![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
![]() | ||||||||||
|
トップページ > 外交政策 > 過去の記録 |
![]() |
平成12年3月
外務大臣
河野洋平
1.国際社会の課題モノ、カネ、ヒトといった生産要素の国境を越えた移動は、今に始まったことではない。しかし、現在国際社会が経験しているグローバル化は、革命的な情報通信技術の進展と相まって、その速度も規模も比べようもないものになっている。10億人(OECD諸国の人口)であった市場経済圏は冷戦の終結により一挙に40億人を越え、情報通信技術の進展により金融や情報という分野のネットワークが飛躍的な拡大と深化を見せ、経済が一層活性化する一方で、ネットワークの一部に問題が生じれば瞬時にそれがシステム全体に伝播しうるものともなった。そして、97年夏に始まったアジア通貨・経済危機は、98年夏以降にはロシア・ブラジル等の他の新興市場諸国に波及し、世界経済全体を大きく揺るがす事態に発展した。
2.研究会の発足
こうした状況下、国際的にも経済・金融システムの改革論議が高まり、また2000年の日本におけるサミットも念頭において、本研究会は高村外務大臣の下で外務大臣の私的勉強会として発足した。その後、99年2月から12月までこの研究会が行われている間に世界的な経済危機は収束から回復に向かった。私は、途中から本研究会を引き継がせていただいたが、行天座長のもとに様々な分野の方々にお集まりいただき、我が国として、いかなる国際経済システムを構築すべく努力していくことが望ましいのか、アジア・太平洋地域において如何なる取り組みが必要であるのか、そのために日本は如何なる貢献を行うのか、金融、貿易、投資、開発という国際経済の根幹をなす様々な分野から、総合的な考察を行ってきた。こうした考察の成果を纏められた委員の方による報告は大変示唆に富み、また、行天座長の建設的な総括意見にはその議論の要点が簡潔に纏められ、非常に興味深く拝読した。
3.今後の課題
アジア通貨・経済危機の発生の背景は行天座長の総括意見に纏められている。グローバル化によって企業の経営と国家の経済運営も国際競争に晒され、情報技術革命の進展で透明性と説明責任というガバナンスの重要性が高まっていた中で、東アジアの政府と企業がこの流れに十分な対応をとっていなかったため、市場の違和感と不信が高まってアジア経済危機の発生に至った。したがって、V字型と表現される経済的回復を実現した後も、経済危機に襲われた各国にとって、ガバナンスを改善するために透明性と説明責任を確立する努力を継続していくことは極めて重要である。勿論、全ての国際経済・金融システムへの参加者にとってこうした努力が不可欠であることは言をまたない。
我が国は、経済危機に見舞われたアジアの国々の苦しみを理解し、新宮沢構想等を通じて協力を行ってきた。危機が去った後も、その再発を防ぎ、危機に対する抵抗力を強化するにあたってのアジア諸国の課題と日本の役割を探ることを目的として、奥田ミッションを派遣するなど努力を行ってきた。ガバナンス改善のための改革努力の重要性については、我が国自身もこれを認識して抜本的な改革に取り組んでいるところでもあり、今後もアジア諸国ともその認識を共有しながら、21世紀の世界経済の大きな柱たるべきアジアの繁栄のため、ともに努力していきたいと考えている。
また、本研究会では、アジア経済危機の経験から、危機を防止しそれに対処するための地域的な協力の強化の必要性についての認識が共有された。特に、政策の相互監視制度の強化が重要であり、こうした具体的課題に対して我が国が積極的に指導力を発揮することが求められていることについては認識が一致した。外務省としては、こうした点を引き続き肝に銘じた上で、経済面における地域内の協力を如何に強化すべきか、本研究会の議論を踏まえながら、関係者と引き続き検討していきたい。
4.結語
現在グローバル化と情報通信技術の進展はますます加速化しており、国際的な環境も大きく変化している。こうした中、本年は我が国が議長国として九州・沖縄サミットが開催されるが、これは7年振りにアジアで開催されるサミットであり、グローバルな観点に立ちつつも、アジアの視点を十分踏まえてG8間の議論を進めていきたいと考えている。特に、グローバル化と情報通信技術の急速な進展の中で起きたアジア経済危機の教訓はG8でも共有されるべきであり、本研究会における議論も、G8各国との議論において大いに参考になるものと考えている。
勿論、国際経済・金融システムに係わる問題は、サミットに限らず我が国が取り組んでいかなければならない課題であり、この報告書の示唆に富む意見を参考としていきたいと考えている。
最後に、多忙な中、研究会座長をお引き受け下さった行天国際通貨研究所理事長を始めとする研究会委員のメンバーの方々、そして本研究会の事務局をして頂いた国際通貨研究所のスタッフに対して、心より謝意を表したい。
目次 |
| ||||||||||
![]() |