4 南アジア
【総論】
2003年の南アジアは、長年の紛争が影を落としつつも、引き続きテロとの闘いにおける重要地域としての役割を果たす一方、近年続く高い経済成長を背景に安定を志向する動きが見られた。特に、2001年以降軍事的対立を含む緊張状態にあったインド・パキスタン関係は、2003年春以降、関係改善に向けた前向きかつ具体的な動きが見られ、2004年1月には2年半ぶりに印パ首脳会談が実施され、本格的な対話再開に合意したことは注目に値する。その一方でインド、パキスタンはミサイル開発を継続するなど安全保障面では依然不安定要因が残されており、日本を含む国際社会が南アジアの平和と安定のために働きかけていく必要性は高い。
スリランカでは、2003年も停戦合意は概ね遵守されるなど和平に向けた努力は継続しており、日本をはじめとする国際社会は和平プロセスへの積極的な支援を行っている。しかし、4月の「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」による和平交渉の一時中断の表明や、11月以降の内政の混乱などにより、和平プロセスは停滞を余儀なくされている。