12な広報活動を協働で進めることが肝要である。また、若年層も含めた幅広い年齢層に届くようYouTube等のソーシャルメディアを使ったり、課題ごとに成果をまとめて広報したり、よりインパクトのある広報を実施すべきである。 Ⅱ. ニカラグア 評価結果のまとめ開発の視点からの評価(1)政策の妥当性 (評価結果:A 極めて高い) 対ニカラグア開発協力方針は、ODA大綱(2003年)及び開発協力大綱(2015年)などの日本のODA上位政策、ニカラグア政府の開発計画及び国際的な優先課題と整合している。また、日本は、日本の比較優位性が高い交通インフラ整備(橋りょう・道路整備)に重きをおく政策を実施しており、選択・集中した政策策定が行われていたと言える。(2)結果の有効性 (評価結果:B 高い) すべての重点分野において、確認できた範囲では一定の成果が認められる。特に橋りょう建設に関する協力は成果が大きく、「橋りょうといえば日本の協力」との強い印象を与え、地域住民や他ドナーにも広く認知されていた。また、保健及び教育分野における支援の成果も高かった。更に、日本の技術協力による人づくりのアプローチが、コミュニティの強化に力を入れるニカラグアのニーズに合致し、成果が根付いている側面も確認できた。(3)プロセスの適切性 (評価結果:B 高い) 対ニカラグア開発協力方針は、二国間で十分な協議を重ね、策定されていた。対ニカラグア協力の事業展開計画において、重点分野と個々の協力案件の関連性が不明瞭な点も見受けられたが、2017年の改定時に整理が行われており、これにより協力の方向性が明確になったと考えられる。外交の視点からの評価(1) 外交的な重要性 地域の経済的潜在力とニカラグアの地政学的重要性を考慮し、日本が中米統合機構(SICA)を通じた域内統合支援と共に、域内各国の開発協力を軸とした二国間の関係の強化を重要視していること、また、地球環境問題に関する国際的貢献の必要性などに鑑みて、ニカラグアに対するODAの実施・継続は外交的に重要である。(2) 外交的な波及効果 JICAの専門家やボランティアによる地域に密着した協力を通じ、親日感情の醸成及び友好関係の促進に繋がっていると言える。また、隣国に通じる道路に建設された3つの橋りょうは、中米各国との貿易の促進に繋がったと考えられ、今後中長期的に予想される域内貿易の活性化により、日本企業進出の展開ひいては日本経済促進への影響が期待できる。 評価結果に基づく教訓(1)貧困層への防災支援の成果を高める工夫 貧困地域の住民は災害に脆弱であることから、災害のみに焦点を当てるのではなく、貧困対策と合わせた協力をすることにより、防災能力を高めることができる。また、貧困地域の住民は、防災意識も低いことから、防災意識を高める教育面での協力も合わせて実施することが有効である。(2)日本の高い技術力を生かしたインフラ分野の協力 日本の技術力を生かしたインフラ分野への協力は、対象国において開発効果が高いことに加え、日本企業が請け負うことにより、日本経済への裨益可能性がある点からも有効である。また、日本の高い技術が認識されることにより、日本の信頼及びプレゼンスの向上に繋がる。 Ⅲ. 対コスタリカ・ニカラグア協力からの教訓(1)先方政府のイニシアティブを後押しする協力 先方政府の国家政策における優先順位が高く、政府が強いイニシアティブを発揮している分野に対する協力は、それを取り巻く制度面の整備などが政府によって率先されて行われるため、高い成果に繋がる。また、成果の持続や拡大にも期待できる。例えば、ニカラグア政府が優先している「持続可能な電化及び再生可能エネルギー促進事業」は、政府の強いイニシアティブのもとに推進され、成果は大きかった。(2)米州開発銀行との協調 中南米地域においては、以下の理由から米州開発銀行との協調の有効性が高いことが確認された。1) 資金協力規模の大きい米州開発銀行との協調融資を行うことで、単独に事業を行うよりも規模の大きな協力の実施が可能となり、開発効果の拡大が期待できる。2) 米州開発銀行は中南米諸国の政府と緊密な関係にあり、各国への影響力が強く、先方政府に対する交渉力・説得力の向上が期待できる。3) 日本が二国間で事業を実施するよりも、事業の形成・実施が円滑に進みやすい。4) 案件形成時から連携することによって、フィージビリティ調査などのコストの削減や受入れ国政府にとっての経済的負担及び調整業務などの作業負担の削減が期待できる。(3)戦略的なスキーム間連携 多様なODAスキームを戦略的に組み合わせて協力を行うことは、協力成果を一層拡大・定着させるとともに、効率性も高い。例えば、コスタリカにおいては、無償資金協力による人材育成センターの建物整備と技術協力による人材育成を組み合わせ、ニカラグアにおいては、算数教育の技術協力プロジェクトを通じて作成された教科書や教師向け指導書が、青年海外協力隊の隊員によって児童への教育に活用・普及され成果の定着に繋がった事例が確認された。(4)複数国・地域に対する協力を行う際の留意点 複数国・地域に対する協力を行う場合、テーマに応じ、協力形態を選定すべきである。例えば保健、教育など特定のテーマに関する協力の場合には、同時並行的に協力を実施するよりも、一国で得られた知見や教訓、成果などを第三国に横展開する「広域協力」の形の方が、効率的に成果の発現に繋げやすい。例えばニカラグアで実施されたシャーガス病対策に関わる協力は、中米の周辺国での成功事例をニカラグアに適用する形で行われており、確実な成果に結びついていた。 一方、域内物流改善といった一か国では解決できない地域共通の課題の解決のためには、地域調整機関を窓口として地域全体で取り組む「地域協力」の形で協力すると、域内の基準や手続きの統一化の推進が図りやすくなるといった利点がある。また、各国を代表する高官と接点を持つ機会が増えることで、日本のプレゼンス向上も期待できる。(5)プログラムレベルでの開発目標及び目標値の具体的設定 ODAによる政策レベルの成果を適切に評価するためには、政策目標をより明確化するとともに、個別の協力プログラムの目標に対し、具体的な指標を設定すると有益である。それにより、開発目標の達成や政策の成果が確認しやすくなり、政策の改善において有益である。
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