平成11年版外交青書の刊行にあたって
幕を閉じようとしている20世紀において、人類は2度に亘る世界大戦の惨禍と40年にも及ぶ冷戦による脅威に晒されましたが、同時に、運輸・情報通信から原子力・宇宙関連分野に至るまで科学技術の目覚ましい発達とそれに支えられた経済の飛躍的な発展を経験しました。
現在、私達は発展の果実とも言うべき豊かさを享受していますが、日本が位置する北東アジアを含め、世界においては依然として大量破壊兵器の開発や局地的な紛争の発生といった安全保障上の懸念が存在し、また、環境破壊や国際テロ等が人類全体を脅かすに至っています。絶えず変動する国際社会において、日本の国益を実現するための外交努力はますます広範に亘りかつ複雑化しています。このような状況の中で我が国は日本の安全と繁栄の確保と密接不可分の関係にある世界の安定と繁栄の実現に向けて、国際社会において責任ある地位を占める国にふさわしい役割を果たしていく意思と能力を改めて示していく必要があると言えましょう。
私は就任以来、「リーダーシップのある外交」を展開すべく心を砕いて参りました。これは、国際舞台において日本が様々な場面で適切なイニシアティヴをとって各国を先導すると同時に、そのような積極的な外交活動の基盤となる内政面においても我々政治家がリーダーシップをとり、国民の皆様の深いご理解と力強いご支援を得ることが重要であるとの信念を表したものです。ここに刊行します外交青書が、国際情勢と日本の外交活動に対する皆様のご理解を深めるための一助となることを切に願っております。
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