組みを整理した上で、これを「民主的発展のためのパートナーシップイニシアティブ(Partnership for Democratic Development Initiative)」として発表し、今後ともこれら取り組みを強化していく意思を表明した。また、その際、人権の擁護促進という要素の他、以下のような原則を常に念頭に置くこととした。
<PDD原則>
(1)途上国との共同作業(Partnership)に基づくものとする。
(2)途上国の自助努力を原則とする。
(3)途上国との協議・同意を得て実施する。

3.具体的取組

(1)各種制度作り支援:専門家派遣、研修員受け入れ、政府指導者等関係者招聘を通じ、法制度、行政制度、警察制度等に関する講義や我が国制度の紹介を行い、制度整備を支援している。
(2)選挙支援:要員派遣、資金援助、研修及び機材供与等を通じて選挙が民主的に行われるように支援している。
(3)知的支援:人権・民主化関連研究、文化、教育施設へ助成、オピニオン・リーダー及び文化人等の派遣・招聘を通じ、人権の促進及び民主化を間接的に支援している。
(4)市民社会の強化:選挙教育、指導者育成、メディア育成のための支援、研修等を通じ、民主化の土台となる市民社会の強化及び「人造り」に貢献している。
(5)女性の地位向上:開発における女性の役割、女性の人権等に着目し、女性の地位向上、政治参加の拡大を目指して支援している。


4.国際的な情報格差問題に対する我が国の包括的協力策について



平成12年7月14日

1.背 景
(1)今回の九州・沖縄サミットにおいては、以下の視点から、特に国際的な情報格差への協調的取り組みの強化の必要性が打ち出される見通し。
 (イ)ITはその普及に応じ便益も拡大。ITの便益をグローバルに最大化するためには、開発途上国を含めた幅広い普及・活用を図る必要あり。
 (ロ)情報格差は、先進国・開発途上国間の経済的格差を増幅させ、国際社会の将来的な安定を揺るがしかねない。
(2)また、こうした取り組みに当たっては、政府、産業界、NGO、国際機関を含むすべての関係者による連携の必要性や開発途上国のおかれた多様な状況を踏まえつつ、
 (イ)IT普及のための政策環境の強化
 (ロ)情報通信基盤の整備
 (ハ)IT普及を支える人材の養成
 (ニ)開発援助におけるITの積極的利用等に焦点を当てた行動の重要性が強調される見通し。
(3)実際に先進国と途上国との間には、大きな格差が存在しており、途上国が共通に抱える課題として以下のものがある。
●情報通信関連投資及び資金
●情報通信基盤及びその整備のための制度・ノウハウ
●情報通信関連の専門家
●必要な機材
●インターネットを活用するための基盤・ノウハウ
(4)ITの特性を通じた「好循環」形成を図る。
 (イ)開発途上国によるITの普及を通じ、我が国自身のITの更なる発展に貢献
 (ロ)アジア太平洋地域におけるIT普及は我が国の活力ある成長にも重要

2.基本的考え方
(1)民間の積極的な取組を補完する形で、各般の政策的手段を有機的に組み合わせた柔軟な協力を提供。
(2)対象分野については、開発途上国におけるIT関連政策分野全般を視野に入れた、一貫性のある取り組みを確保する。
(3)実施においては、グローバルな協力を基本としつつ、アジア・太平洋地域との協力関係の重要性に特段の考慮を払う。また、世界的なIT普及に向けた一つの鍵が「ネットワーク化」にあることにも留意し、各地域との協力の連携強化にも努める。
(4)グローバルな協力、ネットワーク化の促進との観点から、関係国際機関、他のドナーとの連携にも適切な考慮を払う。

3.具体的内容
 IT分野は民間主導で発展する分野であり、公的部門の役割は専ら民間の積極的な取り組みに対して政策及び人材育成等を中心に補完的に協力することである。日本国は、これを踏まえつつ、国際的な情報格差(Digital Divide)解消のために、今後5年間で合わせて150億ドル程度を目途に非ODA及びODAの公的資金による包括的協力策を用意する。
 協力を行っていく際には、世銀のIT向けイニシアティブへの参加等、世銀、UNDP、ITU等の国際機関との連携を重視する。
(1)「ITはチャンス」との認識の向上と政策・制度作りへの知的貢献
 シンポジウム「ITと開発協力」(7月3~4日、東京)を皮切りに、「ITはチャンス」との認識を広めるべく、途上国のニーズに従ってIT普及に資する政策立案、法整備支援、電子情報犯罪防止等の分野で途上国の政策立案・実施の支援を行っていく。
(2)人造り(研修、人材育成)
 ITを導入するためには、まずITを導入・活用するための技術者の養成が必要であるが、同時にIT普及に資する政策の立案、ITを取りこんだ開発プランの策定を行う政策担当者の養成も不可欠である。我が国はその双方の面を考慮しつつ技術協力を中心に今後5年間で1万人以上の研修・人材育成を支援する。
(3)情報通信基盤の整備・ネットワーク化支援
 途上国がITを積極的に導入する環境を整備するためにITそのものだけではなく、ITの周辺に位置する通信技術分野における協力を通じて途上国の情報通信基盤の整備に協力する。また、各地域内及び各地域間で進められるネットワーク化への協力も行っていく。
(4)援助におけるIT利用の促進
 我が国も援助を実施するに際し、遠隔研修、遠隔教育、遠隔医療等の面でのIT利用の促進を図る。そのための試みとして途上国における人造り拠点のIT活用拠点化を図る。具体的には第1段階としてIT拠点を30ヶ所を設けると共に、世銀の遠隔教育構想等の国際機関のイニシアティブとのネットワーク化を図る。その際、JICAの沖縄国際センターを開発関連情報の発信基地・遠隔教育の中核の一つとして活用していく。
(了)


5.21世紀に向けた環境開発支援構想(ISD)(要約)


 Initiatives for Sustainable Development(ISD) toward the 21st Century

(1997年6月の国連環境開発特別総会にて発表)

1.UNCEDの目標達成


 92年の国連環境開発会議(UNCED)の際、我が国は「環境分野における政府開発援助を92年度から5年間で9,000億円から1兆円を目処として大幅に拡充・強化する」ことを表明し、その後、92年度から96年度までの5年間の合計は、約1兆4,400億円となり、当初の目標を4割以上上回る実績を達成した。
 我が国としては、引き続きODAを中心とした環境協力の更なる充実を図っていく。

2.ISDの理念


(1)人類の安全保障(Global Human Security):環境破壊は人類生存の脅威となりうる広い意味での安全保障の問題である。
(2)自助努力(Ownership):途上国が第一義的な責任と役割を担って主体的に環境問題に取り組むことが重要であり、援助国はこうした自助努力を支援する。
(3)持続可能な開発(Sustainable Development):途上国が持続可能な開発の観点から発展していくために、その国の経済的・社会的状態を勘案しつつ環境協力を支援する。

3.行動計画のポイント(ODAを中心とした我が国の国際環境協力)


(1)大気汚染・水質汚濁・廃棄物対策
 (イ)「東アジア酸性雨モニタリング・ネットワーク」の提唱
 (ロ)「環境センター」を通じた途上国の環境部局の強化を行う。
 (ハ)資金・技術協力(汚染源対策、リサイクル等、「グリーン・エイド・プラン」の活用)
(2)地球温暖化対策
 省エネルギー、新エネルギー技術の世界的な普及を図る。
(3)自然環境保全、森林・植林
 (イ)「インドネシア生物多様性センター」を拠点として、東アジア地域の生物多様性の情報ネットワーク化を行う。
 (ロ)アジア・太平洋地域において「サンゴ礁保全研究センター」を設置し、地域のサンゴ礁保全研究ネットワークを形成する。
 (ハ)社会林業プロジェクトや円借款による広域にわたる住民参加型植林を進めていくとともに、国際熱帯木材機関(ITTO)への貢献を強化する。
(4)「水」問題への取り組み
 浄水場、上下水道網、井戸等の整備を進めていく。
(5)環境意識向上・戦略研究
 (イ)日中間の政府・地方自治体・民間の包括的な取り組みである「日中環境協力総合フォーラム」やアジア太平洋地域の環境大臣や国際機関による「エコ・アジア」を通じ、政策対話を進めていく。
 (ロ)草の根無償援助による環境教育プログラムの積極的支援を行う。
 (ハ)地球環境問題に対する新たな政策手段の開発等を行う「地球環境戦略研究機関」を設置し、国際的なネットワークづくりを進める。



21世紀に向けた環境開発支援構想・京都イニシアティブ
 (温暖化対策途上国支援)(要約)
1997年12月


1.背 景
 我が国は、本年6月の国連環境開発特別総会において橋本総理大臣より、ODAを中心とした環境協力の包括的な中長期構想として「21世紀に向けた環境開発支援構想(ISD)」を発表した。その行動計画において、温暖化対策に関する支援が示されている。
 本年12月に、京都において開催される気候変動枠組み条約第3回締約国会議の議長国として、ODAを中心とした温暖化対策途上国支援を一層強化するために、本構想の温暖化対策途上国支援策として、「京都イニシアティブ」を発表する。

2.京都イニシアティブの理念
(1)人類の安全保障(Global Human Security)
 地球温暖化問題は、人類生存の脅威であり、広い意味での安全保障の問題である。
(2)自助努力と連帯(Ownership & Partnership)
 温暖化対策は、途上国が主体的に取り組むとともに、地球的規模の問題解決のため先進国と途上国が共同して対処することが重要である。
(3)持続可能な開発(Sustainable Development)
 開発と環境保全の両立を目指し、温暖化対策と経済開発の双方に資する適切な技術移転や資金協力を実施していく。また、貧困が環境破壊の要因となっている国においては、貧困からの脱却を図るための支援を行う。

3.京都イニシアティブの3つの柱
(1)「人づくり」への協力
 平成10年度から5年間で、3,000人の温暖化対策関連分野の途上国における人材育成に協力する。
 〔1〕大気汚染
 〔2〕廃棄物
 〔3〕省エネルギー
 〔4〕森林の保全・造成
(2)最優遇条件(0.75%、40年)による円借款
 温暖化対策関連分野への協力を積極的に進めていくため、主として以下のような分野に対して国際的に最も譲許的な条件(金利0.75%、償還期間40年)の円借款を行う。
 〔1〕省エネルギー
 〔2〕新・再生可能エネルギー
 〔3〕森林の保全・造成
(3)我が国の技術・経験(ノウハウ)の活用・移転
 我が国の公害・省エネ対策の過程での技術・経験(ノウハウ)を活用し、温暖化対策に関する途上国の実状に適合した技術の開発・移転・調査団の派遣やワークショップの開催を行う。
 〔1〕工場診断調査団の派遣
 〔2〕技術情報ネットワークの整備
 〔3〕途上国の実状に適合した技術の開発・移転
 〔4〕ワークショップの開催


6.「紛争と開発」に関する日本からの行動-アクション・フロム・ジャパン-


「紛争と開発」に関する日本からの行動
アクション・フロム・ジャパン
―開発分野における紛争予防の強化のための日本の協力―
 紛争予防に効果的に取り組むためには、紛争のさまざまな要因に対して包括的に対処することが重要である。我が国がこれまで行ってきている開発協力についても、紛争予防の観点を積極的に取り入れ、紛争を予防し、その拡大や再発の予防に資するような開発援助のあり方を強化することが求められている。我が国としては、G8宮崎外相会合の機会に、開発分野における紛争予防の強化のための日本の協力を「アクション・フロム・ジャパン」として打ち出したいと考える。

アクション・フロム・ジャパン


I.紛争予防の時系列的アプローチの強化
 紛争予防の各段階における援助の強化
 ●紛争予防に資する支援
 「ガバナンス(統治)」への支援:
 民主主義の基盤の強化、法制度の整備、市場志向型の経済運営
 ●紛争時・直後の各種の困難緩和のための緊急人道支援
 NGO・民間との連携の重視
 ●復旧・復興計画の策定に向けた支援
 計画策定支援のためのNGO等を含む調査団の早期派遣、調査と同時並行的なパイロット事業の実施
 ●紛争再発防止のための復興・開発支援
 除隊兵士の社会復帰、難民・国内避難民の再統合、地雷除去、小型武器の規制・回収に対する支援

II.紛争予防の主体への協力の強化
 紛争予防の重要な主体であるNGOの一層の重視
 ●NGOへの支援の強化
 NGO緊急活動支援無償、地雷対策への草の根無償の拡充、ネットワーク構築支援
 ●NGO・民間との連携強化
 NGOが初動の段階で必要な情報、資金、ノウハウ等の手当への協力、政府・NGO合同調査団の派遣
 「ジャパン・プラットフォーム構想」(NGO、政府、企業、メディア等の連携・協力を図る「場」)への支援
 ●人材育成
 UNHCRによる「アジア・大洋州地域国際人道支援センター」への協力

紛争と開発
―日本の取り組み―

1.基本的視点



(1)紛争は開発上の重要課題


 冷戦の終焉後頻発する紛争は、一人一人の人間の生命や生活、尊厳のみならずそれを支える経済・社会基盤など開発の成果を損ない、更には難民・国内避難民の発生、放置された対人地雷による被災など、紛争後の復旧・復興、そして、その後の開発を困難とするさまざまな問題を引き起こす。

(2)開発は紛争の各段階に関連


 開発協力の中で、貧困や経済格差といった紛争の要因となる課題に積極的に取り組むことは、紛争の予防にも資する。
 また、紛争発生時には、緊急人道支援による紛争国の被災民に対する支援に加え、紛争国からの難民の流入等に直面する紛争周辺国への支援にも考慮する必要がある。
 さらに、紛争終結後には、復旧・復興に向け、開発協力が重要な役割を果たす。特に、紛争の再発防止の観点より、緊急人道支援からその後の復興開発協力へのスムーズな移行を確保し、その間の空白(ギャップ)を極力解消することが重要となる。

(3)国際機関・NGOとの連携・協力


 紛争の予防・解決・再発防止には、国際社会が一致してこれに当たる必要があるが、その一翼を担う開発協力の実施に当たっても、関連国際機関や他のドナー、更には国内の民間部門やNGOとの連携・協力が不可欠である。特に、機動性に優れ、現地の草の根レベルでのニーズに柔軟な対応が可能なNGOの役割は大きく、その活動を積極的に支援していく必要がある。

2.対応の原則



(1)紛争予防の重視


 一旦紛争が発生した場合、紛争国にもたらされる人的・物的損害の大きさ及び緊急人道支援、復旧・復興に要するコストの大きさに鑑みれば、紛争予防の観点からの開発協力を重視することが効果的・効率的である。援助案件の立案・実施・評価にあたっては、紛争予防の視点に配慮するとともに、紛争予防に直接貢献する案件を積極的に取り上げていく。特に被援助国国民の意思疎通及び民主主義の基盤の強化に留意する。

(2)迅速な対応


 紛争は、多くの場合、多数の難民・国内避難民を発生させ、食糧不足、貧困、病気の蔓延などさまざまな問題を引き起こし、時の経過とともに解決への困難が増すことから早期の対応が必要となる。特に、緊急人道支援においては、可能な限り迅速に支援を進めることとし、そのためNGOとの迅速な連携を強化する。

(3)一貫性のある支援


 紛争後の復旧・復興支援では、我が国は帰還民の生活再建支援、治安やガバナンス(統治)の回復・強化のための制度構築に向けた支援、経済基礎インフラや医療・教育等の社会開発分野における開発計画の策定や復旧・整備など、多岐にわたる支援を実施しているが、さらに復旧・復興計画の策定段階に積極的に参画していくとともに、現地のニーズを踏まえて中・長期的視点から人づくり、国づくりに必要な支援を行っていく。

(4)ギャップの解消


 緊急人道支援から復旧・復興支援、本格的な開発支援へと開発協力を円滑に進めることができないと、紛争の再発や難民・国内避難民の再発生を招きかねない。国際社会においては、緊急人道支援と復興への開発協力では中心となる協力主体が変わることもあり、この間に空白(ギャップ)が生じやすい。このギャップを埋めるための国際的努力に我が国としても積極的に参画し協力を進める。

3.具体的施策



(1)紛争予防に資する支援


 平和・安定を維持している国であっても、貧困や経済・社会的な格差が多民族・多宗教の存在などとともに紛争の要因となりうることから、公平な社会の実現に向けて貧困削減・社会開発のための支援に重点を置く。また、民主主義、法制度整備、市場指向型の経済運営といった「ガバナンス(統治)」への支援が、紛争のない安定した公平な社会造りの礎となることから、ガバナンス強化のための人づくり、制度づくりに対し支援を強化する。
 国内の対立が先鋭化し、現地の治安、安全状況が悪化した場合においても、可能な限り、国際機関、NGO等を通じた支援の継続の可能性を追求する。こうした状況での支援は、対立の当事者が共同で参画し双方の利益となるものを優先的に実施し、当事者同士の共存・意思疎通の回復による対立の緩和を図る。

(2)紛争再発防止のための復興・開発支援


 除隊兵士の社会復帰や帰還兵の再統合、難民帰還等の前提となる対人地雷除去など紛争再発防止に対する支援を強化する。紛争の手段となる小型武器の規制・削減と治安の安定化とに資する支援を行う。
 特に、復興の大きな障害となっている対人地雷の除去活動については、我が国の対人地雷に関する「犠牲者ゼロ・プログラム」を念頭に置きつつ、政府間協力に加え、草の根無償資金協力を活用(注1)した、より積極的なNGO支援等をも実施していく。
 また、上記(1)の「ガバナンス」支援を重点的に行い、対立を先鋭化させず平和・安定を永続できる社会制度の構築に努める。
 さらに、紛争地域において各当事者間の融和を図ることが、紛争の再発防止に資することから、当事者に等しく裨益する域内を対象とした協力への支援を重視する。
 なお、社会内での対立を平和裡に解決し、社会再統合を進める上で民主主義の健全な機能が重要であることに鑑み、我が国の「民主的発展のためのパートナーシップ(PDD)」に基づきつつ、我が国及び他国の近代化・民主化の経験等を紹介する民主化セミナーの開催をはじめとする民主化支援への取組みを強化して行く。

(3)NGOへの支援の強化


 我が国NGOの緊急人道支援活動への関心の高まりを踏まえ、これまで関係国際機関を通じ、あるいは直接に我が国NGOの関連活動を支援してきたが、我が国NGOによる「顔の見える援助」の重要性に鑑み、すでに実施中の「NGO緊急活動支援無償」(注2)など我が国NGOへの支援策の拡充・改善を進める。
 また、紛争の予防や再発防止においては、対立(紛争)当事者間の橋渡しをできるネットワークやノウハウを有するローカルNGOや国際NGOの役割に留意し、支援を行う。
 さらに、我が国NGOと国際NGOとの間での人的交流(注3)の強化等による経験・ノウハウ等の共有を通じた能力強化など、我が国NGOの組織強化を支援して行く。

(4)緊急人道支援における民間・NGOとの連携


 緊急人道支援を我が国国民の幅広い参加により効果的に実施できるよう、NGO・民間企業・メディア等が連携しつつ活動を行うための環境整備に寄与していく。特に、紛争発生時にNGOが行う初動調査や、事業立ち上げの段階で必要となる情報、資金、ノウハウ、応急救援物資、通信機器・車両の機材等の手当を、政府及び民間が協力して実施できるよう支援する。
 また、NGOの緊急支援活動や国際機関との連携を初動段階で支援しうるよう、政府・NGO合同の調査団を迅速に派遣できるシステムを検討する。
 こうした観点から、「ジャパン・プラットフォーム構想」(注4)にも積極的に関与するとともに、支援を検討する。

(5)緊急復興計画の策定に向けた支援


 紛争後の復旧・復興計画の迅速な策定、並びに緊急人道支援と復旧・復興支援の間のギャップの解消及び切れ目のない援助の実施を確保するために、NGOも含めた形での調査団(注5)を現地に早急に派遣するとともに、復旧・実行計画の策定及びパイロット事業の実施(注6)を行うことを検討していく。

(6)調査・評価と知識の共有


 紛争予防・再発防止に果たす開発援助の役割について具体的なケースを対象として評価を実施し(例えばカンボジア)、その意義・メリットを広く伝える。

(7)人材育成


 紛争に伴い難民、国内避難民が発生した場合に、効果的かつ迅速に緊急人道支援を行うためには、所要の訓練と人材の育成が不可欠である。そのため、アジア・大洋州地域のNGOを中心とする関係者を対象にしたトレーニングへの支援を行う(UNHCRが「アジア・大洋州地域国際人道支援センター」計画を策定)。UNHCRの「センター」計画に対しては通信教育や講習会等を行う経費に対する「人間の安全保障基金」からの拠出を積極的に検討する。

 (注1)草の根無償による対人地雷除去活動支援
 カンボジア等の地雷被埋設国においては、政府機関のほかに除去活動を行うNGOが少なくないことから、平成12年度から、草の根無償の限度額を2,000万円から1億円に引き上げ、機材供与などのハード面のみならず、除去作業に係る人件費なども支援の対象にすることとした。なお、我が国は97年12月の対人地雷禁止条約署名の際に、98年からの5年間を目処に100億円程度の対人地雷対策への支援を行うことを表明している。

 (注2)NGO緊急活動支援無償
 紛争や自然災害等の現場で我が国NGOが実施する緊急人道支援活動に対して、NGOメンバーの渡航費・滞在費、現地事務所の設営・維持費などプロジェクト立ち上げ・展開に要する現地での間接経費の手当てを含め幅広い経費を支援することをねらいとして、平成12年度より導入した制度である。
 従来のNGO支援制度に比べて、NGOからの申請の審査・支援決定のプロセスを短縮し迅速に支援できるとともに、従来の限度額(NGO事業補助金:1,000万円、草の根無償:1,000万円)を上回る額の支援が可能となる。
 なお、平成11年度は当初予算の範囲内での緊急時の措置として、コソボ、東チモールにおける帰還民・避難民等支援及びトルコ、台湾の地震被災者支援のため、我が国NGOが行った諸プロジェクトを支援している。

 (注3)我が国NGOと国際NGOとの間での人的交流
 例えば、平和構築の分野では、カナダから我が国NGOへ今春(2~5月)、2名が派遣され、そして、我が国からはカナダのNGOへ今秋(10月頃から4か月程度)、2名程度が派遣される予定である。
 これは、平成11年9月、外務省、国際協力事業団(JICA)、及びカナダ国際開発庁(CIDA)の共催で、カナダ大使館にて、日本、カナダのNGOの参加のもと開催された「平和構築支援セミナー」を契機とするもの。同セミナーでは、開発援助と平和構築との関連について、特にNGOの役割、日本・カナダの政府間及びNGO間の連携強化などを中心に議論が行われた。

 (注4)ジャパン・プラットフォーム構想
 紛争や災害などの人道的危機に際して、NGO、政府機関、企業、メディア、研究機関などが、より効果的な支援活動を展開できるよう連携・協力を図る「場」(プラットフォーム)を形成することを目指した我が国NGOによる構想。
 我が国の人道支援関連NGOの連合体が事務局となり、紛争や災害発生直後の初動段階におけるNGOの現地調査や現地での体制立ち上げ、応急の救援活動に関して、NGOの活動や企業、政府などからのNGOへの支援などの調整を行い、迅速かつ柔軟な対応を可能とすることを目指すものである。外務省や経団連をはじめとする民間団体なども、NGO間での本構想の検討に積極的に関与してきている。既に物資提供等の面で具体的な協力・支援の関心を表明している企業も一部にある。

(注5)「緊急プロジェクト形成調査」
 政府関係者に加えNGO等からなる調査団を現地に派遣し、復旧・復興計画に資するプロジェクトの形成を迅速に行う。

(注6)「緊急復興支援開発調査」
 緊急プロジェクト形成調査団員が継続して開発調査に従事し、復旧・復興計画の策定を行う。また、本調査の中で緊急パイロット事業を行い、計画と実施の間のギャップの解消を目指す。
(了)



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