第2章 地域別に見た外交


【地域経済統合の進展と域外国との経済関係の強化】
 米州においては、1990年代初頭より、北米自由貿易協定(NAFTA)や南米南部共同市場(メルコスール)、アンデス共同体等の多国間の地域経済統合に加え、数多くの二国間・地域間の自由貿易協定(FTA)が締結され、FTAをはじめとする経済連携の強化を通じた経済発展や国内の構造改革を促す戦略がとられてきたが、現在もその傾向が続いている。
 キューバを除く、北米・中南米地域全体を包摂する米州自由貿易地域(FTAA)創設に向けた交渉は、2003年11月に2005年1月までの交渉妥結を目指すことが確認されたことを受けて進展が期待されたが、関係国の意見の相違もあって2004年には期待通りの進展は見られなかった。その一方で、米国と個々の中南米諸国・地域とのFTA交渉が活発化した(中米諸国等と米国との間のFTAであるCAFTAの署名、アンデス3か国(コロンビア、エクアドル、ペルー)と米国との間のFTA交渉の進展など)。また、中南米域内においても、メルコスールとアンデス共同体のFTA発効のほか、二国間・地域間でFTA締結を目指す動きが引き続き進展している。
 また、近年、域外の国々が、中南米諸国の豊富な天然資源・食糧資源やダイナミックな経済統合の動きに注目し関係強化を進めている。EUは既にメキシコ、チリとのFTAを締結しており、現在メルコスール及びカリブ共同体とFTA交渉を進めている。また、アジア諸国、特に近年急速に中南米地域との貿易関係を拡大している中国及び韓国の動きも注目される。2004年、ルーラ・ブラジル大統領(5月)、キルチネル・アルゼンチン大統領(6月)が訪中する一方で、胡錦濤中国国家主席及び盧武鉉韓国大統領はチリでのAPEC首脳会議の機会を利用し中南米諸国を訪問した。この訪問時に、中国はチリとのFTA交渉開始に合意し、また、2004年4月にチリとのFTAを発効させた韓国は、さらにメルコスールとの通商協定締結に関する共同研究を開始するなど、特に経済分野で関係強化の姿勢を示している。


 



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