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在外選挙とブラジル都道府県人会連合会


 1998年に公職選挙法の一部が改正され、外国に住む日本人も日本の国政選挙に参加できるようになった。海外に住む日本人有権者の数は、現在60万人以上いるといわれている。ブラジルには、戦前、戦後を通じて約25万人が移住した。90余年の移住史の中でブラジルで亡くなった人もたくさんいる。日本に帰国した人、ブラジル生まれだが日本国籍を保持しブラジルで暮らしている者、そして出稼ぎという形で日本に在住する約25万人の日系人などブラジルとかかわりのある人がたくさんいる。現在ブラジルで暮らす人の中でどのくらい有権者がいるのか正確には知らないが、日本からの移住が下火になってから30年余りが経過しており、有権者の高齢化も進んでいる。
 こうした中、在サンパウロ日本国総領事館による在外選挙人名簿への登録は、当地の日系新聞3社(現在は2社)の協力を得てキャンペーンを行い、ブラジル日本都道府県人会連合会(県連)と地方の日系団体がこれを支援した。また、総領事館による在外選挙人名簿への登録は、県連の協力により県人会の会議室にて受け付けが行われ、実際に多くの人が登録を済ませた。また、2000年6月の衆議院選挙では、海外から初めての投票ということで、多くの人が県連の事務所を訪れ、投票用紙の請求や、登録はしたものの投票についてよくわからないという人たちの相談などを行った。今回、在外選挙人名簿への登録をしてみたものの、実際に投票するのは何十年振り、または初めてという高齢者の方も多く、時には登録はしたものの、投票できないので返納したいという高齢者の方が訪ねてくることもあった。この人たちの1票が日本国内に住む人たちの1票と同じような重みをもたせるためにも、在外選挙人名簿への登録のキャンペーンはもちろんのことだが、日本の政治団体や選挙システムの情報の提供が必要だと思う。
 海外に在住する日本人は、動機や職業は何であれ外国人と身近に暮らしており、いわば日本の「民間外交官」といっていい。海外に住む日本人が、日本人として胸を張って生活していくためにも、自らの存在を訴えることができ、その訴えが受け入れられるようになることを期待したい。そうなれば、さらに在外選挙人名簿への登録者数も増加することと思う。
 日本の選挙でも、大都会ほど無関心で投票率が低いと聞く。ブラジルでも地方の日系団体などが主導した所では登録者も多いと聞くが、日本人が一番多いサンパウロでの登録者は決して多くない。在外選挙制度を実のあるものにするためにも、草の根的な運動を展開するとともに、在サンパウロ日本国総領事館とも協力しつつ、在外選挙人名簿への登録者数の増加のために県連事務局も協力していきたいと思う。

執筆:ブラジル都道府県人会連合会事務局


ブラジル都道府県人会連合会施設における在外選挙人名簿への登録(提供:サンパウロ新聞社)


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