11 評価の背景・対象・目的 日本とコスタリカ及びニカラグアは、1935年の外交関係樹立以来、第二次世界大戦中を除いて長年の友好関係を築いている。日本はコスタリカへは1973年、ニカラグアへは1964年からODAを供与している。本評価は、日本の両国に対するODA政策及び協力実績を全般的に評価し、今後のODA政策の立案や実施のための提言や教訓を得ること、また国民への説明責任を果たすことを主な目的とする。 Ⅰ. コスタリカ 評価結果のまとめ開発の視点からの評価(1)政策の妥当性 (評価結果:A 極めて高い) 対コスタリカ開発協力方針は、ODA大綱(2003年)及び開発協力大綱(2015年)などの日本のODA上位政策、コスタリカの開発計画及び国際的な優先課題に整合している。また、社会的弱者支援分野における青年海外協力隊派遣や環境分野における地熱発電開発の協力など日本の比較優位性を考慮した政策策定が行われてきた。更に、日本は地熱発電開発などにおいて、米州開発銀行と協力してコスタリカを支援しており、他ドナーとの相互補完性も高い。(2)結果の有効性 (評価結果:B 高い) 政策の重点分野により異なるが、全体としては開発課題に対する一定の成果と政策の有効性が確認された。日本の対コスタリカ支援の中で最も投入金額が大きい環境分野への支援の成果が特に高かった。また、障がい者の自立促進のための法律制定へ貢献する等、地域に根付く協力を多く実施し、社会的弱者支援の成果が高かった。一方、事業展開計画がより論理的に整理されると、政策の目標達成度が示しやすい。(3)プロセスの適切性 (評価結果:B 高い) 対コスタリカ開発協力方針は、二国間で十分な協議を重ね策定されていた。また、技術協力案件の形成に時間を要するコスタリカ・ニカラグア国別評価 <概要>※ニカラグアについては、現地の社会政治情勢及び治安状況に鑑み、現地調査は見合わせた。点は双方から指摘されているものの、そうした点に留意し、関係者間で密接に連携しながら、案件形成が行われていた。外交の視点からの評価(1) 外交的な重要性 日本の協力は良好な二国間関係の構築の礎になっていると見受けられ、今後も良好な関係を維持・強化するために、ODAを引き続き実施していくことは重要である。また、環境分野において国際的な重要国であるコスタリカに対し日本が協力すること、また両国が協力して取り組むことは、気候変動分野での日本の貢献の国際的宣伝の観点からも意義が高い。更に、日本は中米地域の統合を支持しており、その一国であるコスタリカへの支援は域内統合の促進に繋がることからも、コスタリカへの支援は重要であると言える。(2)外交的な波及効果 日本のODAは、両国間の官民レベルでの交流を助長し、コスタリカにおける親日感情の醸成、ひいては友好的な二国間関係の構築の一助になっていると言える。また、三角協力の実施により中南米諸国における日本のプレゼンスの向上にも繋がっている。また、今後、中南米諸国への日本企業の進出が進むと、日本経済の更なる発展に繋がることが期待できる。 評価結果に基づく提言(1)気候変動対策緩和に資する協力の継続 コスタリカ政府の目標(2030年までに2012年比で約25%の温室効果ガス削減)に資する協力、特に必要性が高まっている都市交通分野における温室効果ガス削減への協力を継続すべきである。なかでも、温室効果ガス削減効果が高く、日本の技術力や他国における協力経験を生かせる鉄道などの公共交通機関の拡大・整備に資する協力の可能性を検討することが有益である。(2)地方部活性化支援の強化 地域格差是正が喫緊の課題であるコスタリカにおいて、これまで一部の地域に限られていた活動を、今後は全国的に成果が波及するよう支援を強化すべきである。具体的には、農村地域の生活改善支援制度構築や首都圏で実施してきた中小零細企業振興支援を全国的に普及させることが有効であろう。(3)対コスタリカ協力の経験と課題を踏まえた中所得国に対する開発協力政策の検討 コスタリカは経済発展により中所得国となったが、債務・財政危機や貧困格差、社会不安のリスクを抱え、先進国入りに至らない状況に陥っている。こうした問題は、世界の中所得国も同様に直面している。よって、コスタリカの事例を基に、中所得国特有の課題を整理し、開発協力がどう貢献できるかを分析し、コスタリカ以外の中所得国への協力政策策定への示唆を得ることは有益である。(4)コスタリカをパートナーとした三角協力の推進 現在コスタリカは、三角協力を積極的に進める方針を有している。コスタリカ政府の援助実施能力の強化に資するため、日本はコスタリカをパートナーに三角協力を推進することが望ましい。日本がコスタリカを通じ、他の中南米諸国へ協力を行うことは、言語や文化的背景の類似性から技術・情報の伝達が容易であり、また日本が直接協力する場合に比べ経費及び作業負担の削減に繋がる利点がある。日本の優位性が高くかつ過去の協力で知見・経験の蓄積があり、成果も発現している環境保全分野(特に地熱開発)における技術研修の実施が有効である。(5)幅広い国民層への広報活動 日本のODAについて、事業関係者以外の間でも認知度を高めるような広報戦略が必要である。例えば、日本のODA活動を効果的に伝えるためには、日本の広報戦略をコスタリカ側と共有し、事業実施者や受益者の協力を得て、具体的日本の協力により設置された太陽光パネル(コスタリカ)評価者(評価チーム)評価主任高千穂 安長ノースアジア大学経済学部教授アドバイザー狐崎 知己専修大学経済学部教授コンサルタント株式会社コーエイリサーチ&コンサルティング評価対象期間2006年~2017年(コスタリカ)/2007年~2017年(ニカラグア)評価実施期間2018年7月~2019年3月現地調査国コスタリカ (注)下記は評価チーム作成の報告書(和文)本文に基づき、ODA評価室が作成したものです。全文はこちらからご覧いただけます。https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/les/000496680.pdf
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