第2章 地域別に見た外交


(5)米国の対外関係

 ブッシュ大統領は第2期ブッシュ政権発足に当たっての就任演説と1月の一般教書演説で、外交の重要課題としてテロとの闘いにおける人間の自由の力が果たす役割を強調した。このように2005年の米国の対外政策では自由、民主化の促進に焦点が当てられ、イラク、アフガニスタン、パレスチナ等で民主的選挙が行われる中、特に民主主義の拡大を通じた中東地域の安定化が主要な課題の一つとなった。また、1月にライス国務長官が新たに就任し、2月に就任したゼーリック国務副長官と共に多くの外遊等を通じ、精力的に外交を展開した。

 まず、テロとの闘いに関しては、引き続き米国の主要外交課題であり、同盟国や友好国との協力を継続した。また、大量破壊兵器の拡散問題については、PSIを通じて70か国以上と協力し、リビアとの間では大量破壊兵器の放棄に関して協力するなど積極的な外交を展開している。

 イラクについては、その民主化プロセスを積極的に支援してきた。1月の移行国民議会選挙の際に、米国は同選挙の円滑な実施のために米軍の規模を約15万人に増員するなど治安の確保に努めた。10月15日の憲法草案に関する国民投票や12月15日の国民議会選挙も、同国の民主化に向けた重要なステップとして重視している。また、米国は連合軍と共にイラク軍・警察・治安部隊の訓練にも力を入れ、イラクが自らの国を自ら守ることができるよう支援している。同国の復興支援に対しても最大の貢献を行ってきており、特にインフラ再建の面では、電力・水・衛生・通信・交通等の分野で大きな成果を上げている。

 アフガニスタンについては、9月18日に議会選挙が実施されるなど民主化が進展する中で同国に対する支援を継続し、テロ対策のほかにも地方政府の能力向上を目指した地方復興チーム(PRT:Provincial Reconstruction Team)を通じた協力や麻薬対策等に取り組んだ。

 中東和平では、ライス国務長官が11月に積極的な仲介努力を行い、ガザ-エジプト間のラファハ検問所の国境通行を再開させるなどの成果を上げた。シリアが、この地域の平和の機会を破壊しようとしているテロリストに対して、その領土とレバノンの一部を使用することを許しているとして、米国はシリア政府に対してテロ支援をやめ、自由への扉を開くことを要求している。

 イランについては、米国はEU3(英国、ドイツ、フランス)の交渉を支持し、イラン政府に対してウラン濃縮計画やプルトニウム再処理をあきらめ、テロ支援を中止するよう外交的圧力をかけている。

 アジアでは、日本、韓国、オーストラリア等の同盟国や友好国との緊密な協力関係を引き続き強化した。中国とも北朝鮮に関する六者会合、アフガニスタンとイラクの復興、テロとの闘い、麻薬等の問題において協力関係を拡大し、中国が国際秩序を責任をもって支える支柱(responsible stakeholder)として建設的な役割を果たすよう促すなどの外交努力を行った。インドについては、シン首相が7月に訪米し、「戦略的パートナーシップの次なるステップ」に合意し、民生用原子力協力に関する合意が行われるなど関係強化が図られた。

 北朝鮮を巡る問題について、米国は引き続き、日本や韓国をはじめとする関係国と緊密に協力しつつ、北朝鮮の核問題の平和的解決を目指し外交努力を継続した。ブッシュ政権は日本、韓国、中国、ロシアを含めた六者会合の枠組みにおける交渉で対処し、同枠組みを離れての北朝鮮との直接的な協議には応じないとの立場を堅持しつつ、外交的なプロセスを通じ、国際的な検証の下で北朝鮮が完全に核兵器プログラムを廃棄することを追求している。また、拉致問題については、日本の立場を一貫して支持している。

 2003年のイラクへの武力行使の是非を巡って米国と対立が目立った欧州との関係では、2月にブッシュ大統領がベルギー、ドイツ、スロバキアを訪問し、EU25か国首脳との会談やNATO首脳会談等を行った。同大統領と欧州各国首脳は、価値観を共有する米欧関係の重要性について認識を共有し、イラク支援等についても協力していくことで一致した。


 TOPIC

「京都迎賓館」オープン

We were so honored to stay at the Kyoto State Guest House. It's a fantastic facility. I know the folks of this community have great pride in the guest house, and you should.”(私たちは、京都迎賓館に滞在できたことを光栄に思います。京都迎賓館はすばらしい施設であり、京都の人々が大変誇りに思っていることでしょうし、また、それも当然のことです。<仮訳>)(英文は米国・ホワイトハウスホームページから引用)



 11月に京都迎賓館に滞在したブッシュ米国大統領は、京都迎賓館のすばらしさに感激し、政策スピーチ「京都で自由と民主主義を語る」の冒頭で、草稿にはなかった言葉(下線部)をその場で加えました。

 日本の伝統的な技能である数寄屋大工や左官、日本庭園の造園技術等を随所に活用した和風のつくりで、歴史・文化に根ざした空間を感じられる佇まい。海外からの賓客に日本の雰囲気に浸っていただき、幅広い対日理解が醸成されるよう企図されています。

  今後も、はるばる訪問された外国の要人が日本のもてなしを体験することにより、国際社会で日本がふさわしい地位を得、責任を果たしていくために、古都・京都の和風迎賓館が、その存在意義を発揮することが期待されています。




▲中庭の池にかかる廊橋の上で、鯉の餌やりに興ずる小泉総理大臣とブッシュ米国大統領夫妻(提供:内閣広報室、撮影:総理大臣官邸写真室)



京都迎賓館での主な行事

4月 開館披露式典(小泉総理大臣、河野衆議院議長、扇参議院議長、町田最高裁判所長官等が出席)

5月 ASEM第7回外相会合

10月 日・パラグアイ首脳会談

11月 日米首脳会談(ブッシュ大統領が宿泊)




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