第2章 地域別に見た外交 |
第3節 中南米
【総論:日・中南米 新パートナーシップ構想】
中南米地域は、経済自由化・地域経済統合に向けた活発な取組や、豊富な天然資源の存在により、今後の成長が期待される市場として改めて注目を集めている。また、政治面では、ほぼ全域で民主主義体制が定着するとともに、主要国の国際政治への積極的取組や各種地域統合の活発な動きもあり、様々な分野で国際場裡における存在感を強めつつある。このような背景から、日本は活発な首脳外交を軸に、積極的な対中南米外交を展開している。
2004年9月、日本の総理大臣として8年ぶりに中南米を公式訪問した小泉純一郎総理大臣は、ブラジル訪問の際に、中南米諸国と日本が伝統的友好関係に立脚しつつ、将来に向けて新たな関係を構築するため、「日・中南米 新パートナーシップ構想」という中長期的な基本方針を内外に明らかにする演説を行い、中南米地域に対する包括的な政策方針を示した。
この構想は、これからの日本と中南米の関係を「協力」と「交流」という二つの指針に従って強化することを謳っている。第一の指針である「協力」は、「経済関係の再活性化」と「国際社会の諸課題への取組」という二つの柱から成る。特に、日本は豊富な人材・資本・技術を有し、中南米諸国は鉱物・エネルギー資源や高い食糧生産能力に恵まれている中で、双方の経済規模に照らして両者の経済関係が本来あるべき水準に至っていないとの問題意識を背景として、「経済関係の再活性化」を最も重要な柱と位置づけ、貿易・投資関係の発展、中南米の資源・エネルギー開発への関与やインフラ事業への協力を推進することを表明した。「国際社会の諸課題への取組」については、日本と中南米が国際社会の平和と安全のために協力することが重要であるとして、特に国連・安保理改革の重要性を強調するとともに、国際社会の繁栄の実現に向け多角的自由貿易(WTO)体制の維持・強化や、経済発展と環境の両立などの面での協調・協力の重要性も明らかにされた。
第二の指針である「交流」については、相互理解と人物交流の促進を図るため、次世代を担う青年レベルの交流の一環として中南米地域から今後5年間で延べ4千人を日本に招聘する旨明らかにした。また、広く東アジアと中南米の地域間交流を促進すべく、東アジア・ラテンアメリカ協力フォーラム(FEALAC(注1))において日本が主導的役割を果たし、将来の適当な時期にFEALAC外相会合を日本で開催する意図を表明した。
このビジョンの効果的な具体化が、今後の日本の対中南米外交における重要な課題となる。
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