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平成14年版外交青書の刊行にあたって



 日本が自らの安全と繁栄を確保していくことこそが、外交の目標です。そのためには、国際社会全体の平和・安定と繁栄の実現に取り組むことが不可欠になります。そうした外交を実施するためには、外交が国民の皆様に理解され、支持されなければなりません。私は、昨年初頭に明らかとなった公金詐欺事件やいわゆるプール金問題を始めとする一連の外務省の不祥事、特定議員の関与をめぐる問題等により失われた外務省に対する国民の皆様の信頼を回復するためには、厳しい反省に立ち一層の努力をしていくことが必要だと考えています。こうした視点から、2月の就任後間もなく「開かれた外務省のための10の改革」を発表し、各界の有識者からなる「変える会」を発足させました。「変える会」の議論を含め各方面の幅広い意見を聞きながら、同時に、できることは提言を待つことなく、外務省職員が一丸となって精力的に外務省改革を断行していく決意です。
 また、山積する外交課題の解決に向けて、私は、「強く」、「温かく」、「わかり易い」外交の実現を目指して積極的に取り組んできています。日本の安全と繁栄のため、国際社会において言うべきことは言い、やるべきことはやる「強さ」を持つ主体的で積極的な外交、貧困や紛争に苦しむ人々への配慮や、異なる文化や伝統への理解という、血の通った「温かい」視点を忘れない外交を実践し、また、そうした取組が国民に理解され、支持されるような、国民の皆様の眼から見て「わかり易い」外交を実践していくため、今後とも一層努力していくつもりです。
 国民の皆様の外交に対するご理解を得ていく努力の一環として、ここに昨年1年間の国際情勢と日本外交を包括的にまとめた外交青書を刊行いたしました。今後の国際社会や日本外交のあり方について考えていく上でも、過去の国際情勢及び日本を含む国際社会の取組を振り返ることは非常に重要です。
 本年の外交青書では、まず、2001年を、国際社会の安定と繁栄に向けたグローバルな取組が強く求められた1年であったと総括し、国際テロ対策を始めとする国際社会及び日本の取組を概観しています。次に、2001年に起きた出来事の中で国際情勢に最も影響を与えた9月の米国における同時多発テロと、その後の国際社会及び日本の取組について記述しています。さらに、中東和平やインド・パキスタン情勢といった国際社会の注目すべき動きや、主な二国間関係、大量破壊兵器の拡散防止、多角的貿易体制の強化、地球温暖化問題への取組といった国際社会の主な取組等について記述しています。また、一連の外務省不祥事に対する反省を踏まえた外務省改革の積極的な推進については、冒頭の「概観」で言及した上で、第5章にて記述しています。
 外交青書が、国際情勢と日本外交、そして外務省に対する国民の皆様のご理解を深めるための一助となることを期待しています。

 平成14年5月

外務大臣 川口順子
 外務大臣 川口順子


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