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WSSD初日の感想 2002年8月26日 政府代表団・顧問としては最も早くヨハネスブルグ入りしたので、このページの初日を担当することとなった。ヨハネスブルグには、10年以上前に、ビジネスマンとして数回来たことがあるが、新生・南アフリカになってからは初めてで、会議場周辺は街並みが一変し、千葉に出来た、幕張国際会議場周辺とよく似た印象を受けた。最も変わったのは、人々の顔が明るくなったことだ。差別のあった時代には、見るに見かねた、人対人の差別待遇が行われていたが、それが表面的には姿を消した。滞在先のホテルのメイドと互いに気さくに話が出来るようになったことは、対人関係の緊張を維持するストレスから開放され、ヨハネスでの滞在が10年前よりは、気分的に楽になった。「持続可能社会」の実現への第1関門をクリアした、ここ南アフリカでの、「持続可能開発サミット」が成功することを期待したい。今日26日は、代表団顧問の最初の仕事として、「生物多様性とエコシステム」という全体会議に日本政府の代表として、環境省審議官と並んで座らせて頂いた。このセッションは会議と言うよりオープンディスカッションと言ったほうが良いと思うが、ビジネス界・市民団体・女性・ユース・労働界などの人が、生物多様性の維持保全に対するアクションの必要性をアッピールし、政府に対する施策を要求したのに対し、これに各国政府が答える形の会議であった。生物多様性と言う言葉だけ見ると、我々に取って身近に感じないかも知れないが、生物多様性の喪失が進んだ今、環境と社会に対する影響は今や計り知れないほど大きい。陸上での生物多様性の中核である、森林の量の減少と質の劣化は、多くの災害を引き起こし、水資源の枯渇や砂漠化を進め、炭酸ガスの吸収機能も喪失する。海洋での生態系ピラミッド(食物連鎖)の崩壊は水産資源の枯渇となり、これに依存する多くの人々の生活を脅かす。今日発表された多くの意見・提言は、まず我々一人一人が、生物多様性維持保全が、如何に「持続可能社会」実現のための中核問題であるかを認識し、政府と国連はより広範かつ強力な施策を進めるべし、との結論のように見えた。生物多様性に関連する資源が、商業目的で使われる時、その価値が余りにも低く評価され、かつこれを生産・供給する側の、少数民族や地域住民・女性への公平な価値の分配・還元が十分でないとの意見も多かった。 3時間に及ぶ会議は私に取って極めて有意義であったが、議論だけでなく、この議論を行動に結び付けなくては意味がない。今回のサミットの焦点は「開発」か「環境」かだ。衆目の見るところ、リオ+10と言われる今日まで、生物多様性に関してはプラスでなくマイナスの方向に急速に進んでいると言わざるを得ない。生物多様性と同時並行して行われた「グローバリゼーション・資金・貿易」の「実施文章」作成の会議では、「開発」と「環境」は相互に補完することが可能とするドーハ宣言を優先させ、環境保護条項が弱められつつあると言う。環境NGO出身の私としては、代表団顧問として日本政府のポジションを「環境」重視の方向に持って行く任務があるのだが、今回始めての「顧問」の制度がどう生かされるか・生かすか、政府側も私も、まだ暗中模索の段階である。 FoE Japan 代表理事 岡崎時春 |
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