平成17年版(2005年)外交青書の刊行に当たって 

平成17年版(2005年)外交青書の刊行に当たって

 平成16年(2004年)も、国際関係において様々な出来事が起こりました。世界各地でのテロ、イラクへの自衛隊派遣とODAによる復興支援、北朝鮮の核問題及び拉致問題等が課題となったほか、日本の海洋権益に関わる問題も生じました。さらに、年末に発生したスマトラ沖大地震及びインド洋津波によって日本人を含む多くの人々が犠牲となりました。こうしたこともあって、国民の皆様の外交に対する関心は以前にも増して高まってきています。外交の目的は、まさに国益すなわち日本及び日本国民の安全と繁栄を確保することにあり、外交活動は常に国民の皆様と共にあることを考えれば、それはむしろ当然のことと言えましょう。
 このような外交への関心の高まりを踏まえて、外務省としては、外交政策を推進していく上で、国民の皆様への説明責任を果たし、国民の皆様からより一層の御理解と御支持を得ることが重要と考えています。さらに、将来の国際社会や日本外交のあり方について考えていく上でも、過去の国際情勢及び日本外交の足跡を振り返ることは非常に重要です。そうした考え方を基礎に、ここに平成17年版外交青書を刊行いたしました。
 本年の外交青書では、まず、第1章の冒頭において、現在の国際社会の大きな流れと日本外交について解説しています。続いて、平成16年(2004年)の国際情勢を、国際社会が前年に引き続いてテロとの闘いと大量破壊兵器等の拡散防止に努力してきたと回顧しています。また、対イラク武力行使をめぐって対立した欧米が関係の修復に向けての努力を模索するとともに、国連改革に向けた機運が高まった年でもありました。日本外交にとって、平成16年(2004年)は、安全保障政策の基盤強化に取り組みながら、イラクの復興支援等において新しい国際的な平和協力のあり方への重要な一歩を踏み出した年でありました。また、経済連携等を通じて東アジア地域との地域協力の強化のための道筋をつけた一年でもあったと総括しています。
 第2章以降では、「地域別に見た外交」(第2章)、「分野別に見た外交」(第3章)につき記述しているほか、「国際社会で活躍する日本人と外交の役割」(第4章)では、国際機関や企業、非政府組織(NGO)等を通じて日本人が活躍している現状にも触れています。そして、「重層的な外交基盤づくり」(第5章)では、外務省の機構改革を紹介するとともに、国民の皆様の御理解と御支持を得つつ政策構想力を高めるための取組についても言及しています。
 この外交青書が、国際情勢と日本外交、さらには外務省に対する国民の皆様の御理解を深めるための一助となることを期待しています。平成17年(2005年)も日本政府として、日本が国際社会において重要な役割と責任を果たす国であるとの基本的認識に立ち、国際社会の諸課題の解決に指導力を発揮し、国益に立脚した志の高い外交を推進していく決意です。

平成17年4月



外務大臣 



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