2001年末の中国の世界貿易機関(WTO)加盟を受け、多くの外資系企業が上海市を中心とする長江デルタ地域に進出してきています。2001年には、日本は上海市への最大の投資国となり、2002年12月時点においては、上海市における日系企業数は約3,600社、支店等を含めれば約5,000社となっています。最近では、日系企業は1日に1~2社進出しており、この傾向は当面続くと見られています。 このような状況の下、日系企業が様々な問題に直面し、在上海日本総領事館に対して支援が要請される事案が増えています。日系企業が巻き込まれた問題に対しては、当館は、各種情報の提供を行いながら日系企業からの相談に対応するとともに、必要に応じ地元政府に対して働きかけを行うことによって、事案の迅速な解決に向けた支援を行っています。このような各種支援によって、問題の解決につながった事例も少なくありません。
例えば、日系企業が地元政府から公共施設建設のため突然立ち退きを要求され、当館に支援要請が行われた事案があります。当館では、両者の間に立って地元政府などへ円満解決に向けた働きかけを行い、その結果、立ち退き期限の延長と経済的損失の補償に関して日系企業の関係者も納得する形で決着することができました。また、日系建築事務所が設計を請け負った公共建築物の設計料が不払いとなっていた事案でも、当館が地元政府へ働きかけを行い、支払いが行われ円満に解決することができました。さらに、訴訟において公平・公正な審理がなされていないとして当館に支援要請が行われる事案も多く、当館では関係者が納得する形での解決に向けて関係機関への働きかけを行っています。そのほかにも、税関や検疫局における通関手続や中国人従業員の解雇に伴う問題、合併相手の詐欺、知的財産権保護などをめぐる相談も多くあります。
当館としては、このような様々な問題の解決に向けて、企業活動の支援を積極的に行うことによって、日系企業の権益保護、投資環境の改善に努めています。
執筆:在上海日本総領事館経済班