資料編 > 第3章 > 第1節 > 19 援助効率促進事業の概要と実績
88年度に新規項目として創設。
我が国政府開発援助の質の向上、及び我が国の援助理念に合致した効果的な援助実施の観点から、JICAの各種事業の実施に当たり、援助実施のサイクル中、「入口」及び「出口」の段階において、JICA全体の横断的な取り組みを強化することにより、体系的かつ効果的な援助の実施を図ることの重要性に鑑み、創設された。具体的には、主に以下の2点を目的としている。
(イ) 真の援助需要を見極めるための情報収集、事前の調査・研究、「要請主義」を補完する案件の発掘・形成、案件選定・確認のための相手国との密接な対話といった援助の「入口」段階での事業を実施すること。
(ロ) 実施済みの案件の協力効果につき評価を行い、右結果を将来の事業実施にフィードバックすることを通じて事業の更なる効率的・効果的実施を目指す「出口」段階での事業を実施すること。
援助効率促進事業は、援助の実施サイクルの中で「入口」に当たる各種の情報収集・事前の調査、プロジェクトの形成・確認と、「出口」に当たる終了案件の評価等を行うことにより、JICA事業全体の横断的な総合調整機能を強化し、JICA事業の一層の効果的実施を確保するもので、主な事業は以下のとおり。
(イ) プロジェクト確認調査
援助重点国を中心に、我が国の援助理念・方針を説明し、相手国等との協議を通じ、先方の重点分野に関する意向を確認した上で、今後の協力の方向付けを行うもの。
(ロ) プロジェクト形成調査
無償資金協力及び技術協力に係るJICAプロジェクトの形成のために、以下の3つのカテゴリーにより調査を実施するもの。
(1) 一般プロジェクト形成調査
個別プロジェクトの要請がありながら熟度が未熟である等、案件形成能力が十分でない開発途上国に対し、計画策定段階より能動的・積極的に案件の発掘形成を行う調査。
(2) 分野別プロジェクト形成調査
特定の開発の必要性が確認されているが、当該分野の案件が要請されない、または案件の形成能力が十分でない場合に、当該分野に係るセクターサーベイを行い、我が国協力の方向付けを行うための調査。
(3) 在外プロジェクト形成調査
社会制度、伝統・風俗・文化など、現地社会事情等への配慮が必要な案件等を対象に、現地ローカルコンサルタントを活用して機動的にJICA在外事務所が優良案件の発掘形成を行うための調査。
(ハ) 企画調査員
開発途上国における開発重点分野に精通した調査員を現地に派遣し、相手国関係機関との密接な連携を図りつつ、優良案件の発掘・形成や要請案件の調整・整理を行うもの。複数国にまたがる共通課題や域内協力に対処するため、広域型の調査にも対応。
(ニ) 評価調査
JICAが実施した各案件の評価・監理を行うもので、主に以下の2つのカテゴリーによる調査を行っている。
(1) 終了時評価調査
プロジェクトの協力期間終了の前後に、当初設定したプロジェクトの目標の達成度、効果、自立発展の可能性等の観点に重点を置いて実施する評価。評価結果は、当該プロジェクトに対する協力延長の要否又は追加支援の必要性を検討する際の判断材料となる。
(2) 事後評価調査
プロジェクトの協力期間が終了してから数年経過した時点で、当該プロジェクトが与えた影響や効果、自立発展の度合い等に重点を置いて実施する総合的な評価。将来の新規案件の形成、実施において参考としうる教訓、提言を導き出すことを主な目的としている。
我が国援助の重要協力課題、協力重点国・地域、新規援助対象国・援助再開国を対象に、在外公館等の要望も踏まえつつ、対象国及び対象分野・案件の優先度、緊急度、効果、予算等の観点から総合的な検討を行い、実施候補案件を選定する。
実施案件の決定後は、JICAが外務省と協議の上、具体的な実施期間、目的、調査内容、人選等の実施計画を作成し、実施する。
(イ) プロジェクト確認調査
2000年度は24か国で本件調査を実施した。
(ロ) プロジェクト形成調査
2000年度は実施国数54か国、実施件数は80件であった。
(ハ) 企画調査員
2000年度実績は新規派遣、継続派遣併せて121件であった。
(ニ) 評価調査
2000年度は終了時評価、事後評価併せて109件の実績があった。
(イ) プロジェクト確認調査
2000年度は、アジア地域を対象として相手国政府からの技術協力及び無償資金協力についての要請の整理のための調査実施により件数が増えた。。
図表-122 地域別実績

(ロ) プロジェクト形成調査
2000年度は、PRSP策定対象国への対応と、九州・沖縄サミットを受けたICT協力推進関連の案件の実施によりアジア地域を中心として件数が増えた。
また、2000年度より民間のアイデアをODA事業に取り入れることを目的として、民間提案型プロ形を開始し、べトナム、サモア、ケニアの3国で実施した。
図表-123 地域別実績

(ハ) 企画調査員
2000年度は、東チモール支援、及びPRSP策定対象国への支援関連の案件が増加したことにより特にアジア地域を中心として件数が増えた。また、中南米地域を対象として、国際協力事業団(JICA)の地域別・国別アプローチを推進するため、特に、中米・カリブ地域への企画調査員の派遣が増えた。
図表-124 地域別実績

図表-125 地域別実績

(イ) PRSP策定対象国への積極的かつ現地のニーズに迅速に対応した事業を実施したこと。HIPCsイニシアティブに基づく貧困削減戦略書(PRSP:Poverty Reduction Strategy Paper)策定対象国への策定支援、情報収集のためにプロ形・企画調査員の派遣を実施。具体的事例としては、カンボジア、ラオス、べトナム、タンザニア等への派遣が挙げられる。
(ロ) 東チモール支援として各セクターの現状、動向について情報収集、調査・分析及び案件の発掘・形成のための事業を実施したこと。具体的事例としては、プロジェクト形成調査「農業セクター復興計画」、企画調査員「保健医療分野」、企画調査員「教育・人的資源開発」が挙げられる。
(ハ) IT協力推進のために必要な事業を実施したこと。2000年7月に開催された九州・沖縄サミットにおいてわが国が国際的な情報格差問題に対する包括的協力策を表明したことを受け、開発途上国における情報・通信分野の現状及び協力ニーズの調査と、具体的協力策の検討のために調査団を派遣した。具体的事例としては、ASEAN地域、南西アジア地域及び中近東地域へのプロジェクト形成調査団の派遣等が挙げられる。
(ニ) 「DAC新開発戦略への支援」における重点分野に対応した事業を実施したこと。具体的事例としては、ガーナ、ジンバブエ等への企画調査員の派遣が挙げられる。
(ホ) 地域別・国別アプローチの推進のための事業を実施したこと。2000年度は、JICAの組織改革により地域部が発足し、地域各部にて国別アプローチを推進した。具体的事例としては、フィリピン、ラオス、モンゴル等への国別アプローチの強化を目的とした企画調査員の派遣等が挙げられる。
図表-126 プロジェクト形成調査

図表-127 企画調査員
