ODA評価 年次報告2019
13/33

インドネシア国別評価 <概要>バンダアチェ市と東松島市による相互復興推進プログラムにおける対象コミュニティへのヒアリング評価者(評価チーム)評価主任佐藤 寛アジア経済研究所新領域研究センター上席主任調査研究員アドバイザー賴 俊輔明治学院大学国際学部国際学科 准教授コンサルタント国際航業株式会社評価対象期間2008年3月~2018年12月評価実施期間2018年6月~2019年3月現地調査国インドネシア (注)下記は評価チーム作成の報告書(和文)本文に基づき、ODA評価室が作成したものです。全文はこちらからご覧いただけます。https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/les/000496682.pdf10 評価の背景・対象・目的 ASEAN唯一のG20メンバー国であるインドネシアに対する支援は、同国の安定と発展、ひいては我が国を含むアジア地域の安定と発展に不可欠である。過去10年の間には、開発協力大綱の改定やJICAの実施体制の変化等日イ両国の経済発展にとって重要な動きがあった。本評価は、日本のインドネシアに対するODA政策及び協力実績を全般的に評価し、今後のODA政策の立案や実施のための提言や教訓を得ること、また国民への説明責任を果たすことを主な目的とする。 評価結果のまとめ開発の視点からの評価(1)政策の妥当性 (評価結果:B 高い) 評価対象期間のインドネシアの中期開発計画と日本の対インドネシア開発協力方針において、インドネシア側のニーズと日本側の支援分野は整合している。インフラの質の高さや経験・教訓に基づく環境技術など日本の比較優位性が確認され、国際的な優先課題との整合性及び他ドナーとの情報共有・連携も見られ、高い妥当性が確認された。なお、開発協力に携わる多様な主体との連携は実際には図られているが、開発協力大綱が掲げる「連携の強化」を、国別開発協力方針(2017年)に明確に記載することが望ましい。(2)結果の有効性 (評価結果:A 極めて高い) インドネシアの貧困削減、経済成長、国際社会における役割達成に対して、日本が多額の援助を実施してきたことは、インドネシア側の期待に適うものであった。「経済インフラ整備」、「ビジネス環境整備」、「不均衡是正・地域開発」、「防災」、「気候変動・自然環境保全対策」、「アジア・国際社会の課題」への支援6分野すべてにおいて、日本の強みを生かした協力による開発効果が確認された。(3)プロセスの適切性 (評価結果:C 一部課題がある) 関係者の日常的な業務を通じた緊密なコミュニケーションやオールジャパン年次会議を通じて、援助政策立案から実施まで一貫性を持って行う努力が確認されたが、「現地ODAタスクフォース」という名前の下で、多様な関係者が一堂に会して包括的な議論が行われたという記録は確認できなかった。両国間の要人往来は盛んで、ハイレベルでの累次の政策対話においてODAに関する協議も行われており、また関係省庁間やセクター別の協議も行われていたが、両国関係者が一堂に会する「経済協力政策協議」は2014年以降開催されていない。また、日本のODAは高い成果を上げているが、協力プログラムのモニタリング・評価は実施されておらず、インドネシアの開発目標の達成、課題解決への日本の協力の貢献度合を、明確に確認することは困難であった。外交の視点からの評価(1)外交的な重要性 共に海洋国家であり、民主主義、法の支配、多国間貿易体制といった基本的価値を共有し、互恵関係の強化の重要性が国民レベルにまで浸透しているインドネシアに対する支援は、経済インフラやビジネス環境整備分野において、日本企業の投資促進・経済活動の拡大、日本への資源輸入の安定化を図る上で重要である。防災及び気候変動・自然環境保全対策分野の支援は、防災先進国として国際社会の信頼を獲得し、国際公約を実現する上で重要である。アジア・国際社会の課題対応への支援は、両国による地域の安全保障への取組を促し、日本・地域の安定に寄与する上で、重要である。(2)外交的な波及効果 官民連携事業などODA事業をインドネシア進出のきっかけとした日本企業は少なくなく、ODA事業や官民関係機関の相互連携が、ビジネス環境整備に繋がる例も確認された。ODA総体としての波及効果として、経済連携協定(EPA)の交渉においてODAが重要な外交のカードとして交渉を円滑にしたと考えられる。また、日本に対する信頼の獲得に、ODAと、ODAが触媒となって牽引した民間レベルの経済活動が貢献していることが世論結果から示されており、外交的な波及効果を上げていることが確認できた。 評価結果に基づく提言(1)関係機関との連携強化に関する方針の明確化 インドネシアでは開発における民間セクターの役割が特に大きく、インドネシアに対する開発協力は今後民間セクターが主体となり実施されていくと見られることから、ODAに関係する諸機関の活動を俯瞰した開発協力方針とすることが望まれる。このため、連携の強化を更に推進することを、開発協力方針において明記することを提言する。(2)プログラムレベルのモニタリングを可能とする体系の再検討 新規ODA案件が、成果目標・指標が設定されているインドネシアの開発プログラムに明確に位置づけられる場合は、そのODA案件がインドネシアの開発プログラムが目指す目標の達成にいかに貢献しているかを、インドネシア側の様々な投入との相乗的な効果などを確認しつつ、試行的に検証することを提案する。(3)現地ODAタスクフォースの機能強化 開発協力政策策定に関わる関係者が、現地ODAタスクフォースとして参集し、包括的に日本のODAを通じた協力について協議する定期会合を開催することを提言する。(4)包括的な政策協議の再開 開発協力政策の立案・検討には、相手国側の認識や理解を共有するための協議が必要である。両国関係者が一堂に会して、ハイレベルの政策対話や各関係省庁間、各セクター別協議の結果を俯瞰する、包括的な政策協議を再開することを提言する。

元のページ  ../index.html#13

このブックを見る