(1) 1994年4月15日のマラケシュ宣言(仮訳)
(94年4月15日 於マラケシュ)
ウルグァイ・ラウンド多角的貿易交渉に参加した{124の}政府及び欧州共同体を代表する閣僚は、1994年4月12日から15日までモロッコのマラケシュで閣僚級で開催された貿易交渉委員会の最終会合の機会に、
1986年9月20日にウルグァイのプンタ・デル・エステで、ウルグァイ・ラウンド多角的貿易交渉を開始するために採択された閣僚宣言を想起し、1988年にカナダのモントリオール、1990年にベルギーのブラッセルでそれぞれ行われた閣僚会合で達成された進捗を想起し、
交渉が1993年12月15日に実質的に妥結したことに留意し、
開放的かつ市場指向的な政策、並びにウルグァイ・ラウンドの諸協定及び決定に盛り込まれた約束に基づいて自国の経済が世界の貿易体制に参加することを通じ、ウルグァイ・ラウンドの成功を更に進展させるよう決意して、
本日次のとおり採択した。
宣 言
1 |
閣僚は、ラウンドの終結に代表される歴史的業績に敬意を表し、これが世界経済を強化し、全世界的な貿易、投資、雇用、及び所得成長の増加につながることを確信する。特に、閣僚は、以下を歓迎する。 |
─ | 閣僚が採択した、国際貿易のより強力かつ明確な法的枠組み
(より効果的かつ信頼のできる紛争解決のメカニズムを含む。) |
─ | 世界的規模での物品の関税の40%引下げ、及び物品の市場をより広く開放するとの諸協定、並びに関税譲許の範囲の大幅な拡大に代表される予見可能性及び確実性の向上 |
─ | サービスの貿易及び貿易に関連する知的所有権の保護のための規律の多角的枠組みの設立、並びに農業及び繊維・衣類についての多角的貿易条項の強化 |
2 |
閣僚は、世界貿易機関(WTO)の設立が、自国の国民の利益と福祉のためにより公正かつ開かれた多角的貿易体制の中で活動したいとの広範な希望を反映しており、世界的規模での経済協調の新たな時代の幕開けとなることを確認する。閣僚は、あらゆる種類の保護主義圧力に抵抗するとの決意を表明する。閣僚は、ウルグァイ・ラウンドで達成された貿易の自由化及びルールの強化が、漸進的に世界の貿易環境の一層の開放につながることを確信する。閣僚は、今後直ちにかつWTOの発効まで、ウルグァイ・ラウンド交渉の結果又はその実施を損ない、又はそれらに悪影響を与えるようないかなる貿易上の措置もとらないことを約束する。 |
3 |
閣僚は、貿易、金融及び財政の各分野における世界的な政策の整合性の一層の向上(WTO、IMF、世界銀行の間のこの目的のための強力を含む。)に向けて努力するとの決意を確認する。 |
4 |
閣僚は、ウルグァイ・ラウンドへの参加国の範囲が従来の多角的貿易交渉に比べて相当広がったこと、特に、開発途上国が注目すべき積極的な役割を果たしたことを歓迎する。これは、よりバランスのとれたかつ統合された世界的な貿易パートナーシップに向けた歴史的な一歩である。閣僚は、これらの交渉が行われていた間、多くの開発途上国及び旧中央統制経済国家において、経済改革及び貿易の自主的な自由化の重要な措置が実施されたことに留意する。 |
5 |
閣僚は、交渉の結果が、開発途上国に対して異なったかつより好意的な取扱い(後発開発途上国の特定の状況に対して特別の注意を払うことを含む。)を与えるという条項を含んでいることを想起する。閣僚は、後発開発途上国にとってのこれらの条項の実施の重要性を認識し、後発開発途上国の貿易と投資の機会の拡大を引き続き支援しかつ促進するとの意図を宣言する。閣僚は、後発開発途上国及び食糧純輸入開発途上国の開発目的の達成を可能とするような積極的な措置を助長する観点から、ラウンドの結果がこれらの国に対してもたらす影響を、WTOの閣僚会議及び適当な機関によって定期的に検討することに同意する。閣僚は、ガット及びWTOがそれぞれ能力を有する分野で技術的支援を増加する能力、特に後発開発途上国に対する技術的支援を実質的に増大させる能力を強化する必要性を認識する。 |
6 |
閣僚は、「ウルグァイ・ラウンド多角的貿易交渉の結果を収録する最終文書」の署名及び関連閣僚決定の採択によって、ガットからWTOへの移行が開始されることを宣言する。閣僚は、特に、WTO協定の発効のための地ならしをするために準備委員会を設立した。閣僚は、また、同協定が1995年1月1日までに、又は、その後できる限り早く効力を発生することができるよう、同協定の批准のために必要なすべての措置を完了するよう努めることを約束する。閣僚は、さらに、貿易と環境に関する決定を採択した。 |
7 |
閣僚は、ハッサン2世国王陛下が今次閣僚会合の成功のために行った個人的な貢献、並びにモロッコ政府及び国民が示した温かいもてなし及び素晴らしい会議運営に対して深甚なる謝意を表明する。ウルグァイ・ラウンドのこの最終閣僚会合がマラケシュで開催されたという事実は、開かれた世界貿易体制及びモロッコの世界経済への完全な統合に向けたモロッコの決意を改めて示すものである。 |
8 |
閣僚は、最終文書の採択及び署名、WTO協定の受諾のための開放によって、貿易交渉委員会の作業が完結し、ウルグァイ・ラウンドが正式に終了することを宣言する。 |
(94年6月8日 於パリ)
1. | OECD閣僚理事会は、1994年6月7日及び8日に開催された。議長はアイルランドのアハーン大蔵大臣、スプリング副首相兼外相、フイッツジェラルド国家開発計画担当国務大臣が努めた。副議長はオーストリアのラツィーナ大蔵大臣、シュッセル経済大臣及びカナダのウレット外務大臣、アックスワージー人材開発大臣及びマクラレン国際貿易大臣が努めた。会合に先立ち、議長は、OECDの経済産業諮問委員会(BIAC)及び労働組合諮問委員会(TUAC)と協議を行った。両委員会は、閣僚の検討のため、声明書を提出した。 |
2. | 加入に至る過程で貴重な経験を提供した後、OECD条約に加入したばかりのメキシコは、この会合に完全な加盟国として初めて参加した。閣僚は、このことを、OECDの発展の新たな段階の始まりとして歓迎するとともに、OECDの活動に対するメキシコの貢献を期待する。 |
成長と雇用の促進
3. | 閣僚は、2年前にいくつかのOECD加盟国において始まった景気回復が他の諸国においても根付くとともに、徐々にそのペースを速めようとする兆しが見られており、1994年の残りの期間及び1995年における改善された展望を可能にしていることを歓迎する。しかしながら、閣僚は、更なる政策がOECD諸国経済の潜在能力実現及び失業者数の持続的減少の確保のために必要であることを認識する。失業は、受け入れがたい人的潜在能力の浪費であり、それに関わる人々-特に若者及び長期失業者-にとり苛酷な体験であり、また、社会の一体性に対する脅威である。それゆえ、加盟国政府は、失業との闘いと雇用創出の促進とに非常に高い優先順位を付与している。 |
4. | 閣僚は、「OECD雇用失業研究政策報告書」の主要な結論を支持する。閣僚は、その雇用戦略提言を、各国が各々置かれている経済環境の中で実施することに合意する。閣僚は、現在の状況が、最近の景気後退の結果、及び、重要なことであるが、深刻な構造的欠陥、特に、技術進歩、競争及びグローバル化に伴う急速な変化に対する加盟国経済の不十分かつ遅れた調整の双方に起因することを認識する。 |
5. | グローバル化の過程は、世界の人口のうち急速に増大しつつある割合の人々が経済発展へ参加し、それからの被益を可能にするとともに、それにより世界全体の繁栄に貢献するであろう。最近の技術の進歩及び貿易と投資の拡大は、OECD諸国にとり雇用拡大の大きな新たな機会を創出している。その実現のためには、OECD諸国は、絶え間なく経済効率を向上させつつ、常に革新的かつ適応能力のある状態である必要がある。これこそ雇用創出とより高い生活水準を確保する道である。それは、加盟国が対応することができ、また、対応しなければならない課題である。 |
6. | 閣僚は、グローバル化、世界的な競争、技術進歩あるいは構造的変化を妨げること、あるいはそれらに逆行することが加盟国の長期的利益に反することに同意する。閣僚は、新たに登場しつつある部門における新たな高賃金の仕事を含む未来の仕事を準備する代わりに過去の仕事を人為的に維持することがないようにするため、いかなる種類の保護主義をも拒絶する。閣僚は、必要な構造調整を遅らせてしまうことは、袋小路に入り込んでしまい、構造調整をより痛みの多く負担の大きいものにしてしまうことであるとするOECDの分析を支持する。 |
7. | 閣僚は、また、国情に応じ社会的パートナーとの協力の下に行う雇用戦略の実施は、マクロ経済政策と構造政策の積極的な相互作用に依存しており、またそれを活用するものでなければならないことにつき合意する。マクロ経済政策は、力強い、持続的かつインフレなき成長に寄与することにより、構造調整、民間投資及び雇用創出を容易にする安定的な条件を創出することができる。OECD経済の適応性及び調整速度を改善し、個人及び企業のイニシアティヴにとって適当な環境を作り出すことにより、構造政策は、インフレ過熱のない、より力強い持続的な成長を可能ならしめる。 |
8. |
前進することへの信頼及び奨励をもたらす枠組みを経済主体に提供するため、マクロ経済政策は三つの相互に関連した目標を追及しなければならない。
-中期的な財政赤字の削減 -継続的な物価安定の確保 -必要かつ適切な場合の需要の支持 |
9. | 加盟国政府は、財政赤字を削減し、公共部門の債務と支出をコントロールするための努力を精力的に行う必要がある。財政再建の必要性は以下に記述される政策対応を条件付けている。この一般的問題については、その様々な要素を強調することができる。例えば、この問題は政府の全てのレベルに影響を及ぼすということ、人口の高齢化による財政負担、或いは社会的支出もしくは年金制度における負債(とりわけ、累積した年金の負債は全公的債務の相当な部分を占め得ることに留意しつつ)をコントロールする必要性である。しかし、共通した大きな目標は、依然として、高い貯蓄率と低い長期金利を実現することを通じてより大きな民間投資を奨励することである。さらに、歳入面及び歳出面について、これらの成長、構造調整、雇用及び生産性に与える影響を最適化するとの観点から精査することにより、予算の質を改善するあらゆる努力が払われなければならない。 |
10. | 閣僚は、金融政策は、引き続き、その究極的目標である、力強く持続的なインフレなき成長と結びつけられたものでなければならないことに合意する。閣僚は、OECD諸国経済が経済循環において異なる位置にあることを認識する。景気回復が順調に進行中の国においては、金融政策が、中期的な景気回復を支えるように、インフレ圧力の発生阻止に引き続き警戒すべきである。景気回復が未だ持続的なものになっていない国においては、物価安定の展望を危うくすることなく、緩和された金融政策が維持されるか、あるいは、可能な限り一層の緩和の余地が追及されるべきである、また、可能な国においては、財政再建の中期的な目標と整合性がとれた形で、力強い内需主導型の持続的なインフレなき成長を確保するため、必要に応じて財政上の措置が実施されるであろう。為替レートにおける協調の継続は、成長に好ましい経済環境に一層貢献するであろう。 |
11. | 閣僚は、成長見通しが明るくなってはいるものの、重要な構造的要素を有するOECD域内の失業は緩慢にしか低下しないと見込まれており、包括的な労働市場改革及びその他の構造改革が不可欠であることを認識する。「政策報告書」は広範な構造政策を網羅している。失業削減のためには、技術革新、民間部門のイニシアティヴ及びあらゆる熟練水準における多大な数の雇用の創出に最も資する条件を確立するとともに、国民がこれらの職につくための要件を備えていることを確保することが、目的とならなければならない。強化された労働市場の弾力性は、国民が職に適合することを助ける。このようにして、加盟国は、持続的な世界経済発展に十分貢献すると同時に、自国の国民の生活の水準及び質の継続的改善のための道を開くであろう。 |
12. | 構造政策の形成に当たり、加盟国政府は以下を目指す。 |
─ | その多くが中小企業である新規企業の設立及び既存企業の拡大と適応を奨励するとともに、企業の効率性と雇用の増大を可能ならしめる企業家的環境を育むこと。 |
─ | 民間部門のイニシアティヴを阻害するような規制を緩和すること。 |
─ | 情報技術、通信技術、そして環境面に対し良好な技術等の技術の革新を発展し、普及し、実施しようとする民間部門のイニシアティヴを、切な場合において、補完すること。 |
─ | サービス市場を更に自由化し、サービス部門の潜在的な雇用創出能力を十分に引き出すこと。 |
─ | 企業に対する補助金の総体的水準を、特に時代遅れかつ競争力を失った生産に対する補助金を差し控えることにより、削減すること。 |
─ | 近代的な社会資本への公的及び民間投資の拡大を促進すること。 |
─ | すべての部門における経済面及び環境面双方の戦略の統合を進めること。 |
13. | 加盟国政府はまた、持続的雇用を増大させ、社会的公平と経済効率との双方の達成に資することのできる方策を進めていくことを決意する。加盟国政府は、これらの目標を念頭に置きつつ、以下を追及する。 |
─ | 国民がその生涯を通じて知識と技能を伸ばすことができることを確保するため、各国の制度に即し、かつ、適切な場合には、社会的パートナ-ー、地方自治体及び民間部門のイニシアティヴと緊密に協力して、教育及び訓練制度を更に改善し、それにより生産性の向上と持続的な高水準の成長に貢献していくこと。 |
─ | 雇用の供給と需要との間のより良い対応を達成するとの観点から労働市場をより弾力的にし、労働の移動に対する障害を減少させることにより、労働市場の機能を改善すること。 |
─ | 雇用サービスをより効果的にし、より一般的には、長期失業者と若者に焦点を当てた施策等を含む積極的労働市場政策及びプログラムに高い優先順位を付与すること。 |
─ | 企業の労働者雇用あるいは国民の就業を抑制するような法律及び規制を修正すること。 |
─ | 多くの失業者を吸収し得るサービス活動を無視することなく、あらゆる技能レベルに応じた雇用機会の拡大に向けて地域及び地方の機関と緊密に協力すること。 |
14. | 多くの加盟国において既に開始されているこれらの政策の実施には、粘り強さと努力を要する。持続的な調整が必要である。政策の実施に際しては、社会的一体性の必要性もまた考慮に入れられるべきである。各国それぞれの状況の制約の範囲内で、各国政府は、努力するにもかかわらず適応できない人々のみならず、適応のために一時的な支援を必要とする人々のために適切な社会的セーフティー・ネットが存在することを確保するよう努める。こうした人々には、相応の生活水準及び、経済的及び社会的生活への完全な参加の機会が与えられるべきである。 |
15. | この雇用戦略から得られる利益は相当なものである。新たな自信は消費と投資を強化するであろう。生産性の向上と技術革新は生活水準の向上を促進するであろう。構造調整は、障害の除去とOECD諸国企業の競争力向上を通じ、企業が世界の他の地域に開かれつつある巨大な市場を十分に活用することを可能にするであろう。閣僚は、雇用の増大と失業の削減のためのこの戦略の成功は、個々人及び企業のイニシアティヴとそれらの革新性及び創造性に決定的に依存していることを強調する。政府の行動のみでは不十分である。 |
16. | 閣僚は、「政策報告書」及びOECDの「3年毎の構造レビュー」に基づき、OECDに対し、概要以下の通りの作業を進めるよう要請する。この作業は、OECDがその委員会の構成の枠組みにおいて有する多面的な長所を十分に活用すべきである。閣僚は、1995年の閣僚理事会においてこの事後点検作業の最初の見直しを行う。なすべき作業は以下を含む。 |
─ | 各国横断的及び国毎の分析を通じて、「政策報告書」の分析と優先政策提言を深め多様化させること。 |
─ | 各国の及び国際的な統計機関と共同で、データの欠陥が政策形成の妨げとなっている分野において、より良いデータを拡充させ、雇用の創出及び喪失の要因に関する研究を調整し、更には、(情報技術を含む)技術、雇用創出及び成長の間の関係の分析を進展させること。 |
─ | 採用された政策の実施を包括的に監視し、また、特に経済パフォーマンス全般に対する構造改革の効果を測定するために、OECDの既存の相互審査制度を利用すること。 |
また、この作業計画は、G7諸国の閣僚が要請した技術及び生産性の雇用に及ぼす影響の更なる分析に関し、OECDが時宜を得た対応をすることを可能にするであろう。 | |
17. | OECD諸国における経済成長と雇用の創出は、実施されるマクロ経済政策と構造政策に大部分依存するが、それらはまた、OECD以外の諸国との増大しつつある相互依存にますます影響される。多角的体制の強化と域外国との協力とは、採択された雇用戦略の前提条件である。 |
多角的体制の強化
18. | OECD加盟国は、ウルグァイ・ラウンド最終文書の署名と世界貿易機構(WTO)の設立を、全世界的な貿易体制に向けての重要な一歩を記し、また新たな雇用の機会を作る世界貿易を拡大する歴史的出来事として祝福する。締結された協定は、貿易自由化を大幅に前進させ、国際貿易を律する多角的ルール及び規律を拡大し、また強化するとともに、世界全体の持続可能な発展という目標に合致したインフレなき成長を一層促進するであろう。 |
19. | 閣僚は以下を遂行する。 |
─ | 批准手続に遅滞が生じず、新しいWTOが1995年1月1日という目標期日に発効することを確保するために、あらゆる事を行うこと。 |
─ | その過程において、WTOの下での新たなルール及び規律の文言あるいは精神に反するあらゆる貿易制限的あるいは歪曲的措置を回避し、多角的な紛争処理手続に従うこと。 |
─ | 多角的ルールが存在しない分野におけるあらゆる貿易関連問題に関し相互に受入れ可能な解決を、建設的精神を以て見出すとともに、自由貿易原則と相容れない、あるいは多角的貿易体制を危うくするイニシアティヴ及び取極を回避するために、あらゆる努力を払うこと。 |
─ | ウルグァイ・ラウンド包括合意に含まれているルール及び自由化へのコミットメントを、合意されている期間内に実施に移すとともに十分かつ効果的に尊重し、残っている交渉を最終文書に沿って速やかに妥結させ、可能な場合には各国のコミットメントを前倒しで実施するよう努めること。 |
─ | あらゆる形態の保護主義に対抗し、一層の貿易自由化、市場メカニズムの適切な機能、及び規制緩和に向けた作業を継続すること。 |
20. | OECDは、ウルグァイ・ラウンド合意及びその作業計画の実施に当たり、WTO設立準備委員会及びWTOを積極的に支援する。また、OECDは、その多彩な専門分野を有するという長所を活用しつつ、自由化の一層の進展及び多角的体制の強化が求められるであろう分野の監視及び分析を継続する。OECDの作業計画の実施に当たっては、すべての関係国際機関より協力を得ることとなるが、内容としては以下の諸点を含むこととなる。 |
─ | 貿易と環境。これは、既に十分に進行している分析作業が更に進展するであろう高い優先順位を有する分野であり、実質的な結論と1993年に閣僚により採択されたOECDの手続に関する指針の実施状況に関する加盟国政府の行動のレビューとを含む報告が1995年に閣僚のために準備される。 |
─ | 貿易と競争法及び競争政策、並びに貿易と投資。 |
─ | 貿易、雇用及び国際的に認められた労働基準。これは、基本概念、貿易・投資パターンに関する実証的事実、及び世界規模のより高い労働基準促進のための現行のメカニズムを含む。この作業は、1995年の閣僚への報告につながるべきである。 |
21. | OECDはまた、以下により多角的体制の強化に貢献する。 |
─ | 多角的体制を補完し、また強化し続けることを確保するように、地域統合の進展の監視と分析を継続すること。 |
─ | 他国間投資協定の作成を目的とする作業の新段階に入り、1995年に閣僚に対し報告すること。 |
─ | 公的輸出信用及び輸出保険に係る透明性と規律の強化を継続すること。この目的のために、閣僚は、輸出信用取極の加盟国に対し、追加的措置及び将来の作業に関する議長の最新の提案に同意するとともに、1995年に、取極の実施に関する進捗状況を報告することを要請する。 |
─ | 1987年及び1992年に閣僚により合意された原則に基づく農業政策の改革の動きが弱まらないことを確保すること。 |
─ | 各国の及び国際的レベルにおいて進行中である環境問題に対する取組に積極的に貢献すること。閣僚は、アジェンダ21と持続可能な開発に関する条約を成功裡に実施するための強化されたパートナーシップの精神に基づき域外国と共に活動するとともに、この目的のために国連持続可能な開発委員会を支援するとのコミットメントを再確認する。 |
─ | グローバル化された経済において財、サービス及び資本の流れを歪曲しうる税制上の不一致により生起している問題の分析を更に遂行するとともに、OECDの移転価格指針の現在行われている見直しを完了させること。 |
─ | 競争法及び競争政策の収斂に関する作業を進展させること。 |
─ | 産業に対する補助金及び政府補助の指標の分析を継続すること。 |
─ | 閣僚が重視している、造船業における正常な競争条件に関する協定の交渉を終結させること。 |
─ | 移民の傾向及び政策に関する分析作業を継続すること。 |
22. | 閣僚は、 |
─ | 国際的商取引における贈賄に関するOECD理事会勧告を支持し、勧告に記載されている原則の、加盟国及び可能な限り多くの域外国による実効性ある遵守を促進するようOECDに対し要請する。 |
─ | 資金洗浄に対する継続的な世界規模での行動の重要性を強調しつつ、金融活動作業部会(FATF)の5年間の活動延長の決定を支持する。 |
変化する世界におけるOECDの役割
23. | 多くの域外国は、世界経済との関連性を強めつつあり、その発展の基礎を、OECD諸国が長らくそうしてきたように、市場原則、多元的民主主義及び人権の尊重に置きつつある。OECDは、その有する資源の範囲内で、これらの諸国と引き続き接触、対話及び協力を構築をしていくべきである。OECDは、相互利益が存在する場合には、加盟国としてのすべての責任を全うする準備が整い、かつその能力を備えた諸国に対し、門戸を開くべきである。 |
24. | 韓国は、OECDとますます緊密な関係を構築してきており、今や多くの活動に加盟国と同じ立場で参加している。閣僚は、1996年末までに加盟国となるとの見通しの下に本年中に正式に加盟申請を行うとの韓国の意向を歓迎し、韓国の準備が整い次第、OECDが韓国の加盟条件を審査するよう要請する。 |
25. | 「移行期のパートナー」4か国─チェッコ共和国、ハンガリー、ポーランド及びスロヴァキア共和国─は、市場システムへの移行及び世界経済への統合に向け、OECD移行経済支援センター(CCET)の支援を得つつ、大幅ながらも各々に異なる前進を果たしてきた。4か国はすべて最近OECDへの加盟申請を行った。閣僚は、これを歓迎し、これら各国がそれぞれ加盟国のすべての責任を全うする準備が整い、かつその能力を備え次第、各国をそれぞれOECDに加盟させるため、加盟条件を審査する交渉をこれら各国との間で早期に開始するよう要請する。 |
26. | 閣僚は、本日OECDとロシア連邦との間で署名された協力宣言及び特権免除協定を歓迎する。これは、既存の活発な協力及び政策対話を更に深めようとする両者の確固たる意思を示すものである。閣僚は、この協力が、ロシアにおいて進行中の移行プロセスの強化を助け、この重要な国の世界経済への全面的かつ有益な統合に貢献することを希望する。 |
27. | CCETは、市場経済への移行過程にある他の欧州及びアジア諸国を支援するために、重点的な活動計画を通じ、その利用可能な資源を引き続き効果的に活用するべきである。閣僚は、これら諸国が行ってきた多大な努力を歓迎する。閣僚は、ブルガリア、ルーマニア及びスロヴェニアのOECDに対する最近の要請に鑑み、これら諸国の個別の要請に応じた新たな国別プログラムをいかにして策定するかを検討するようOECDに要請する。閣僚は、他の諸国、特にバルト諸国がそのような国別プログラムに関心を有するかもしれないことに留意する。 |
28. | 中国は、多くの側面において世界経済の主導的プレーヤーとなるに至っている。OECDは、この国に関する知識と理解の拡充を継続する。中国との対話及び協力の可能性が探究され、相互の利益が存在する分野においては、それが発展するであろう。 |
29. | 閣僚は、OECDと活力ある非加盟経済(DNMEs)との間で継続している対話に満足の意を表明する。閣僚は、本年10月に東京で開催されるDNMEsとの非公式ハイレベル会合を、対話の促進の方策を共同で探求する主要な機会として期待する。活力ある経済及び様々な部門における主要なプレーヤーの数が増加するにつれ、OECDとの互恵的対話の可能性を提供することが重要となっている。同様の理由により、OECDは、地域グループとの関係を緊密化するあらゆる可能性に対して引き続き注意を払う。閣僚は、OECDが(DNMES以外の)主要な開発途上国との経済的及びその他の連繋に関する研究を継続することを奨励する。 |
30. | 閣僚はまた、OECDと中南米諸国との接触が、DNMEsとの対話に参加している中南米諸国との接触を越えて増大していることに留意する。閣僚は、韓国に続き、アルゼンティン及びブラジルがOECD開発センターに加入したことに喜びの意を表する。 |
31. | 開発途上国のうち、勇気づけられる経済的及び社会的発展を遂げている国の数は増大しているが、他方、その他の多くの諸国は活力ある成長に未だ乗り出せていない。OECD加盟国政府は、これらの諸国、特に最貧国、とりわけサハラ以南のアフリカ地域諸国が、経済成長と世界経済へのより円滑な統合とに必要な経済的及び社会的インフラストラクチャーを構築し、人的資源の開発を行っていくための自助努力への支援の継続にコミットしている。加盟国は、ウルグァイ・ラウンドの結果の実施及び新たな貿易問題の取扱いに際し、開発途上国の利益に対し特段の配慮を与えることをコミットしている。加盟国は、後発開発途上国がラウンドの成果を利用することを支援するよう努める。基本的な経済・政治改革、特に良い統治を目指す改革は、開発途上国との協力関係及び対話の中においても、特別な支援に値する。開発途上国における貧困、債務、飢餓、病気、人口増加、環境上の圧力や難民及び移民圧力は、すべて、持続的な成長にとり普遍的重要性を有する問題である。紛争や飢餓の状況において、特別な援助対応が求められるが、それは長期的な開発のためのニーズと戦略とに統合されるべきである。閣僚は、この分野における努力を持続する重要性を認識しつつ、OECDに対し、OECD加盟国の政策の一貫性の向上とともに、援助の有効性、質及び量の問題に取り組むよう要請する。 |
32. | 21世紀が近づく中で、現在経済的相互依存が顕著に普遍化している世界は、偉大なる展望とともに危険をも抱えている。OECD加盟国は、持続的な経済発展と社会的進歩を強固なものとし拡充することを確保する特別な責任を有している。OECD加盟国は、その責任を負い、グローバリゼーションの過程で供与される。普遍的に共有される利益を一層調和的かつ建設的に追及することに向け、あらゆる政策を通して最大限に貢献する意図を有する。OECD加盟国は、このことを達成するために、OECDがその分析、新たな問題や機会の初期段階における把握、勧告及び加盟国の政策の監視を通じて協力することを期待する。 |
(イ)経済宣言(仮訳)
(94年7月9日於ナポリ)
前文
1. | 我々主要先進7か国の元首及び首相並びに欧州共同体委員会委員長は、第20回サミットのため、1994年7月8日及び9日ナポリで会合した。 |
2. | 我々は、世界経済において類まれな変化が生じている時に集まった。新たな形態の国際的な相互作用が我々の国民の生活に非常に大きな影響を及ぼしているとともに、我々の経済のグローバル化をもたらしている。 |
3. | 50年前、ブレトン・ウッズにおいて、理想あふれる指導者達は、我々の国に二世代にわたり自由と繁栄をもたらした諸機関の設立を開始した。彼らの努力は、二つの偉大な、そして普遍的な原則-民主主義と開かれた市場-に立脚するものであった。 |
4. | 21世紀に近づきつつある現在、我々は、これらの機関を再生し再活性化するとともに、世界中に新たに登場しつつある市場経済を指向する民主主義国家の統合という課題に取り組む責任を自覚している。 |
5. | この責任を果たすため、我々は来年のハリファックス・サミットにおいて、以下の二つの問題に焦点をあてることに合意した。 |
(1) | 我々の国を含む世界の諸国民の繁栄と福利を増進するために、21世紀の世界経済が、良好な雇用、経済成長及び貿易の拡大を維持しつつ、持続的な発展をもたらすことを如何にして確保できるのか。 |
(2) | これらの課題に対処し、人々の将来の繁栄と安全を確保するために、機関をどのように変えることが必要とされるのか。 |
雇用と成長
1. | 1年前、我々のすべての国の経済において、景気回復は見られないか又は滞りがちであった。今日、心強い結果が生じつつある。景気回復は進行中である。新たな雇用が創出されてきており、我々の国のうち、より多くの国において、人々が再び職に就きつつある。現在、インフレは、過去30年以上で最低の水準にあり、インフレのない力強くかつ持続的な成長のための条件が整っている。したがって、我々は、東京サミットにおいて合意した成長戦略を再確認する。我々は、大蔵大臣に対し、景気回復の軌道維持のために緊密に協力することを求め、進行中の多数国間の監視及び政策協調の過程を強化するよう要請した。また、我々は、世界の資本市場の一層の統合に対応するため、適当な当局の間の協力を強化するよう奨励する。 |
2. | しかし、失業は余りにも高い水準にとどまっており、我々の国だけでも2,400万人以上が失業している。これは、許容し得ない損失である。我々の国の多くのように、失業が若者や長期の失業者に集中しているときには、特に害が大きい。 |
3. | 我々は、デトロイトにおける雇用失業ハイレベル会合及び経済協力開発機構(OECD)の分析を受け、我々がとる必要のある行動を明らかにした。 |
─ | 企業及び個人が自信を持って自らの将来につき計画を立てられるように、成長と安定のために努力する。 |
─ | 我々の経済の雇用創出能力を改善するために改革を加速化することにより、現在の景気回復を増進する。 |
これらの双方が、失業水準の持続的削減を達成するために不可欠である。 | |
4. | 我々は、以下の構造的措置に力を注ぐ。 |
─ | より良い基礎教育、技能の向上、学校から職場への移行の円滑化、職業訓練への雇用者側の十分な関与、デトロイトにおいて合意されたような生涯学習という考え方の普及を通じ、国民に対する投資を増加させる。 |
─ | 雇用費用の増大又は雇用創出の阻害をもたらす労働の硬直性を減少させ、過度の規制を撤廃し、可能な場合には雇用に伴う間接的な費用の削減を確保する。 |
─ | 失業者がより効果的に職を探すことに資する積極的な労働市場政策を遂行し、我々の社会保障制度が働く意欲を生みだすことを確保する。 |
─ | 特に、開放的、競争的かつ統合された世界情報インフラの整備を含む技術革新及び新技術の普及を奨励し促進する。我々は、この問題をフォローアップするために我々の関係閣僚がブラッセルで会合することに合意した。 |
─ | 新たな需要が生じている分野、例えば、生活の質及び環境の保護に関する分野において、雇用創出を促進する機会を追求する。 |
─ | 不必要な規制を撤廃し、中小企業にとっての障害を除去することを通じ、競争を促進する。 |
5. | この計画の実施のために、我々は、企業と労働者の活発な参加及び国民の支持を要請する。 |
6. | 我々は、この行動計画を推し進める決意であり、持続的成長及びより多くの-そしてより良質の-新しい雇用の創出という我々の目的の実現に向けた進捗状況を検討する。 |
貿易
1. | 市場開放は、成長を助長し、雇用を創出し、繁栄を増進する。 |
ウルグァイ・ラウンド合意の署名とWTOの設立は、戦後の貿易自由化における重要な一里塚である。 | |
2. | 我々は、1995年1月1日までに、ウルグァイ・ラウンド合意を批准し、WTOを設立する決意であり、他の諸国も同様の行動をとることを要請する。 |
我々は、貿易自由化の勢いを継続させる決意である。我々は、WTO、IMF、世界銀行及びOECDに対し、自らの所掌の範囲内において協力することを要請する。 | |
3. | 国際貿易に関する新しい問題につき、我々は、OECDにおいて進行中の国際貿易のルールと競争政策との相互作用いついての研究を奨励する。我々は、対外直接投資に対する障害を除去するために、国際投資ルールの一層の発展を支持する。 |
4. | 我々は、貿易と環境との関係に関し、新設されるWTOにおいて行われる作業を歓迎する。我々は、雇用や労働基準を含む新しい問題及び貿易政策にとってのそれらの意味合いについての我々の理解を深めるための努力の強化を要請する。 |
5. | 我々は、来年のサミットにおいて、これらの問題に関する進歩状況を検討する。 |
環境
1. | 環境は、国際協力の最優先事項である。環境政策は、例えば、適当な技術に対する投資、エネルギー効率の改善、汚染地域の浄化を通じて、成長、雇用及び生活水準を高めることに寄与し得る。 |
2. | 我々は、国際開発金融機関が、引き続き、現地の参加を一層促進すること及び開発計画において環境に対し一層配慮することを求める。 |
3. | 我々は、リオ・プロセスの実施の進捗状況についての「持続可能な開発委員会」による検討作業を支持する。我々は、既に締結された条約、特に、生物多様性条約及び気候変動枠組条約の実施を期待し、この関連で、これらの問題に関しナッソー及びベルリンで開かれる予定の会議の成功に向け努力する。 |
4. | 我々は、地球環境基金(GEF)の機構改革及び増資を歓迎し、上記2条約のための恒久的な資金供与制度として同基金が選択されることを支持する。 |
我々は、最近の砂漠化防止条約の締結と小島嶼会議の結果を歓迎する。これらはリオにおいて合意された枠組みを強化するものである。 | |
5. | 我々は、気候変動枠組条約の下で要請される自国の計画の実施を速める決意であり、来年のサミットにおいて各国の実施状況につき各々報告する。我々は、また、2000年より先の措置を策定する必要性を認識する。 |
開発途上国
1. | 我々は、多くの開発途上国における経済発展を歓迎する。しかしながら、我々は、いくつかの国、特にアフリカのいくつかの国の経済停滞と貧困の継続を懸念している。急速な人口増加が多くの国において貧困を悪化させてきたことに鑑み、我々は、人口及び開発に関するカイロ会議の前向きな成果の重要性を強調する。 |
2. | 我々は、開発途上国における貿易と投資を促進するとともに、開発援助を拡大する努力を続ける決意である。 |
我々は、開発途上国へ相当規模の民間資本が流れていること、また、これらの国にうちの多く、特にラテン・アメリカ及びアジアの多くの国が相互の貿易を増加させる努力を行っていることに勇気づけられている。 | |
我々は、世界銀行が地域開発銀行とともに保健・衛生、教育、家族計画、環境保護に関する支援を増加させつつ、開発途上地域に対する民間資本の流れを補強すると努力を強化するよう要請する。 |
我々は、パリ・クラブが最貧重債務国に対する債務救済措置を改善するための努力を続けることを奨励する。我々は、適当な場合には、債務ストックの削減、及び特別な困難に直面している国に対する譲許性の向上を選好する。 | |
我々は、拡大構造調整ファシリティー(ESAF)の更新を歓迎し、また、開発途上国に対する支援を増大させるため、及びすべての加盟国のSDR制度への参加を確保するためIMFが検討中の措置を歓迎する。さらに、我々は、経済的・政治的混乱から立ち直りつつある国及び最貧重債務国の特別な需要に応えるため、国際金融機関の既存の資金をより効果的に動員する方法を探求することに合意する。 | |
3. | 中東において、経済発展は、和平プロセスを支えるのに不可欠である。したがって、我々も、他国とともに、パレスチナ当局に対し財政支援及び技術的支援を提供しており、当該地域における協力と開発を促進するよう努力している。我々は、イスラエルに対するアラブ・ボイコットの終了を要請する。 |
我々は、南アフリカの完全な民主主義への移行を暖かく歓迎する。これにより、貿易と対内投資の新たな機会が開かれるであろう。我々は、経済的及び社会的発展の強化に資する一層の支援、特に最貧層に対する支援を提供する。南アフリカの国民のみならずその近隣諸国にとっても、南アフリカの潜在能力が完全に発揮されるような着実な経済政策から得るものは多い。また、我々は、CFAフラン地域の諸国による最近の平価切下げに続く調整措置、及び国際社会の迅速な支援を歓迎する。 |
原子力安全
1. | 我々は、ミュンヘン及び東京でのサミットで合意された、中欧及び東欧諸国並びに旧ソヴィエト連邦諸国に関する原子力安全プログラムの進展を歓迎する。 |
2. | 協調行動のための効果的な枠組みが既に存在している。世界銀行は、欧州復興開発銀行(EBRD)、欧州投資銀行(EIB)を含む他の融資機関、及び国際エネルギー機関と協力して、各国が長期的なエネルギー戦略を立てることを支援している。いくつかの短期的な安全性改善措置がとられつつある。更に措置をとる必要があり、より長期的な行動をとらなければならない。この目的のために、国際金融機関は、その権能に従い、それぞれの融資能力を最大限に活用することを求められている。 |
3. | 我々は、危険性の高い原子炉の早期閉鎖を促進するための既存の国際的な取組を引き続き支持している。チェルノブイリ原子力発電所の閉鎖は、緊急の優先事項である。 |
したがって、我々は、チェルノブイリ原発の閉鎖のための行動計画をウクライナ政府に提示しようとしている。この計画は、国際社会による財政的貢献とともに、ウクライナ当局の措置を必要とする。 |
チェルノブイリ原発の閉鎖と同時に、適切な安全基準に合致した3基の新たな原子炉の早期完成、エネルギー部門における包括的な改革、一層のエネルギー節約及び代替エネルギーの利用が行われることとなる。 | |
4. | この関連で、我々はは欧州連合による拠出を歓迎する。我々は、さらなる措置として、このための原子力安全基金の増資を含め、当初2億ドルを上限とする贈与を行動計画のために提供する用意がある。さらに、国際金融機関による貸出が行われるべきである。 |
我々は、他の援助国及び国際金融機関が我々とともにこの行動計画を支援することを要請し、定期的に進捗状況を検討する。 |
ウクライナ
ウクライナは、包括的な市場改革への決意を改めて示すことにより、真の改革の開始に引き続く2年間にわたり40億ドル以上の国際的な資金供与を受けることができる。 | |
我々は、ウクライナにおける経済移行のためのパートナーシップについての会議を、次回のサミットまでにカナダで開催するとの提案を支持する。 |
ロシア
1. | 我々は、ロシアにおける改革過程の歴史的な重要性を認識している。我々は、政治・経済双方における改革についてのロシアの指導者の決意、及び現在までの進展に勇気づけられている。 |
2. | 我々が昨年東京サミットにおいて支持した方策は、成果を生みつつある。我々は、経済計画に関するIMFとの合意、並びに世界銀行及びEBRDとの最近の一連の借入合意を歓迎する。我々は、ロシアが経済を安定させ、改革過程を強化し、社会的困難を軽減させるために、国際金融機関と協力することを奨励する。 |
現在検討されているIMFの資金利用限度の引上げ、新しいINF加盟国に対する特別引出権(SDR)の配分及び世界銀行の貸出の加速化は、ロシアの改革努力を支援する能力を大幅に高める。最近合意されたロシアの1994年の債務返済の包括的繰延べも、有益であろう。 | |
我々は、支援努力に対してロシア国内に存在する実施上の障害の除去に支援実施グループ(SIG)が貢献することを引き続き求める。 | |
3. | 国内の貯蓄を生産的に使用するため動員すること及び外国からの直接投資を誘致することは、ロシアの改革の成功にとり極めて重要であろう。したがって、我々は、ロシアが民間投資及び対外貿易のための法的・制度的枠組みを改善することを求める。我々としては、ロシアの世界経済への統合を進め、ロシア産品の我々の市場へのアクセスを一層改善するために、ロシアのガット加入に向けて、ロシアと協力を続ける。 |
4. | 我々は、ロシアにおける改革を支援し続ける。
|
その他の移行諸国
我々は、移行諸国の改革努力の進展を歓迎し、この努力に対する我々の支持を再確認する。 | |
特に、我々は、中欧及び東欧諸国の政治的・経済的移行を賞賛し、これらの諸国の自由市場への統合を支持する。 |
国際犯罪及び資金洗浄に対抗する協力
1. | 我々は、資金洗浄を含む国際的組織犯罪が増加していること、及び合法的な経済活動を支配するために不正収益が使用されていることを危惧している。これは、世界全体にわたる問題であり、移行諸国は犯罪組織によってますます標的とされている。我々は、この状況に取り組むための国際協力を強化する決意である。 |
我々は、国際的組織犯罪に関する世界閣僚級会議が本年10月にナポリで開催されることを歓迎する。 | |
2. | 我々は、資金洗浄に関し、我々が1989年に設立した金融活動作業部会(FATF)の業績を認識し、同部会が今後5年間作業を継続することへの支持を再確認する。我々は、目標を達成するためには、、FATF参加国及び重要な金融市場を有するその他の政府により対抗措置が実施される必要があることに合意する。最終的な成功のためには、薬物取引その他重大犯罪又は相当規模の収益を生み出す犯罪からの収益の洗浄を防止するための効果的な措置がすべての政府によって講じられるようにする必要がある。 |
3. | 我々は、各国が適当な場合には必要な立法措置をとることを求める。
|
次回サミット
今回のサミットの討議の結果、我々は、昨年東京サミットで合意したように、より非公式なサミット運営が有益であることを確信した。ナポリ・サミットにおいて、我々は、従来以上に自由な意見交換を行い、より緊密な相互理解を築き上げることができた。 | |
来年我々は、本年以上に柔軟でより非公式な会合をもつことを期待する。 | |
我々は、1995年・・・にハリファックスで会合することについてのカナダの首相の招待を受諾した。 |
(ロ) 議長声明(仮訳)
(94年7月10日 於ナポリ)
1. | 今回の会合は、ロシア連邦大統領が政治問題の議論に全面的に参加したことにより、その意義を増すこととなった。このパートナーシップは、ロシアにおける改革の反映であり、今日の諸問題に建設的かつ責任ある姿勢で共に取り組むとの我々の希望を再確認するものである。 |
2. | 我々は、ボスニアにおける紛争の当事者が7月6日にジュネーヴで提示された案を受け入れるべきであると強く確信する。我々は、紛争当事者に対し、7月19日までの受入れを求める。この機会をとらえなければ、更に大きな規模で戦闘が再開する重大な危険がある。紛争当事者は、いかなる軍事行動も控えるべきである。 |
我々は、紛争当事者がこの案を受け入れるか又は拒否するかに応じ、紛争当事者に知らされている措置が実施されることを確保する。 | |
我々は、国連によって進められているサラエボ復旧のための行動計画を支持するとともに、7月5日に欧州連合(EU)及び関係当事者がEUによるモスタールの施政に関する了解覚書に署名したことを歓迎する。 | |
クロアチアにおける国連保護地域に関し、我々は、停戦の遵守、話合いの再開及び現存の境界線を認め合うことを求める。 | |
3. | 金日成の死去の後も、我々は、北朝鮮による国際原子力機関(IAEA)からの脱退決定によって引き起こされた問題の解決を引き続き求めなければならない。我々は、北朝鮮に対し、米国との協議の継続及び予定されている韓国との首脳会談の実施を含め、韓国及び国際社会との接触を続けるよう求める。我々は、また、北朝鮮に対し、不拡散に係る義務の完全かつ無条件な履行を通じ、核計画を完全に透明なものとし、核をめぐる疑惑を一切払拭するよう求める。我々は、北朝鮮の核問題を対話により解決するための新たな努力を支持するとともに、北朝鮮がIAEA保障措置の継続性を確保し、核計画の凍結を維持する。(使用済みの燃料の再処理及び原子炉への燃料の再装荷を行わないことを含む。)ことが重要であることを強調する。 |
4. | 我々は、イスラエル・パレスチナ間の原則宣言及び同宣言実施の第一段階としてのガザ・ジェリコ合意への署名を歓迎した。我々は、援助の実施を迅速化するとともに、生活条件の真の改善に向けた環境をつくる必要性を認識する。他の二国間交渉及び多国間協議における進展が、アラブ・イスラエル紛争の永続的かつ包括的な解決を実現するため、さらに、中東・地中海地域全体における平和と協力に向けたプロセスの幅を広げるため、今や不可欠である。我々は、アラブ連盟諸国に対し、イスラエルに対するアラブ・ボイコットを終了するよう呼び掛ける。我々は、繁栄し、独立したレバノンの復興に向けた努力を支援する。 |
我々は、イラク及びリビアに関するすべての関連する国連安全保障理事会決議が遵守されるまで、これらの決議の各々について完全な実施を確保するとの決意を改めて表明するとともに、そのような実施に伴い制裁の見直しが行われるであろうことを想起する。 | |
我々は、イラン政府に対し、平和と安定に向けた国際的な努力に建設的に参加し、この目的に反するような行動を、特にテロリズムに関し、改めるよう呼び掛ける。 | |
我々は、経済改革を進めるとのアルジェリア政府の決定を歓迎する。この改革は、断固として推進されなければならない。また、我々は、アルジェリアの指導者に対し、暴力及びテロリズムを拒否するすべての国内勢力の政治対話を継続するよう求める。我々は、最近起きたイタリア人船員及び他の犠牲者の虐殺を非難し、遺族に対し哀悼の意を表する。 | |
我々は、イエメン共和国政府に対し、対話と平和的手段により国内の政治的対立を解決するとともに、人道上の事態、特にアデン市内及び周辺地域の事態への対処を確保するよう呼び掛ける。主権及び領土保全を含む国際的義務は、尊重されるべきである。 | |
5 | 我々は、最近の国連事務総長からの呼び掛けに応え、アフリカ大陸における事態に特別な関心を払ってきた。我々は、南アフリカ国民がアパルトヘイトを憲法上の手続により終結させたことを賞賛するとともに、安定し、繁栄した民主社会の建設に向けた新政府の努力を支援することにコミットする。同時に、我々は、多くのアフリカ諸国で起きている人道上の悲劇を痛ましく感じ、これらの諸国を助けるために最大限の努力を行う。我々は、特に、ルワンダにおける事態に驚愕し、拡大国連ルワンダ支援団(UNAMIRII)の迅速な展開を通じ、フランスにより実施されている人道的行動が妨げられずに継続することを呼び掛ける。我々は、政治的解決に向けた停戦の確立及び一層のかつ緊急の人道的努力を求める。我々は、アンゴラにおける問題解決を実施するための努力を支持する。 |
6. | 我々は、ハイティの軍指導部が関連する国連諸決議を完全に遵守し、民主主義の回復及び民主的に選ばれたアリスティド大統領の政府の復帰を認めるよう要求する。我々は、すべての諸国に対し、事実上の政権に圧力をかけるとともに、ハイティに関連する強化された国連の措置を実施するよう呼び掛ける。 |
7. | 大量破壊兵器及びミサイルの拡散は、国際の平和及び安全に対する最も深刻な脅威の一つである。我々は、核兵器不拡散条約(NPT)のすべての未締約国に対し、非核兵器国としてNPTに加入するよう呼び掛ける。我々は、1995年における同条約の無期限延長に対する明確な支持を宣言する。我々は、核軍備削減を継続することの重要性を強調するとともに、核実験禁止及び核兵器目的の核分裂性物質の生産禁止のための普遍的、検証可能かつ包括的な条約を実現するとのコミットメントを確認する。我々は、化学兵器禁止条約の可能な限り早期の発効に向けてのコミットメントを再確認するとともに、生物兵器及び毒素兵器禁止条約の特別締約国会議を歓迎する。我々は、国連軍備登録制度の完全な実施を支持する。我々は、核物資の密輸を防止するため協力することに合意する。我々は、対人地雷の諸問題(無差別使用の抑制、輸出の停止及び世界各地での除去に対する支援に係る努力を含む。)を優先課題とする。我々は、兵器及び機微な汎用品の貿易の責任ある実施を確保するために、効果的な輸出管理に向けて共に努力し、また、他の諸国と協力する。我々は、中東及び南アジアにおける不拡散に係る努力を奨励する。 |
8. | 国連は、予防外交並びに平和維持、平和創造及び紛争後の平和構築の面で中心的役割を有している。このようなすべての活動は、与えられた要求にこたえるために、十分な権限を付与され、効果的に計画及び組織され、並びに財政的に手当てされることが不可欠である。すべての国連加盟国は、この点に関し明確な責任を負っており、その責任を果たさなければならない。滞納はなくさなければならず、支払は迅速かつ完全に行わなければならない。なお、より衡平な分担率は、世界経済及び国連加盟国の変化を反映すべきである。国連改革は、効率性、職務の合理化及び費用効率を確保するために、引き続き進めていかなければならない。 |
地域機関は、国連憲章及び欧州安全保障・協力会議(CSCE)の関連文書と完全に合致した形で、予防外交及び平和維持の面で重要な貢献を行うことができる。我々は、平和維持活動においてすべての当事者の同意が重要であることを強調し、いかなる場合においても主権及び領土保全を尊重する必要があることを改めて表明する。我々は、また、平和維持隊が自衛のために必要な範囲を超えて武力を行使する必要性に直面し得る場合には、国連から権限が付与されることを求めるべきであることを強調する。 | |
12月のCSCEブダペスト・サミットは、CSCEの役割及び能力を高める過程での重要な道標となるべきである。我々は、欧州における良好な関係の促進を目指す安定化条約の締結を支持する。 | |
アジア太平洋地域においては、我々は、地域の安全保障対話の始まり、特にASEAN地域フォーラムでの対話の始まりを歓迎する。 | |
9. | 我々は、少数民族に属する人々の権利を含む人権をいかなる地域においても増進し、保護するために、国際的な監視メカニズム及び手続を改善することを支持し、新設された国連人権高等弁務官への支援を誓う。我々は、人種主義、人種差別、排外主義、攻撃的な民族主義、反ユダヤ主義その他の種類の偏狭と闘うための努力を強化する決意である。 |
国際社会は、世界各地の人道上の緊急事態に迅速に対応するために、更に効果的な手段を備えるべきである。我々は、国連その他の適当なメカニズムを通じそのような要請にこたえる能力を高めるよう努力する。 | |
10. | 我々は、あらゆる形態のテロリズム、特に国家の支援を受けたテロリズムを非難し、断固としてこれと闘うために協力するとの決意を再確認する。我々は、すべての関係国に対し、財政的支援を含むテロリズムへの支援を絶つとともに、テロリスト組織に自国の領土を使用させないために実効的な措置を採るよう呼び掛ける。 |
我々は、組織犯罪及び麻薬取引が政治、経済及び社会活動に対する脅威であることを強調し、国際協力の強化を呼び掛ける。我々は、そのような協力を推進する上で、イタリア政府の提案により10月にナポリにおいて開催予定の世界閣僚級会議が極めて重要な機会となるであろうことに意見の一致を見た。 | |
11. | 今回の会合は、また、ロシアにおける改革のプロセスについて意見交換を行う機会を提供することとなった。ロシアにおける改革は、エリツィン大統領及びロシア政府が国際社会の確固たる支持を受けつつ推進している歴史的な課題である。エリツィン大統領は、世界の経済及び安全保障の諸問題に関するロシアの見解を説明した。我々は、国際犯罪、資金洗浄、原子力安全等の問題について協力する考えである。 |
12. | 我々は、ハリファックスでの会合を期待しつつ、世界の平和と安定を維持するための条件を増進するために、引き続き緊密に協力していく。 |
(94年7月25日 於バンコック)
1. | 第1回ASEAN地域フォーラム(ARF)は、ASEAN各国の元首・政府首脳がアジア太平洋地域諸国との協力的きずなを構築する手段として、域外国との政治・安全保障対話を強化する意図を宣言した。1992年の第4回ASEAN首脳会議のシンガポール宣言に従い、1994年7月25日、バンコックで開催された。 |
2. | 会議は、ASEAN各国、ASEANの対話国、ASEANの協議国及びASEANのオブザーバー各国(注)の外相又はその代理が出席した。タイの外相が会議の議長を務めた。 |
3. | 政治・安全保障協力問題について特に議論するために、アジア太平洋地域の大多数の国のハイレベルの代表が初めて一堂に会したという点で、会議は、同地域にとって一つの歴史的な出来事と考えられた。さらに重要なこととして、会議は、東南アジアの平和、安定及び協力の新たな一章を開いたことを意味する。 |
4. | 会議出席者はアジア太平洋地域の一部における動きが地域全体に影響を及ぼしうることを認識しつつ、同地域における最近の政治・安全保障状況についての有益な意見交換を行った。ARFがハイレベルの協議のフォーラムとして、アジア太平洋地域諸国が共通の利益と関心を有する政治・安全保障問題に関しての建設的な対話と協議の慣例化を促進するのを可能にしたことが合意された。この点においてARFはアジア太平洋地域の信頼醸成と予防外交に向けての努力に対し重要な貢献を行う立場におかれることになる。 |
5. | 国際の平和及び安全の維持のために核兵器の不拡散が重要であることに留意し、会議は米朝交渉の継続を歓迎し、南北対話の早期再開を支持した。 |
6. | 会議は、次の点で合意した。 |
(a) | 毎年1回ARFを開催し、1995年にブルネイで第2回会議を開催すること及び |
(b) | 国家関係を規律する行動規範並びに地域の信頼醸成、予防外交及び政治・安全保障協力のための独特な外交文書として、東南アジア友好協力条約の目的及び原則を支持すること。 |
7. | 会議は、次回議長国たるブルネイが必要に応じ他のARF出席者と協力しつつ次の責務を果たすことを委任することについても合意した。 |
(a) | ブルネイで開催されるARF・SOMを踏まえて第2回にARF提出するため、バンコックでのARF及びARF・SOM開催中に提案されたすべての文書と構想を整理し、検討すること。このような今後の検討の対象となる構想には、信頼安全醸成、核不拡散、地域平和維持訓練センターを含むPKO協力、非機密軍事情報の交換、海上安全問題及び予防外交が含まれる。 |
(b) | アジア太平洋地域にふさわしい経済社会面を含む安全保障の包括的概念につき検討すること、 |
(c) | 地域的政治・安全保障協力のため、国際的及び地域的な政治・安全保障協力に適した国際的に認められた規範と原則を検討すること、 |
(d) | 最終的にすべてのARF参加国が国連軍備登録制度に参加することを促進すること及び |
(e) | ARFの過程を前進させるためすべての関連文書及び示唆を検討する非公式事務レベル会合を必要に応じ開催すること。 |
8. | 会議は、アジア太平洋地域でのより予見可能なかつ建設的な関係を発展させる必要性を認識しつつ、同地域及び同地域の人々にとっての恒久的平和、安定及び繁栄を確保する手段として同地域内の政治・安全保障協力の強化と拡大に向けて作業を続けていくとの強い信念を表明した。 |
(94年11月13日 於ジャカルタ)
1. | オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、香港、インドネシア、日本、韓国、マレイシア、メキシコ、ニュー・ジーランド、パプア・ニューギニア、フィリピン、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、タイ及び米国の閣僚は、1994年11月11日及び12日にインドネシアのジャカルタで行われた第6回アジア太平洋経済協力(APEC)閣僚会議に参加した。APEC事務局のメンバーも出席した。ASEAN事務局、太平洋経済協力委員会(PECC)及び南太平洋フォーラム(SPF)は、オブザーバーとして出席した。 |
2. | インドネシアのスハルト大統領は、会議を開会し、第6回閣僚会議に出席したすべての代表団に対し暖かい歓迎の意を表明した。同大統領は、今日の世界情勢はすべての国民が繁栄と福利を増進するために一層衡平な、安定した、安全なかつ平和な新世界秩序を協力して作り出す機会を提供していると述べた。この点に関し、アジア太平洋地域は、その適切な経済政策により顕著な進歩を達成してきた。 |
3. | 同大統領は、APEC協力は将来更に発展させられるべきであるとの見解を表明した。同大統領は、アジア太平洋地域がマクロ経済政策分野における協議を強化し、経済インフラの質、人材養成、中小企業の質及び量並びに適切な技術の獲得及び開発を促進するとともに、投資の流れ及び貿易を促進し続けるべきであると述べた。 |
4. | 会議は、インドネシアのハルタルト工業・商業担当調整大臣が議長を務めた。ハルタルト調整大臣はそのスピーチの中で、インドネシアで開かれた第6回APEC閣僚会議は貿易及び投資のより大きな増進に向けられていることを強調した。同大臣は、更に、閣僚会議は、人材養成、中小企業の改善、インフラの改善及び民間/ビジネス部門の関与に関する経済協力を支援することにより、APECにおける協力が結果としてアジア太平洋地域の市民に繁栄をもたらすと述べた。米国のクリストファー国務長官は、第5回APEC閣僚会議の議長として、1994年におけるAPECの議長国であるインドネシアが第6回閣僚会議を主催したことに対し、深甚なる謝意を表明した。同国務長官は、スハルト大統領、アラタス大臣、ハルタルト大臣及びその同僚がAPECにおけるモメンタムの維持にリーダーシップを発揮し、アジア太平洋地域のダイナミックな性格を反映し強化している活力をAPECに対して付与したことにつき、祝意を表明した。 |
5. | 閣僚は、11月15日インドネシアのボゴールで開かれるAPEC経済非公式首脳会議に対する期待の意を表明した。同会議は、域内の持続可能な成長及び共同の繁栄という目的を達成するために、ブレーク島の会議で明示されたヴイジョンを首脳が具体化するための貴重な機会となろう。 |
6. | 閣僚は、以下を含む様々な問題につき討議した。 |
─ | 経済動向及び諸問題 |
─ | 貿易及び投資の諸問題 |
─ | 賢人会議第2回報告 |
─ | 太平洋ビジネス・フォーラム報告 |
─ | 人材養成 |
─ | 公共及び民間インフラストラクチャーの改善における協力 |
─ | 中小企業 |
─ | 首脳のヴイジョン及びイニシアティヴの実施 |
─ | APEC作業計画 |
─ | 機構問題 |
─ | その他 |
経済動向及び諸問題
7. | 閣僚は、経済動向及び諸問題に関するアドホック・グループ(ETI)の報告を歓迎し、過去4年間の有益な作業を支持した。閣僚は、域内の経済対話を促進し、経済成長を推進し、そしてすべての市民の経済的福利を増大させるに当たり、同グループの果たす重要な役割を再確認した。閣僚は、APECの、長期的なマクロ経済動向の分析能力及びミクロ経済上の問題の研究能力を強化する必要性を強調した。閣僚は、同グループを経済委員会に転換することに合意し、新しい委員会の付託事項を支持した。 |
8. | 閣僚は、チャイニーズ・タイペイが、閣僚の検討のために経済展望に関し有益な作業を行ったことに感謝した。閣僚は、貿易、投資及び技術移転という3つの分野の詳細な現状分析が、各分野についてのAPECの議論を深めるためのよい基礎となることに合意した。 |
9. | 閣僚は、以下の進行中の活動に最初から基礎を置く経済委員会の1995年の作業計画につき討議した。 |
─ | 1995年のAPEC経済展望の作成 |
─ | 主要経済情報の回覧 |
─ | 3Eプロジェクト(経済成長、エネルギー及び環境)に関する分析 |
─ | 民営化と貿易自由化の相互連関の検討 |
─ | 域内の外国直接投資動向の研究 |
─ | 域内の産業・技術連関に関する分析 |
─ | 為替レートの過度の変動が域内の貿易及び投資に及ぼす影響の研究 |
10. | 閣僚は、人的資源やその他の資源を有効に活用するすべてのメンバーの能力を強化することにより、アジア太平洋地域の一層の経済協力及び開発を促進することに関する「前進のためのパートナー」を日本が提案したことを歓迎した。閣僚は、この地域の市民の共通の利益のために地域の成長と発展を持続させるための協力はAPECの活動の主要な目的の一つであることを認識し、同提案が高級実務者による検討のために一層敷行されることに留意した。 |
賢人会議第2回報告
11. | 閣僚は、賢人会議(EPG)が、第2回報告を行ったことに対し深甚なる謝意を表明し、APECに対し長期的展望を実現する方途に関する提言を行うとの付託事項を成功裡に履行したことを賞賛した。閣僚は、EPG報告が、貿易・投資促進、貿易自由化及び技術協力という三つの重要な方向でAPECにとってのいくつかの基本的及び重要な原則を打ち出していることを歓迎した。閣僚は、EPG報告が、ボゴールでのAPEC経済非公式首脳会議での検討を含む将来の検討のための貴重な参考資料となることに留意した。 |
太平洋ビジネス・フォーラム報告
12. | 閣僚は、太平洋ビジネス・フォーラム(PBF)の共同議長による報告を歓迎し、PBFのメンバーが貴重なビジネス/民間部門の見解を被歴したことを賞賛した。閣僚は、PBF報告の中でなされた多くの具体的提案に対して謝意を表明し、これらが将来における検討の貴重な参考資料となることに留意した。閣僚は、更に、PBF報告が、ボゴール会合においてAPEC経済首脳により検討されることに留意した。 |
13. | 閣僚は、APECにおける民間部門の枢要な役割を再確認した。閣僚は、PBFが全会一致で勧告した、ビジネス/民間部門の諮問機関の創設に関する米国の提案を支持した。 |
貿易及び投資の諸問題
14. | 閣僚は、CTIによる、1年を通じた貿易・投資に関連した作業において得られた実質的な進捗を歓迎した。閣僚は、貿易・投資の自由化がAPECのアイデンティティ及び活動の礎石の1つであることを再確認した。閣僚は、CTIの年次報告を採択することに合意し、1995年の作業計画に関するCTIの勧告を承認した。 |
15. | 閣僚は、CTIの下に二つの小委員会、即ち、基準・認証に関する小委員会及び税関手続に関する小委員会を設立することを支持した。 |
16. | 閣僚は、APECの努力を最大限有効なものとするには、適切な技術協力を包含した貿易・投資計画を支援する必要があることを認識した。 |
貿易担当大臣会合
17. | 閣僚は、1994年10月6日ジャカルタで開催された貿易担当大臣会合の結果を歓迎した。昨年のシアトルにおける第5回閣僚会議により権限を付与されたとおり、貿易担当大臣会合の主たる目的は、ウルグァイ・ラウンドの結果及びそのAPEC地域に与える影響をレヴューし、地域的及び世界的な貿易自由化のための次の措置を検討することにあった。 |
18. | 閣僚は、ウルグァイ・ラウンドの結果の完全な実施を達成するとの決意を再確認し、また、世界貿易機関が1995年1月1日に活動を開始することができるよう、各メンバー経済においてその設立協定の早期締結が確保されるべく最大限の努力を払うことにより指導性を発揮するとの決意を再確認した。この点に関し、閣僚は、APECの非GATTメンバーがWTOの原メンバーとなることを可能とする交渉を可及的速やかに完了することに対する強い支持を表明した。閣僚は、かわる交渉は実質的な、及び商業的に意味ある約束に基づいて行われるべきことを確認した。 |
19. | 閣僚は、更に、同会合で合意されたその他のイニシアティヴ、なかんずく以下のものを歓迎した。 |
─ | ウルグァイ・ラウンドの結果の実施に関する共通の地域的なアプローチについての意見交換及びかかるアプローチの適用可能性の探求を目的とする一連のAPECセミナーあるいはワークショップを開催すること。 |
─ | アンチ・ダンピング、サービス、知的所有権、関税及び原産地規則等の分野におけるウルグァイ・ラウンドの結果の実施を支援するのに特に有益であろう計画を実施すること。 |
この点に関し、閣僚は、世界貿易、投資及び経済成長に対するAPECの貢献の重要性を同会合が認識したことに留意し、また、貿易自由化のモメンタムを維持することの重要性を強調した。閣僚は、アジア太平洋地域における貿易及び投資の自由化促進努力に対する同会合の支持を評価した。 |
中小企業
20. | 閣僚は、1994年における中小企業専門家による優れた作業を賞賛するとともに、この分野における協力の重要性に留意した。閣僚は、また、チャイニーズ・タイペイがAPEC中小企業調査の結果を報告したことを賞賛した。閣僚は、中小企業専門家による2回にわたる会合において作成された勧告を歓迎するとともに、高級実務者に対し、かかる勧告を実施するよう勧奨した。 |
21. | 閣僚は、また、中小企業専門家会合の中小企業政策担当者によるアドホック会合への昇格に関する中小企業大臣会合の勧告を支持した。 |
人材養成
22. | 閣僚は、「人材養成の枠組み宣言」を採択した。同宣言は、APECにおける人材養成の原則及び要素を明らかにするとともに、かかる原則の今後の実施を計画・管理するためのメカニズムを確立した。 |
23. | 閣僚は、人材が、市民の福利を目標とする経済成長及び開発を達成する上で単一最大の財産であることを再確認した。APECが重要分野における技能に対する需要の変化を明らかにできることは重要であり、かかる変化に効率的に対応できなければ成長と開発にボトルネックをもたらし得る。また、要請の変化に応じて柔軟な対応を受け入れるという基本的な姿勢を有する労働力を、公的及び民間の訓練における一般市民教育を通じて創出していくことも重要である。 |
24. | 人材養成への投資は、他者の人材養成を増進する能力を基準にして、特定のグループを特に対象として行わなければならない。これらのグループには、ビジネス/民間部門及び公的部門の双方における企業家、管理職及び技術労働者、小中高等学校教育及び職業教育の教育者、メンバー経済におけるより高度な経済開発のために必要とされる技術の訓練指導者、並びにこの地域の将来の経済指導者が含まれる。 |
25. | 閣僚は、中小企業、産業・インフラ技術及び現在の成長が将来の繁栄に及ぼす否定的な影響を緩和・回避することを可能とする持続可能な開発に関する公共・民間両部門における訓練の重要性を確認した。 |
26. | 閣僚は、民間部門の拠出によりAPEC教育基金を創設するという米国の提案を歓迎した。かかる基金により、APECの人材養成/教育活動全般を跡づけることが可能となり、人材養成作業部会、連携した教育のためのパートナーシップ及び教育フォーラム並びにAPEC教育イニシアティヴに対する支援及び資金援助を行うことができる。米国は、高級実務者及び他の関係機関による検討に供するため本提案に関する詳細な概念説明書を作成することを申し出た。 |
公共及び商業インフラの改善のための協力
27. | 閣僚は、APECにとってのインフラ問題及びその将来の経済開発に与える影響の重要性に留意した。閣僚は、商業及び公共インフラの改善のための協力に関し、インドネシアがその有益なペーパーにおいて重要な問題提起を行ったことを賞賛した。閣僚は、1994年10月ジャカルタで開催された世界インフラ・フォーラムの成果に、特にインフラ開発へのビジネス部門の関与を勧奨している点に関心をもって、留意した。 |
28. | 閣僚は、インドネシアより提出されたペーパーに含まれる、この分野、特に域内全体に影響を及ぼす二国間のプロジェクトの分野において作業を深める基礎となる提言を支持した。 |
29. | 閣僚は、適切、効率的かつ安全な運輸システムが重要であること、及び、既存の施設を有効利用する必要とともに運輸インフラ開発を加速する必要があることを認識しつつ、1995年半ばにAPEC運輸担当大臣会合を主催するという米国の提案を歓迎した。閣僚は、運輸作業部会に対し、この提案の具体化に当たり運輸担当大臣を支援するよう要請することに合意した。 |
30. | 情報及び通信は、APEC経済における経済成長及び開発に主要な役割を果たす。国際的及び国内の情報インフラを開発することは、すべてのAPEC経済の優先事項である。閣僚は、APEC情報インフラの開発に対する電気通信作業部会の関心に留意した。閣僚は、更に、ITU世界電気通信開発会議において紹介された世界情報インフラの概念に留意した。閣僚は、電気通信作業部会及びAPECの他の関係フォーラムに対し、将来の作業においてGII概念を研究するよう勧奨した。 |
APEC作業計画
31. | 閣僚は、APECプロセスに対する10のAPEC作業部会の重要性を認識し、10の作業部会により行われた活動は、特定の分野におけるこの地域の開発及び繁栄に貢献するというAPECの努力の重要な一部であることを強調した。閣僚は、作業部会が、昨年承認されたヴィジョン・政策課題声明に含まれている目的の実現のために、1994年を通じて一層の努力を行ったことに留意した。閣僚は、APEC作業部会に関する統合報告を承認した。 |
貿易及び投資のデータ
32. | 閣僚は、APEC経済にとって概ね比較可能な、商品貿易のデータベースの構築に向けた実質的進展を歓迎した。閣僚は、また、サービス貿易、及び外国直接投資の流れに関する公表されたデータを一貫したものにするための作業部会の着実な努力に留意し、同グループに対し、かかる努力を加速するよう指示した。 |
貿易促進
33. | 閣僚は、作業部会がビジネス/民間部門を以下のような活動に関与させることに積極的であったことを満足の意をもって留意した。 |
─ | 作業部会は、ビジネス関係者の全面的な参加を得て、貿易促進に関する第4回セミナー及び第3回訓練コース、並びに第1回APEC貿易フェアを成功裡に開催した。 |
─ | 同部会は、アジア太平洋ビジネス・ネットワーク(APBネット)の構築を支援した。 |
─ | 同部会は、ビジネス部門により用いられる情報及びデータの収集に従事してきた。 |
産業科学技術
34. | 閣僚は、産業科学技術の問題に焦点を一層絞り「産業科学技術作業部会」に名称変更した同部会のイニシアティヴに留意した。閣僚は、また、メンバー間の技術移転を促進し、産業科学技術に関する情報の流れを促進するAPECテクノマート等、各種の作業計画に勇気付けられた。 |
人材養成
35. | 閣僚は、1994年に作業部会が完了した目覚ましい数のプロジェクト、及び1995年に予定されている20の新しい活動(うち八つは完全に自己資金による)に留意し、閣僚の関心事項に直接応じたプロジェクトの数が増えていることに満足の意を表明した。閣僚は、また、閣僚の宣言において表明された、人材養成のための新たな企画立案メカニズムが、こうしたプロジェクトの立案及び実施に更なる弾みを与えるとの自信を表明した。 |
エネルギー協力
36. | 閣僚は、エネルギー作業部会が、エネルギーのより効率的な送達及び消費を勧奨し、エネルギー利用に伴う環境への影響を緩和するための計画を積極的に実施してきたことに留意した。閣僚は、情報、投資及び貿易のより自由な流れに資する政策討議が技術面にわたる計画を支えるという同部会のイニシアティヴを歓迎し、同グループの作業を指導する14の非拘束的な原則を同部会が支持したことに留意した。 |
海洋資源保全
37. | 閣僚は、作業部会が、アジア太平洋地域における国際機関の活動の調整を促進することを目的として、UNCEDのアジェンダ21の大洋に関する章の実施に関与する他の国際機関との協議を開始したことに留意した。閣僚は、また、赤潮、及び陸地に起因する汚染の原因を監視・規制する沿岸地帯の統合的管理に関する作業部会の努力を歓迎した。 |
電気通信
38. | 閣僚は、作業部会が1993年11月のシアトルでの閣僚による勧告に従って策定し合意したとおり、機器認証の地域的調和のためのガイドライン及び国際付加価値ネットワーク・サービス貿易のためのガイドラインを歓迎し、支持した。閣僚は、また、同部会が、積極的な人材養成計画に重点を置き、電子データの相互交換活動の分野で作業を継続していることを評価した。 |
漁業
39. | 閣僚は、この地域、特に多くの開発途上メンバー経済にとっての漁業の重要性に留意し、また、漁獲技術及び漁獲後の技術、水産食品貿易、水産品の衛生・品質管理、並びに養殖漁業の訓練及び開発における協力分野で作業部会が行っている作業の有益さを認識した。 |
運輸
40. | 閣僚は、効率的な運輸システムが、地域のインフラの重要な一部として成長と開発の促進に果たす役割の重要性に留意した。閣僚は、運輸部門の更なる改善のための足掛かりとして、地域の運輸システム及びサービスに関する調査が完了したことを歓迎し、また、地域の運輸密集地の問題に現在取り組んでいる同部会のプロジェクトを賞賛した。閣僚は、運輸部門の中小企業に対する規制緩和の効果についての同部会の閣僚への報告を評価した。 |
観光
41. | 閣僚は、観光作業部会が閣僚に提出した、APEC地域の開発における観光部門の果たす重要な役割及び将来の作業の優先分野を明確にしている声明に留意した。閣僚は、同部会がこれらの優先分野における活動を継続し、更に発展させていくことを勧奨した。 |
首脳の経済ヴィジョン及びイニシアティヴの実施
APEC首脳の経済ヴィジョン声明、1993年:テーマ毎の進捗状況 | |
42. | 閣僚は、「APEC1994年作業計画:首脳の優先課題及び諸問題に関する進捗状況」と題するカナダによるペーパーの提出に謝意を表明した。閣僚は、同ペーパーが、シアトルにおける首脳のイニシアティヴにAPECの幅広い活動を関連させつつ、同活動の幅及び奥行きにつき有益な調査を行っていることに留意した。閣僚は、この報告の発表をAPECの活動に対する一般の理解に資するものとして支持した。
ブレーク島で表明された首脳のイニシアティヴの進捗状況 1. 太平洋ビジネス・フォーラムの創設 |
43. | 閣僚は、このフォーラムによって完了された作業を歓迎した。(PBFについての閣僚のコメントの全貌は「太平洋ビジネス・フォーラム報告」の項目で述べられている。)
2. 大蔵大臣会合 |
44. | 閣僚は、APECの大蔵大臣がハワイのホノルルで1994年3月18日-19日会合し、最近の経済発展、資本の流れ及び金融市場問題等の相互に関心のある分野について、インフラに対する民間の融資に焦点を当てつつ、対話を一層進展させると合意したことに留意した。閣僚は、1995年4月15日-16日にインドネシアにおいて第2回会合を開催するとのAPECの大蔵大臣の決定を歓迎した。
3. APEC教育プログラム |
45. | 閣僚は、多くのAPECメンバー経済の参加を通じたプログラムの実現に向けた進展を歓迎し、メンバー経済間の結びつきの強化における教育面での連繋の重要性、特にメンバー経済におけるAPEC研究センターに関する進展に留意した。 |
46. | 閣僚は、1994年9月11日-16日韓国の済州島において「繁栄する太平洋時代に向けて」とのテーマの下にワークショップが開催され、APEC次世代プログラムが発足したことを歓迎した。米国は、1995年のシアトルにおける第2回APEC次世代プログラム・ワークショップの開催を申し出た。
4. APECビジネス・ボランティア・プログラム |
47. | 閣僚は、タイが本プログラムに関するセミナーを開催し、同プログラムの目標を推進する方途につき意見の一致を見たことを賞賛した。右方途とは、とりわけ拠点をメンバー経済内に創設することであり、その拠点がメンバー経済のニーズ及び専門知識を明らかにし、他の拠点とのネットワークを構築し、また、本プログラムに関する情報発信の中心として機能することである。
5. 非拘束的な投資原則 |
48. | 閣僚は、シアトルにおけるAPEC経済非公式首脳会議のイニシアティヴに対応して準備された非拘束的な投資原則を支持した。これらの原則は、APECによる投資に関する作業の重要な面をなす。閣僚は、これらの原則を歓迎し、また、CTIに対し、メンバー経済間の投資を促進するために、ビジネス界の積極的な関与を得て、投資の問題に関する作業を継続するよう指示した。
6. エネルギー、環境及び経済成長 |
49. | 閣僚は、閣僚に対する3Eについての日本の報告を賞賛した。閣僚は、この地域におけるエネルギー需要の増加及び環境問題の重要性の増大につき討議し、3E及び右を同時に達成することの重要性に留意した。閣僚は、日本のペーパーがエネルギー作業部会の将来の活動を定義する上で有益であることに留意した。 |
50. | 閣僚は、また、報告で指摘されたエネルギー需給の地域的構造の改善についての将来的課題を検討し、情報交換、共通の理解の醸成及び政策討議においてAPECの果たす重要な役割について討議した。
7. APEC中小企業技術交流・訓練センター |
51. | 閣僚は、中小企業のための技術交流及び訓練という2本立ての戦略を通じた中小企業の国際競争力強化プロジェクトが検討され実現に向け進展したことを歓迎した。
8. 中小企業大臣会合 |
52. | 閣僚は、日本が中小企業大臣会合を大阪で主催したことに謝意を表明し、また、中小企業は地域の経済的補完性及び開発を向上させる上でますます重要になりつつあるとの同会合の共同声明に同意した。閣僚は、また、人材養成、情報へのアクセス、技術及びその共有、資金の利用並びに市場アクセスに関し、市場指向的な中小企業政策が推進されるべきであることに同意した。 |
53. | 閣僚は、APEC中小企業政策対話にとっての健全な基礎が築かれたことに留意し、また、ビジネス/民間部門と中小企業大臣との合同会合が中小企業大臣会合における討議の実際的価値を明らかに増進したことに留意した。 |
54. | 閣僚は、中小企業専門家会合の中小企業政策担当者によるアドホック会合への昇格に関する中小企業大臣会合の勧告を支持し、また、APECが産業の見通しに関する研究を委託すべしとの更なる勧告とともに、同アドホック会合の付託事項を支持した。閣僚は、1995年オーストラリアにおいて第2回中小企業大臣会合を開催するとの決定を歓迎した。 |
55. | 閣議は、訓練及び支援計画の創設等、APEC中小企業育成に対する日本の自発的貢献を歓迎した。 |
機構問題
APEC事務局 | |
56. | 閣僚は、第2年次の事務局運営におけるルスリ・ノール大使及び事務局スタッフの作業を感謝をもって留意した。閣僚は、APEC作業計画の促進・調整、並びにメンバー経済間及び各種委員会と作業部会との間の情報交換の促進における事務局の重要性を強調した。 |
57. | 閣僚は、事務局に関する当面の取決めが終了しつつあることに留意した。この点に関し、閣僚は、高級実務者会合に対し、進化しつつあるAPECのニーズにAPEC事務局が対応し得ることを確保するように現在の取決め及び事務局の機能を見直し、新たな取決めに関する提言を次回閣僚会議に提出するよう要請した。閣僚は、また、この目的のためのタスク・フォースの設立を承認した。その付託事項は高級実務者会合報告に盛り込まれている。 |
58. | 閣僚は、現在はシンガポール政府により負担されている、現地調達要員の給与及び諸手当、公共料金、並びに建物と事務所設備の維持費用を含む経常経費を、1996年1月1日よりは事務局が負担しなければならないことに留意した。閣僚は、事務局職員人事及び経費負担に関する現在の取決めを見直す必要性につき合意した。閣議は、本件を検討し次回閣僚会議に報告するタスク・フォースを設立するとの高級実務者の勧告を支持した。
参加問題 |
59. | 閣僚は、今回の閣僚会議からチリがメンバーとなったことを歓迎した。 |
60. | 閣僚は、非メンバー経済及び機関のAPEC作業部会への参加問題につき討議した。閣僚は、本問題は、高級実務者が基準及び原則を策定し1995年の閣僚会議に提出するため、再度高級実務者に付託されることを決定した。 |
61. | 閣僚は、この地域の事業活動を促進しうる政策策定のためになされた進展に留意した。 |
62. | 閣僚は、特に、太平洋ビジネス・フォーラム及び賢人会議による貢献、並びにAPECのすべてのレベル、とりわけ作業部会の諸活動へのビジネス/民間部門の参加の増大に留意した。 |
63. | 閣僚は、アジア太平洋ビジネス・ネットワーク(APBネット)の創設を歓迎した。閣僚は、APBネットの作業を、ビジネス/民間部門のAPECプロセスへの関与の具体的実施例として賞賛した。閣僚は、また、この新しいフォーラムがビジネス相互間のネットワーク形成を促進する重要で効果的なチャネルとなり得ることへの期待を表明した。
財政問題 |
64. | 閣僚は、行財政委員会の設立を歓迎し、同委員会の1994年における運営の成功を満足の意をもって留意した。閣僚は、同委員会により作成され高級実務者により勧告された1995年予算案2,227,732米ドルを承認した。閣僚は、また、高級実務者が勧告した1995年の分担金の水準を支持した。但し、閣僚は、行財政委員会がメンバーの分担金の算定基準全般を来年レビューすることに留意した。 |
65. | 閣僚は、行財政委員会に対し、財政問題及び事業・行政効率改善の方策につき検討し高級実務者に対し勧告を行うという有益な作業を継続するよう要請した。 |
その他
ACDS
66. | 閣僚は、APEC通信データベース・システム(ACDS)・プロジェクトの第1段階の完了に関する報告を歓迎し、ACDSがAPECの通信活動拠点及び情報集積庫となる見込みがあることに留意した。 |
67. | 閣僚は、APECの効率を増大しメンバー経済、作業部会、委員会及び事務局相互間の連絡通信を大幅に改善するために、ACDSを十分に活用するよう強く要請した。
環境担当大臣会合 |
68. | 閣僚は、持続可能な開発に関連した債務・環境交換という概念に関するフィリピンの報告に留意した。 |
69. | 閣僚は、1994年3月23日-25日カナダのヴァンクーヴァーで開催された環境に関するAPEC大臣会合の結果を歓迎した。閣僚は、また、1994年8月25日-27日のチャイニーズ・タイペイの花蓮での環境専門家会合で策定された、実施のための提言を歓迎した。閣僚は、高級実務者会合及び作業部会に対しそれらの提言を研究するよう指示し、また、高級実務者会合に対し、環境問題をAPECの進行中の活動に統合することについての進捗状況につき第7回閣僚会議に報告するよう指示した。 |
第7回閣僚会議の準備
70. | 閣僚は、1995年の日本の大阪における第7回APEC閣僚会議の準備に関し、日本が貴重な説明を行ったことに感謝した。 |
将来のAPEC会議開催地
71. | 第7回閣僚会議は、バンコックにおける第4回閣僚会議で決定されたとおり、1995年日本で開催される。第8回及び第9回の会議は、1996年及び1997年にそれぞれフィリピン及びカナダによって主催される。マレイシアは第10回閣僚会議を1998年に主催する。 |
72. | 閣僚及びその代表団は、すべての参加者に対する暖かく寛大なもてなし及び今回の会議のために提供された行き届いた設備と運営に関し、インドネシアに対する心よりの深甚なる謝意を表明した。 |
(注) | この他にも、APEC閣僚会議において、「人材養成枠組み宣言」、「APEC非拘束的な投資原則」、「APEC基準認証枠組み宣言」が発出された。 |
(94年11月15日 於ボゴール)
1. | 我々、APEC経済首脳は、アジア太平洋地域のみならず世界全体において、加速され、バランスがとれ、そして衡平な経済成長の可能性を高めるであろう我々の経済協力の将来の道筋を描くために、本日、インドネシアのボゴールに参集した。 |
2. | 我々は、1年前、米国、シアトルのブレーク島において、我々の多様な経済が、より相互依存的になり、アジア太平洋経済の地域社会に向かっていることを認識し、以下を誓ったヴィジョン声明を発出した。 |
─ | 急速に変化している我々の地域及び世界経済における挑戦に対して協力による解決を見出すこと。 |
─ | 拡大する世界経済及び開放的な多角的貿易体制を支持すること。 |
─ | 我々の経済の間で、財、サービス及び資本が自由に流れることを可能とするために、貿易及び投資に対する障壁を引き続き削減すること。 |
─ | 我々の市民が経済成長の利益を共有し、教育及び訓練を改善し、電気通信及び輸送手段の進歩を通じて我々の経済を結びつけ、そして我々の資源を持続可能な方法で使用していくよう確保すること。 |
3. | 我々は、先進経済、新興工業経済及び開発途上経済を含む、経済的に多様な我々の地域の相互依存性が増大しているとの認識に基づき、アジア太平洋経済の地域社会のためのヴィジョンを定める。アジア太平洋の先進工業経済は、開発途上経済に対し、経済成長と開発の水準を一層高める機会を提供する。同時に、開発途上経済は、現在新興工業経済が享受している繁栄の水準を達成することを目標として、高い成長率を維持するために尽力する。そのアプローチは、持続可能な成長、衡平な開発及び国家の安定という3つの柱を含む一貫した包括的なものとなる。アジア太平洋の経済の間の発展段階の格差縮小は、すべてのメンバーに利益をもたらし、アジア太平洋全体としての経済発展の達成を促進する。 |
4. | 21世紀を控え、APECは、平等なパートナーシップ、責任の共有、相互の尊敬、共通の関心及び共通の利益に基づき、以下の点につきAPECが主導していくことを目的として、アジア太平洋地域における経済協力を強化する必要がある。 |
─ | 開放的な多角的貿易体制の強化。 |
─ | アジア太平洋における貿易及び投資の自由化の促進。 |
─ | アジア太平洋における開発協力の強化。 |
5. | 我々の市場推進型の経済成長の基盤は、開放的な多角的貿易体制にあり、APECが、多角的貿易交渉のウルグァイ・ラウンドの成果によって生み出されたモメンタムを基礎として、開放的な多角的貿易体制の強化を主導していくのは適切なことである。 |
我々は、APECがウルグァイ・ラウンドの成功裡の妥結をもたらす上で果たした重要な貢献を喜ばしく思う。我々は、ウルグァイ・ラウンドにおける約束を完全かつ遅滞なく実施することにつき意見の一致を見るとともに、ウルグァイ・ラウンドのすべての参加者に対し、同様の行動をとることを要請する。 | |
開放的な多角的貿易体制を強化するために、我々はウルグァイ・ラウンドにおける約束の実施を促進するとともに、ウルグァイ・ラウンドの成果を深化させ、かつ広げることを目的とする作業に取り組むことを決定した。また、我々は、貿易及び投資の一方的自由化の継続的プロセスにコミットすることにつき意見の一致を見た。開放的な多角的貿易体制へのコミットメントの証として、我々は、更に、スタンドスティルにつき意見の一致を見、保護の水準を高める効果を持ち得る措置をとることを控えるよう努力する。 | |
我々は、世界貿易機関(WTO)の成功裡の発足を呼びかける。すべてのAPEC経済によるWTOへの全面的かつ積極的な参加及び支持は、我々が多角的貿易体制の強化に向けて主導していく能力に係わる鍵である。我々は、WTOの非APECメンバーに対し、更なる多角的自由化に向けてAPECメンバーと協力していくことすべてを要請する。 | |
6. | アジア太平洋において貿易及び投資を拡大するとの我々の目的に関し、我々は、アジア太平洋における自由で開かれた貿易及び投資という長期的な目標を採択することに意見の一致を見た。この目標は、貿易及び投資に対する障壁を更に削減し、我々の経済の間における財、サービスおよび資本の自由な流れを促進することによって迅速に追求される。我々は、この目標をGATTに整合的な方法によって達成するとともに、我々の行動は、我々が引き続き完全にコミットしている多角的レベルでの更なる自由化に向けた力強い弾みとなるものと考える。 |
さらに、我々は、アジア太平洋における自由で開かれた貿易及び投資という目標の達成を遅くとも2020年までに完了するとのコミットメントを発表することに意見の一致を見た。実施の速度については、APEC経済間の経済発展段階の違いを考慮に入れ、先進工業経済は遅くとも2010年までに、また、開発途上経済は遅くとも2020年までに自由で開かれた貿易及び投資という目標を達成する。 | |
我々は、世界的な自由貿易を追求することから逸脱するような内向きの貿易ブロックの創設に対する我々の強い反対を強調したい。我々は、世界全体における貿易及び投資の自由化を奨励かつ強化するような方法で、アジア太平洋における自由で開かれた貿易及び投資を追求していく決意である。かくして、アジア太平洋における貿易及び投資の自由化の成果は、APEC経済間のみならず、APEC経済と非APEC経済との間における障壁をも実際に削減することとなる。この点に関し、我々は、GATT/WTOの諸規定に従い、非APECの開発途上国も我々の貿易及び投資の自由化から稗益することを確保するため、これら諸国との貿易に対し特別の注意を払う。 | |
7. | この実質的な自由化プロセスを補完し、支援するために、我々は、APECにおける貿易及び投資円滑化プログラムを拡充し、促進することを決定する。これにより、貿易及び投資に対する行政上・その他の障害が除去され、APEC経済間の財、サービス及び資本の流れが更に促進されることとなろう。 |
貿易自由化努力だけでは、貿易の拡大を生み出すには不十分であることから、我々は、貿易円滑化の重要性を強調する。貿易の利益が企業と消費者双方によって真に享受されるためには、貿易円滑化のための努力が重要である。貿易円滑化は、世界的に最大限の自由化を達成するとの我々の目標を進める上でも適切な役割を有する。 | |
特に、我々は、閣僚及び事務当局に対し、税関、基準、投資原則及び市場アクセスに対する行政上の障壁に関するAPECの措置につき提案を行うよう要請する。 | |
域内における投資の流れを円滑化し、経済政策課題に関するAPECの対話を強化するため、我々は、経済成長戦略、域内における資本の流れ、及び他のマクロ経済上の諸問題に関する有益な協議を継続することに意見の一致を見た。 | |
8. | アジア太平洋経済の地域社会の開発協力を強化するという我々の目的は、APEC経済の持続可能な成長と衡平な発展を達成し、APEC経済間の経済格差を減少させ、また、我々の市民の経済的・社会的福祉を改善するために、我々がアジア太平洋地域の人的・天然資源をより効果的に開発することを可能とする。このような努力は、また、アジア太平洋地域の貿易及び投資の成長を円滑化する。 |
この分野の協力プログラムは、人材養成の拡充(教育・訓練、特に経営管理及び技能の改善等)、APEC研究センターの発展、科学技術協力(技術移転を含む)、中小企業の振興を目指した措置、並びにエネルギー、運輸、情報、電気通信及び観光等の経済インフラを改善するための措置を含む。持続可能な開発に貢献するとの観点から、環境問題についても効果的な協力が進められる。 | |
アジア太平洋地域の経済成長と開発は主として市場により推進されてきており、アジア太平洋の経済協力を支える域内のビジネス部門間の増大する相互の結びつきに基づく。経済開発におけるビジネス部門の役割を認識し、我々は、我々のプログラム中にビジネス部門を組み入れ、そのための継続的なメカニズムを創設することにつき意見の一致を見た。 | |
9. | 我々の協力を円滑化し促進するために、我々は、用意が出来ているAPEC経済が協力のための措置を開始し、実施していくとともに、未だ用意のできていない経済が後日右に参加することに意見の一致を見た。 |
APEC経済間の貿易その他の経済紛争は、意見の一致を見た協力措置の実施や協力の精神に対し否定的な影響を及ぼす。かかる紛争の解決を助け、その再発を防ぐために、我々は、引き続き紛争解決のための一義的な方法であるべき世界貿易機関(WTO)の紛争解決メカニズムを補完するため、自発的な協議による紛争調停サービスの可能性を検討することに意見の一致を見た。 | |
10. | 我々の目標は野心的なものである。しかし、我々は、世界的な貿易及び投資のより一層の自由化を推進するために、APECのリーダーシップを示す決意である。我々の目標は、何年もの努力を要する。我々は、この宣言の日より、協調的な自由化のプロセスを開始する。 |
我々は、閣僚及び事務当局に対し、我々の現在の決定を実施するための詳細な提案を行う準備を直ちに開始するよう指示する。その提案は、APEC経済首脳に対し、検討及びそれに続く決定のために早急に提示されなければならない。そのような提案は、また、我々の目標を達成するに当たってのすべての障害に言及もしなければならない。我々は、閣僚及び事務当局に対し、賢人会議及び太平洋ビジネス・フォーラムの報告に含まれている重要な提言を検討するに当たり、真剣な考慮を払うよう要請する。 | |
11. | 我々は、賢人会議及び太平洋ビジネス・フォーラムの報告に含まれている重要で示唆に富んだ提言に対し謝意を表明する。この報告は、アジア太平洋経済の地域社会の協力の枠組みの中で政策を立案する際に貴重な参考資料として用いられるであろう。我々は、二つのグループが、その活動を継続し、APECの進展の評価及び我々の協力を強化するための更なる提言をAPEC経済首脳に対し提供するよう要請することにつき意見の一致を見た。 |
我々は、また、賢人会議及び太平洋ビジネス・フォーラムに対し、APECと既存のサブ・リージョナルな取極(AFTA、ANZERTA及びNAFTA)との相互関係を点検し、相互にとっての障害を防ぎ、整合性のとれた関係を促進するための方途を検討するよう要請する。 |
APEC経済首脳
ボゴール、インドネシア
1994年11月15日
(94年11月29日)
1. | オ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、日本国政府の招待により、1994年11月27日より12月1日まで日本国を公式訪問した。 |
東京滞在中、オ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、村山富市日本国内閣総理大臣と会見を行った。 | |
河野洋平日本国副総理兼外務大臣とオ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一首相との会談が行われ、その際、日露関係の諸問題及び双方にとって関心のある国際問題が話し合われた。さらに、同第一副首相は、武村正義大蔵大臣、橋本龍太郎通商産業大臣及び高村正彦経済企画庁長官と会談するとともに、日本の国会議員及び経済界の指導者とも一連の会見を行った。 | |
2. | 河野洋平日本国副総理兼外務大臣及びオ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、日露関係を真のパートナーシップの水準まで引き上げるために、両国関係全般を均衡をとりつつ拡大するよう努力するという両国政府の決意を確認した。 |
双方は、そのために、1993年10月のべ・エヌ・エリツィン・ロシア連邦大統領の訪日の際に署名された「日露関係に関する東京宣言」及び「日本国とロシア連邦との間の貿易経済及び科学技術の分野における関係の今後の展望に関する宣言」に述べられた諸合意を一貫して実行する決意を表明した。 | |
これに関連して、双方は、二国間関係の発展及び一連の国際問題についての協力のために、日露間の政治対話をあらゆるレベルにおいて引き続き発展させ、活性化させることの重要性を指摘した。 | |
3. | 河野洋平日本国副総理兼外務大臣及びオ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、第二次世界大戦後半世紀を経て、欧州において平和と協力を確立するための客観的条件が生じていることを高く評価し、来る第二次世界大戦終了50周年に関連して、日露関係においても過去の負の遺産が克服されなければならないとの共通の認識を表明した。この関連で双方は、1993年10月に両国首脳により署名された東京宣言、なかんずく第2項に依拠しつつ、平和条約を早期に締結するために更に一貫して前進していく両国の意図を確認した。 |
4. | 河野洋平日本国副総理兼外務大臣及びオ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、日露両国間で当面の問題となっている沿岸操業における漁業協力の発展について双方の合意ができる限り早く得られることが望ましいことにつき共通の認識に到達した。これに関連して、双方は、本問題に関する双方にとって受入れ可能な合意の達成を目的とし両国政府の代表者間で交渉を近い将来に開始するという意図を相互に表明した。 |
5. | 本年10月4日以降北西太平洋を震源地として発生した一連の地震により択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島において発生した大規模な災害に係る非常事態に関し、河野洋平日本国副総理兼外務大臣は、被害を受けた住民に対し、日本国民及び日本国政府を代表して哀悼と見舞いの意を表するとともに、日本の緊急人道支援について説明した。オ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、日本国政府及び国民の見舞いと支援に対して謝意を表明した。 |
6. | 日露両国の関係省庁代表者も加わった河野洋平日本国副総理兼外務大臣とオ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相の間の会談では、日露間の貿易・投資環境の改善、対露支援の実施促進、各種経済プロジェクトの実施に関し素直な意見交換が行われるとともに、日露貿易経済関係を如何に発展させるべきかにつき真剣な討議が行われた。 |
双方は、今次訪問が日露間の貿易経済関係に関する対話の発展にとって、重要な意義を有するものであり、二国間対話のレベルを引き上げていく過程での重要な一歩であると評価するとともに、日露両国が有する協力の巨大な潜在性を考慮しつつ、貿易経済分野における両国関係を、平等互恵の原則に基づいて、両国関係全般を均衡をとりつつ拡大するとの考え方の下で、将来にわたり発展させるため、今後とも努力していくことで意見の一致をみた。 | |
7. | オ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、ロシア連邦政府が市場経済への移行を目指す改革を継続するとの断固とした意向を表明するとともに、ロシア連邦政府が進めている経済改革の現状と今後の見通しに関して河野洋平日本国副総理兼外務大臣に説明を行った。 |
オ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、日本国滞在中の会談、視察旅行を通じ、日本国の戦後の産業政策、民営化の経験に触れ、これらの経験をロシア連邦の改革に活用し得る旨表明した。これに対し、河野洋平日本国副総理兼外務大臣は、日本国政府としては、ロシア連邦における市場経済への移行のための技術的支援を引き続き行っていく意向を表明した。河野洋平日本国副総理兼外務大臣及びオ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一首相は、ロシア連邦における市場経済への移行のための改革に対する日本国政府の技術的支援に関する覚書が署名されたことを満足をもって指摘した。双方は、日本側による対露支援の実施を促進するために日露双方がとるべき措置につき意見交換を行い、有意義な進展が見られた。 | |
8. | 河野洋平日本国副総理兼外務大臣は、ロシア連邦の市場経済への移行と世界経済体制への参加を進めることが国際社会にとって重要であるという観点から、日本国政府がロシア連邦が未加盟の国際経済組織への同国の参加又は加盟について適切な協力を行う意向を有することを確認した。この関連で、双方は、ロシア連邦のガット/WTO加入についての日露間の協力に関する覚書の署名を満足をもって指摘した。 |
9. | 河野洋平日本国副総理兼外務大臣及びオ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、1993年10月13日付けの「日本国とロシア連邦との間の貿易経済及び科学技術の分野における関係の今後の展望に関する宣言」を想起しつつ、貿易経済分野における両国間の広範な問題の解決に資するとの観点から、貿易経済に関する協議の場として、双方の閣僚各1名を共同議長とする貿易経済問題に関する日露政府間委員会の設置に関する覚書が署名されたことを歓迎し、この委員会に係る具体的な事項については、外交上の経路を通じて調整することで意見の一致を見た。 |
この関連で、双方は、貿易経済分野における諸問題の解決のためには、日露間の民間レベルにおける対話の活性化も有意義であるとの認識を共有した。 | |
10. | 双方は、「外国債権者に対する旧ソ連商業債務の再編」に関する1994年10月1日付けのロシア連邦政府声明に示された原則を考慮しつつ、日本国の民間輸出業者とロシア連邦政府との間で約11億ドルの無付保の貿易債権に係る救済に関する合意が早急に達成されることに期待を表明した。双方は、かかる合意がロシア連邦の貿易・投資環境の改善に資し、もって日露間の貿易経済関係の拡大に対する障害の除去に大きく貢献するものであることにつき認識を共有した。 |
双方は、1994年6月4日のパリクラブ合意に基づき、1994年に支払期限が到来する日本国政府が保険を引き受けた旧ソ連の日本国に対する商業上の債務の繰延及び支払猶予に関する合意が日露両国政府間で達成され、1994年11月27日に交換公文が署名されたこと及び、日本輸出入銀行関係分の債務の繰延及び支払猶予についても基本合意が達成されるに至ったことを歓迎した。 | |
11. | 双方は、日本国政府が1993年4月15日に表明したロシア連邦に対する日本輸出入銀行による4億ドルの融資枠を用いて、日本輸出入銀行と対外経済活動銀行との間で、現在融資の検討が進められているプロジェクトに関し、貸付契約の交渉が速やかに終了し署名がなされることへの期待を表明した。 |
河野洋平日本国副総理兼外務大臣は、1991年10月8日に日本国政府が表明したロシア連邦に対する人道支援目的の5億ドルの輸銀の融資枠を、極東地域における人道支援目的の案件に優先して用いるとともに、ロシア側の要望も考慮し、上記の4億ドルの融資枠が消化された場合には、ロシア連邦において行われている経済改革に資する、人道支援目的以外の案件に転用することを検討する用意があり、この転用の問題の検討に際しては、極東地域の案件を重視したい旨表明した。
ロシア側は日本側の対応を歓迎した。 |
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12. | 双方は、橋本龍太郎日本国通商産業大臣とオ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相との間で「ルークオイル」社に対する7億ドルの石油増産用資機材供給について貿易保険の付保のための両国間の交渉が再開される旨合意されたことを歓迎した。 |
13. | 河野洋平日本国副総理兼外務大臣は、日本国政府が、ロシア連邦の各地に整備される「日本センター」において、民営化、銀行業務、貿易・投資実務等の研修の実施を通じ、ロシア経済の発展に貢献する人材を育成するために必要な措置をとる意向を表明した。これに対し、オ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、ロシア連邦政府として「日本センター」の意義を高く評価し、かかる日本側のイニシアティヴを歓迎した。 |
14. | 双方は、ロシア連邦における外国企業に関連した税制及び法制の整備がロシア連邦における貿易・投資環境の改善に不可欠であるとの認識で一致した。この関連で、オ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、ロシア連邦政府が、今後とも、これらの問題の解決のため一層の努力を払う意向を表明した。 |
15. | 双方は、1994年11月8-9日にこ新潟市で開催された第2回日露極東知事会議において、日本国の16の都道府県とロシア連邦の極東地域の5地方・州の代表者の間で、地域交流全般、文化交流、技術的支援及び経済交流の各分野の議題に関し、活発な意見交換が行われたことを高く評価し、今後ともこのような両国の地方間の交流が一層発展することへの期待を表明した。 |
16. | オ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、極東及び東シベリアにおけるロシアの民営化された中小企業及び民営中小企業の育成を目的とする5,000万ドル規模の地域企業基金が欧州復興開発銀行(EBRD)の協力の下に設置され運営されるために日本国政府が必要な措置をとってきたこと、また、同基金が1994年11月15日のEBRD理事会で正式に承認されたことを歓迎するとともに、極東及び東シベリアにおける民営化およひ中小企業育成のために日本側が払っている努力を高く評価した。 |
17. | 双方は、サハリン大陸棚石油天然ガス開発プロジェクト(サハリン1)の生産分与契約に関する交渉が早期に終了し、プロジェクトの実施に向け前進が図られることへの期待を表明した。 |
18. | 双方は、極東森林資源開発協力の分野において1991年10月11日に署名された第4次極東森林資源開発プロジェクトの基本契約の基本原則に則り、当事者間で新な合意が速やかに成立することへの期待を表明した。 |
19. | オ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、べ・エヌ・エリツィン・ロシア連邦大統領による村山富市日本国内閣総理大臣のロシア連邦への公式訪問の招待を確認した。 |
村山富市日本国内閣総理大臣は、ヴェ・エス・チェルノムィルジン・ロシア連邦首相の日本国への公式訪問の招待を確認した。 | |
20. | オ・エヌ・サスコベッツ・ロシア連邦第一副首相は、日露間の貿易経済の問題に関する協議を継続するために河野洋平日本国副総理兼外務大臣がロシア連邦を訪問するよう招待した。河野洋平日本国副総理兼外務大臣は感謝の意をもって招待を受け入れた。訪問の期日については、外交上の経路を通じて調整する。 |
(12月15日 於ニュー・ヨーク)
冷戦の終了により、核戦争の恐怖のない世界の創造の可能性が増したことを認識し、ロシア連邦及びアメリカ合衆国が核軍縮努力を行い、第1次及び第2次戦略兵器削減条約に著名したことを歓迎し、両条約の早期発効を期待し、核軍縮分野における他の核兵器国の努力をも歓迎し、核不拡散条約が、1970年の発効以来、世界の平和と安全に寄与してきたことを高く評価し、第48回国連総会で達成されたコンセンサス合意に基づく全面核実験禁止条約のための交渉における進展を歓迎し、
1、核不拡散条約未締約国に対し、核不拡散条約の普遍性の重要性を認識し、可能な限り早期に同条約に加入することを要請し、
2、核兵器国に対し、全面的かつ完全な軍備縮小の枠組みの下における核兵器の廃絶を究極的目標とする核軍縮のための努力を行うよう呼びがけ、また、すべての国に対し、大量破壊兵器の軍縮と不拡散の分野における約束を完全に履行するよう呼びかける。
注: | ASEANはブルネイ、インドネシア、マレイシア、フィリピン、シンガポール及びタイより成り、ASEANの対話国はオーストラリア、カナダ、欧州連合、日本、ニュー・ジーランド、大韓民国及び合衆国であり、ASEANの協議国は中国及びロシアであり、ASEANのオブザーバーはラオス、パプア・ニューギニア及びヴィエトナムである。 |
第1回ASEAN地域フォーラム(ARF)バンコック会合の出席者リストは付属1参照(省略) |