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ジョハネスブルグ会議とメジャーグループ


アフリカ日本協議会 林 達雄
 8月27日に開かれた、農業分野のタイプ2会議に農林省・大森審議官とともに参加した。大会場の前方上段に司会者団、下段には女性、若者、NGO、国連、先住民、農民、企業、労組、科学者など10のグループの代表者が並んでいる。メジャーグループと呼ばれる多様な人々の意見を聞きながら、政府代表団は意見を述べ、決定を下す。リオ会議に始まったこうした方法は今回の会議の大きな特徴である。
 まず、司会者が『幅広く農業を捉え、それぞれの立場から過去10年を振り返ろう』と会議の方向を提案する。農業、小規模伝統農業から大規模企業経営まで多岐にわたり、水、気候(干ばつや洪水)など幅広く環境問題の影響を受け、貧困、エイズ、貿易のあり方などの社会問題と密接に関係するからである。『企業』が自分たちは世界の農業の担い手であると同時に生産者と消費者の結び手であると語る。『女性』の代表者は女性こそが途上国の農業の担い手であることを述べ、アグリビジネスの進出により自分たちの農業が圧迫されている。また、遺伝子作物により新しい環境汚染が進行していると主張した。先住民は『私たちは多様性の守り手だ』と述べ、農業に欠かせない種(遺伝子)が特許によって独占されていることを訴え、拍手を受けた。大森審議官は日本政府の発言時間がなかなか回ってこないことに苛立ちながらも、『こうしたインタアクティヴなやりとりを聞いているのは面白い』と感想をもらした。
 メジャーグループは、各国政府に多様な立場から、決定への選択肢を提供する貴重な存在である。彼らの中には、実施文書を作成する会合に政府代表として参加している人もいる。彼らは、会議の成り行きを広く世界に伝え、会議の透明性を確保してくれる大切な存在だ。何より彼らと接しているととても楽しい。しかし、ときに恐い存在でもある。実施文書の会合も大詰めに差しかかった頃、私はこれまで親しくしていた人たちにお叱りを受けた。600人を超える代表団を送り込みながら、『先住民』や『農民』の立場を理解しない日本政府への抗議であった。本会議場では丁度、『生物の多様性』がG77の意向が反映されないまま合意され、リオの予防原則を守ろうとするEUが孤立していた。メキシコの政府代表は次の言葉を残し、会場を去ったという。『先進国や企業は、先住民が守ってきた遺伝子資源を奪っておきながら、放置されている。リオの会議からいったい何が前進したのか。今回の会議は失敗に終わるだろう。』一方、リオの予防原則は、未来の安全を脅かす遺伝子開発が進むいまこそ重要である。南部アフリカの飢饉に対して、米国は遺伝子組み換えトウモロコシを援助しようとしている。日本はアフリカのことは考えていないのかとも言われた。それは真摯に受け止めざるをえない貴重な助言であった。
 日本代表団の多く人々は不眠不休の努力を続けている。しかし、本会議での日本の決定は、未来の子供たちやアフリカの人々の健康や生活を守る方向にないかもしれない。考えてみれば、私たちNGOからの顧問は、日本政府代表団の中のメジャーグループである。多様な立場からの助言に尽力すべき立場である。重い義務と責任を改めて感じた。

 WSSD政府代表団顧問 林 達雄(アフリカ日本協議会)


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