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21 国際開発協力関係民間公益団体(NGO事業)補助金制度の概要と実績


1.事業の開始時期・経緯・目的


開始時期


 89年度、NGO事業補助金として1億1千万円の予算額で創設。

経緯・目的


 NGOによる開発協力活動は、途上国住民に直接裨益する草の根レベルでの事業実施、柔軟・迅速かつきめの細かい援助、試験的な援助が可能であるなどの多くの利点があり、国民参加による開発協力を推進する見地からも重要な役割を果たしている。
 しかし、我が国のNGOは、歴史も浅く、欧米のNGOのように宗教的な基盤等にたって民間の募金を十分に確保し、安定した財政基盤をもって開発協力事業等を幅広く展開するに至っていない。
 このため、我が国のNGOは、途上国に対する開発協力を積極的に推進する意欲を十分に持ちながらも、その活動規模は、欧米諸国のNGOに比し、限られたものにならざるを得ない状態にある一方、我が国のNGOに対する途上国からの協力要請は年々増加し、自ら開発協力事業を行うNGOからODAの活用に強い要望が出されていた。
 このような背景の中、ODAによりNGOが行う事業に対する財政支援を行うことで、被援助国に対し、きめ細かな援助が実施されるとともに、我が国のNGOの財政基盤の強化につながるなどの理由により本補助金制度は導入された。

2.事業の仕組み


概 要


 本補助金は、我が国のNGOが途上国で行う開発協力活動に対し、その事業費の一部を補助するものである。
 本補助金の1件当たりの供与額は、原則として50万円(国際ボランティア補償支援については10万円)以上1千万円までとし、交付要綱に定める補助対象事業に基づきNGOが申請した事業に対し、補助金額は、当該総事業費の2分の1以下かつ補助金交付要綱に定める補助対象経費の範囲で、交付額が決定される。
 本補助金は、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)」に基づき実施される。
 補助対象事業は、以下のとおりである。
 補助対象事業(2000年度)
(イ) 開発協力事業
(1)農漁村開発  農村自立支援、農村改善支援、農村復興、漁村自立支援、専門家等派遣
(2)人材育成  託児所建設、貧困地区学習援助、学校建設、図書館建設、専門家等派遣
(3)女性自立支援  女性自立支援センタ一建設、自立支援研修、専門家等派遣
(4)保健衛生  保健衛生改善、保健・啓発プロジェクト、専門家等派遣
(5)医療  医療診察、障害者復帰対策、専門家等派遣
(6)地域産業向上  職業訓練所建設、青少年職業訓練計画、産業振興施設建設、専門家等派遣
(7)生活環境  井戸建設、生活改善指導センター建設、給排水対策、専門家等派遣
(8)環境保全  造植林、専門家等派遣
(9)民間援助物資輸送  民間援助物資輸送
(10)地域総合振興  地域総合振興
(11)開発協力適正技術移転・普及  開発協力適正技術移転・普及
(ロ)国際ボランティア  NGOスタッフが加入する海外旅行傷害保険の費用に対する補助補償支援制度
(ハ)NGO海外研修支援制度  国際協力NGOスタッフの能力向上を図るための海外研修費補助

審査・決定プロセス


 毎年、年度当初に公募(外務省ODAホームページ等に掲示)し、補助金申請の受付を行う。
 本補助金の申請は、NGOより外務大臣(経済協力局民間援助支援室)に対して申請書及び添付書類等を添えて行われ、外務省において下記の諸条件等に基づき申請事業が審査され、補助金の交付が決定される。
(イ) 補助対象団体
 我が国のNGOで、原則として次の要件をみたす団体。
(1)開発途上国における開発協力事業を主な活動目的とするNGOで、本邦内に実態的に住所を有するもの。
(2)自ら人員を現地に派遣してプロジェクトを実施し遂行すること。
(3)団体の年間の開発協力事業費が100万円以上で、過去2年間以上にわたり自ら人員を派遣し補助対象事業に準じた事業の活動実績を有すること。
(4)補助金適正化法等に基づき当該事業を実施・管理する能力を有すること。
(5)政治的、営利的、宗教的活動は類似の行為も含めて一切行わないこと。
(ロ) 対象国
 原則として
(1)世銀ガイドラインによるIDA(国際開発協会)適格の所得水準の開発途上国であること(2000年度においては、98年の国民一人当たりのGNPが、1,460ドル以下の国)
(2)本補助金事業を実施した場合に援助効果が期待される開発途上国であること。
(ハ) 対象事業の選定基準
(1)政府レベルのODAでは対応困難な草の根レベルの事業で、途上国住民に人道的配慮がなされており、経済・社会開発、民生の安定につながること。
(我が国NGOが途上国NGO、政府等と協力して行う事業も対象とする。)
(2)地域社会のニーズがより良く把握されていること。
(3)地域住民の自助努力による自立を促し、地域住民の参加があること。
(4)援助の利益が対象地の女性にも行き渡るよう配慮されていること。
(ニ) 事業実施期間
 日本政府の当該会計年度内に終了することを要する。

決定後の案件実施の仕組み


 上記基準及び団体の活動実績・事業の内容の妥当性等を審査の上、交付決定を行う。交付決定団体には通知を送付する。
 事業実施過程において事業の変更(軽微なものを除く)及び補助対象の取得財産譲渡等が発生する場合には、外務大臣に対する承認申請の提出が必要となる。
 また、年度の途中において必要に応じて実施状況報告を求めるとともに、事業完了後は速やかに事業完了報告書及び帳票等の提出を受け、外務省において確認の上、補助金が交付される。

3.最近の活動内容


概 要


 2000年度の実績は、39か国/2地域で行われた86団体の149事業に対し、約5億4,100万円を交付している。

地域別実績


 2000年度においては、従来と同じくアジアにおける協力が件数、供与額ともに最も多く交付額において全体の6割強を占めた。また、アジアに次いで交付実績はアフリカ、東欧の順と続いている。

分野別実績


 補助金交付額で見ると、99年度は医療事業、地域総合振興事業、保健衛生事業、2000年度は医療事業、地域総合振興事業、人材育成事業の順になっている。


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