資料編 > 第3章 > 第1節 > 5 草の根無償の概要と実績
89年度、「小規模無償資金協力」として創設。95年度より「草の根無償資金協力」と改称。
開発途上国の多様なニーズに的確かつ迅速に対応する必要性、主要援助国が小規模な無償援助の実施により大きな外交成果を挙げていること、ODA行政監察において小規模無償制度の導入につき勧告されたこと、等から創設された。
草の根無償資金協力は、開発途上国の地方公共団体、医療機関及び途上国において活動しているNGO(非政府団体)等が実施する比較的小規模なプロジェクトに対し、当該国の諸事情に精通している我が国の在外公館が中心となって資金協力を行うもの。一件当たりの援助の規模は通常1千万円程度までと規模に制限はあるが、草の根レベルに直接裨益するきめ細かい援助として、各方面から高い評価を得ている。
草の根無償資金協力の主な重点分野は、(イ)保健・医療、(ロ)基礎教育、(ハ)民生・環境改善、(ニ)貧困救済・所得向上等である。具体的な資金協力の対象品目としては、施設建設、資機材購入の他、会議・セミナー開催経費、機材供与に伴う専門家雇用費等のソフト面における協力も積極的に実施しているが、被供与団体自身の運営・管理費(事務所経費、人件費等)については支援の対象とはならない。
我が国の在外公館に対し援助の要請が行われた後、在外公館が要請団体の適格性、要請プロジェクトの内容、規模、援助効果、実施した場合の外交的な効果などについて検討を行い、実施候補案件を選定する。その後、原則として外務省本省にて案件実施を承認する。
案件の実施が決まると、我が国在外公館と当該案件の要請団体との間で、資金供与に関する契約が締結される。この契約においては、プロジェクトの名称・目的・内容、要請団体の名称、供与限度額、使途、及び供与された資金が適正に使用されるべきことを定めた適正使用条項等が定められる。
契約の締結を終えた団体(被供与団体)は、業者と物資・役務の調達に必要な契約を結ぶ。在外公館は契約(または見積書)の内容をチェックし、在外公館と被供与団体との間の契約にある供与限度額の範囲内で資金を供与する。
プロジェクト実施後は、在外公館は、被供与団体より当該プロジェクトの実施状況に関する報告を受け、またプロジェクト・サイトの現地確認などを行う。
2000年度の実績は実施国数106か国・2地域、実施件数1,523件、供与限度額総額85億円であった。被供与団体の内訳は、NGO(特に現地NGO)に対する供与が最も多く、それに続いて地方公共団体、教育・研究機関に対する供与が大きな割合を占めている。
2000年度も、99年度と同様、アジアにおける協力が、件数、金額ともに最も多く、それに中南米、アフリカが続いている。なお、2000年度には、新たにトルコ、トーゴ、ブルンディ、東チモールの3か国・1地域が草の根無償資金協力対象国・地域に加わった。
図表-105 地域別実績

小学校建設など初等教育を中心とした「教育・研究」分野の案件が、平成11年度に引き続いて最も大きくなっている。また、「保健・医療」分野についても、人口・エイズ案件等を重視していることもあり、「教育・研究」分野に次いで大きな割合を占めている。その他飲料水供給などの「民生・環境」分野の案件も多く、基礎生活分野(BHN)案件が大部分を占めている。
教育・研究分野の案件例としては、ラオスにおける「ナロム小学校建設計画」(約480万円、被供与団体:ナロム村)がある。校舎の老朽化が著しく、教室数も不足していた同校に対し、校舎一棟及びトイレ棟を建設し、児童用の机・イスの調達を支援するものである。
医療・保健分野の案件例としては、マダガスカルにおける「ツァラララナ小児病院医療施設強化計画」(約611万円、被供与団体:アンタナナリヴォ大学病院付属ツァラララナ小児病院)がある。同国唯一の小児科専門病院の、ラボを改修し医療機材を整備するものである。
民生・環境分野の案件例として、ペルーにおける「オクカヘ上水施設改善計画」(約742万円、被供与団体:開発・参加研究センター)がある。常に渇水であった同地区に、ポンプ小屋及び導水管を整備し、給水事情の改善を支援するものである。
図表-106 分野別実績

●「我が国の政府開発援助(外務省経済協力局編(財)国際協力推進協会発行)」
ODAを取り巻く最近の議論の動向、日本の援助活動の概要について取りまとめている。
●「Japan's Official Development Assistance Annual Report」上記の英語版(内容は要約)。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/