第2章 地域別に見た外交


(2)治安情勢

(イ)イラクの政治プロセスはおおむね順調に進んできたが、他方で、治安状況は依然として予断を許さない状況が継続している。テロ、治安事件の件数が増加しているとともに、2月22日にサーマッラーでシーア派の聖廟爆破事件が起きたことを契機に、宗派間対立(主にスンニー派対シーア派)が顕著となりつつある。11月23日にバグダッドのシーア派居住地区サドルシティーで発生した連続爆弾テロによる死者は200人を超え、2003年の対イラク武力行使後、最大の死者数となった。

(ロ)イラク政府はバグダッドでの集中的な治安対策の実施、国民和解計画の策定等、事態の改善に向けて懸命の努力を払っている。またイラク治安部隊は2005年1月の約13万人から約32万人まで増強されている(11月21日現在)。治安権限の多国籍軍からイラク政府への移譲についても、7月13日にムサンナー県、9月21日にジー・カール県、12月20日にナジャフ県で実施されるなど着実に進んでいる。

(ハ)11月5日、サダム・フセイン元大統領に対し、1982年のシーア派村民大量殺害事件で人道に対する罪を犯したとして死刑判決が下され、12月26日に判決が確定し、同30日に死刑が執行された。日本は、イラク政府が、これを機会に、国民融和や治安改善といった困難な課題を乗り越え、安定した国になることを期待する旨のコメントを発表した。




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