平成16年版(2004年)外交青書の刊行に当たって 

平成16年版(2004年)外交青書の刊行に当たって

 2003年は国民の外交への関心が大きく高まった一年でした。日本を取り巻く国際環境が激しく変化する中で、イラクへの武力行使への対応とその後の同国に対する人道復興支援、及び拉致問題や核問題をはじめとする北朝鮮情勢への対応に国民的な関心が寄せられています。また、米国との関係や近隣アジア諸国との関係のあり方について様々な角度から議論が深められています。

 このような外交への関心の高まりを踏まえて外交政策を実施していく上で、政府として国民の皆様への説明責任を果たし、国民の皆様からの理解と支持を得ることが重要です。そのための努力の一環として、ここに昨年1年間の国際情勢と日本外交を概括した平成16年版外交青書を刊行いたしました。将来の国際社会や日本外交のあり方について考えていく上でも、過去の国際情勢及び日本外交のあり方を振り返ることは非常に重要です。

 本年の外交青書では、まず、第1章の冒頭において2003年の国際情勢を回顧し、2003年の国際社会の主たる関心は、テロとの闘いと大量破壊兵器等の拡散防止にあったとしつつ、対イラク武力行使をめぐる国際社会の立場の違いが表面化したことにより、2001年9月の米国同時多発テロ以降、テロとの闘いにおいて維持されてきた国際協調体制が転機を迎えるとともに、日本の外交にとっては日米同盟と国際協調の実現の両立が課題となった一年であったと総括しております。引き続き、2003年に大きな注目を集めた事柄として、イラクをめぐる問題、北朝鮮をめぐる問題及び経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)の推進をそれぞれ重要項目として詳述しました。第2章以降では、「地域別に見た外交」(第2章)、「分野別に見た外交」(第3章)及び「外交を支える基盤」(第6章)につき記述しているほか、新たに、「外交の広がり」(第4章)及び「海外の日本人・日本企業に対する支援」(第5章)の章を設け、非政府組織(NGO)を含め多様化する外交主体や国内世論・国内広報、海外における様々な日本人・日本企業への支援の現状につき、それぞれ紹介を試みております。

 日本外交の目的は、日本及び日本国民の安全と繁栄を確保することであり、そのためには国際社会の平和・安定と繁栄の実現が不可欠です。こうした認識に基づいて、日本は国際社会の直面する課題に取り組んでいます。その取組の一つをイラク復興の最前線で実践していた奥克彦大使、井ノ上正盛一等書記官、そしてジョルジース職員を昨年11月に失ったことは誠に痛恨の極みでありました。改めて3人に対し、哀悼の意を表し、その功績に心からの敬意を捧げます。

 外交青書が、国際情勢と日本外交、そして外務省に対する国民の皆様のご理解を深めるための一助となることを期待しています。2004年も日本は国際社会の責任ある一員として、国際社会の課題の解決にリーダーシップを発揮していく決意です。

 平成16年4月

 
外務大臣 川口順子

外務大臣 川口順子

 

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