外務省 English リンクページ よくある質問集 検索 サイトマップ
外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
トップページ 外交政策 地球環境
地球環境


ヨハネスブルグ・サミット
小泉総理大臣
内外記者会見

英語版

平成14年9月3日

小泉総理冒頭発言

ヨハネスブルグ・サミット 小泉総理大臣 内外記者会見  私は、持続可能な開発の促進について日本として何をすべきかという課題に世界の指導者と共に取り組むためにヨハネスブルグ・サミットに出席した。今回のサミットは、議長であるムベキ南アフリカ大統領の強いリーダーシップのもとに協議がまとまり、明4日午後に関連文書を正式に採択し、成功裏に終了するものと思う。このような成果を達成できることをうれしく思う。
 日本には天然資源がない。そうした中で今日の発展を成し遂げた最も大きな原因の一つに教育があり、人こそが国の発展に最も重要であると言った。発展という成功の歴史の陰に、いろいろな損害を無視するわけにはいかない。この成長過程での公害問題を今後どう克服して環境保護と経済発展を両立させるか。これは単に日本だけの問題ではない、先進国の問題でもない。すべての世界、すべての国民、すべての人類に通じるものである。日本として成長の過程での成功例と失敗例を提示して、是非とも発展途上国のみなさんに日本の犯した失敗の轍を踏んでもらいたくないと強調した。また、日本が京都議定書の作成、締結について一貫してリーダーシップを発揮して、その理解、協力を求めていく。このような考え方に沿って、国際援助の場でも京都議定書の早期締結と温暖化対策の評価を訴えた。
 貧困の削減のためには、まず当事者である途上国自身が良い統治を実現し、貿易・投資の自由化・促進を図りつつ、自助努力により開発に取り組むことが不可欠であると考える。国際社会は対等なパートナーとして支援の手を差し伸べることが重要である。その国には、その国にとってより良い方法がある。外国ではうまくいっても、その国ではうまくいかない点もあるのではないか。その国での自助努力、自主性を尊重しながら、各国が援助の手を差し伸べることが重要である。これが日本の大事な援助哲学である。我が国の考え方は、大筋として各国の理解・賛同を得ることができたと思う。サミットの成果に反映されることとなり、うれしく思う。
 ヨハネスブルグ・サミットは何よりも具体的な行動を指向すべきである。そこで日本として20億ドルの教育援助や5年間で5000人の環境関連人材育成など、いわゆる小泉構想を今後着実に実施していく決意であることも表明した。
 このサミットの機会をとらえて、ムベキ南アフリカ大統領及びアナン国連事務総長とも個別に会談し、環境と開発を巡る問題についても有意義な意見交換を行うことができた。「アフリカ問題の解決なくして、世界の安定と繁栄はない」、森前総理も機会あるごとにこのように表明した。今後もこの森内閣が表明したことにつき、日本としてもできる限り自ら持てる力を持続可能な開発の達成のために講じていきたい。そして世界各国と協力しながらお互いが所期の目的を達成できるようにそれぞれが努力することが大切であると改めて確信した。この会議を成功裏に導くことにご尽力いただいたムベキ南アフリカ大統領、そして関係各位のご努力、ご尽力に心から敬意と感謝を表明したい。

質疑応答

(質問)総理はかねてから環境保護と開発の両立を強く訴えていきたいと言われているが、環境保護と開発の両立が本サミットにおいて様々な場で議論されていた。かかる観点から、今一度このサミットの全体的評価如何。また、昨日のスピーチでも言及されたが、人造りは日本の援助哲学の柱である。人造りの観点から、日本の考え方が国際社会に理解を持って受け入れられたか、総理スピーチに対する各国首脳の反応に対する総理の受け止め方如何。

(小泉総理)環境保護と経済発展は、現在の日本における、小泉内閣でも最大の政治課題の一つである。環境保護と経済発展に関しては、各国様々である。
 振り返ると、50年前自分が10才の子供の頃は、日本の水道は、各地域が井戸に頼っていた。私も井戸の水を毎日くんでいた。夏になれば冷たい井戸で果物を冷やしたり、冷蔵庫の代わりとなった。わずか50年前のことである。それが今やIT時代である。すでに日本は公害の提言をしたが、現在では電動電池車の実用化に向け、政府、民間をあげて取り組んでいる。石油エネルギーに頼らないで、究極のクリーン・エネルギーという燃料電池、さらにはバイオに取り組んでいる。今までは木材を捨てたり、プラスチックを捨てていた。しかし、こうして捨てられていた木材、プラスチックを組み合わせて、住宅用資材に変える技術を懸命に実用化しようと取り組んでいる。そうすれば外国から森林を伐採しないで木材を輸入しないで済む。同時に燃料電池一つにしても、天然ガスや石油資源を使わないで、米の麦藁が燃料電池の原料になろうとしている。日本では、食糧は豊富に手に入るが、残飯について、日本の役所では再生して農業の肥料にすることに取り組んでいる。これらは、かなり先進国の分野での環境保護と経済発展、いわば環境保護が経済発展の阻害にはならないし、阻害してはならないことを示している。科学技術によって、むしろ環境を保護することによって経済発展をするという発想で取り組んでいる。その国にはその国のやり方がある。水道整備一つにしても、井戸を掘った方がいい国もある。いろいろな国がある。従って、日本の過去の例、成功例と失敗例をその国の実情に応じて今後日本として手助けしたい。
 人造りについては、今回のサミットでも発言したし、去年のジェノバ・サミットでも発言したが、日本は100年前、また第二次世界大戦の敗戦後、むしろ今の発展途上国以下の貧困に苦しみ、借金をした。しかし、今日まで発展したのは、資源がなく、エネルギー資源を90%以上外国に依存しながら、今や借金を返すことができて、むしろ資金を提供する国になったのは教育のおかげである。100年以上前から、日本政府はすべての小、中学校等、必ず学校に行きなさいとして、教育を重視してきた。第二次世界大戦後も然り、小、中学校はもちろん、さらに上級学校に行く場合でも、たとえ途中で両親が失業し、教育費を出せない場合でも、子供が教育を受けたい場合には奨学金が支給される。将来仕事に就いて自分で給与を稼いだ時にその奨学金を徐々に返せばよい。教育を受けたい人にはすべて教育の機会が与えられる。それほど日本は教育に力を入れている。貧困削減は大事であるが、その根底に、読み、書き、そろばんというか、文字が読めない人がほとんどいないということが国造りに大事である。こういうものを食べたら病気になる、こういうところに行ったらあぶない等、文字が読めないとわからない。このように教育を重視すべき点で、以上のことを私は主張してきた。教育はあらゆる発展の原動力であり、教育を受ければ機会が広がる。目先の貧困削減も大事であるが、もっと深い意味での教育の重要性はどんなに指摘してもし過ぎることはない。そのような観点から、教育の重要性につき去年のサミットでも話し、今回も話した。

(質問)京都議定書に関し、加政府や米国政府の見解に対するコメント如何。また、一部のNGOは、日本がエネルギーや衛生の問題で米国と妥協する等、米国寄りであるとして非難しているが、見解如何。

(小泉総理)私は、日本として、米国と協力することばかりではなく、先進国、発展途上国、世界各国と共通するルールのもとに環境問題に取り組んでいくことが必要であると思う。米国も、現在水の問題について積極的な協力を必要としている。今回のサミットにおいても、米国のみならず、発展途上国、EU等、全世界と協力する必要があるとの観点から、日本は関係国と経済開発の問題、さらには京都議定書の問題にも取り組んできた。これからは、全世界が共通したルールのもとに参加できるような体制を確立することが大事である。

(質問)今回のサミットとは少し離れた質問になるが、国連のアナン事務総長からも素晴らしいアイディアだと評された、総理の北朝鮮訪問についてお聞きしたい。総理は、拉致問題の解決を叶わずしての国交正常化交渉は有り得ないと述べているが、拉致問題の解決に対する、総理の具体的な取り組み姿勢と考え方如何。

(小泉総理)私は総理に就任してから、北朝鮮側に対して様々な場において、拉致問題は日本国民にとって重大な問題であり、日本としては、これを棚上げにしては、正常化交渉に入るわけには行かないということを、水面下の交渉においても、度々表明してきたところである。
 ようやく今回、今月中旬の17日、北朝鮮の金正日総書記と会談することとなったが、これは日本と北朝鮮との正常化交渉が、早期に再開できるか否かの可能性を見極めるために行く。その際に当然、拉致問題はテーマになるし、その他色々な問題もテーマに上ってくると予想される。総括的、総合的に見ても、日本と北朝鮮の関係は、日朝関係のみならず、朝鮮半島全体、或いは、アメリカ、韓国、中国、ロシアとも密接に関わる大きな問題である。
 私は総合的な観点から、北朝鮮の金正日総書記が日本との国交正常化に取り組む意志があるのか否か、そして、北朝鮮として国際社会の責任ある一員になることが、北朝鮮、日本、世界にとって有益であると真剣に話し合うために、金正日総書記との会談に臨みたいと考えている。

(質問)日本の出生率を高めるために、どういう指示を各省庁に出しているのか。また、どういう指示を出したら良いのか。総理の見解如何。

(小泉総理)日本の少子化の問題は、社会保障の分野になり、日本の暮らしのあり方に関わる大きな問題になっている。私はそういう観点から、少子化対策に真剣に取り組んでいるところであるが、これは大変時間のかかる問題である。
 50年前ぐらい前であろうか、いちばん出生率が高かった頃、その頃は1年に、日本人は大体270万人ぐらいの赤ちゃんが生まれていたのではなかったであろうか。最近数年、1年間に生まれる数が120万人を切った。そしてなおかつ、当時は人生50年、平均寿命50歳、今や平均寿命は80歳を越えた。
 そうなると、これから年金サービスにしても、医療サービスにしても、介護サービスにしても、受ける世代はどんどん増えてゆく。逆に若い世代、子供の世代、支える世代はどんどん減ってゆく。これは大きな問題である。そういう観点から、私は今回、日本の男女共同参画時代。私の子供の時代は、男の仕事は表に出てやる仕事、女の仕事は家事・育児が仕事という観念が、私の親の世代では普通であった。が、今や全く違う。
 男も女も、仕事も一緒にしよう、家事も一緒にしよう、育児も一緒にしよう、というのが今の日本社会である。そして、やはり子供が生まれると、核家族のために子供を世話してくれる、保育所あるいは幼稚園、介護施設と言った、いろいろな暮らしの基盤になる施設を充実していく必要がある。そういう面に取り組んでいるところである。
 男女共同参画時代、そして人生80年時代、高齢者がどんどん増えて、若い人が減っている、そういう総合的な面から、活力を失わず、日本が経済活性化できるような構造改革はどうあるべきか、という観点から取り組んでいる。
 なかなか一朝一夕には行かない。若い人の考え方もだいぶん変わってきており、子供を産んでくれと言っても、なかなかそう言うわけには行かない。
 しかしこれは、気の長い取り組みであるが、粘り強く、社会の大きな変化、観点の変化に対応できるような措置をしていく必要があると考えている。
 答えは一つ、という訳にはいかない問題であり、大変難しい問題であると考えている。

(質問)持続可能な開発のために20億の投資を行うとの由であるが、最貧国に、或いは、どういう領域に、この投資が配分されるのか詳細如何。
 アフリカの最貧国には子供たちがたくさんいる。戦争に明け暮れた国の子供たちは、教育を受けることができずに働いている。そう言った子供たちの大半は、もちろん、大人になっても大学にも行けず、或いは専門教育も受けられず、コンピューター技術や電気技師等の特定の技術も身につけることができないでいる。そういう観点から、アフリカの教育の分野に於ける、日本の役割如何。

(小泉総理)日本としては、既に「小泉構想」を発表しているところであるが、まず、教育の問題及び「人造り」の問題については、各国で事情が異なる。各国がいちばん必要としている支援は何か、ということを、日本は探ることができるし、聞くこともできる。国によって、どういう手引きで援助の手を差し伸べて欲しいかは異なる。その国に必要な支援を行う、それが日本の基本精神である。
 これは「人造り」の分野、医療の分野、食糧問題の分野、水の問題の分野についてもそうである。
 また、環境問題、森林資源の問題、或いは、国によっては生物の多様性の問題等々、国々によって様々な侵害があることは充分承知している。故に、重点分野には今申し上げたような、「人造り」や医療、保健衛生、水の問題等いろいろあるが、その国に最も必要な、その国が自らの力で立ち上がって行く為にはどんな支援が必要かをしっかりと聞き、その国に必要な支援、援助を行っていくのが日本の立場である。その点をご理解頂きたい。

(質問)オーストラリアは京都議定書の批准を拒否したが、これに対する総理の見解如何。

(小泉総理)私は、オーストラリアのみならず、世界各国が共通したルールの下に、環境保護に立ち上がって頂きたいと考えている。
 その面に於いて、私は、日本として、京都の名を冠した京都議定書の批准、早期発効に全力を尽くしてきたところである。
 しかしながら、環境保護、経済開発の分野は、全世界の参加が望ましい。そのために、今後も粘り強い日本の働きかけ、各国の働きかけが、未だ京都議定書に参加しない国々に対しても必要である。それぞれの国が環境保護を重視しなくて良いということはない。
 しかし、各国の事情も鑑み、可能な限り、先進国も発展途上国も、全世界が共通したルールの下に、環境問題及び経済発展問題に取り組むことができるようなルールの確立に向けて、今後とも日本は粘り強く真剣に努力を続けてゆく所存である。



目次


外務省案内 渡航関連情報 各国・地域情勢 外交政策 ODA
会談・訪問 報道・広報 キッズ外務省 資料・公開情報 各種手続き
外務省