政府代表団顧問 WSSDの感想
2002年9月1日
10年前のリオ・サミットの出席し、今回再び地球規模でのサミットへの参加ができたこと、特に今回は、政府団顧問の一員として政府間交渉の現場に立ち会うこともできた。また、各国のパビリオンやNGOのブースなどを訪れ、多くの方々とお会いする中で、この10年の間のNGOの活躍の拡がりや、公害や自然破壊などいわゆる環境問題だけでなく、途上国における貧困や女性の地位向上など多くの問題が21世紀まで持ち越したということを実感した。と同時に、これは、バリでの第4回準備会合のマルチステークホルダー対話会議でも感じたことであるが、政府、行政だけでなく、市民やNGO、企業など様々な関係者が力をつけ、重要な役割を担っており、持続可能な開発の実現に向けて、関係者の良好なパートナーシップがいよいよ不可欠になってきているなという思いを深くした。
世界の地方自治体の会議である「ローカルガバメントセッション」の議論に参加し、また、今回とりまとめた「地方自治体宣言」を見ても、このような認識は、世界共通のものであり、特に、地方自治体の責任は重く、具体的な行動が求められていることを感じた。
北九州市は、産業都市としての発展の中で激甚公害を経験し、市民、企業、研究者、行政という関係者が対立するのではなく、地域社会のパートナーシップと関係者それぞれの多大な努力によって克服したという原点を持っている。そして、この経験をアジアの諸都市と共有し、地球規模での環境改善に役立てるため、国境を越えた都市間環境協力を進めてきた。小泉総理大臣と顧問の懇談の際にも、総理からサミットでこの経験を世界に伝えてきてほしいとの言葉をいただいたが、今回、ローカルガバメントセッションや、日本パビリオンでのパネルディスカッション、そして、各方面の様々な方々との対話の中で、その使命を少しは果たすことができたのでは・・・と思っている。
そして何よりもうれしいことは、北九州市の地域社会のパートナーシップによる環境改善をモデルとして、途上国の地方自治体の支援を行う国際的な仕組み、ネットワークであるESCAPの「北九州イニシアティブ」が、ここ数日の政府間交渉の中で、サミットの成果である「実施計画」に明記されることが合意されたことである。これは、北九州市民の誇りであるだけでなく、地方自治体の重要性を、国連の首脳レベルの会合で認められたという点で大変意義深いものと感じている。
思うに、リオ・サミットから10年が、21世紀を環境の世紀へとするための助走期間だったとすれば、このサミットは、21世紀の持続可能な開発の実現に向けた跳躍の始まりである。北九州市長として、サミットの成果文書に、その名前を記されたモデル都市としての責任を感じ、世界の期待に応えるべくさらなる努力をしてゆきたい。
WSSD政府代表団顧問 末吉興一(北九州市長)
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