ODA評価 年次報告2019
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28山谷 清志先生(同志社大学教授 日本評価学会会長) 「外交の視点からの評価」を含む報告書は、蓄積すると人と組織を育てる力になる。村岡 外務省では、具体的な検証項目を提示するなど「外交の視点からの評価」の充実に努めています。山谷先生には、平成29年度「外交の視点からの評価」拡充に向けた試行結果調査において有識者検討会の座長を務めていただきました。ODA評価室では、この結果を受けて「ODA評価ガイドライン」(第11版)を改訂しましたが、外交との因果関係を証明するのは難しいなど課題もあり依然試行錯誤を続けています。宮森 「外交の視点からの評価」を第三者に依頼している国が日本以外にあるのでしょうか?山谷 他の国はやっていないですね。そもそも、外交政策全般を主管する部局ではなく大臣官房のODA評価室が外交の視点ということをやらざるを得ないところは、組織的な課題として一つあると思います。しかし、今までやってきたという事実がある。「外交の視点からの評価」を含む報告書、これがどんどん増えていくということは、素晴らしい、なにしろ素晴らしい。これらが外務省という組織の中で蓄積していくと相当強い力になるはずです。人が替わっても次の人が容易に理解できる、それがまた外交の継続に貢献できるのでは。宮森 日本の国内官庁の中で、政策評価を第三者に依頼しているところはあるのでしょうか?山谷 ないですね。その意味でODA評価はかなり特殊で、そこがまたODA評価の強みでもあります。各省の場合、法律で決まっているのでやるしかなく、なかなか評価のノウハウが蓄積しづらい。他方、ODA評価はかなり外部の専門的な力を借り、また専門家がODA評価室の室長として着任するのでかなりレベルが高く、質のいい報告書ができてくる。その意味でも、並べていくと確かに毎年の報告書は「宝の山」になります。村岡 並べるにあたり、ある程度筋を通していくことが大切です。「外交の視点からの評価」をするにあたり、情報源を試行錯誤しながら取捨選択していく。初めの頃のとりあえず形だけという時代から、ここ2〜3年はもう少し本腰を入れていて、次の段階に入ったのではないかと思っています。山谷 おっしゃる通り、次の段階に入っていますね。報告書は、研究者や学者の教育になるし、コンサルタントも育てられる。そういうコンサルタントがたくさんいれば、調査研究評価のレベルも上がる。その意味で、外務省は人を育てています。村岡 ODA評価にあたり、レーティングの難しさもあります。山谷 評価という言葉自身が、日本の社会では非常に神経質に受け取られ、皆さん誤解したり反発したり。ただ、英語で書けば単なるevaluationなので何の問題もないのですけれどね。そこのところを皆さんご苦労されるのだと思います。村岡 我々としては、あくまで価値判断を行う評価者の独立性は犯さないという原則は守りつつ、複眼的な視点でレーティングを含め納得感のある評価となるよう努めたいと思っています。

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