【核の問題の再燃と北朝鮮による事態のエスカレート】
しかし、2002年10月、ケリー米国務次官補の訪朝の際、同次官補より、ウラン濃縮による核開発を進めているのではないかと指摘されたのに対し、北朝鮮側がこれを認める趣旨の発言を行ったことから、北朝鮮の核計画の疑惑が再燃した。
日米韓3か国首脳は、北朝鮮側のこうした発言を受け、同年10月、北朝鮮に対しウラン濃縮計画の廃棄を求める声明を発出した。また、KEDO理事会を構成する日本、米国、韓国、EUは、2002年11月のKEDO理事会において、北朝鮮の新たな核開発行為は「合意された枠組み」に違反するものであるとして、同合意に基づきKEDOを通じてそれまで供与していた重油の供給を、12月分から停止することを決定した(なお、軽水炉建設事業については2003年11月、同年12月より1年間停止することを決定した)。
これに対し、北朝鮮は、2002年12月、「合意された枠組み」に違反したのは米側であると主張の上、同合意に基づき凍結されてきた核関連施設を再び稼働させる旨表明した(翌2003年2月には、寧辺に所在する5メガワット黒鉛減速炉の再稼働が確認されており、また、2004年1月に寧辺を訪問したヘッカー元ロスアラモス研究所所長ほか米国民間人訪朝団も同黒鉛減速炉の稼働を確認している)。以後、北朝鮮は、核関連施設の封印を順次撤去、同27日には、これまで受け入れていたIAEAの査察官の退去を命じ、31日、査察官は北朝鮮を離れた。これにより国際社会は北朝鮮による核開発活動を直接監視する術を失った。
翌2003年1月6日のIAEA特別理事会において、北朝鮮の核関連施設の凍結解除を非難する決議が採択されたが、北朝鮮は、同月10日、NPTからの脱退とIAEAの保障措置協定の拘束から完全に脱する旨表明した。これを踏まえ、本件を国連安保理に付託すべきであるとの声が強まる中で、韓国及びロシアはそれぞれ特使派遣を通じて独自に北朝鮮に対してNPT体制への復帰を働きかけたが、北朝鮮は頑なな態度を崩さなかった。そのため、2月12日にIAEAは再度特別理事会を開催し、北朝鮮がIAEAとの保障措置協定上の義務にさらに違反していることを宣言するとともに、本件を国連安保理及び国連総会に報告する旨の決議を採択した(その際、中国は賛成票を投じ、ロシアは棄権した)。
2月19日、安保理はIAEA事務局長からの報告を受けたことを発表した。しかし、北朝鮮の核問題について具体的な議論がされることはなく、4月9日の非公式協議以降、実質的な審議は行われていない。