3. 日本国政府が関与した主要な共同コミュニケ等
(1) 対露支援外相・蔵相合同会議議長声明及び付属書(仮訳)
(93年4月15日 於東京)
1. 序
主要先進7カ国の首脳及び首相並びにEC委員会委員長の求めにより,東京サミットの準備の一環として, G7諸国の外務大臣及び大蔵大臣並びに欧州共同体の代表は,ロシア連邦の改革に対する支援を検討するため,1993年4月14日,東京で会合した。この会合は宮澤喜一総理によって開会され,武藤嘉文外務大臣及び林義郎大蔵大臣が共同議長となった。
閣僚は,ロシアの経済的,政治的状況に関し討議を尽くすため,1993年4月15日,ロシアのボリス・フョードロフ副首相兼大蔵大臣及びアンドレイ・コズイレフ外務大臣と会合し,国際社会がロシアの改革プログラムをいかにして最も適切に支援し得るかを検討した。ロシアの同僚は,改革を前進させるとのエリツィン大統領とロシア政府の決意を再確認した。彼らは,ロシアの努力を補完する形で改革プロセスを支援するとの我々の決意を歓迎した。
2. ロシアの改革への支援
ロシアは,エリツィン大統領の指導力のもと,民主的社会を構築し市場経済を確立し国民の福祉を増進することを目指した広範な移行プロセスに着手した。ロシアは,過去2年間に大胆かつ際立った進展を見せた。民主化に向けたロシアの改革と進展は,世界平和にとり不可欠である。我々は,民主的,安定的で,経済的に強力なロシアが民主主義国家の共同体及び世界経済の中にしっかりと統合されることを望む。我々は,G7とロシアが国際問題に関し,引き続き責任をもって建設的に協力していくとの自信を有している。
ロシア国民自身が経済及び政治改革の第一義的責任を負わなければならない。ロシアにおける市場経済の発展は,ロシア国民による困難な調整を要する長くて険しい作業となろう。我々は,移行期に不可避な諸困難に取り組むにあたっての我々の支持をロシア国民に対し保証する。我々は,パートナーシップ及び自助努力を助けるとのミュンヘン・サミットにおいて定められた原則に基づいた永続的な協力関係を発展させるため,ロシアと共に努力する決意を持ち続けている。我々の支援は,実用的で目に見える,具体的,効果的なものであり,ロシアの受入れ能力に合わせて策定され,改革の進展に対応したものとなろう。
我々は,通貨の安定と民営化を含む一層の構造改革との両方が決定的に重要であるとのロシア政府の認識を歓迎する。適当な法的,行政的枠組みを含む民間投資及び民間のイニシアティヴのための良好な環境は,経済の変革のために決定的に重要である。輸出市場へのより良いアクセスは,ロシアの構造改革にとって欠くことができない。
3. 二国間及び多数国間の行動
我々は,付属書に示されたとおり,我々の二国間の努力と密接に関連している一連の多数国間の行動に合意した。我々諸国及び国際機関の相互の緊密な調整並びにロシア当局との緊密な連絡が必要となろう。
ロシアは,特に困難な状況を現在経験しつつある。我々は,ロシア以外の移行期にある経済圏が抱えている厳しい課題も十分承知している。それらの経済圏も引続き我々の支援を信頼することができる。
ロシアの改革プログラムの成功は,全ての国々の利益となる。我々は,他の国々に対し,我々が本日とった行動に力を貸すことを奨励する。
4. 次の段階
東京における我々の会合は,7月に東京で開かれる我々とエリツィン大統領との会合の基礎を整える助けとなった。主要先進民主主義7カ国の元首及び首相並びに欧州共同体委員会委員長は,引き続きロシアの動向に注視する。彼等は,7月に有益な検討が行われることを待望する。
付属書
ロシアに供与される支援
1. IMFによるマクロ経済安定化支援
マクロ経済安定化へ向けた進展,特に通貨と信用の拡張をコントロールの下に置くことによりロシアの高いインフレ率を低減することは,ロシアの経済改革の成功にとって最も重要である。
我々は,IMFがこの分野においてより積極的な役割を果たすことを奨励するとともに,IMFが安定化に向けての進展に対し具体的な支援を提供する用意があるべきことに合意する。
(1) | 我々は,移行期にある国々を支援し得るものであって,30億ドルを上限とし二つのトランシュに分けて引き出せる資金支援をロシアに対し供与し得る,新たなIMF「体制移行ファシリティー」を創設するとの提案を心から歓迎する。 |
我々は,政策表明文書においてロシアが適切な調整政策を採用するとの政治的コミットメントを行ったときに第1トランシュが支払われるよう要請する。 | |
第2トランシュは,スタンド・バイ取極への道を開くよう,インフレを抑制するための金融政策に焦点を合わせた政策の実施に十分な進展が見られたときに支払われるべきである。 | |
(2) | IMFとロシアができるだけ早期に,また,いかなる場合でも1993年10月1日以前に,包括的マクロ経済安定化プログラムに基づき,経済安定化のためのより強力な支援として最大41億ドルのスタンド・バイ取極を作成することを強く奨励する。 |
(3) | 我々は,マクロ経済状況が安定化した際にはルーブル市場への信任を高めるための60億ドルの為替安定化基金を利用可能にするとのコミットメントを再確認する。 |
2. 世界銀行による構造改革への支援
(1) | 構造改革措置は,市場経済の構築に不可欠であり,マクロ経済安定化の文脈において最も効果的に実施できる。 |
(2) | 世界銀行は,長期的支援の提供者として,ロシアの構造改革及び部門別の改革への支援を率先して行うのに適した立場にある。 |
(3) | 我々は,ロシア当局に対し,世界銀行との協力を強化するとともに,昨年分の輸入再建融資枠の下での資金の引出による既存の支援策の活用,追加的な5億ドルの協調融資付きの石油部門向け5億ドルの融資交渉の可及的速やかな妥結等の努力を加速するよう求める。 |
(4) | 我々は,第2次緊急輸入融資を含め,新たなIMF「体制移行ファシリテイー」と並行し,構造改革及び部門別の改革への支援を強化する世界銀行の努力を支持する。我々は,エネルギー,農業,住宅等ロシアの国民に直接的な利益をもたらす多数の重点部門における投資,制度面の強化,及び改革を支援するため,世界銀行がこの先15カ月の間に新たなコミットメントにおいて最大40億ドルを借款の形で供与する意向があることを歓迎する。 |
3. 主としてEBRDを通じた中小企業への支援
(1) | 中小企業は,ロシアにおける民間部門の発展にとり決定的に重要である。EBRDは,この分野において中心的役割を果たすべきである。 |
(2) | 我々は,EBRDに対し,我々と緊密に協力しつつ,ロシアの中小企業を振興するための3億ドルの基金を半額は自己資金からの出資により創設するよう求める。我々は,他の諸国に対しこの基金へ拠出するよう要望する。我々は,EBRDに対し,ロシア中小企業銀行を創設するための基礎を準備することも要請する。 |
4. 大企業の民営化への支援
ロシアにおける構造調整の最重要分野の一つは,大規模企業の再編と民営化である。我々は,東京サミットに報告するため,例えば二国間の資金と国際開発金融機関の資金との組み合わせによるものも含め,このプロセスに対する最も良い支援の方法を探究する作業グループを設置することに合意する。
5. 債務繰延べ
我々は,旧ソ連の債務繰延べに関し,1993年4月2日,パリにおいて成立した19カ国の債権国とロシアとの間の合意を歓迎する。これは,150億ドル以上の支援を意味し,債権国の予算に重い負担を課すものである。この救済は,現段階の改革プロセスにおける国際収支上の困難を大幅に緩和し,信用力の維持と新たな資本の流入への道を開く。
6. 輸出信用機関の活動と協力
(1) | 輸出信用機関の活動は,我々のロシア支援の主要な資金源となる。 |
(2) | 輸出信用機関の融資がロシアの構造改革,特にエネルギー等の基幹部門の産業再編を支援するようなものであることを確保することは,重要である。 |
(3) | この目的のため,世界銀行と輸出信用機関との間に協力の機会が設けられることは、極めて望ましい。 |
(4) | 我々は,輸出信用機関が実行可能なプロジェクトに対し100億ドル程度の額の輸出信用や保証を供与することができるものと信じる。 |
7. 貿易の拡大
国際市場に対するロシア産品のアクセス改善は,ロシアの構造改革を大いに強化する。我々は,自国市場を一層開放する措置をとる意図である。我々は,GATTへの加入を通じたロシアの国際貿易体制への完全な組入れに向けロシア当局と協力する。ロシアが効果的な輸出管理を実施するならば,先端技術の分野における既存の貿易規制(ココム関連規制を含む)を徐々に自由化すべきである。
8. エネルギー部門
我々は,ロシアにおいてエネルギー部門の民間投資及び貿易を促進するような環境が速やかに創出されるよう求める。我々は,これに合わせ,自国の関係企業に対しロシアのエネルギー部門向け投資の拡大を奨励する意図である。我々は,エネルギー憲章条約の早期締結の重要性を強調する。
9. 原子力の安全性
(1) | 最近の事故は,ロシアの原子力発電所の安全性を向上することの緊急性を浮き彫りにした。このためには先ず第1にロシア自身の決然たる行動を必要とする。我々は,ミュンヘン・サミットにおいて合意された多数国間行動計画の全面的かつ時宜を得た実施を通じ協力するとの約束をしている。安全性向上のための具体的計画は,遅滞なく着手される必要がある。 |
我々は,早期かつ実質的な安全性向上の達成のため,改善されたG24の調整メカニズムを通じて作業を行う。我々は,また,EBRDにより運営される「原子力安全基金」がこの目的を追求するために十分活用されることの重要性を強調する。我々は,国際社会に対し,この基金に拠出を行うことを求める。我々は,「原子力安全基金」の運営に関するEBRDとG24との間の緊密な協調の重要性を強調する。我々は,世界銀行及び国際エネルギー機関による調査に基づき,適切な対応策をロシアの同僚と協議し,ミュンヘンで開始されたプロセスを来たる東京サミットにおいて前進させる。 | |
(2) | 放射性廃棄物の海洋投棄は,深刻な懸念事項である。我々は,この問題が更に検討されるべきであることに合意する。 |
10. 核兵器の解体
核兵器解体並びにそれに伴う核物質の処理及び管理に関する支援は,世界全体の安全保障にかかわる問題として,その重要性が認識される。この分野における各国のロシアとの協力は,多数国間の努力の一部を構成する。G7諸国の幾つかは,既にロシアと共に作業を行っている。我々は,この作業をいかに進展できるか,及び他の諸国がこうした努力にいかに関与し得るかにつき検討することを合意する。
11. 科学技術
(1) | 昨年11月に設立協定が署名された国際科学技術センターに関しては,可能な限り早期に活動を開始できるよう必要な諸手続がロシアにおいてとられることの重要性を強調する。 |
(2) | 我々は,宇宙分野におけるプログラムを含め,新たな形の科学技術協力を推進する可能性を認める。 |
12. 食糧及び医療支援
我々は,現在食糧及び医療援助を提供しており,緊急時には従来通りに追加的支援につき引続き考慮する用意がある。
13. 技術支援
我々は,ロシアが地域レベルや地方レベルの具体的プロジェクトや個別の企業にとって利益となるノウハウと経験の広範な流入を引きつけるのを支援する用意がある。経験のあるアドバイザーのチームが現場で長期的協力に携わる一方,より多くのロシア人が訓練のために我々の国に来るべきである。ロシア政府は,技術支援がそれを必要としているところに届くようにする能力を強化すべきである。我々は,世界銀行に対し,より効果的な協調を達成するため,ミュンヘン・サミットにおいて合意された協議グループのプロセスを遅延なく活性化するとともに十分活用するよう求める。
14. 二国間支援
我々は,二国間支援を増額するとのG7諸国の最近の決定を歓迎する。我々の二国間の努力は,ロシアの改革を支援するとの我々共通の戦略の不可分の一部である。我々は二国間の努力を継続する用意があるが,こうした努力は上述の行動計画と密接に連携しこれを補完するものである。
15. 支援の実施
我々の支援の有効性を高めるために一層の努力が必要であるとの認識のもと,我々は,支援が可能な限り効率的に実施されることを確保するよう緊急に作業する。このため,我々は,ロシア当局及び関連国際機関と緊密に協議しつつ,技術協力及び資金援助の活用を促進するための仕組みを確立し,支援の効率的実施につき改善を図るべく障害を除去することに関しロシア当局と協力することを追求する。
ロシアへの支援プログラム
付属書 | ||||
参照パラ | ||||
安定化のための初期支援 | 41億ドル | |||
-DOWNIMF体制移行ファシリテイ- | 30億ドル | 1-(a) | ||
-世界銀行輸入再建融資 | 11億ドル | 2-(c)(d) | ||
全面的安定化プログラム | 101億ドル | |||
-IMFスタンド・バイ融資 | 41億ドル | 1-(b) | ||
-IMF通貨安定化基金 | 60億ドル | 1-(c) | ||
構造改革及び必需品輸入 | 142億ドル | |||
-世界銀行融資コミットメント | 34億ドル | 2-(d) | ||
-世界銀行石油部門融資に対する協調融資 | 5億ドル | 2-(c) | ||
-EBRD中小企業基金 | 3億ドル | 3 | ||
-輸出信用機関信用及び保証 | 100億ドル | 6-(d) | ||
債務繰延べ | ||||
-公的債務繰延べ | 150億ドル | 5 | ||
-民間債務繰延べ | ・・・ | |||
二国間支援 | ・・・ |
(2) 米首脳会談後の宮澤総理大臣プレス・リマークス(仮訳)
(93年4月16日 於ホワイト・ハウス)
クリントン大統領,
ただ今の暖かいお言葉,そして心暖まる歓迎に感謝致します。
私はこの重要な会談を心待ちにして来ました。大統領と個人的な相互信頼関係を築くことが出来たとの充実感を感じております。私は,日米間の新たなパートナーシップは新たな時代の要請に応えることが出来ると確信しております。
両国間のパートナーシップは世界の一層の平和と繁栄にとり極めて重要です。従って,大統領と私は,サミットとは別に少なくとも年1回は会談することに合意しました。
本日の会談の中で扱った4点につき簡単に申し述べたいと思います。
まず第1に,我々は冷戦後の時代においても日米安全保障条約が引き続き重要である点を確認しました。
第2に,経済分野があります。私は,大統領が指導力を発揮して,財政赤字問題に真正面から取り組んでいることを歓迎しております。日本の93年度予算は,内需拡大に配慮したものです。3日前には,内需を一層刺激するために,日本政府は1,160億ドルにのぼる追加的景気拡大策を決定しました。これは必ず日本の経済成長を加速させるでしょう。私はまた,日本市場へのアクセスを増大する努力を引き続き行っていることを強調しました。更に私の方から,開発途上国に対する日本からの資金供給を円滑にするため,新たな「資金協力計画」に取り組むことを決定したことも大統領に説明しました。
これらの日米両国のそれぞれの努力は,世界経済の成長を確実なものとするために極めて重要なものであります。これらの努力は,両国のパートナーシップの基盤を強化するためにも,極めて重要なものであります。
日米二国間の貿易・経済関係の分野では,私は,大統領に対し,日米両国の経済的繁栄は,深い経済的相互依存関係に基づいていることを強調しました。我々は,自由貿易の原則に基づいた協力の精神によって,この関係を慈しまなければなりません。これは管理貿易や一方的措置の脅しによっては実現できません。日米関係は,ゼロサムではなくプラスサムの関係でなければなりません。私が,米国内のいくつかの傾向に深い懸念を表明したのは,かかる文脈においてです。私は,日本市場へのアクセスを増大する努力を継続する日本政府の方針を説明しました。しかしこれは,米国が自由貿易体制の下で競争力を強化し輸出を促進する努力と相俟って行われる必要があります。
ウルグァイ・ラウンド交渉については,これを失敗させる訳には行きません。7年を経た今,我々は更なる交渉を通じて現実的な合意を実現しなければなりません。
両国の経済面での新たなパートナーシップを前進させることが重要であるとの認識の下,我々は,基幹産業における貿易と投資の流れを促進できるような両国の構造問題及びセクター別の問題に日米両国が対処するための,及び,環境,テクノロジー,人的資源の開発等の分野における我々の協力を拡充していくための新たな枠組みを構築していく必要があります。向こう3カ月以内に,大統領と私は,このような新たな枠組みが構築されることを期待致します。
第3番目に,ロシアについて触れます。我が国は昨日東京で閉幕したG7外相・蔵相合同会合及びその後のロシアの閣僚との会合の議長国を務めました。私は,クリントン大統領と何度か電話で会談し,この会合の準備のために大統領と緊密に協力しました。
私はこの閣僚合同会合がロシアの民主主義経済改革,「法と正義」に基づいた外交への改革を支持する強いメッセージを送ったと信じます。この会合の開会式において私は,ロシアに対する18.2億ドルの二国間支援策を発表しました。今日,大統領と私は,ロシアがデリケートな移行期間を経験するに際し,この会合の結果を踏まえこれを如何にフォローアップすべきかにつき意見交換を行いました。
第4番目に,アジア・太平洋地域のダイナミックな成長は全世界にとり恩恵を約束するものであります。しかし我々は,この地域が危険と不安定を伴う変化を遂げつつあることも念頭に置いておかなければなりません。米国のプレゼンスと日米安全保障条約はこの地域にとって欠くことのできない安定要因であります。私は大統領に対し,日本が1993年には46億ドルに達する接受国支援を継続していくことを伝えました。日本としては,この地域における対話と協力を通じて地域の一体感と安心感を高める努力を米国と共に行う考えです。
最後に,個人的な印象を述べたいと思います。過去半世紀にわたり,私は日米二国間関係に様々な形で携わってきました。世界が歴史的な変革を迎えている時に登場したこの偉大な国の若き新指導者と話をし,私は日米両国が新たなパートナーシップによって協力し,全ての人にとりより良き世界を築いて行く限りない可能性を持っていることにつき,明るい展望を持つことができました。ありがとうございました。
(93年6月3日 於パリ) | ||
1. | OECD閣僚理事会は,1993年6月2日及び3日に開催された。議長はオーストラリアのジョン・ドーキンズ大蔵大臣が務め,副議長はドイツのギュンター・レクスロート経済大臣及びフィンランドのペルッティ・サロライネン外国貿易大臣兼副首相が務めた。会合に先立ち,議長は,OECDの経済産業諮問委員会(BIAC)及び労働組合諮問委員会(TUAC)との協議を行った。両委員会は,閣僚の検討のため,文書を提出した。 | |
閣僚は,改善された雇用展望を伴った力強い持続的成長の回復の必要性を取り上げた。閣僚は,彼らの国々が直面する大きな挑戦に取り組むための協同行動に合意した。閣僚は,OECD地域における成長が不十分であり,また,失業が大多数の国において引き続き増加していることに深い懸念を有する。これらの問題に対処するため,閣僚は,マクロ経済及び構造政策の双方を改善させるための追加的な行動をとり,また,特に,開放された多角的貿易体制を強化することにより,国際協力を拡充する決意である。 | ||
閣僚は,成長及び雇用のための協調的戦略にコミットする。この戦略は以下の項目よりなり,このコミュニケにおいて詳細に述べられている。 | ||
- | 金融・財政政策は,物価の安定及び中期的な財政再建という目標を損なうことなく,存在し得る機会を活用する。 | |
- | 労働市場政策を含む構造改革政策は,技術的進歩及び開放された国際的競争により提供される機会を活用して,OECD経済の,活力のある競争的で効率的な発展を目指す。 | |
- | 引き続き貿易の自由化を進めること,多角的規律を遵守し,また,一層強化すること,及び,最優先課題として,本年末までに,実質的,包括的且つ均衡のとれたウルグアイ・ラウンドの成果を収めること―これは,OECD域内外において,経済に対する信認,成長及び雇用を高める上で,極めて強力な貢献要因となる―に精力的に努力する。 | |
この戦略を追及する過程で,全ての国の世界経済への漸進的統合に対し,有効な支援が与えられる。これは,特にロシアといった移行過程にある経済,及び開発途上国を支援するための協調的な国際努力を含む。 | ||
閣僚は,OECDの,及び,その加盟国が共有する基本的な価値観,即ち,人権尊重,多元的民主主義及び市場経済の,特別の重要性を強調する。閣僚は,現在行われている雇用・失業に関する研究に見られるようなOECDの作業方法及びその複合専門的な性格を評価する。閣僚は,急速に変化する世界がもたらす挑戦により良く取り組み,また,世界全体の持続可能な発展を一層促進するため,OECDに対し,引き続き,その長所をさらに伸ばすとともに,加盟国の国・地方,経済,社会及び文化の各側面における経験の総体的富を踏まえながら前進することを要請する。 |
持続的成長及び雇用の促進
1990年代の大きな挑戦
失業の削減:中心的な目標
2. | 閣僚は,OECD地域における失業者数が本年末までに,3,600万人近くに達するかもしれず,また,1994年に入ってからも当分は顕著に減少しそうにないことに深い懸念を有する。これは,多大な人的及び経済的コストを意味する。閣僚は,彼らの政府が,雇用の展望を改善するための協調的戦略を強化し拡大することにコミットする。 |
3. | この関連で,閣僚は,事務総長から提出された雇用及び失業に関する中間報告,及び,その暫定的な結論に留意する。閣僚は,事務総長に対し,OECDの適当な全ての組織及び必要に応じ他のグループと協議しつつ,引き続き作業を推進し,1994年に具体的な政策勧告を伴った最終報告を完成させることを要請する。 |
4. | 雇用の展望を改善するためには,構造改革を伴ったより高い持続的成長が必要である。以下において明らかにされる全ての措置は,この目標を目指すものである。それらは,相互に補強し合う広範囲の政策を含むものである。それらは,マクロ経済政策と構造政策との間の強化された相互作用を活用しようとするものであり,また,貿易と競争とを通じて,世界経済の統合の進展を踏まえながら前進しようとするものである。高度の社会的な見解の一致は,これらの措置を促進する。閣僚は,各国毎のイニシアティブ,及び,重要なものとして,他の地域等を含むがとりわけOECD地域における,全てのレベルでの強化された国際協力の文脈の中で,実体経済活動及び雇用を増加させるためにOECD地域全体を通じて現在とられている措置を支持し勧奨する。この文脈の中で,閣僚は,EC・EFTA間の共同構想,G7の協力,及びOECDの戦略を補完する他の努力を歓迎する。閣僚は,一層の協調的行動を要請する。 |
マクロ経済政策
5. | 各国経済の相互依存関係が益々強まっていることから,市場,特に金融市場及び為替市場は,各国の政策の適切さ,ひいてはその信頼性を絶え間なく評価するようになっている。各国の政策は,各国の特定の状況からくる要請に適合するだけでなく,国際的に整合的であり,且つ,緊密な国際協力を通じて一層効果的なものとされなければならない。また,全体として,各国の政策は,成長と雇用とにとって好ましく,予測可能で健全且つ安定的な環境を経済主体に提供するようなものでなければならない。 | |
6. | 経済活動の実績が弱くインフレが全般的に低い状況の中では,金融政策は,物価の安定及び低い長期金利という基本的な目標を損なうことなく,短期金利を低下させる可能性を十分に活用することが出来るし,また,活用しなければならない。この関連で,閣僚は,既に行われた金利引下げを歓迎するとともに,状況が許す場合にはそれに応じて金利が更に引き下げられることを期待する。物価の安定も,構造的改善を通じ,追求され,また,維持されなければならない。物価の安定は,逆に,金融政策を操作する余地を広げることとなる。 | |
7. | 金融政策と財政政策との均衡を改善するためには,あらゆるレベルの政府が健全な公的財政を目指した政策により貢献することが同様に重要である。公共部門が良く機能することは,市場経済の繁栄にとり重要である。しかし,大幅な構造的財政赤字は,国民貯蓄を先取し,経常収支を悪化させかねず,さらには,金利を上昇させることにより,生産性の高い投資の減少,及び,経済の減速につながる。これらは,中期的に,各国特有の状況に応じつつ,財政再建を実現することの重要性を示している。 | |
8. | 閣僚は,彼らの政府が,次のような行動をとることにコミットする。 | |
a) | 中期的に,構造的な政府財政赤字を決然と削減する。 | |
b) | 中期的な財政再建の目標を損なうことなく,財政政策のための存在し得る機会を活用する。自動安定化装置は,構造的な財政赤字を拡大する惧れを伴わずに適切な役割を果たしてこれたし,今後も果たせるであろう。これによる一時的な財政赤字は,経済が回復し始めた暁には減少に向かうであろう。 | |
c) | 公共部門の効率性を,適切な場合には民営化を通じ,また,政策の一貫性の強化を通じ,向上させる。 | |
d) | 収入と支出の両面において財政の「質」を向上させる。その際,特に,持続的な経済成長を実現するために,各国の経済の長期的な物的及び人的潜在力を強化する投資を促進する。 |
構造政策の優先事項:多角的体制の強化
9. | 景気回復が持続的なものとなるように,また,とりわけ,長期にわたって雇用が持続的に増加するように,構造改革の推進力を維持し,必要な分野では加速させる。従って,閣僚は,各々の国として,あるいは,多角的枠組みの中で,以下に掲げられる分野において,構造改革に関し一貫した補完的な措置をとることに合意する。また、閣僚は,OECDに対して,特に多角的監視と相互審査とを通じ,構造問題に関する作業を継続し深めることを要請する。 |
貿易政策
10. | 第二次世界対戦の終焉以来,貿易の自由化及び多角的規律の強化はOECD諸国経済の発展を支えてきた。保護主義は,世界的規模で影響を及ぼす。即ち,保護主義は,経済及び労働力の一部を生産性,付加価値及び報酬の低い活動に固定させることにより,生活水準を低下させ,危険な経済的緊張を生じさせ,発展を妨げる。従って,経済に対する信認の回復の基礎的要素の一つは,OECD諸国の政府が開放的な多角的貿易体制の強化に向けて強くコミットすることにより,それが,市場アクセスと公正な競争とを包含する多角的ルールに関する合意された枠組みの中で国際貿易を促進しながら,世界全体におけるインフレなき成長と持続可能な発展を一層促進するために中心的役割を果たせるようにすることである。 | |
11. | 四極貿易大臣会合において示された推進力とOECD閣僚により表明された協同的決意とは,ウルグァイ・ラウンドが本年末までに終結することを希望するのみならず予測することが現実的であることを示した。 | |
12. | 従って,閣僚は,以下に合意する。 | |
- | 1991年12月の最終合意文書案を,モノ及びサービス分野における市場アクセスの実質的な成果を含む最終合意のための基礎として用いつつ,実質的,包括的且つ均衡のとれたウルグァイ・ラウンドの成果を早急に収めることを確保するため,各国毎に及び協同で最大限の努力を払うこと。 | |
- | 多角的規律を遵守するとともにそれを一層強化し,また,自由貿易の原則に反し多角的体制を損なう措置や取決めを用いないこと。 | |
- | 国際貿易における緊張の緩和,及び,多角的貿易体制の効率的な働きに貢献するため,ガット体制,並びに,OECDにおいて利用可能なより非公式なメカニズム及び広汎な専門知識を十分に利用すること。 | |
13. | 多角的枠組みは,貿易に影響を及ぼす新たな進展に対応し,また,それを先取りすることが必要である。閣僚は,OECDに対し以下を要請する。 | |
- | 貿易政策と他の国内政策との境界に生じている新たな諸問題に取り組むこと。(先ずは,競争と投資とに,また環境に関しては,適切で実質的な指針を作成するとともに,関連する多国間の場の交渉ルールに積極的に貢献することを目指した,分析作業に焦点を当てる。)この作業は,ウルグァイ・ラウンド後における多角的貿易に関する課題の中核に位置することが見込まれる諸問題と,政策の選択肢とを,早期に且つ深く理解することに役立つ。 | |
- | 地域統合への重要な動きを監視し分析すること。これは,地域統合が,開放された市場,及び強化された国際競争への貢献により,多角的貿易体制を補完し,支えることを確保するのに資する。閣僚は,貿易委員会と環境政策委員会とにより提出された合同報告に示された,貿易政策と環境政策との統合についての手続面での指針を支持する。 |
農 業
14. | 1987年及び同年以降の閣僚理事会において合意された方針に沿って,農業改革を実行する努力が続けられている。その進展は限られており,且つ,一様なものでなく,多くのことがなされなければならない。OECD事務局の推計によれば,納税者及び消費者から農業部門への移転総額は,1992年には対前年比7%増の計3,540億米ドルとなった。但し,これをECU建てで見るとより緩やかな増加(2%増)を示しており,また,これらのパーセント増は個々の国々の大幅に異なる状況を包含したものである。現在の国内農業・貿易政策の多くは,依然としてコストが大きく,その掲げる目的を効率的に実現していない。それらは,国内及び世界市場をしばしば歪曲し,重大な国際摩擦につながる傾向がある。各国政府は,必要な調整に伴い得る困難を念頭に置きつつも,農業・食糧部門全体の構造調整,並びに,農村地域開発及び環境問題を包含し農業の多機能的性格と首尾一貫した包括的な政策枠組みの下で,合意された農業改革を推進する努力を遂行する決意である。閣僚は,この取組みを支えていく上で,改善された質的・量的な分析,監視,及び,建設的な政策対話を通じて,OECDが引き続き果たさなければならない役割を強調する。 |
産業支援措置
15. | 閣僚は,市場を歪曲し,公的財政への重い負担を意味し,経済を最適な活動形態に満たない状態に固定する危険を生じさせ,また,貿易摩擦を引き起こす危険を生じさせる支持策及び産業補助金を深く憂慮する。閣僚は,OECDに対し,産業補助金及び支持策の分野における透明性及び比較可能性を高めるために既に進行している企画を更に前進させ,また,加盟国における産業に対する公的補助の重要度を測定した結果を提出するよう要請する。これらの企画は,規律を強化する上で役立つ。さらに,閣僚は,造船,鉄鋼,及び,航空機セクター了解の目標に沿った,大型民間航空機のファイナンシングに関する合意を目指して既に長期にわたって行われている交渉を可及的速やかに終結させることの重要性を強調する。閣僚は,また,公的輸出信用及びタイド援助信用の分野における規律の強化に関する最近の合意の実施状況,及び,保証料率設定のための指針原則の策定作業の進捗状況並びに,ヘルシンキ合意における他の諸問題につき,1994年の会合において報告することを求める。 |
海外直接投資及び国際取引
16. | 開放的で明確で無差別で安全且つ安定的な制度を海外直接投資に提供することは,企業活動における経済に対する信認,及び,雇用の創出にとって不可欠である。閣僚は,「より広範な投資インストルメント」についての実現可能性調査が持続的なペースで遂行され,可能であれば1994年会合までに終了することを希望する。さらに閣僚は,国際的なサービス取引の分野において自由化を加速すること,及び,これらに対する課税に関する諸問題を検討することの必要性を強調する。閣僚は,国際取引における不正支払を防止するための勧告案に関し,OECDで行われている作業を歓迎する。閣僚はまた,OECD域内において合意された,多国籍企業の利益の配分及びその課税のための原則を再確認する。この文脈の中で,閣僚は,国際的に合意されているアームス・レングス基準の重要性を支持する。閣僚はまた,資金洗浄との闘いのための地球的規模での協力的行動が引き続き重要であることを再確認する。閣僚は,金融活動作業部会(FATF)の参加各国において,効果的な抑止策を実施していく上で大きな進展が見られることを歓迎し,また,これらの措置の適用の拡大を期待する。 |
労働市場及び社会政策:人的資源開発
17. | これらの領域において,インフレなき持続的成長と雇用とのための包括的な戦略に基づく,決然とした行動が必要である。事務総長の雇用・失業に関する中間報告はそれを指向している。閣僚は,彼らの政府が必要な改革を一層推進することにつきコミットするとともに,OECDに対して,個々の国の多様な経験を十分に活かせるよう,積極的な労働市場政策を含むこれら全ての分野において,分析,監視及び討議を活発に進め,この努力を手助けすることを要請する。閣僚は,特に以下の必要性を強調する。 | |
- | 失業を増加させることなく我々の経済が適応しなければならない急激な環境変化がもたらす要請に対応するために,効果的に結合され,首尾一貫した社会及び労働市場に関する政策と慣行とを確保すること。労働市場の流動性,柔軟性及び効率性は,かかる観点から全て重要である。それらは,公共政策の関連する全ての側面において焦点となるべきであるとともに,適切な場合には,企業レベルにおいても実現されるべきである。 | |
- | 労働者の労働市場への効率的な参入及び再参入を目的とした積極的な労働市場,社会政策の有効性を促進し高めること。雇用創出において民間部門がその役割を十分果たせるようにすること。女性の労働市場への完全参加を促すこと。長期失業者と不利な立場にあるグループに特別の注意が払われるべきである。 | |
- | 職を持つ者及び持たない者の双方を対象としつつ,企業内をも含んだ,全てのレベルにおける教育,職業訓練及び再訓練を継続的に改善することにより, | |
- | 人的及び職業的潜在能力の完全な発揮に必要な技能,姿勢及び価値観を市民に身につけさせ, | |
- | また,教育及び職業訓練制度が経済の雇用上の要請の展開に適切に対応するようにする。 | |
- | 賃金と生産性との間のより密接な関係の確保,求職や雇用維持への誘因の向上,低技能労働者の雇用展望の改善,及び低技能労働者が高賃金の職業に必要とされる技能を修得することの手助けを目指した改革努力を継続すること。 | |
- | 労働生産性を高めること,及び,そのための公共政策の役割を明確にすること,及び, | |
- | 新技術,及び,労働取決めにおける柔軟性を含む革新的な労働慣行の普及を促進することにより,また,中小規模のハイテク企業等の企業設立を促すような,革新に適した一般的環境を通じて,技能に基礎を置く職業を創出すること。 |
移 民
18. | 移民は,依然として,国際的な課題のうちの主要な問題の一つである。閣僚は,OECDに対して,先般のマドリッド会合と他の国際機関において進められている作業とを念頭に置きつつ,労働市場との相互連関,並びに,開発協力,国際貿易,民間投資及び都市問題といった移民に潜在的に影響を与え得る問題との相互連関を含め,移民の動向及び政策に関する分析を継続することを要請する。閣僚は,また,不法移民がもたらす一連の深刻な問題に,適切な場において,取り組むことの必要性を強調する。 |
環境政策
19. | 長期にわたる真に持続可能な開発のためには,世界規模での協力が必要である。OECD加盟国は,この経済的下降期にありながら,国連環境開発会議(UNCED)の成果の事後点検へのコミットメントを含む持続可能な開発の分野において,指導的役割を引き続き果たす意図を有する。閣僚は,彼らの政府が以下を目指した有効な措置をとることにコミットする。 | |
- | 国家,地域及び国際的なレベルにおいて,環境政策と他の関連する全ての政策との一層効果的な統合及び両立を達成すること。この関連で,閣僚は,環境についての実績審査に関する企画を含む,この分野におけるOECDによる全体的な進捗を歓迎する。閣僚は,OECDに対し,UNCEDに対する事後点検を遂行し,この関連で,消費・生産形態と持続可能な開発との関係につき分析することの実行可能性を検討するよう要請する。 | |
- | 国家,地域及び国際的なレベルにおいて,環境政策と他の関連する全ての政策との一層効果的な統合及び両立を達成すること。この関連で,閣僚は,環境についての実績審査に関する企画を含む,この分野におけるOECDによる全体的な進捗を歓迎する。閣僚は,OECDに対し,UNCEDに対する事後点検を遂行し,この関連で,消費・生産形態と持続可能な開発との関係につき分析することの実行可能性を検討するよう要請する。 | |
- | 各国の措置及び国際的に合意された措置を通じて,温室効果ガスの排出削減を含む費用対効果が高く実現可能な成果を目標に,地球規模の,地域の,及び国内の環境問題に取り組むため,各国の状況を考慮しつつ,規制的手段及び自主的対策と組み合わせながら,利用可能な様々な経済的手段を一層効果的に活用すること。 | |
- | 関連する国際的な法的手段を含む種々の形態の国際協力を通じて,環境保護を促進すること。 | |
- | 環境の保護及び回復を目指した技術の開発・普及に関する,各国レベルでの及び国際的な努力を促進すること。 |
相互依存の世界の中のOECD
20. | 人権,多元的民主主義,及び市場経済の優位性に関し,世界的規模で見解の一致が形成されつつあること,並びに,グローバル化が進み相互依存度の高まっている世界経済へより多くの国が成功裡に統合されつつあることは,OECDが外向きとなることを要請する。 |
21. | 閣僚は,非加盟国により表明されたOECDへの関心に留意する。それら非加盟国のうち加盟の希望を示唆した国の数が増大している。閣僚は,OECDの資源面での制約を考慮しつつも,OECDを開かれたものとする過程を持続するために,現状及びそれがOECDの発展にもたらす結果を早急に検討するとともに,加盟と結びついた全ての責任を果たすことが出来る国との間では,加盟のための交渉を開始することをOECDに要請すべき時が今や来ていると感じている。 |
開発途上国
22. | 多くの開発途上国において,広範で且つ心強い変化が起きつつある。持続可能な経済開発,社会発展,及び貧困の軽減のための環境を整備するため,「良い統治」,人権尊重及び民主化の必要性に対して益々高い優先度が与えられつつある。参加型開発や組織的対応能力の構築にもより大きな関心が寄せられており,また,民間部門及び市場指向型政策はより大きな役割を与えられている。過度の軍事支出のような非生産的支出の撤廃,及び,腐敗撲滅のための闘争における協力の必要性も益々認識されている。これらは,OECD諸国にとっても,また,援助に不可欠な下支えを提供している各国国民にとっても,歓迎すべき変化である。それにもかかわらず,開発途上国の状況は,依然として国により大きく異なっている。いくつかの国においては国際経済への統合が成功しつつある一方で,アフリカの多数の国を含む他の国は引き続き深刻な困難に直面している。広汎な貧困,人口増加,環境破壊,移民,難民,麻薬,エイズ等地球的規模の問題も依然として大きな課題となっている。 | |
23. | このような状況に対応し,閣僚は,多様な開発途上国の自助努力を支援し促進する上で,パートナーシップと責任の共有とに基づく包括的且つ多様な取組みが必要であることを認識する。閣僚はまた,健全な世界経済に対するOECD諸国の特別な責任を認識し,彼らの政府が次のような行動をとることにコミットする。 | |
- | 開発途上国の国際市場への統合を促進するために一層努力する。 | |
- | 自らの政策の策定及び実施に際し,開発途上国の経済成長,環境保護及び社会発展に果たし得る貢献について十分考慮する。また,開発協力政策と他の関連政策,特に貿易,投資,環境及び移民の分野における政策との一貫性を向上させる。 | |
- | 特に最貧国に配慮しつつ,質量両面における開発援助の拡充のためにあらゆる努力を払う。また,新たな要請に対応する一方で,現在の譲許的な開発援助への要請を満たすようあらゆる努力を払う。 |
活力ある非加盟経済
24. | 世界経済において活発な役割を果たしているアジアの活力ある経済(DAEs)(香港,韓国,マレーシア,シンガポール,台湾,及びタイ)との非公式な対話は,実質的で且つ有用なものであった。このような対話は,今年拡大され,アルゼンチン,ブラジル,チリ及びメキシコが含まれるようになった。閣僚は,活力ある非加盟経済(DNMEs)との間のこの対話が深められることを要請する。 |
25. | 閣僚は,パラ21に示された,一般的な取組みの文脈において,メキシコ及び韓国は,過去1年間にOECDの活動にさらに深く関わってきたことに留意した。メキシコよりの,OECD加盟,包括的な政策面での改革,及びOECDへの建設的な参加への意図表明に照らして,閣僚は,OECDに対し,メキシコの早期のOECDへの加盟に向けて,メキシコの加盟条件につき検討するよう要請した。閣僚は,また,韓国のOECDの活動に対する関与の前向きな進展を,相互理解を強め,OECD早期加盟への道を整備するものとして歓迎する。 |
26. | 将来を展望すれば,閣僚は,中国など,他の非加盟経済が世界経済において益々重要な参加者となっており,また,それらの国々の多角的貿易体制への一層の統合が促進されるべきことを認識する。OECDは,これら経済に関し,知識及び理解を深めることを検討すべきである。 |
市場経済への移行過程にある経済
27. | 市場経済への移行過程にある経済(中・東欧,旧ソ連の新独立国家(NIS)及びモンゴル)において,改革は不均一に進展しており,これら経済の状況は益々多様化してきている。これら諸国における改革の成功,及び,これら諸国の世界経済への統合は,極めて重要である。閣僚は,彼らの政府が,二国聞及び多国間の様々な手段を通じて,これら諸国の努力を支援するために,これら諸国と共に働く意図を有することを再確認する。 | |
28. | パラ21に示された一般的取組みの文脈の中で,閣僚は,主として,政策の形成及び統治体制の改革のための技術支援を様々な形で提供することによりOECDがこれまで行ってきた改革過程に対する支援への取り組み方を評価する。「移行期のパートナー(PIT)プログラム」は,これら諸国とOECDとの緊密な関係を促進し,市場経済への移行に成功するよう手助けし,また,各々の国が,実現可能となり次第,OECD加盟のための条件を満たせるよう手助けしながら,1991年6月4日に署名された覚書に示された目的に貢献した。この方向に向かって,既に相当の進展が合った。移行過程にある他のいくつかの国も,同様のプログラムにより利益を享受することができるかもしれない。それ以外の国については,OECDは,それらの国の変化する要請及び特定の優先事項に一層答えるため,その活動を多様化させた。閣僚は,OECDに対し以下のことを要請する。 | |
- | 法的・行政的枠組みの構築,構造改革の促進等の政策分野に,企画の策定の焦点を当て,そのために,これらの諸国との緊密な連携を保ちながら企画を策定し実行すること。 | |
- | 最近ルツェルンで開催された閣僚レベル会合の成果に留意しつつ,中・東欧及びNISの,欠陥を有する産業・原子力設備を原因とするものを含む深刻な環境問題への取組みを手助けすること。 | |
- | 協調強化という共通のコミットメントを念頭に置きつつ,他の国際機関との協力を推進すること。 | |
- | 東京で開催された第2回東西経済・産業・貿易大臣会合の成果に留意しつつ,中小企業等の競争力のある企業部門,軍民転換,貿易,投資等の促進を含め,NISに対する協調のとれた国際支援努力に積極的に貢献すること。特に,その協力を強化し,ロシアとの適切なつながりを形成すること。 | |
- | 技術・金融支援に関する登録制度を引き続き開発すること。各国政府はこれに必要な情報を提供することにコミットしている。 | |
- | その専門知識を十分活用し,先般4カ国との間で開催されたハイレベル会合の例のように,OECD諸国間及び改革過程にある諸国との間の政策討議の場としてのOECDの役割を更に発展させること。 | |
29. | 移行過程にある経済を,世界経済と多国間貿易体制の規則及び規律の枠組みとに統合することを促進するために,閣僚は,これら経済に対しOECD諸国の市場へのより良いアクセスを提供するための努力を強化する必要性を強調する。閣僚は,また,これら経済がこれら経済間における相互に有益な貿易・決済関係を築き上げる必要性を認識している。閣僚は,貿易,海外直接投資,民間部門の発展のための,透明で,安定し且つ無差別な環境の整備を支援することの重要性を強調する。 |
長期的展望
30. | 今世紀の最後の10年間は,大いなる変化の10年であることが判明しつつある。経済のグローバル化,急速な科学技術の進歩,地球的規模での情報の普及,環境に関する共通の懸念,及び,民主主義に向けての広汎な前進の間の相互作用は,人類に対して新たな挑戦と機会とを提供している。同時にこれらの変化は,人間の思考,消費者の態度,技量,生産構造及び政府の行動に継続的且つ急速な調整をもたらすものである。このため閣僚は,加盟国が今後直面せざるを得ない長期的な課題を評価することに関し,又,更なる一般福利と個人の尊重とを実現するために適切な政策対応を行うことに関し,OECDが提供している支援を歓迎する。 |
(4) 1993年IEA閣僚理事会コミュニケ(仮訳)
(93年6月4日 於パリ) | ||
1. | 国際エネルギー機関(IEA)の閣僚理事会が,独ギュンター・レクスロート連邦経済大臣閣下の議長の下,1993年6月4日,パリで開催された。閣僚は,1992年にIEAに加盟したフィンランドと仏の代表団を歓迎した。 | |
I. 共通目標 | ||
2. | IEA加盟国は,1974年,集団的なエネルギー安全保障の強化のための協力の場としてIEAを設立した。エネルギー部門が直面する課題は過去20年間に変化してきた。エネルギー安全保障は依然として主要な目標であるが,ここ数年,エネルギー政策およびエネルギー安全保障にとっての以下の二つの要因の重要性に対する認識の深まりにより補完された。すなわち,エネルギー関連活動の環境に与える影響についての懸念,および異なる国々の経済とエネルギー市場が一層相互依存的になることに伴うエネルギー問題の一層のグローバル化である。 | |
3. | これらの進展に照らし,また今後予想されるエネルギーの需要と供給の傾向に鑑み,IEAの閣僚は,各国のエネルギー政策を策定するための基礎を提供する共通目標に関する声明を発表することが適切かつ時宜にかなっていると確信する。このためには,政府により特に強調される必要があるエネルギー安全保障及び環境保全と整合性のとれた自由かつ開放的な市場の存在が基本的な出発点となる。共通目標を達成する手段は各国の状況に応じて異なり,各IEA加盟国は様々な目標の最適な全体のバランスを自ら決定しなければならない。閣僚は,世界の全ての国がIEA加盟国の共有する目標に同意すれば世界全体の経済発展,エネルギー安全保障,および環境保全が強化されると信じる。 | |
4. | したがって閣僚は,このコミュニケに付属する「共通目標」に対する支持を確認し,非加盟国に対し,彼等がエネルギー戦略とエネルギー政策を策定するための目標として勧奨する。 | |
II. 世界エネルギー需給見通し | ||
5. | 閣僚は,IEAの「2010年までの世界のエネルギー見通し」(本見通しは既存のエネルギー政策に大きな変化はないことが前提)を踏まえ,現在のエネルギー情勢と諸傾向を議論した。本見通しからは三つの主要な点が明らかになる。 | |
- | 世界のエネルギー消費は,2010年において1990年と比べて約50%増加し,OECD諸国の消費は30%増加する。化石燃料は既にエネルギー供給の大部分を占めており,その割合は今後とも世界のエネルギー消費の90%を占めると予想される。かくて,世界全体のエネルギー起源のCO2排出量は2010年までに約50%増加し,OECD諸国のCO2排出量は1990年から2000年の間に約15%増加する見込みである。 | |
- | 人口と経済活動の大幅な増大により非OECD諸国の総エネルギー需要はOECD諸国の需要よりはるかに速い率で伸び続け,2010年までに非OECD諸国の世界エネルギー消費に占める割合は55%となろう。 | |
- | 世界の石油消費は2010年までに約40%増加すると予想される。増加の大部分は非OECD諸国で生じ,OECD諸国の石油需要の世界の需要に占める割合は半分以下に低下する。OECD諸国全体のエネルギー需要における石油の割合は低下を続けるが,OECD諸国の石油輸入は現在の全石油消費の60%から70%に増加し,その増加の大部分は中東からの輸入となる。 | |
6. | 閣僚は,このような傾向がIEA加盟国にとって重大な挑戦を提起していることに合意し,自由かつ競争的な市場の枠組みの中でIEAのエネルギー安全保障を向上させる必要があることを強調する。その際リオ・デ・ジャネイロにおいて署名された気候変動枠組条約,および,市場経済への移行期にある諸国の提起する諸問題を考慮に入れる。閣僚は,以下の諸点に関し個別または協調的な政策行動が強力にとられるべきであることに合意する。 | |
- | 効果的な緊急時対応メカニズムを維持すること。 | |
- | 引き続きエネルギー源の多様化を確保すること。 | |
- | 効率改善に対する障害の引下げと新しいエネルギー技術の一層の導入によりエネルギー効率を強力に向上させること。 | |
- | エネルギー・システムの多様性と柔軟性を保持しつつ,エネルギー活動の環境に対する悪影響を最小化すること。 | |
- | IEA加盟国のエネルギー安全保障と環境上の利害にとって重要な特定の非IEA加盟国との関係を拡大すること。 | |
閣僚は,IEAに対し,上記の諸問題のエネルギー政策面に対する影響につき十分な分析を行うよう要請する。 | ||
III. 緊急時即応体制及びエネルギー源の多様化 | ||
A. 緊急時即応体制 | ||
7. | 石油は,特に運輸部門における格別の重要性に鑑み今後も死活的に重要なエネルギー資源であり続ける。「世界のエネルギー見通し」が対象とする期間において,世界およびOECD諸国のエネルギー需要に対し石油の占める比率は低下していくが,世界の石油消費は40%増加すると予想される。さらに,IEA諸国の石油輸入は増加し続け,その増加の大部分は中東からもたらされ,石油供給途絶に対するIEA諸国の脆弱性は増すと予想される。したがって,IEAは,総合的なエネルギー安全保障の不可欠の要素として緊急時対応能力を維持・改善し,定期的に点検する必要がある。閣僚は,全てのIEA加盟国が緊急時備蓄義務を十分果たすよう求め,加盟国が緊急時備蓄を90日分以上に増加させ,需要抑制措置の効果を改善するよう奨励する。また国際石油市場における非加盟国の重要性が一層増大しつつあることに鑑み,閣僚は,緊急時対応戦略に関する知見を適当な非加盟国に利用可能とするようIEAに要請する。 | |
B. エネルギー源の多様化 | ||
8. | エネルギー部門における多様性と柔軟性は,長期的なエネルギー安全保障の基本的な条件である。部門内および部門間で利用される燃料,またそれらの燃料の供給源は,各国の事情を考慮しつつ可能な限り多様化されなければならない。 | |
9. | 石油:過去数年の間に世界の石油市場は劇的に変化した。しかし,これらの変化は市場の機能を改善する一方,いくつかの主要な生産地域の政治的不確実性は依然として短期的な市場の不安定性と長期的な投資への躊躇の主要な原因となっている。さらに,今後数十年にわたって石油部門における投資需要は大きく,予想される石油需要の増大を満たすための供給面の対応は,政策的枠組みの予見可能性の高まりにより改善されるかもしれない。閣僚は,エネルギー安全保障と環境目標を達成するためには十分な石油生産と精製能力が重要であることを認識し,IEAに対し,地域的および世界的両方の視点から能力の動向,とりわけ特に精製能力に対する環境上の制約の影響に関し,緊密に監視・分析するよう要請する。 | |
10. | 天然ガス:天然ガスの利用は,主に技術面および環境面における進展に対応して,ほとんどのIEA諸国において今後20年間に急速に増大する見込みである。IEA諸国に対し天然ガスを供給している地域の天然ガスの物理的埋蔵量は豊富である。さらに,ほとんどのIEA諸国においては,天然ガスの輸入依存度は石油の輸入依存度ほど高くない。にもかかわらず,天然ガスの供給源はIEA諸国外の占める割合が一層増大しており,いくつかの地域においては天然ガスの輸送体系は石油のそれよりも柔軟性に乏しい。かくて,天然ガス供給が途絶する可能性は増大している。したがって閣僚は,IEAに対し世界全体とIEA地域におけるガスの供給,需要,および送ガス能力において予想される傾向を分析することを要請する。さらに,天然ガス市場が依然として地域的かつ市場間がほとんど接続していない傾向にあることから,閣僚は,IEAに対し,そこから生じる地域的な天然ガスの安全保障の問題を分析することを要請する。 | |
11. | 石炭:「世界のエネルギー見通し」の予測によれば,総エネルギー需要に占める固体燃料の割合は世界全体で約30%,またOECD加盟国で25%の水準でほぼ一定にとどまると予想される。これは1990年から2010年までの世界全体の固体燃料の消費が約45%増加し,この増加の半分以上は中国とインドで生じることを意味している。石炭は,豊富で確実なエネルギー源であり続けるが,その使用は今後環境面からの要請が強まることにより一層影響を受けるであろう。閣僚は,残存する石炭貿易に対する障壁の全般的水準を一層削減するために,適切な地域政策および社会政策を伴った効果的な措置がとられるべきであり,如何なる追加的な障壁やその他の歪曲も生じることを許してはならないと考える。石炭燃焼によって排出される有害物およびCO2はクリーン・コール・テクノロジーの開発と利用により大幅に削減されうることに留意し,クリーン・コール・テクノロジーの導入のためのインセンティブを与え,また障害を除去するべく閣僚は,IEAに対し国際協力,情報交換,および技術普及を拡充するよう要請する。 | |
12. | 原子力:原子力エネルギーは,多くの加盟国において大きな貢献をしており,その結果,IEA諸国の全体的なエネルギー供給ミックスにも大きく貢献している。多くの国の閣僚は,原子力オプションは一次エネルギー供給の多様化の不可欠の要素として維持されなければならないと考える。利用可能な最高の安全水準を維持し,さらに開発すること,とりわけ原子力施設の安全運転,廃棄物管理,廃炉および新型炉の開発への取組みにおける国際協力を継続し強化することが不可欠である。この関連でOECD原子力エネルギー機関の役割が強調された。閣僚は,各IEA諸国はエネルギー安全保障,環境,安全性,コストおよび自国の決定が他の諸国に及ぼしうる影響を考慮した上で,自国の特別の状況に最も適合した発電用燃料の組合せを決定しなければならないことを認識する。 | |
13. | 再生可能エネルギー:OECDの総エネルギー需要を満たすために利用される再生可能エネルギーの割合が比較的小さいのは,技術開発の状況および水力以外のエネルギー源の経済的な実現可能性に関する不確実性に起因する。OECD諸国における水力発電の開発の限界,および現在予見しうる水力以外の再生可能エネルギー源の増加が比較的遅いにもかかわらず,再生可能エネルギーはエネルギー安全保障と環境目的に重要な貢献をすることができる。したがって,閣僚は,再生可能技術の開発,実証および普及を行うため引き続き強力な政府の支援と国際協力が必要であることに関して合意する。 | |
14. | 電力:OECD諸国における電力需要は引き続き着実に伸びており,相当程度の新規発電能力,および,需要面における管理によるエネルギー効率の向上が今後数十年間にわたり必要とされるであろう。したがって,環境に対する影響を減少させる努力を継続しつつ,将来の需要を満たすための新規施設の立地や効率への投資に対する国民の理解と協力を得るべく一層の努力が必要とされる。電力の相互接続と貿易の拡大は,多大な供給保障,経済効率,および一定の場合には環境上の利点を提供する。 | |
IV. エネルギーと環境 | ||
15. | 増大する地球環境問題に対しては,国際的な協調対応が必要であるが,そのような対応は,エネルギー安全保障,環境保護および経済成長の諸目標のバランスをとったものでなければならない。エネルギー問題と環境問題に対する包括的な取組みの採用と,エネルギー政策と環境政策の統合はIEA加盟国の中心的活動となっている。汚染物質および温室効果ガス排出を削減する国内および世界的な解決策は,エネルギー安全保障,エネルギー貿易,経済成長,およびIEAの非加盟国との関係に影響を及ぼす。 | |
16. | 地球的な気候変動問題がエネルギー政策立案者に提起する課題にどのように取り組むかは,継続的な国際的議論の焦点である。「世界のエネルギー見通し」によれば,これまでとられた政策措置にかかわらず,排出削減のために効果的な政策及び計画が早急に確立・実施されないとOECD諸国のCO2排出は2000年までに15%増加するかも知れない。 | |
閣僚は,この様な見通しへの懸念から,可能な行動分野および政策手段の全般について議論した。彼等は,一層の努力が必要であること,また必要かつ可能な限りエネルギー生産と利用の外部費用は価格に反映されるべきであることに同意する。閣僚は,気候変動枠組条約が全ての署名国により速やかに批准されるよう求め,IEAに対し,気候変動枠組条約の実施への貢献を増すことを要請する。 | ||
A. 改善が必要な分野 | ||
17. | エネルギー効率:エネルギー生産と運輸部門を含めたエネルギー利用における効率向上を加速することは,排出抑制に役立ちエネルギー安全保障を促進できる。エネルギー効率の向上には大きな技術的可能性がある一方,その達成には大きな社会的・経済的障壁が存在する。効率性の向上を達成するには市場の力を優先すべきである。しかし,市場の力への依存のみではこれらの障壁を克服するのは難しい。閣僚は,エネルギー効率を改善する機会を実現し,新規のより効率的な技術の導入を促進するべく,政府が産業界と協力しつつ革新的かつ野心的な取組みを行うことが必要であることに同意する。 | |
18. | 非化石燃料:水力以外の再生可能エネルギー技術が寄与するエネルギー量は,その技術的可能性に比べ非常に小さいので,引き続き再生可能エネルギー技術に対する支援が必要である。原子力に関しては,多くのIEA加盟国は,原子力エネルギーの利用はそれが二酸化硫黄,窒素酸化物または温室効果ガスを排出しないが故に,温室効果ガス排出安定化の課題に対する重要な対応を提供すると考える。その他IEA加盟国の多くは,それらの利点は原子カエネルギーの環境面における懸念を相殺しないとの意見であり,原子力を利用しないことを決定した。 | |
19. | 技術:改善された技術の開発と採用は,将来のエネルギー需要を大幅に削減し,その性質に影響を及ぼしうる。政府による技術の促進は,環境問題を緩和・解消するために大きな貢献をなしうる。IEA加盟国間のおよび非加盟国とのエネルギー技術協力を強化することは,技術の進歩を加速させ,長期のエネルギー安全保障と環境保護を向上させるための不可欠の方法である。閣僚は,環境目的をエネルギー技術の研究,開発,および実証に関する国の計画の中に一層統合する必要性とともに,持続可能な開発を目指し知的所有権を尊重した国際的な技術協力・協調を促進させる必要性を認める。この観点から,閣僚は,最近のIEAの天然ガス技術センターの設立に留意した。閣僚は,IEAに対し,以下を分析するよう要請する。(1)新技術の市場への普及に影響を与える要素。なおその際,障壁を特定し政策の選択肢を評価する。(2)気候変動枠組条約の目的を達成するため国際技術協力政策が果たしうる役割。(3)環境政策および他の政府の政策が,新しいより環境に良い影響のある技術の市場参入に対して有する影響。 | |
20. | 各開発途上国や移行期にある諸経済による,地域の状況に適合した最新かつ費用対効果の高いエネルギー技術へのアクセスは,持続的な開発を促進する。世界中においてクリーンで効率的な技術が採用されることは,必要とされているエネルギー効率の向上,および,温室効果ガスと他の汚染物質排出の削減に役立つ。閣僚は,温室効果ガス技術情報交換(GREENTIE)の開始を歓迎し,IEAに対し,この分野におけるエネルギー調査とエネルギー技術に関する国際協力を促進する努力を強化することを要請する。 | |
21. | 非加盟国との協力:「世界のエネルギー見通し」によれば,非OECD地域におけるCO2排出量は,1990年からと2010年までの間に約50%増加し,2000年から2010年までの間にさらに45%増加する。したがって,非加盟国との協力はIEAにとって一層重要な優先事項となる。なぜなら,こうした国々においては経済成長への願望を損うことなく排出増加率を引き下げる可能性が大きく,これはほとんどのIEA加盟国と比べてより高い費用対効果でそれを達成し得るからである。かかる観点から閣僚は,IEAに対し,気候変動枠組条約に従って,信頼できかつ計測可能な非加盟国との「共同実施」活動の影響と便益を評価するよう要請する。加盟国はまた,この目的のために非加盟国との二国間の協力関係を強化することが奨励される。 | |
B. 政策手段:措置の組合せ | ||
22. | 税:エネルギー税および炭素税の潜在的効果に関する経済的分析からは,政策の選択に影響を及ぼす重要な結論が導かれる。分析は,IEA加盟各国が別々にCO2および他の温室効果ガスの安定化という目標を達成するには比較的高い水準の,かつ地域間・国家間で相当異なる水準の税が必要となることを示唆している。とはいえ,炭素税は,エネルギー効率を高め非化石エネルギー源の競争力を改善することにより排出削減に効果的に貢献するかもしれない。 | |
23. | 財政的インセンティブ:様々な理由により財政的および他の金融的インセンティブは,特に先端技術の開発と導入を奨励し,エネルギー効率投資を促進するための適切かつ効果的な手段たり得る。しかし,この種のインセンティブは,エネルギー市場への否定的影響を避けるべく策定される必要がある。さらに閣僚は,化石燃料の価格を生産コスト以下または市場価値以下に抑えるある種の補助金の撤廃が結果として大幅な排出削減につながり,純経済的利益を生み出すことに同意する。 | |
24. | 規制:排出を削減する規制は,ある状況においては税よりも費用対効果が高いかもしれないが,それらは競争を阻害しないように実施される必要がある。この観点から,国際的に協調された規範や基準は有益かもしれない。政府と民間部門との間の自発的合意も効率的たりうるし,場合によってはより好ましい手法たりうる。閣僚は,IEAに対し,関連の規制および自主的取決めの有効性を分析するための方法論を開発するよう要請する。 | |
25. | 個々の政策措置の効果は,IEA加盟国によって異なる。したがって,各国の対応は,その国が直面する状況に対応するために策定される可能な措置が複雑に組み合わされたものとなる。閣僚は,各国の経済発展の段階および各国間の地域的な取極を考慮に入れた加盟国の協調的行動が必要であることに合意する。個々のIEA加盟国の排出削減の努力の効果は,可能な限り比較可能なものであるべきである。閣僚は,IEAに対し様々な政策措置の有効性およびそのエネルギー市場に対する効果を分析し,国別の対応の比較可能性の評価を可能にする基準と方法論を開発するための努力を強化することを求める。閣僚は,既存のIEAの手続の下で,各国の行動の比較可能性を評価するために必要な情報を提供することに合意する。 | |
V. IEA非加盟国との関係 | ||
26. | IEAのエネルギー安全保障の追求は拡大し,今や非加盟国がエネルギー戦略を策定し,非加盟国の発展に貢献し,もって世界のエネルギー安全保障を強化するエネルギー政策を採用することを支援するための非加盟国とのより緊密な接触を含むようになった。これにはいくつかの理由がある。 | |
- | 非加盟国におけるエネルギー需要の伸びは引き続きIEA加盟国の伸びを上回っていることから,非加盟国は世界的なエネルギー需要において一層重要な役割を果たしており,今後もその重要性は高まる。 | |
- | その結果,非加盟国地域は,エネルギー関連の地球環境問題の観点からもより大きな意味を持つ。 | |
- | いくつかの鍵となる分野においては非加盟国からのエネルギー供給は益々増えており,加盟国のエネルギー供給・輸送体系はより非加盟国と結びついたものとなっている。 | |
- | より多くの非加盟国が移行あるいは発展の段階に達しつつあり,これは彼等をOECDの世界により近づけ,彼等とIEAとの協力を促している。 | |
27. | IEAは,非加盟国との関係において引き続きバランスのとれたアプローチをとり,個々の非加盟国との関係をその時点における状況に合わせ,そのような接触がIEAのエネルギー安全保障目的を推し進めることを確保する。この目的を推し進めるため,世界銀行,EBRD(欧州復興開発銀行),OLADE(ラテンアメリカ・エネルギー機構),APEC(アジア・太平洋経済協力閣僚会議)等の他の国際機関とより協力的な接触を発展させることによって「乗数」効果を得ることができる。閣僚は,IEAに対し,引き続き非加盟国におけるエネルギーの動向とそのIEA加盟国にとって意味を分析することを要請する。閣僚はまた,IEA諸国および欧州共同体による非加盟国との二国間の協力活動の重要性を強調する。 | |
A. 中・東欧及びNIS | ||
28. | 閣僚は,中・東欧及びNIS,特にロシアに焦点を当て,これらの国におけるエネルギー部門の進展について議論した。ロシアのエネルギー生産の減少は憂慮すべき事態である。なぜなら,ロシアのエネルギー生産はロシア自身の経済に対してのみならず世界的な石油・天然ガスの供給と多様性に対して重要な貢献があるからである。ロシアの石油・天然ガスの埋蔵量は巨大であり,重要な輸入のために必要な外貨,および経済改革プログラムの資金を提供するために外貨を大量にもたらしうる。 | |
29. | 閣僚は,IEAのNIS支援調整会議に対する貢献,およびG-7により要請された旧ソ連型原子炉が中・東欧及びNISにおいて閉鎖された場合の代替エネルギー源に関する報告書に対する貢献を評価する。閣僚は,利用可能な最高の安全水準の中で原子力設備の稼働を改善し,持続可能かつ長期的なエネルギー政策の策定に対し貢献するためこれらの国と緊密に協力することが必要であることに合意する。 | |
30. | 閣僚は,IEAに対し,中・東欧諸国,ロシア,および他のNIS諸国がエネルギー部門を成功裡に改革することを助けるためこれらの国との協力活動を継続することを求める。閣僚は,これらの国々が安全でクリーンなエネルギー・システムを開発し,省エネルギー・効率向上のための巨大な潜在力を実現することに資する政策的枠組みを創設するために,IEAがこれらの国とともに作業する努力を強化する必要があることを強調する。閣僚は,ロシアが特に石油生産を減少から上向きにするためのエネルギー部門への投資を引きつけるべく,必要な法的枠組みを可能な限り速やかに確立する必要性があることを特に強調する。 | |
31. | 閣僚は,欧州エネルギー憲章の下の(エネルギー憲章)条約が可能な限り速やかに成功裡に完成されることに対する支持を表明する。彼等は,交渉参加者が早急にかつ完全に投資・貿易制度における安定性と透明性を確保するため策定される措置の全般につき受け入れることの重要性を強調した。この条約は,エネルギーの投資および貿易を促進し,エネルギーの効率的でクリーンな利用を促進し,IEA諸国のエネルギー部門と中・東欧およびNISのエネルギー部門とを統合するため重要な役割を果たすことができ,これはより新たな世界的なエネルギーの枠組を創設することの一助ともなる。閣僚は,条約交渉におけるIEAの実質的な支援を歓迎し,憲章の実施に対し,IEAが引き続き積極的に関与することを支持する。 | |
B. アジア・太平洋 | ||
32. | 閣僚は,世界的なエネルギー需要の伸びにおけるアジア・太平洋地域のエネルギーの動向の極めて重要な役割を認識する。閣僚は,韓国との間で継続的に進展しつつある協力関係を歓迎する。閣僚は,IEAに対し,例えばAPECとの間に協力的な接触を適当な形で確立することを通じて,この地域との接触をさらに拡大するための実際的な方法を考えることを要請する。 | |
C. その他の地域 | ||
IEAは,他の地域,特に急速に伸びるエネルギー需要を賄うと同時にエネルギー生産への必要な投資を達成するという大きな課題に直面するラテン・アメリカとの接触も発展させているが,アフリカとも予備的な接触が行われている。閣僚は,これらの発展を歓迎し,IEAに対し,その努力を強化するよう要請する。 | ||
D. 世界的なエネルギー市場参加者間の議論 | ||
34. | 世界的なエネルギー市場の効率的な機能の重要性,および,透明性と情報の流れの役割の重要性を認識し,健全なエネルギー関係を確保するためIEAは非公式な形でのエネルギー市場参加者同士の接触を拡大してきた。湾岸戦争後の市場参加者同士の間の交流の拡大の雰囲気の中で,IEAは,1992年2月に全ての側から市場参加者が集まったエネルギー専門家会合を開催するイニシアティブをとった。さらに,IEAの枠組みの外で二つの閣僚級会合がパリとベルゲンにおいて開催された。閣僚は,エネルギー,環境,および経済発展の間の重要な連携を協力的に取り上げ,望ましい長期的な投資環境を促進するための継続的な努力の一部として,IEAが1993年11月に第二回の専門家会合の主催を計画していることを歓迎する。 |
IEA共通目標
(付属1)
IEA加盟国は,各国の経済におけるエネルギー部門が持続可能な経済発展,国民の福祉および健全な環境に対して最大限の貢献をできるような状況を創造するよう努める。エネルギー安全保障と環境保全は政府によって特に強調されるべきであるが,エネルギー政策を策定する際には自由かつ開放的な市場の確立が基本的な出発点となる。IEA加盟国は,エネルギーにおける地球規模での相互依存関係が強まっていることの重要性を認識する。そのためIEA加盟国は,国際エネルギー市場が有効的に機能することを促進し,全ての市場参加者間の対話を奨励するよう努める。
こうした目的を確実なものとするため,下記の目標に合致するような政策の枠組みを創設することを目指す。
1. | エネルギー部門における多様性,効率性,柔軟性は,長期的なエネルギー安全保障の基本的な条件である。部門内および部門間で使用される燃料や燃料の供給源は可能な限り多様化されるべきであり,非化石燃料,特に原子力と水力は,IEA加盟国全体としてのエネルギー供給の多様化に対して大きく貢献する。 |
2. | エネルギー・システムは,エネルギー緊急事態に対し迅速かつ柔軟に対応する能力を有するべきである。いくつかの場合には,これは集団的なメカニズムと行動を必要とする。IEA加盟国は,IEAを通じて石油供給緊急事態に対し共同で対応しうるよう協力する。 |
3. | 環境面で持続可能なエネルギーの供給と利用は,これらの共通目標を達成する上で中心的な意味をもつ。環境政策の決定が,エネルギー分野に対する影響を考慮すべきであるのと同様,政策決定者は,エネルギー関連活動の環境に対する悪影響を最小化するよう努めるべきである。政府の介入は,実施可能な範囲で汚染者負担の原則に配慮すべきである。 |
4. | 環境面でより受入れ可能なエネルギー源を奨励し,開発する必要がある。クリーンで効率的な化石燃料の利用は,極めて重要である。経済的な非化石燃料源の開発もまた優先事項である。原子力エネルギーはCO2を排出しないため,多くのIEA加盟国は利用可能な最高の安全基準に基づき原子力の選択肢を将来に向けて維持・改善することを希望する。再生可能なエネルギー源もまた一層重要な貢献をしうる。 |
5. | エネルギー効率の向上は,費用対効果の高い形で環境保全とエネルギー安全保障の両方を促進することができる。生産から消費に至るエネルギー・サイクルの全段階においてエネルギー効率を一層向上させる機会は相当大きい。これらの機会を実現するため政府および全てのエネルギー利用者による強力な努力が必要である。 |
6. | 新たな改良されたエネルギー技術の研究,開発,および市場への導入を引き続き行うことは,上記の目的を達成する上で極めて重要な貢献を果たす。エネルギー技術政策はより広範なエネルギー政策を補完すべきである。産業界の参加と非加盟国との協力を含め,エネルギー技術の開発と普及における国際協力が奨励されるべきである。 |
7. | 歪曲のないエネルギー価格は,エネルギー市場が効率的に機能することを可能とする。社会面または産業面の目標を促進する目的でエネルギー価格が人為的に供給コストを下回るように設定されるべきでない。必要かつ実現可能な範囲内で,エネルギー生産と利用に伴う環境コストはエネルギー価格に反映されるべきである。 |
8. | 自由かつ開放的な貿易,および,投資のための確固たる枠組みは,効率的なエネルギー市場とエネルギー安全保障に貢献する。エネルギー貿易と投資の歪曲は回避されるべきである。 |
9. | 全てのエネルギー市場参加者間の協力は,情報と理解を増進し,効率的で,環境面から受入れ可能かつ柔軟なエネルギー・システムと世界的なエネルギー市場の発展を奨励する。これらは世界全体のエネルギー安全保障と環境目的を達成するために必要な投資,貿易,および信頼関係を促進することを助けるために必要である。 |
(イ) 政治宣言(仮約)―より安全で人間的な世界を求めて
(93年7月8日 於東京) 1. 我々7カ国の首脳及び欧州共同体の代表は,自由,民主主義,人権及び法の支配という普遍的原則に対するコミットメントを再確認する。我々が前回ミュンヘンで会合して以来,民主化と経済改革の過程は更に進展した。それにもかかわらず,不安定な事態や紛争が未だに生じており,その多くは過去の原因に根差すものである。我々は,パートナーシップの輪を広げ,より広範な分野にわたる国際協力を増進することにより,より安全で人間的な世界を創り出すために共に努力する決意である。 2. 国際社会は,紛争の予防及び解決のための手段を改善することに積極的に取り組んでいる。国際の平和及び安全を維持するために死活的な重要性を有している国際連合は,変化する国際情勢に適応しつつ,一層強化されなければならない。したがって,我々は,国連の効率性を高めるために現在国連において行われている努力,特に,国連事務総長の「平和のための課題」の文脈における予防外交,平和創造,平和維持及び紛争後の平和構築のための制度面でのより効果的な対応能力を高める努力を支持する。 3. 我々は,平和,民主主義及び安定の促進のための地域協力を強く支持する。我々は,アジア・太平洋地域の諸国が地域の安全保障対話の促進に,より活発な役割を果たしていることを歓迎する。欧州,アフリカ,南北アメリカにおける地域機関は重要な貢献を行っている。 4. ウィーンでの世界人権会議において確認されたように,人権の保護はすべての国の義務である。難民及び避難民の増加,統制を欠いた移民流入の問題並びに少数民族の直面する困難は,国際社会の緊急の関心を必要とし,その根本的な原因を考慮に入れて対処されるべきものである。テロリズムは,特に国家により支援される場合,重大な危険をもたらすものであり,我々は,これに強硬に反対する。 5. 協力のパートナーシップを促進する上で,旧社会主義諸国における改革は一層奨励されるべきである。我々は,民主的で,安定し,経済的にも強力な社会がこれらの国々に生まれることを期待する。我々は,エリツィン大統領及びロシア政府の下で行われている断固たる改革努力を強く支持する。また,我々は,ロシアが法と正義の原則に基づく外交を推進し,国際社会の中で建設的で責任ある役割を引き続き果たしていくことを期待する。さらに,我々は,ウクライナにおける改革過程を支持し,エリツィン大統領とクラフチュク大統領との最近の会談が両国関係の一層の改善の基礎となることを希望する。 6. 大量破壊兵器及びミサイルの拡散の危険と闘うために協力をさらに強化する必要がある。特に,我々は, - 北朝鮮に対し,核兵器不拡散条約(NPT)脱退の決定を直ちに撤回し,国際原子力機関(IAEA)保障措置協定及び「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」の実施を含む不拡散のための義務を完全に遵守することを求める。 - 旧ソヴィエト連邦の関係国に対し,現行の合意に従った核兵器の迅速,安全かつ確実な廃棄の確保を奨励し,その目的のために効果的な支援を行う。 - ウクライナに対し戦略兵器削減条約(START)を批准することを,ウクライナ及びカザフスタンに対し非核兵器国としてNPTに加入することを求める。我々は,また,ミサイル関連技術輸出規制を含む不拡散体制を強化し,効果的な輸出管理を確立するための努力を継続する。我々は,NPTへの普遍的参加並びに1995年における同条約の無期限延長及び核兵器の削減という目的を改めて表明する。我々は,さらに,化学兵器禁止条約未署名国に対する同条約への署名及び生物兵器禁止条約未加入国に対する同条約への加入を呼びかける。 通常兵器の分野においては,我々は,通常兵器移転の透明性を高め,その抑制を図るための重要な一歩として,国連軍備登録制度の実効性を確保するよう努める。 7. 旧ユーゴースラヴィアでの急速に悪化している事態に直面し,我々は,ボスニア・ヘルツェゴヴィナの領土保全及びロンドン会議の諸原則に立脚した交渉による解決へのコミットメントを再確認する。我々は,ボスニアのイスラム教徒を犠牲にする形でのセルビア人及びクロアチア人が一方的に定める解決には同意し得ない。我々は,三当事者の合意が得られない限り,いかなる領土についての解決も受け入れない。もしセルビア人及びクロアチア人が武力による国境変更又は民族浄化を通じボスニアを解体することに固執するのであれば,両者は自らを国際社会の埒外に置くこととなり,いかなる経済支援及び商業的支援,特に復興援助を期待することは出来ない。一般市民保護のために,安全地域に関する国連安全保障理事会の諸決議が完全かつ即時に実施されなければならない。我々は,軍隊の派遣,国連保護隊(UNPROFOR)に対する防空面での支援,財政面及び後方支援面での貢献又は適切な外交措置により,国連事務総長が国連安全保障理事会決議836を実施することを支援することにコミットする。関連する安全保障理事会決議の諸条件が満たされるまで,制裁は維持されるべきである。より強い措置も排除されない。ボスニアへの人道援助の流れは増大されなければならない。 我々は,コソヴォでの状況を深く憂慮し,セルビア政府に対し,欧州安全保障・協力会議(CSCE)長期ミッションをコソヴォ及びセルビア国内の他の場所より退去させるとの決定を撤回し,同ミッション参加者数を相当程度増加することに同意するよう呼びかける。 8. 我々は,カンボディアにおいて成功裡に行われた選挙及び暫定国民政府発足の発表,そして,それに引き続き,パリ協定に従い制定される新憲法に基づき政府が樹立されることを歓迎する。我々は,カンボディアの復興と国内の和解に基づく永続的和平のため引き続き支援する。 9. 我々は,中東において包括的かつ永続的な和平を達成するための努力を完全に支持し,イスラエルとアラブ諸国に対し信頼醸成のため更に方策を講ずるよう呼びかける。我々は,アラブ・ボイコットは終了すべきであることを改めて表明する。我々は,イスラエルに対して占領地に関する義務を尊重するよう呼びかける。我々は,レバノンにおける復興努力を支持する。 我々は,ハイティにおける正統な政府の復活を支持し,この面における国連及び米州機構(OAS)の努力を賞賛する。 我々は,イラク及びリビアに対して,すべての関連する国連安全保障理事会決議を完全に実施するよう引き続き圧力をかけていく決意である。イランの行動には懸念を覚える面もあり,我々は,同国政府に対して,平和と安定に向けた国際的な努力に建設的に参加し,この目的に反するような行為を止めるよう呼びかける。 我々は,南アフリカにおける人種差別のない民主主義へ向けての最近の進展を歓迎する。このような動きは同国の政治及び経済面での国際社会への完全な再統合への道を開くものである。 10. 相互依存の世界においては,パートナーシップが世界の平和と繁栄を構築するための鍵である。我々は,より安全で人間的な世界の形成に資するための新たな努力にコミットし,他の国々に対し,我々の努力に加わるよう求める。
(ロ) 経済宣言(仮訳)―雇用と成長へのより強固な決意
(93年7月9日 於東京) | ||
1. | 我々主要先進7カ国の元首及び首相並びに欧州共同体委員会の代表は,第19回年次サミットのため,東京で会合した。世界の至るところで見られる民主主義と開放的な市場経済に向けての進展は,わずか数年前の我々の最も楽観的な期待をも上回る。最近の歴史的転換の恩恵を十分享受するためには,我々の社会は,多くの挑戦に応えねばならない。即ち,経済回復と雇用創出を達成すること,ウルグァイ・ラウンドを本年成功裡に妥結すること,移行期にある諸国を世界経済に組み入れること,開発途上国を支援すること,そして世界的な成長と環境面での目的とを調和させることである。我々は,我々が共有する価値に基づき,これらの挑戦に取り組む決意である。我々は,特に国際機関を強化することを通じ,国際協力を拡充するとの我々の決意を新たにする。 | |
世界経済 | ||
2. | 我々は,我々の経済の不十分な成長と不十分な雇用創出を懸念する。北米においては景気回復が継続しているが,緩やかなものにとどまっている。欧州は,回復の兆しがある程度見られるものの,依然顕著な景気後退の中にある。日本の経済は,最悪の状況を脱し,今やある程度の景気回復が見え始めている。多くのアジア及びラテン・アメリカの経済は成長しており,そしていくつかの経済は急速に成長しているが,これらの経済は世界経済において一層重要な役割を果たしている。 | |
3. | 我々は,特に失業の水準を懸念する。2,300万人以上が我々の国々で失業しているが,これは受け容れ難いものである。最近の失業の増加分の多くは現下の景気減速に起因しているものの,現在の失業水準のかなりの部分は構造的性格のものである。従って,失業を削減するためには二面戦略が必要である。即ち,インフレなき持続可能な成長を促進するための節度あるマクロ経済政策及び市場,とりわけ労働市場の効率性を改善するための構造改革が必要である。 | |
4. | 我々は,雇用の大幅な増加の創出を図る持続可能な拡大を促進するために合意された,この世界的な成長戦略を実施すべく適切な措置をとりつつあり,また今後もとる決意である。我々は,我々各国の政策が相互に補強し合うことを可能とし,かつこれらを世界経済の強化と回復という我々の共有する目的と両立させることを可能とすべく緊密に協議を行う。我々は,この目的に向けた蔵相間の改善された協力を歓迎する。 | |
欧州は,エディンバラにおいて合意され,コペンハーゲンにおいて強化された成長イニシアティブを精力的に実行しつつある。欧州は,最重要課題として金利の迅速な低下の条件が創出されることを確保するため堅実な財政その他の必要な措置を実施することにコミットしている。 | ||
北米においては,米国で中期的な大幅かつ着実な財政赤字の削減,国内貯蓄及び国内投資水準の向上,並びに長期金利の低下を確保するという,既に相当前に行われるべきであった歓迎すべき力強い行動が現在とられつつある。 | ||
日本は,最近の包括的なパッケージを含め,一連の景気刺激策をとってきた。日本は,長期的な財政の健全性の必要性を念頭に置きつつ,力強い内需主導型の持続的なインフレなき成長を確保するため,必要に応じて財政・金融上の措置を実施する。これは,対外不均衡のかなりの削減という重要な目的に貢献することとなろう。 | ||
またウルグァイ・ラウンドの成功裡かつ迅速な妥結は,投資家及び消費者の信認を高めることにより,景気回復と成長への重要な貢献となる。 | ||
5. | 雇用及び成長の機会を拡大するためには,力強い経済の回復,及び長期的な成長の潜在力に対する障害となっている構造問題に取り組むことが不可欠である。この関連で,我々は,特に以下のような項目を含む広範な構造改革に焦点を当てた,我々の蔵相の報告を支持する。 | |
- | 労働市場の効率性の向上 | |
- | 教育・訓練の改善 | |
- | 貯蓄・投資の促進 | |
- | 多角的貿易システムの維持・改善 | |
- | 補助金の削減 | |
- | 人口の高齢化の経済的影響への取組み | |
- | 医療支出全般のコントロール | |
- | 安定性を確保しつつ進められる金融市場における効率性の向上 | |
- | 環境に関する国際協力の促進 | |
我々は,技術革新,財政の「質」の改善,及び公的部門の効率性向上といった項目と併せ,上記の項目に取り組むことにコミットし,次回サミットにおいて進捗状況を検討する。 | ||
我々は,経済協力開発機構(OECD)の雇用及び失業に関する中間報告を歓迎する。我々は,OECDに対し,構造変化の影響に関する作業を含め,その作業を強化し,次回サミットの前に政策提言を提示することを要請する。我々は,環境政策により提供される雇用創出の機会を強調する。 | ||
6. | 我々の討議の事後点検作業として,我々は,過度に高い失業の原因を探求し,我々の社会の活力を失わせるこの決定的に重要な問題に対する可能な回答を探求するため,我々のハイレベルの代表を今秋の米国の会合に派遣することに合意する。 | |
貿 易 | ||
7. | 多角的貿易システムの維持及び拡大は,世界の成長にとり不可欠である。我々は,あらゆる形態の保護主義を抑制する決意であり,いかなることがあっても多角的で開放的な貿易システムを損なう虞れのあるイニシアティブ及び取決めに頼るべきではないことに合意する。我々はまた,いかなる地球統合もこのシステムを補完し支えるものであるべきことを確認する。 | |
我々の最優先事項は,ウルグァイ・ラウンドの成功裡の妥結である。我々は,モノ及びサービスの市場アクセスの大きなパッケーシに向けた最近の重要な進展をジュネーブにおける多国間交渉の即時再開への大きな一歩として歓迎する。これらの進展に対しては,他の交渉参加国は,同等の市場開放措置をもって対応しなければならない。我々は,万事につき合意が得られるまでは何も合意されたとは言えないことを認識しつつ,我々の全ての貿易パートナーに対し,あらゆる事項につき建設的に交渉するよう求める。いくつかの重要な問題が未解決のまま残っている。我々は,それらを解決し,我々の全てのパートナーとともに,本年末までに包括的かつ均衡のとれた合意を達成するとの決意を新たにする。 | ||
環 境 | ||
8. | 経済的に困難な時期であるにも拘らず,環境問題は,我々の政策課題の中で引き続き高い優先度を有する。我々は,持続可能な開発委員会の第1回会合の成功,並びに,気候変動枠組条約及び生物多様性条約の1993年末までの実施と批准に向けての進展を歓迎するとともに,砂漠化条約に関する交渉の進展を歓迎する。我々は,本年末までに国別行動計画を公表するとのコミットメントを含め,国連環境開発会議(UNCED)の成果の効果的な事後点検を通じ,環境上持続可能な開発を確保するとの決意を新たにする。また我々は,必要な改善を図り,地球環境ファシリティーが,リオにおいて署名された地球環境に関する諸条約を実施する際の増分的費用への資金を提供するための資金メカニズムとして機能することを確保すべく取り組む。我々は,国際開発金融機関が,より集中的に持続可能な開発に対し焦点を当てるとともに,環境評価をプロジェクトの準備の際に十分考慮に入れ,かつそれを公に利用可能とすることを奨励する。 | |
我々は,200海里内と公海とにまたがる漁業資源,及び高度回遊性魚種に関する国連会議が成功を収めることを待望する。我々は,森林の管理,保全及び持続可能な開発に関する適切な国際的に合意された取極を引続き求めていく。我々は,OECD及び国際エネルギー機関(IEA)が行っている,地球環境に関する懸案に取り組む上での環境及びエネルギー技術の貢献についての分析を歓迎する。 | ||
ロシア及び移行期にある他の諸国 | ||
9. | 我々は,中・東欧諸国,バルト諸国,旧ソ連の新独立国家,及びモンゴルを含む移行期にある諸国における改革努力に対する,自助努力に対する支援の原則とパートナーシップの原則とに基づく我々の支援を再確認する。彼らの改革が成功し彼らが世界経済に完全に組み入れられることは,世界の平和と安定のために不可欠である。我々は,国際問題に関し,これらの諸国との建設的かつ責任ある協力の継続を求める。経済の回復に関し勇気づけられる最初の兆候が,改革が最も進んでいる中・東欧諸国における国々で見られる。我々は,我々との間の経済協力と貿易との進展を歓迎し,移行期にある諸国間における一層堅固な協力を求める。 | |
10. | 我々は,ミュンヘン・サミット以来ロシアにおいてエリツィン大統領の指導の下で行われ,最近の国民投票でロシア国民に支持された勇気ある改革努力が一層進展していることを歓迎する。我々は,ロシアに対し,インフレを抑制し財政赤字を削減する努力を強化するとともに,民営化への強力な着手を進展させ,一層の構造調整を促進するために必要な全ての法的及び行政的措置をとることを求める。4月に東京で開催されたG7閣僚合同会合は,ロシア国民の自助努力への支援の枠組みを設定した。我々は,各々の分野において見られた進展を歓迎する。公的債権者は,寛大な債務繰延べを通じ,改革過程に対し目に見える支援を与えた。我々は,ロシア政府,民間銀行及び付保されていない輸出者が交渉により同等な解決を見出すことを期待する。我々は,国際通貨基金(IMF)の体制移行ファシリティーの創設,及びそのロシアへの15億ドルの第1トランシュの融資実行を歓迎する。我々は,ロシアとIMFとに対し,スタンド・バイ取極に向けての交渉を直ちに開始することを求める。我々はまた,欧州復興開発銀行(EBRD)の2.5億ドルの協調融資を伴う最近の世界銀行の6.1億ドルに及ぶ石油セクター復興融資の承認を歓迎する。我々は,EBRDとの緊密な協力の下で3億ドルの中小企業基金を設立するための資金を提供するとのコミットメントを行った。我々は,ロシアの経済発展にとって,改善された市場アクセスが重要であることを認識する。我々は,ロシアがガット加入に向けて前進するに際し,ロシアとともに作業を進める。この関連で我々は,輸出管理を冷戦後の時代に適応させる努力を強化する。我々は,民営化及び企業改革がロシアの市場経済への転換の核心部分をなすことを認識し,国際開発金融機関と協力の下,1994年末までの始動期間に焦点を当てた,企業再編支援,技術支援,及び地域支援からなる特別民営化・再編プログラムを創設することに合意する。このプログラムには総額30億ドルが投入される見込みである。さらに,我々は,ロシア側のカウンターパートとともに生産性向上のための方法及び技術を分かち合うことによりこの過程を支援することを,民間セクターに奨励する用意がある。我々は,我々のロシア支援の実施を促進するため支援実施グループをモスクワに設立することに合意する。一方で,我々は,ロシアの実施努力の強化を求める。 | |
11. | 我々は,マルチ基金の設立を含む,ミュンヘン・サミットにおいて合意されたより広範な参加が奨励される原子力安全プログラムにおいて見られた進展を歓迎する。G24を通じ調整された緊急安全措置は,依然として大きな懸念をもたらしている原子力発電所の真の改善を確保するために迅速に実施される必要がある。関係諸国は,原子力安全に関する基本的諸原則を遵守する第一義的な責任を有する。独立の規制当局が強化されるべきであり,チェルノブイリ等の高リスク原子炉の早期閉鎖を含め,原子力安全には全ての関係諸国においてより高い優先度が与えられねばならない。我々は,世界銀行に対し,IEAとともに関係国それぞれとの対話を継続し,EBRD及び欧州投資銀行(EIB)を含む他の融資機関とともにこれら各国による,より長期的なエネルギー戦略の策定を支援することを促す。我々の目的は,国別アプローチに基づき,可及的速やかに関係諸国による協調行動のための枠組みに合意することである。我々は,1994年に進捗状況を検討する。 | |
我々は,既存の国際的義務に照らし,ロシアによる放射性廃棄物の海洋投棄に対する懸念を強調する。 | ||
開発途上国 | ||
12. | 多くの開発途上国では政策面までの改革及びその実行において勇気づけられる変化が起きているが,これらの国々の多く,特にアフリカでは依然として大きな経済的及び社会的困難に直面している。我々は,これらの国々における持続可能な発展及び世界経済への組入れ,並びに,人類に対する地球的規模の挑戦への取組みに向けての彼らの協力は,世界の平和と繁栄のために不可欠であることを認識する。我々は,良い統治の諸原則に基づき,彼らの自助努力への支援を引続き強化する。我々はまた,彼らに対し,持続可能な経済成長のための堅固な基礎を築くため健全かつ開放的な経済政策をとることを奨励する。 | |
13. | この目的のため,我々は,援助のみならず貿易,投資,及び債務戦略をも含む包括的取組み,並びに,それぞれの国の特定の発展段階における要請及び実績に合わせ,また環境をも考慮に入れたそれぞれに異なる取組みを追求する。このような取組みの下では,我々は,新たな需要に対応するとともに,現在の要請を満たすよう開発援助を拡充するあらゆる努力を払う。最貧国は特別の注意を払うに値する。それゆえに,我々は,IMFの拡大構造調整ファシリテイー(ESAF)の継承または更新を支持する。我々はまた,本年10月のアフリカ開発会議が成功を収めることを待望する。我々は,国際的債務戦略の有効性を確認し,パリ・クラブに対し,特にケース・バイ・ケースでのより早期の債務ストックの削減に関し,最貧重債務国のための債務救済の問題を引続き検討することを促す。我々は,これらの国々の債務削減のため我々と行動をともにするとの米国政府の決定を歓迎する。 | |
14. | 我々は,開発途上国との共通の関心事項に関し,より建設的なパートナーシップと対話を確立するための開発途上国のイニシアティブを歓迎する。我々は,急速な人工増加と持続可能な開発の目的との関連を検討する上で重要な,来年カイロにおいて開催される国際人口開発会議の成功に向けて取り組む。 | |
国際協力及び将来のサミット | ||
15. | 我々の直面する挑戦に取り組むため,我々は,既存のフォーラムにおいて国際協力を強化し,よりよい協調と効率を追及する決意である。我々は,国連事務総長による国連の運営の改革及び改善のための努力を認め,賞賛する。我々は,国連事務総長がこれらの目的を追及することを支持する。 | |
16. | 我々は,いかにしてサミットを通じ,その時代の最も重要な問題に最もよく我々の関心の焦点を当てることができるかにつき熟考した。我々は,サミットは意見交換を行い,コンセンサスを形成し,我々の間の理解を深めるための機会を与えるという点でサミットを評価する。しかし我々は,我々の共通の主要関心事項に共同でよりよく対処できるよう,サミットは儀礼,人,文書及び宣言を減らし,我々の間の形式ぼらない討議に充てられる時間を増やすべきであると確信する。我々は,将来のサミットをこの精神で運営する意向である。 |
(6) | 日米首脳会談「日米の新たなパートナーシップのための枠組みに関する共同声明」(仮訳) |
(93年7月10日 於東京)
日本国総理大臣と米合衆国大統領は,1993年4月の首脳会談における了解を再確認し,日米間の新たな経済パートナーシップのための枠組みを以下の通り設置することに合意する。
基本目的
この枠組みは,日米経済関係のための新たな協議のメカニズムとしての役割を果たす。この新たな経済関係は,バランスの取れた相互の利益となるものでなければならず,また,世界的な成長,開放的市場,そして極めて重要な世界貿易体制を推進するとの日米共通の利益と責任にしっかりと根差したものでなければならない。協議は,双方通行の対話という基本原則の下で行われる。
この枠組みは,年に2回開催される首脳会談を基軸とする継続的な一連の協議を構築する。この枠組みは,市場開放およびマクロ経済分野での措置を通じて競争力のある外国の製品及びサービスへのアクセス及び販売を相当程度増大させ,投資を増加させ,国際的競争力を増進するとともに,日米二国間の経済面での協力を強化するため,構造・セクター別問題を取り扱うことを目標とする。
日本は,経常収支の黒字の十分意味のある縮小を中期的に達成すること,及び米国からの輸入を含めグローバルな製品及びサービス輸入の相当程度の増加を促進することを意図して,力強く持続的な内需主導型の経済成長を促進し,また,競争力のある外国の製品及びサービスの市場アクセスを増大するという中期的な目的を積極的に追及する。この関連で,日本は,これらの目的を実現するために必要に応じ財政・金融面での措置を含む諸措置を取る。
米国もまた,財政赤字を相当程度削減し,国内貯蓄を奨励し,国際競争力を強化するという中期的な目的を積極的に追及する。
日米双方がこうした努力を着実に実行することにより,両国の対外不均衡の相当程度の縮小に資することが期待される。
米国及び日本は,全ての諸国に恩恵を与える開放的かつ多角的な貿易体制にコミットしている。この枠組みの下での恩恵は,MFNベースとなる。
協議の対象は,政府による対応が可能で責任が及ぶ範囲の事項に限定される。
両国政府は,この枠組みに関連して取られる全ての合意された措置を誠実に,かつ,早期に実行することとする。両国政府は,この枠組みの下で,具体的な進展が達成されなければならないことに合意する。
両国政府は,この枠組みの対象となるセクター別・構造分野を扱う主要な手段としてこの枠組みを活用する。これらの分野において問題が生じた場合には,双方は,相違点を早急に解決するための最大限の努力を,この枠組みの下における協議を通じて,または,適当な場合には,適用可能な多国間合意の下で行う。
セクター別・構造面での協議及び交渉
日本及び米国は,国際貿易及び投資の流れを拡大し,それに影響を与えるセクター別・構造面での障壁を除去するために交渉または協議を行う。当初の対象分野には,両国が関心を有する以下の事項が含まれる。
・政府調達
この分野で取られる措置は,特にコンピューター,スーパーコンピューター,衛星,医療技術及び電気通信において,競争力のある外国の製品及びサービスの日本政府による調達を相当程度拡大することを目指すべきである。
米国政府は米国企業に対し,日本政府によって作られた機会を活用することを勧奨する。米国政府は,ガットの政府調達協定の下での義務に沿った形で,無差別,透明,公正かつ開放的な機会を提供することが米国政府の政策であることを再確認する。米国政府は,日本政府が特別な関心を有するそのような政策及び分野について,要請に応じて日本政府と協議する。
・規制緩和及び競争力
この分野で取られる措置は,競争力のある外国の製品及びサービスの市場アクセスを相当程度妨げる効果を持つ政府の関連法令及び行政指導の改革を,金融サービス,保険,競争政策,透明な手続き及び流通分野を含む分野において扱う。米国政府は,米国の国際競争力を一層強化するため,ビジネスの促進及びその他の措置を含む対日輸出促進努力を行う。
・その他の主要セクター
この分野で取られる措置は,自動車産業を含むその他の主要セクターを扱う。この分野におけるMOSS等の既存のアレンジメントを含む努力は,とりわけ,日本企業の日本国内及び在外トランスプラントでの外国製部品の調達の相当程度の拡大に寄与するような販売機会の相当程度の拡大をもたらすこと,及び市場アクセスに影響する問題を除去し,日本における外国自動車及び自動車部品の輸入を奨励することを目的とする。
米国政府は,自動車及び自動車部品の対日輸出を促進し,米国企業に対して日本における市場機会をより積極的に追及するよう奨励する。
・経済的調和
この分野では,日本及び米国への外国からの対内直接投資に影響を与えている事項を扱う。更にこの分野では,知的所有権,技術へのアクセス及び両国企業間の長期的な購買者と供給者の関係等の事項も含む。
・既存のアレンジメント及び措置の実施
全ての既存の二国間のアレンジメント及び措置は,着実にモニターされ,十分に実施される。日米構造問題協議(SII)の下でなされた具体的なコミットメントは,適当な場合には,このバスケットに吸収される。
上記の分野における協議は出来る限り早急に開始される。各バスケットは,次官級を議長とし,適当な場合には作業部会が設けられる。両国政府は,1994年の第1回目の日米首脳会談において,またはこの合意から6カ月以内に,政府調達,保険市場,自動車産業及びその他の今後決定される優先的分野に関する重要な市場アクセス問題に関する措置に合意するために最大限の努力を行う。各事項はそれぞれ別個に扱われる。残る分野における措置に関する合意は1994年7月の第2回目の首脳会談の際に発表されることが期待される。
地球的展望に立った協力のための共通の課題
両国政府は,幅広い地球的規模の分野及び地球的規模での適用の可能性を有する二国間のプロジェクトにおける積極的協力についても共に追及する。そうすることにより,日本と米国は,新たな協力関係を構築し,技術の発展及び世界経済の発展に貢献する。両国政府は,環境及びその他の地球的意味合いを有する共通の経済問題における挑戦に対して新たに共同で対処することを追及する。この協力を通じ,両国は,建設的なグローバル・パートナーシップを創設する。
このような協議の結果としての進展は,年に2度の首脳会談における声明に含まれる。進展についての報告は,首脳会談事前会合において次官級グループにより準備される。
以下の分野において出来る限り早期に協議が開始される。
1. 環境
日本と米国は,環境問題に関する定期的協議のための次官級フォーラムを創設する。日本と米国は,海洋,森林,地球観測情報ネットワーク,環境・エネルギー効率的なテクノロジー,重要な天然・文化的資源の保全及び環境関連開発援助といった環境分野の特定の優先事項について協力を行う。
2. テクノロジー
日本と米国は,運輸技術,電気通信,民需産業技術及び道路技術・防災といった技術開発の分野で,相互に合意したプロジェクトについて協力することに合意する。
3. 人的資源の開発
日本と米国は労働交流及び製造技術者交流の分野における人的資源の開発についての二国間協力を強化することに合意する。
4. 人口
日本と米国は,多国間人口計画の強化を含め,地球的規模での急速な人口増加を食い止めるための実効的な努力を促進するために共同で作業する。日本と米国は,途上国の人口計画の実効性を促進するために,途上国における日米二国間の計画を使用するため共同で作業する。
5. エイズ
日本と米国は,エイズに関する多国間の努力を促進するために協力する。日米両国は両国間の計画を途上国におけるエイズ危機に共に取り組むために共同で作業する。
ハイレベルの協議
両国政府は,この枠組みの下での協議をできるだけ早期に開始するように努め,年に2回開催される首脳会談において成果を発表する。
両国政府は,この枠組みの下の各バスケットの中のセクター別・構造分野の各分野で取られる措置および政策の実施状況を評価する。この評価は,両国政府により評価される関連情報ないし関連データからなる一連の客観的な基準(適切さに応じて,定性的,定量的なものの何れか,あるいは,これらの双方を含む)に基づいて行われる。この評価は,首脳会談に先立って年2回開催される次官級会合の際に行われ,各バスケットの下での交渉チームの決定に従って更に追加的に行われる。これらの基準は,両国政府の共同の努力を含むセクター別・構造分野の各分野で達成された進展を評価する目的で使用される。
年に2回開催される会合において,両国首脳は,セクター別,構造問題,マクロ経済問題,並びに,地球的展望に立った協力のための共通の課題について,この枠組みの下で達成された結果の報告を含む対外発表を行う。
次官級会合は,両国首脳に提出される報告を準備するために年に2回開催される。会合は,適当な場合には,年に2回開催される首脳会談の数週間前に開催することができる。第1回目の次官級会合は,この枠組みに関する合意成立後6カ月以内に開催される。
協議は,適当な場合には既存の場を活用して行われ,この枠組みにおける対話を促進するために必要に応じて作業部会を設けることができる。全ての関係省庁が参加する。
2年後に,両国政府は,この枠組みにおける協議を1995年の秋以降延長するかどうかを決定する。
経常収支不均衡の縮小に向けた進展およびその他のマクロ経済問題に関する最新の状況が,年2回行われる首脳会談の際の発表に含まれる。進展振りは,首脳会談に先立つ会合においてもレビューされる。現在も進められている話合いは,G7のプロセスおよび中央銀行間の対話を基軸とするが,経済諮問委員会と経済企画庁との間の討議のような両国政府間の他の接触がこれらの関心事項を討議する機会を提供する。
(93年10月5日 於東京)
我々,アフリカ諸国及びアフリカの開発パートナーからなるアフリカ開発会議(以下TICADという)の参加者は,新たな繁栄の時代に向けてアフリカの開発に対して引続き献身していくことを声を一つに宣言する。したがって,我々は,この宣言がアフリカ諸国の自助努力及びアフリカの開発パートナーの支援に基づく持続可能な開発に向けて,現れつつある新たなパートナーシップの強化に役立つことを期待しつつ,この宣言を厳粛に採択する。
(背景)
1. | 1980年代におけるアフリカの経済的,社会的危機は,この大陸が直面している開発面でのチャレンジに焦点を当てることとなった。これらのチャレンジに取り組むために,多くのアフリカ諸国は広範な政治及び経済の改革に乗り出してきた。我々,TICADの参加者は,これらの改革の結果生じた,手ごたえのあるマクロ経済的実績および政治的進展という近年の兆しに勇気づけられている。しかしながら,我々は,アフリカの政治・経済の構造および現状は引き続き脆弱かつ傷つき易いものであり,それが持続可能な開発の達成を妨げていると認識する。TICADは「1990年代のアフリカ開発のための国連新アジェンダ(UN-NADAF)」を考慮に入れつつ,これらの改革に一層の弾みを与えることを意図するものである。 |
2. | 冷戦の終焉と共に,今日,アフリカ諸国および国際社会は,活力ある開発協力の必要について,より幅広い共通の理解を共有する機会を得ている。アフリカ大陸の開発は,より良い未来を我々が模索するにあたっての命題として姿を顕してきた。 |
3. | アフリカが直面する障害に対しては特別の考慮が払われるべきであるが,他方,我々は,アフリカ大陸の開発のための集団として前向きの努力を強化する決意である。かかる精神で,我々は,アフリカにおける持続可能な開発の中心に位置する諸問題を今回議論した。 |
4. | これらの諸問題には,同時並行して進行する政治・経済改革の現過程,民間セクターの国内経済活動への参加を増大する必要性,地域協力・地域統合の促進及び人道上の緊急事態がアフリカの社会経済的開発に及ぼす有害な影響が含まれる。我々は,アジアの・経済開発の経験及び国際協力の触媒的役割がアフリカの経済的変容に向けての希望を与え,チャレンジを提示するものと認識する。 |
(政治・経済改革)
5. | 国際的な新時代の到来を確信しつつ,我々,アフリカ諸国の参加者は,政治・経済改革,特に民主化,人権の尊重,良い統治,人的・社会的開発,経済の多様化並びに自由化を遂行し,更に強化するとのコミットメントを再確認する。持続可能かつ基盤の広い経済成長を達成するために,我々,TICADの参加者は,市民社会のより強固な役割を含め,より開かれた,責任の所在の明らかな,参加型政治制度が極めて重要であると信じる。我々は,政治,経済及び社会の改革は,アフリカ諸国自信によって,彼らのビジョン,価値及び個々の国の社会経済的背景に根ざして,開始され,また実行されなければならないことを認識する。したがって,アフリカの開発パートナーは,こうした分野におけるアフリカのイニシアティブを支援するべきである。 |
6. | 我々,TICADの参加者は,政治・経済改革を同時並行して実施することは,開発に資する一方で,しばしば痛みを伴う過渡的プロセスを招来することを認識する。政治・経済改革の間の相互作用は,長期的には相乗的であるべきものであるが,複雑なプロセスであり,前進をもたらすためには支援を必要とする。我々,アフリカの開発パートナーは,効果的かつ効率的な政治・経済改革に着手している国々に対して優先的支援を与えるとのコミットメントを再確認する。また,我々,TICADの参加者は,この改革プロスを促進するため,建設的対話を強化するとのコミットメントを再確認する。 |
7. | 我々,アフリカ諸国の参加者は,統治の質,特に公的行政の透明性及び責任性を向上するとのコミットメントを再確認する。我々は,公的支出の基準が,社会経済的開発全般の強化及び非生産的支出の削減を目的とすべきであることを認識する。持続可能な開発のための人的及び組織的能力の強化増進はこれら全ての目的に不可欠である。我々は,人的資源の訓練,保持並びに効果的利用及び組織的能力の向上のために,それが可能となるような環境を作り上げることを約束する。我々,アフリカの開発パートナーは,技術援助の改善を含め,アフリカの能力向上への支援を強化する意向である。 |
8. | 我々,TICADの参加者は,構造調整計画は,それぞれの国の個別の条件と必要をより積極的に考慮に入れるべきであることを再確認する。我々は,政治・経済改革は最終的には貧困の軽減及び全国民の福祉の向上をもたらすべきであることを改めて強調する。そのような効果を得るために,構造調整計画は,これまで以上に,所得を得る機会及び効果的な社会サービスへの特に貧困者のアクセスを改善する方策を含むと同時に,彼らを出来る限り社会的な悪影響から守るための努力が払われるべきである。特に女性及び児童の置かれている状況を改善するために,栄養摂取,健康及び教育プログラムを通じた人的資本への投資に更なる優先順位が与えられるべきである。更に,アフリカの全般的な経済開発がアフリカの急激な人口増加に対応してきていないことに留意して,我々は,健全な人口政策の重要性を認識し,アフリカ諸国政府及び国際社会に対し社会経済的開発プロセスの中でこの問題に取り組むよう呼び掛ける。 |
(民間セクターの活動を通じた経済開発)
9. | 民間セクターは持続可能な開発の原動力として極めて重要である。我々,TICADの参加者は,外国からの援助は開発に影響を及ぼすものの,その役割は規模において補完的なものであり,また性質において触媒的なものに過ぎないことに同意する。我々は,政府と民間セクターの実効的かつ現実的な協力が,開発の一つの重要な要素であることを認識する。この両者の間の信頼関係を奨励し,相互作用を促進すべきである。我々は,政治的及び経済的安定が長期的投資に向けてのコミットメントの前提条件であることを認識する。 |
10. | 我々,アフリカ諸国の参加者は,民間セクターのより広汎な役割を育成し,企業家精神を奨励する政策を継続する決意である。我々は,規制緩和措置を拡大しつつ,アフリカの開発パートナーと協力して,インフラストラクチャー,並びに適切に機能する行政,司法及び財政機構を提供し,また維持する。我々は,一般に,インフォーマル・セクターはアフリカ経済の活力源の一つであり,企業家的能力を一層活用し,雇用を創出し,フォーマル経済への移行を促進するために支援するに値すると考える。 |
11. | 我々,TICADの参加者は,財政制度及びその運営における更なる改善が,国内の貯蓄及び投資を刺激し,資本逃避を防止し,また還流させるために必要であることを確信する。 |
12. | これらの努力を支持すべく,我々,アフリカの開発パートナーは,経済改革及び民営化,人的及び組織的能力の向上並びに財政的介入の進展が可能となるような環境を改善するために支援の供与を継続していく。我々は,アフリカに投資する民間企業が政治的及び経済的リスクから保護されるよう,適切な保険,保証措置の重要性を認識する。 |
13. | 我々,アフリカ諸国の参加者は,将来の開発に向けての展望にとって国際貿易が中心的重要性を有することを確認する。我々,アフリカの開発パートナーは,アフリカ産品の世界的な市場アクセスを促進し,アフリカ諸国の輸出品の質の向上及び多様化を支援することに取り組む。我々,TICADの参加者は,アフリカン・ビジネス・ラウンドテーブルなどの民間組織の重要な役割を支持し,また,アフリカ内及びアフリカと世界の他の各国との間の投資及び貿易を促進するためのイニシアティブの有用性を確認する |
(地域協力・地域統合)
14. | 我々,アフリカ諸国の参加者は,アフリカ経済共同体の設立に関するアブジャ条約で体現されているように,最終的な地域統合及び地域協力の目標へのビジョン及び願望を再確認する。我々,TICADの参加者は,これらの目標が,独立当初以来,そのほとんどが小さな国内市場を有するアフリカ諸国にとっての論理的な開発戦略の一つであったものの,域内貿易及び投資の促進に関して,より多大な努力が払われなければならないことを認識する。 |
15. | 我々,アフリカ諸国の参加者は,これら地域スキームへの我々のコミットメントが,各国の開発計画,政策及びプログラムに十分組み込まれることを確保する。 |
16. | 我々,アフリカの開発パートナーは,アフリカ諸国が近年示しているような地域協力及び統合への新たなコミットメントを歓迎し,支持する。これらの地域的取極は,引き続き多角的開放貿易システムと合致し,また貿易の拡大に貢献すべきである。我々は,貿易及び投資の障壁の除去並びに政策調和といった方策を通じて統合に対する障害を減らすことを目的としたアフリカ諸国の努力,及び,特に,インフラストラクチャーの開発と能力向上における実行可能な地域的努力に対する支援を引き続き拡大する。また,我々,TICADの参加者は,地域統合は既存のスキームの交流の拡大及び合理化に向けての一貫したかつ漸進的なアプローチをとりつつ,民間セクターのイニシアティブを勧奨することにより遂行されるべきであると信じる。 |
(緊急援助と開発)
17. | 我々,TICADの参加者は,過去20年間,特に近年において,多くのアフリカ諸国が自然災害及び人的災害に苦しみ,また現在も苦しんでいることを大きな懸念をもって留意する。国際社会は,1970年代の初期の危機以来,こうした状況に寛大に対応してきた。 |
18. | こうした災害は,多くのアフリカ諸国の開発の制約となり,発展の正に基礎を破壊し,難民の数を増大させ,また本来であれば開発目的に使われたであろう人的,財政的資源を別の用途に振り向けさせてきた。 |
19. | 我々,TICADの参加者は,人的災害は政治的,経済的及び社会的要因の複雑な相互作用の結果であると認識する。これに関連して,民主化並びに人権及び少数民族の権利への尊重の欠如が,これらの災害の根本的原因の一部である |
20. | 我々,TICADの参加者は,災害の予防及び管理に係る責任は第一義的にアフリカ諸国自身にあることを受け入れる。したがって,我々,アフリカ諸国の参加者は,こうした災害の根本的原因に対処するための努力を払う決意である。我々は,また,過去に示されたように地域協力の重要な役割を確認する。我々,TICADの参加者は,一般に人的及び自然災害に対する予防,準備及び管理のための効果的なメカニズムを確立すること,また,特に,食糧安全保障のスキームを強化することの必要性を強調する。したがって,我々は,紛争予防,管理及び解決のためのメカニズムの設立に関するアフリカ統一機構(OAU)の決定を歓迎し,またこのメカニズムの効果的な機能の強化に対する支援を誓約する。我々は,また,災害の犠牲者を援護する意思を再確認し,緊急援助物資の効果的な配給に対するあらゆる障害の除去を求める。 |
21. | 我々,アフリカの開発パートナーは,緊急援助と開発の間の関連性の存在を認識しつつ,影響を受けるコミュニティーの再定住,復旧及び再建のための人道的支援が引き続き供与されることを確保する。 |
(アジアの経験とアフリカの開発) | |
22. | 過去30年以上にわたり,アフリカとは対照的に,東アジア及び南東アジア諸国は,1人当り所得において高い成長率を達成した。我々,TICADの参加者は,国際的及び国内的状況の違いを考慮すれば,どの開発モデルもある地域から他の地域へと単純に適用できるわけではないことに留意する。しかしながら,我々はアジアの経験がアフリカの開発に多少の関連性を有することを認める。成功を遂げつつあるアジア諸国の多用性こそが,アフリカの開発のために教訓を引き出せるとの希望を与える。 |
23. | 我々,TICADの参加者は,アジアにおける開発経験の成功例に示されるように,開発が成功する背景には,経済的繁栄に対する指導者層及び一般国民の強いコミットメント,適切な長期開発戦略及びそのような戦略を一貫して遂行するための機能的な政府行政の組合せがあることに留意した。 |
24. | 我々はまた,東アジア及び南東アジアの顕著な実績に寄与した政策要因には,(1)マクロ経済政策の合理的適用及び政治的安定の維持,(2)社会経済開発の堅固な基礎として技術研究及び革新を通じる農業生産の促進,(3)開発戦略の優先分野としての教育及び人的資源の開発への長期的投資,(4)貿易及び経済成長の機会増大のため生産様式の促進及び適応といった市場指向かつ輸出主導の政策,(5)財政的介入の発展及びコミュニティー・レベルでの銀行サービスの拡大による国内貯蓄及び国内資本形成を刺激するための方策,(6)成長及び開発の動力として民間セクターを強調する政策,(7)土地改革の早期実施,が含まれることに留意した。 |
25. | 我々,TICADの参加国は,東アジア及び南東アジアにおける開発の達成は,アフリカとの南南協力の機会を増大させてきたと認識する。我々は,幾つかのアジア諸国及びアフリカ諸国によって示された南南協力促進に対する関心を歓迎する。 |
(国際協力)
26. | 我々,TICADの参加者は,アフリカの現在の状況の中では,この現状に取り組むために十分なパートナーシップのもとで行動するよう,一層団結することが必要であるとの結論に達した。この新たなパートナーシップは,一方において自助努力を達成するとのアフリカの目標に,他方においてそれに呼応するアフリカの開発パートナーによる支援に基礎を置くべきである。 |
27. | 我々,TICADの参加者は,安定及び安全保障が持続可能な開発の前提条件であり,また,希少な資源を効率的に利用し,軍事的または他の非生産的支出を最小化することが極めて重要であることに同意する。 |
28. | 我々,TICADの参加者は,あらゆるレベルの人々の十分な参加が開発に必要であり,また,彼らは進歩のための主体として行動するよう、駆り立てられるべきであることを認識する。その関連で,我々は,様々な経済分野におけるアフリカ女性の重要かつ多様な役割を認識し,男女間の公平を強め,また女性の地位向上に向けてあらゆる法的,社会的及び文化的障害を取り除くためにその権利及び役割を促進するよう,特別の方策がとられることを勧告する。更に,我々は,アフリカ開発のために建設的な役割を果たしている現地のNGO及び他の市民社会の組織との協調的努力を強化する必要性を認識する。 |
29. | 我々,アフリカの開発パートナーは,現在の世界的な経済困難にも拘らず,アフリカに対する開発支援を強化するためあらゆる努力を払う。この支援は,アフリカ諸国によって定められた優先順位を一層指向するべきである。継続的かつ更なる協力へのコミットメントをなす際に,我々は,資源が最大の開発効果を持つよう最も効率的に用いられるべきとの我々の有権者の期待を考慮に入れる。 |
30. | アフリカ諸国は様々な開発段階にあり,また,異なった文化的,歴史的背景を有するが故に,我々,アフリカの開発パートナーは,援助の調整を適切に配慮して,開発協力の計画,実施に当ってデイファレンシエイティド・アプローチ(発展段階に応じた効率的で木目細かい協力)を採用する。 |
31. | 我々,アフリカの開発パートナーは,援助,貿易,債務戦略及び投資を含む包括的アプローチを採用する。我々,TICADの参加者は,債務及び債務返済が依然として多くのアフリカ諸国に深刻な問題を投げかけていることを再確認する。我々は,債務救済及び開発のための新たな資金供与という全体的な文脈の中で早急に債務問題に取り組む必要性を強調する。我々は,国際的債務戦略の有効性を確認し,パリ・クラブに対し,特にケース・バイ・ケースでのより早期の債務ストックの削減に関し,最貧重債務国のための債務救済の問題を引続き検討することを促す。我々は,債権国に対してアフリカの重債務国が現在直面している困難を考慮にいれるよう要請する。 |
32. | 我々,TICADの参加者は,ガット・ウルグァイ・ラウンド交渉の成功裡の妥結の重要性を改めて強調し,また,他のアフリカ諸国への輸出を含むアフリカの輸出拡大を妨げる貿易障壁及び他の貿易慣行の除去のためにあらゆる努力を払う。我々は,多くのアフリカ諸国の輸出収入にとって一次産品が重要であること及びこれら収入の変動を緩和するために多様化が必要であることを強調する。 |
33. | 我々,TICADの参加者は,農業,人口及び環境政策の間のバランスのとれた関係,特に旱魃及び砂漠化を特に強調しつつ,国連環境開発会議(UNCED)の合意が着実に実施されるべきであることを確認する。 |
34. | 我々は,また,既にいくつかの国では災害的規模となっているHIV/AIDS及び関連の疾病の流行によってアフリカにおいて得られた成果の多くが脅かされていることを認識する。これらの病気の社会経済的影響に対処する方策とともに,その予防,及び,看護施設を含んだ管理のために,アフリカ及びその開発パートナーによる一層強力な対応が必要である。 |
(フォローアップ)
35. | 我々,TICADの参加者は,効果的政策及び行動を通じ,この宣言の精神を前進させる目的を持った方策を各々の責任の範囲内で実施することを誓約する。我々は,TICADの共催三者に,この宣言の実施に向けた進捗状況の評価,再検討を委託する。 |
最後に,我々は,同様の規模とメンバーによる会議を遅くとも今世紀の終わりまでに開催する意図を有する。
* * * * *
今次会議の議論,指針及びコンセンサスによって,我々は,アフリカの重要な開発の展望が大いに強化されたと信じる。
(8) エリツィン大統領訪日における「東京宣言」,「経済宣言」
(イ) 日露関係に関する東京宣言(仮訳)
(93年10月13日 於東京)
日本国総理大臣及びロシア連邦大統領は,
冷戦の終焉により,世界が,地球的レベル及び地域的レベルにおいて,更には諸国家間の二国間関係において,対立構造から脱却して国際協力の発展に対し新たな展望を開くような協力へと向かいつつあり,このことは,日露二国間関係の完全な正常化のために好ましい前提を作り出しているとの認識に基づき,
日本国及びロシア連邦が,自由,民主主義,法の支配及び基本的人権の尊重という普遍的価値を共有することを宣言し,
市場経済及び自由貿易の促進が,両国経済の繁栄及び世界経済全体の健全な発展に寄与するものであることを想起し,
ロシア連邦において推進されている改革の成功が,新しい世界の政治経済秩序の構築にとって決定的な重要性を有するものであることを確信し,
国連憲章の目的及び原則の尊重の上に両国関係を築くことの重要性を確認し,
日本国及びロシア連邦が,全体主義の遺産を克服し,新たな国際秩序の構築のために及び二国間関係の完全な正常化のために,国際協力の精神に基づいて協力していくべきことを決意して,
以下を宣言する。
1. | 日本国総理大臣及びロシア連邦大統領は,ロシア連邦で行われている民主的変革と経済改革が,同国の国民のみならず世界全体にとって極めて重要な意義を有しているとの認識を共有するとともに,同国が真の市場経済への移行に成功し,民主的な国際社会に円滑に統合されることが,世界の安定を強化し,新しい国際秩序の形成過程を不可逆的なものとする上で,不可欠の要因であるとの見解を有する。 |
この関連で,日本国総理大臣は, | |
「旧議会支持派がモスクワにおいて引き起こした武力衝突によって多数の犠牲者が出たことは遺憾であるが,事態が収束し,人権の尊重を含む法と秩序が回復されつつあることを歓迎する。 | |
エリツィン大統領が進める民主改革路線及び経済改革への支持が不変であることを改めて確認するとともに,幅広い国民的参加を得た自由かつ公正な新議会選挙によって,国民の意思が反映する真に民主的な社会が誕生し,改革が更に推進されることを強く期待する。」との先進国首脳からのメッセージをロシア連邦大統領に伝達した。 | |
2. | 日本国総理大臣及びロシア連邦大統領は,両国関係における困難な過去の遺産は克服されなければならないとの認識を共有し,択捉島,国後島,色丹島及び歯舞群島の帰属に関する問題について真剣な交渉を行った。双方は,この問題を歴史的・法的事実に立脚し,両国の間で合意の上作成された諸文書及び法と正義の原則を基礎として解決することにより平和条約を早期に締結するよう交渉を継続し,もって両国間の関係を完全に正常化すべきことに合意する。この関連で,日本国政府及びロシア連邦政府は,ロシア連邦がソ連邦と国家としての継続性を有する同一の国家であり,日本国とソ連邦との間のすべての条約その他の国際約束は日本国とロシア連邦との間で引き続き適用されることを確認する。 |
日本国政府及びロシア連邦政府は,また,これまで両国間の平和条約作業部会において建設的な対話が行われ,その成果の一つとして1992年9月に「日露間領土問題の歴史に関する共同作成資料集」が日露共同で発表されたことを想起する。 | |
日本国政府及びロシア連邦政府は,両国間で合意の上策定された枠組みの下で行われてきている前記の諸島に現に居住している住民と日本国の住民との間の相互訪問を一層円滑化することをはじめ,相互理解の増進へ向けた一連の措置を採ることに同意する。 | |
3. | 日本国総理大臣及びロシア連邦大統領は,政治対話の拡大が日露関係の発展にとって有益かつ効果的な手段であることを確信し,最高首脳レベル,外務大臣レベル及び外務次官級レベルでの定期的な相互訪問による政治対話を継続し,深化させ,発展させることに同意する。 |
4. | 日本国総理大臣及びロシア連邦大統領は,軍備管理・軍縮の分野でこれまで達成された成果を歓迎し,その誠実な実施の必要性を確認するとともに,このプロセスを一層促進し,不可逆的なものとすることが重要であるとの認識を共有する。 |
双方は,核兵器の解体並びにそれに伴う核物質の貯蔵,管理及び処理の問題が全世界の安全保障にとって有する重要性についての認識を共有するとともに,これらの分野において協力する意図を確認する。双方は,また,放射性廃棄物の海洋投棄が,世界的な規模において,なかんずく,周辺諸国の環境に与える影響の見地から,深刻な懸念を惹起していることを確認するとともに,この問題を更に検討するため,日露合同作業部会を通じて緊密に協議していくことに同意する。 | |
双方は,1993年1月にパリにおいて化学兵器の禁止に関する条約が署名されたことを歓迎するとともに,この条約が可能な限り多数の国の参加を得て世界の平和と安定に寄与することへの期待を表明する。双方は,また,大量破壊兵器及びこれらの運搬手段並びに関連の資機材,技術及び知識の不拡散を実効的に確保し,通常兵器の移転に係る透明性を向上させるために相互に密接に協力していくことに同意する。 | |
5. | 日本国総理大臣及びロシア連邦大統領は,自由と開放性という共通の原則を基礎として,アジア・太平洋地域が21世紀の世界において目覚ましい発展を遂げる可能性があることについて共通の見解を有する。双方は,ロシア連邦が法と正義の原則を実践することにより,この地域において積極的かつ建設的なパートナーとなり,この地域の諸国間の政治・経済関係の発展に一層貢献していくことの意義を確認するとともに,この課題を実現するためには,この地域において重要な役割を果たしている日本国とロシア連邦の関係の完全な正常化が,この地域を平和で安定した地域とすること並びにロシア連邦を含むすべての国々及び地域に開放された自由貿易体制を基礎とする経済面での協力の発展の場とすることとの関連で,本質的に重要であるとの認識を共有する。 |
日本国総理大臣及びロシア連邦大統領は,アジア・太平洋地域における平和と安定の強化が必要であるとの共通の認識に立脚しつつ,安全保障面を含む広範な諸問題に関する両国政府当局間の対話の重要性を確認し,このような交流を更に活発化させることに同意する。 | |
6. | 日本国総理大臣及びロシア連邦大統領は,国際連合が,変化する国際情勢に適合しつつ新たな世界平和の維持と創造のために中心的な役割を果たし得るよう,その機能,組織の在り方を含めた議論が国際連合において重ねられていることに注目するとともに,地球的規模の諸問題及び地域的諸問題の解決に向けた国際連合の努力に対する両国の貢献を活性化し,もって国際連合の権威を一層高めるよう,共通の努力を払うことに同意する。 |
1993年10月13日に東京で
日本国総理大臣 細川護煕
ロシア連邦大統領 B.N.エリツィン
(ロ) | 日本国とロシア連邦との間の貿易経済及び科学技術の分野における関係の今後の展望に関する宣言(仮訳) |
(93年10月13日 於東京)
日本国政府及びロシア連邦政府は,民主主義の強化,市場経済への移行及び法と正義の原則に基づく外交への転換に向けた改革に努力するとのロシア連邦の決意に留意し,両国が有する協力の巨大な潜在性を考慮しつつ,次のとおり貿易経済分野における両国関係を,平等互恵の原則に基づいて,両国関係全般を均衡をとりつつ拡大するとの考え方の下で,将来にわたり発展させることを志向する旨表明する。
1. | 日本国政府及びロシア連邦政府は,国際社会における相互依存関係が深まっている状況の下で,ロシア連邦における改革の推進は,ロシア連邦の諸民族のみならず,世界全体にとり極めて重要な意義を有すること,ロシア連邦における改革の成功と同国の世界経済体制への統合は,国際社会の冷戦構造から新たな国際秩序への移行を確保するために重要な要因であること,また,ロシア連邦の改革に対する支持と実際的な支援は,形成されつつある新たな国際秩序の重要な構成部分であることを確認した。 | |
2. | 日本国政府及びロシア連邦政府は,市場経済への移行を目指すロシア連邦の努力に対する支援に当たって,戦後の日本国の経済発展の経験が有効となり得ることにつき,共通の理解を有する。日本国政府は,マクロ経済政策及び財政・金融制度並びに産業構造の改革,中小企業の育成をはじめとする諸分野におけるかかる経験を,ロシア連邦と分かち合う用意がある旨を確認する。 | |
3. | 以上の基本認識を踏まえ,日本国政府及びロシア連邦政府は,以下の分野において両国が従来より行ってきた協力を肯定的に評価するとともに,これまでに達成された成果を踏まえ,ロシア連邦における改革の進展に応じ,貿易経済分野における両国関係が発展する可能性が増大することに留意して,両国関係全般を均衡をとりつつ拡大させるとの考え方の下で,これらの分野における将来にわたる協力を一層発展させるため今後とも努力していくことに同意する。 | |
- | 燃料・エネルギー | |
- | 鉄鋼及び非鉄,木材,木材加工,紙パルプ等 | |
- | 運輸及び通信 | |
- | 銀行制度 | |
- | 原子力発電所の安全性確保 | |
- | 軍民転換 | |
- | 宇宙空間の平和利用 | |
- | 環境保護 | |
- | 農業・漁業 | |
- | 保健・医療 | |
- | 人材の養成 | |
4. | 日本国政府及びロシア連邦政府は,両国間の貿易・経済関係の実態を踏まえて,このような関係の円滑化のため環境整備を行うことが重要であることについて意見の一致を見た。 | |
5. | 日本国政府及びロシア連邦政府は,出来る限り幅広い経済情報の交換の促進が両国の利益に応えるものであることを確認する。 | |
6. | 日本国政府及びロシア連邦政府は,北西太平洋の生物資源の保存と合理的利用に関し協力する意向を確認するとともに,互恵の基礎の上に,両国の企業,団体等の間の漁業の分野における協力の発展が重要であることについて認識を共有する。双方は,このような協力を,一層発展させるためには,建設的な協議の継続が必要であることについて意見の一致を見た。 | |
7. | 日本国政府及びロシア連邦政府は,科学技術分野における協力が両国間の交流において重要な地位を占めていることに鑑み,それぞれの関係法令に従い基礎及び応用研究分野で,その成果が経済,産業面で導入されることも考慮しつつ,将来にわたり協力を発展させる意向である。 | |
8. | 日本国政府及びロシア連邦政府は,両国の諸地域間の経済その他の分野における交流が当該諸地域の繁栄のみならず両国関係全般の進展に貢献することに留意しつつ,かかる交流の発展を奨励することに同意する。 | |
9. | 日本国政府及びロシア連邦政府は,国際経済体制の枠内で,特に両国が共に加盟している種々の国際金融機関における協力を発展させることに同意する。日本国政府は,IMF,世銀等の国際機関へのロシアの加盟を積極的に支持してきたが,ロシアが未加盟の国際経済組織への同国の参加又は加盟について,適切な協力を行う。 | |
10. | 日本国政府及びロシア連邦政府は,自由貿易及び開かれた地域協力という一般に認められた原則を考慮し,アジア・太平洋地域における重要な隣国としての自覚を踏まえ,当該地域の国家間の経済関係の活発化に資することが重要であると考える。 | |
11. | 日本国政府及びロシア連邦政府は,1993年1月の政府間貿易経済協議の開催を想起しつつ,両国間の貿易経済関係を進展させる上で双方が抱える二国間の諸問題,また,双方が関心を有する国際経済諸問題に関し協議を行うことを確認する。 | |
12. | 日本国政府及びロシア連邦政府は,今後,両国関係全般を均衡をとりつつ拡大するとの考え方の下で,この宣言に盛り込まれた事項の具体化のために必要かつ適切と認められる場合には,そのための取極その他の適当な文書の作成の可能性があるとの認識を共有する。 |
1993年10月13日に東京で
日本国総理大臣 細川護煕
ロシア連邦大統領 B.N.エリツィン
(イ) 共同声明(仮訳)
(93年11月19日 於シアトル) | ||
1. | オーストラリア,ブルネイ・ダルサラーム,カナダ,中華人民共和国,香港,インドネシア,日本,韓国,マレイシア,メキシコ,ニュー・ジーランド,パプア・ニューギニア,フィリピン,シンガポール,チャイニーズ・タイペイ,タイ及び米国の閣僚は,1993年11月17日から19日までワシントン州シアトルで開催された第5回アジア・太平洋経済協力(APEC)閣僚会議に参加した。東南アジア諸国連合(ASEAN)中央事務局,太平洋経済協力会議(PECC)及び南太平洋フォーラム(SPF)がオブザーバーとして出席した。APEC事務局員も出席した。 | |
2. | 本件会議は,米国のクリストファー国務長官が議長を務めた。 | |
3. | クリストファ一国務長官は開会の辞において,アジア及び太平洋域内での貿易と投資は,人的及び商業的な関係の新しい綱目を織り出しつつあると述べた。同長官は,このようなアジア・太平洋のネットワークを発展させる上で,APECは極めて重要な役割を果たし得ることを示唆した。同長官は,また,APECの発展は,域内でのより開かれた貿易と投資を促進し,地域的な解決を必要とする諸問題についての協力を進め,地域のインフラストラクチャを改善するAPECの能力に依拠していることを強調した。 | |
4. | 閣僚は,11月20日シアトルで開催されるAPEC経済非公式首脳会議を大きな期待を持って注目した。閣僚は,本件会合が,21世紀に向けてのアジア太平洋地域についての共通の展望を明確に述べ,また経済的結びつきを更に発展させるまたとない機会を提供するものであることに同意した。 | |
5. | 閣僚は以下のような問題につき討議した。 | |
〇 | 賢人会議報告 | |
〇 | 経済動向と問題点4 | |
〇 | 貿易・投資問題 | |
〇 | APEC作業部会 | |
〇 | 参加問題 | |
〇 | 機構問題 | |
6. | タイのプラソン外務大臣は,APECの前議長及びASEAN常任委員会の現議長として,バンコック閣僚会議からの進捗状況について満足の意を表明した。APECの優先すべき課題が,ウルグァイ・ラウンドの目標期日までの成功裡の終結の追及と,APECにおける技術協力と貿易促進の一層の強化であると述べた。同外務大臣は,地域的貿易自由化はGATTの諸原則と開かれた地域主義に整合的で,メンバー間の経済の発展段階の違いについての認識を十分踏まえた協議を通して達成されなければならないと強調した。APECは,そのコンセンサスに基づく,かつ柔軟性に富んだ特性を保持していかねばならない。この特性は,今後ともAPECの基本的長所であり続ける。 | |
賢人会議報告 | ||
7. | 閣僚は,アジア・太平洋地域の現状及び見通しを評価し,同地域における開かれた貿易のための長期的展望を明らかにし,及び同展望を実施するための行動計画を提案した賢人会議の今回の報告に対し深甚なる感謝の念を表明した。賢人会議議長であるフレッド・バーグステン博士は,全会一致の報告を提出したが,同報告は,APECは地域の活力の維持に対する三つの脅威,即ち(イ)グローバルな多角的貿易体制のほころび,(口)内向きの地域主義の進展,(ハ)アジア・太平洋地域内の分裂の危険,に対処するため,協力を促進し,拡大しなければならないことを強調している。賢人会議は,APECに対し地域の及びグローバルな貿易自由化,貿易促進プログラム,技術協力,及びAPECの機構化の四つの分野でイニシャティブを取るよう勧告した。 | |
8. | 閣僚は,地域の開かれた貿易・投資及び経済発展に関する同報告の大胆な展望は,将来の地域協力にとり重要な基礎と触媒の役割を提供する旨指摘しつつ,同報告の大まかな趣旨及び方向性を暖かく歓迎した。閣僚は,広範な討議の中で,賢人会議のアジア・太平洋地域の直面する経済面での挑戦に関する活発な討議の促進への貢献に留意し,APECの経済の持続的経済成長にとって開かれた多角的貿易体制の強化が中心的価値を有することを再確認し,APECの貿易と投資の促進及び技術協力を更に加速し,拡大するよう要請し,地域のグローバルな貿易及び投資の自由化のための手段としてのAPECの役割を強化したいとの希望を表明した。閣僚は,また,賢人会議の展望がAPECの協議及びコンセンサス形成へのコミットメントを反映し,アジア・太平洋地域における経済的関係の強化及びその一体感と地域社会意識の高まりを反映していることに留意した。閣僚は,APEC事務局に対し,この報告を幅広く配布するよう指示した。また,閣僚は,賢人会議メンバーに対し同報告につき経済界,学会,一般の人々とも討議すること,そしてAPECメンバーがかかる作業過程を奨励したらどうかと示唆した。 | |
9. | 閣僚は,賢人会議の勧告に対処する為のいくつかのアプローチを討議した。閣僚は,特にそれらの勧告のうち,進行中の作業に密接に関連しているものは早急に実施すること,ウルグァイ・ラウンドの結果と関係するものは追加的な研究と検討を必要とすること,より長期的に貿易自由化に関連するものは高級実務者の助言を受けて,賢人が更に練る必要があることに留意した。 | |
10. | 上記を踏まえ,閣僚は,また,高級実務者に対し,貿易の自由化及び促進,技術協力,APECの機構及び意思決定過程の開発に関する賢人会議勧告を実施するための実践的プログラムを作成するよう指示した。閣僚は更に,高級実務者に対し,APEC地域及び全世界の開かれた貿易を進めるための戦略及び作業計画を作り,右目的を達成するためのメカニズムを見出し,次回閣僚会議に報告するよう要請した。 | |
11. | 閣僚は,賢人会議に対し,勧告された長期展望の実施方法につき高級実務者の助言を踏まえ更に具体的な提案を提出するよう要請した。閣僚は,1994年のインドネシアでの会議でこれらの提案につき検討したいと考えている。 | |
経済動向及び諸問題 | ||
12. | 閣僚は,個々のメンバーの政策及び地域的な協力の提唱の双方を策定していくにあたり,適切な経済分析が果たす中心的役割を強調した。当該地域において,増大している相互依存が共通の目的及び向上心をもたらすと共に,APECメンバーの間に共通の目的意識,及び地域社会の精神を育んでいる。それ故に,経済動向及び諸問題に関する特別部会の作業は,地域全体に亘り開かれた貿易及び投資を促進するために,また,我々全ての住民の経済的福祉を増進するために肝要である。閣僚は高級実務者に対し,次回閣僚会議前に同部会を経済委員会に改組する可能性につき探求するよう指示した。 | |
13. | 閣僚はタイに対し,閣僚の検討の為に準備された経済展望に関する優れた報告につき謝意を表した。閣僚は,地域の持続的な経済成長に関する見通し及びインフレーションの短期的展望を含めて当該報告書において分析されている重要問題を議論した。閣僚は,一部のメンバーにおけるインフラストラクチャ面での制約要因の増大,また,一部のメンバーにおける労働市場の変化等,当該報告書において指摘されている最近生じてきた幾つかの経済問題も検討した。 | |
14. | 閣僚は,また,2000年における当該地域の展望に関する日本の報告に含まれる貴重な分析を歓迎した。閣僚は,貿易及び投資の自由化,人材の開発,並びに環境及びエネルギー面での課題への対応等の,当該報告書中の主要な問題の分析を継続することの重要性に留意した。 | |
15. | 閣僚は,APECメンバー間において,主要な経済統計を定期的に交換することを開始する提案を支持した。これは政策形成を容易にし,地域の経済発展に関する今後の閣僚の討議を充実させるものである。 | |
16. | 閣僚は当該特別部会の将来活動についての報告を支持し,次の目的で提案のうちの一つ又はそれ以上につき作業を進めるよう高級実務者に指示した。即ちこの地域全般にわたる投資の流れに関する研究を評価すること,貿易自由化と民営化の相互関連を調査すること,健全なエネルギー及び環境政策をとりつつ経済成長を持続させる手段を研究すること,より長期的には,産業の国際的連関に関する突っ込んだ深い分析を実施するとの妥当性を探求することである。閣僚は,また,高級実務者に対し,1994年の閣僚会議において使用するために,地域経済に関する短期及び中期の経済展望を準備するように指示した。 | |
貿易・投資問題 | ||
17. | 閣僚は貿易及び投資の自由化がAPECの性格及び活動の要であることを確認した。従って,GATTと整合した形で多角的貿易体制を強化し,地域的又グローバルな貿易を拡大し,投資のルールと手続きを改善することが,APECの中心的な目的である。ウルグァイ・ラウンドは12月15日までに妥結せねばならない。今後,閣僚はこの目的を達成するために必要な政治的意思を行使することを決意した。このために,閣僚は,ウルグァイ・ラウンドの早期かつ成功裡の終結を求める断固たる声明に合意し,また,追加的かつ具体的な貿易自由化措置(別添1)を実施する用意があることを示すことで,この目的へのコミットメントを明らかにした。APECメンバーは,他のウルグァイ・ラウンド参加者に,同ラウンドの成功裡の終結のための一層の貢献を行うよう求める。 | |
18. | 閣僚は,APECのGATT非加盟メンバーがGATT締約国(地域)となり多角的貿易体制の強化に一層の貢献を行おうと努めていることに対する強い支持を表明した。 | |
19. | 閣僚は,高級実務者によって合意された,地域貿易自由化に関するAPECの非公式部会(RTLグループ)の報告書を歓迎するとともに,多角的及び地域的貿易に関する重要な政策問題並びに貿易及び投資に係るAPECの行動項目の更なる発展について,APEC内の対話を継続することに関する同非公式部会の勧告を支持した。貿易政策対話において,閣僚は,特に,ウルグァイ・ラウンドに満足できる結果をもたらすためのモメンタムを維持すべく,また,サブ・リージョナルな貿易取極及びこれら取扱のAPECの全般的な目的への貢献に関するよりよき理解を醸成するために,APECが果たした効果的な役割に留意した。 | |
20. | 閣僚は,APECメンバーが市場指向的なこの地域のダイナミズムに効果的な支持を与えることが必要不可欠であることを強調した。この関連で,閣僚は関税データへのアクセス改善,貿易への行政的障壁の削減,税関手続きの合理化,基準認証問題への多様なアプローチの調和及び投資の流れの奨励を目的としたRTLグループの提言を支持した。閣僚は,通関の円滑化,APEC投資案内書の出版,地域内の投資に関する民間部門の意向の調査,APEC税関手引書の出版,APEC税関討論会の主催に関する大きな進展を歓迎した。APECのこの分野での重要な作業は,RTLグループに代わる新たな貿易投資委員会によって更に促進されるであろう。 | |
21. | 閣僚は,「APEC貿易投資枠組み宣言」及び新たに設立される貿易投資委員会の最初の作業計画(別添2)を強く支持し採択した。同宣言は,APECメンバーを政策と促進の両方の問題に従事させることにより貿易及び投資におけるAPECの役割を著しく前進させる。同宣言は,APECの性格を更に明確化し,経済活動を拡大し,この地域全域において,サービス,資本,投資及び技術の流れを促進する重要な手段として役立つであろう。 | |
22. | 閣僚は,ウルグァイ・ラウンドの結果及び同ラウンドのこの地域にとっての意義を検討するために,貿易問題を担当する閣僚会合をよびかけた。閣僚は,ウルグァイ・ラウンド後のこの閣僚会合が,地域的かつグローバルな貿易自由化のための次のステップを検討するよう慫慂した。 | |
各種作業計画 | ||
23. | 地域の成長及び発展を支援するとのAPECの役割は地域内の経済相互依存の拡大に起因する。10の作業部会はAPECのこの地域の発展及び繁栄への貢献努力の不可欠の一部である。地域の統合及び協力に対する現代の電気通信及び情報技術の決定的重要性,この地域の最大の産業としての旅行業の固有の役割,UNCED(国連環境開発会議)に応え地域協力を強化するための海洋資源保全に関する他の機構との作業の緊要性を認識し,閣僚はこれらの問題(別添3-5)に関し夫々の宣言を発出した。 | |
24. | 閣僚は,展望及び政策に関する声明を称賛及び承認し,作業部会にこれらの声明の目的を実現するための努力をするよう指示した。閣僚は,「APEC作業部会に関する統合報告」を承認した。 | |
25. | 閣僚は,韓国の「APEC職業訓練計画」及び「APECテクノマート」創設の提案を歓迎し,人材養成及び投資・産業技術作業部会の枠組みの中での右計画の実行可能性を探求するよう高級実務者に指示した。 | |
貿易・投資データ | ||
26. | 閣僚は,APEC経済のためのより比較可能な商品貿易データを開発することに関しなされた進展を歓迎し,一致した原則及び基準に従い公表された商品貿易データを適合させる努力に優先的な関心を払われるべきであることを指示した。また,この作業部会は,サービス貿易及び投資データの収集及び共有を促進する努力を強化するべきである。 | |
貿易促進:協力のための計画及びメカニズム | ||
27. | 閣僚は,作業部会がビジネス/民間部門との相互作用を強化することに重要な役割を果すことができることに留意した。閣僚は,最初のアジア・太平洋国際貿易フェアーが94年10月に日本の大阪で開かれ,これが広く地域の商業的交流を増加させる重要なステップとなるものと期待する。 | |
投資・産業技術 | ||
28. | 閣僚は,「投資・産業技術作業部会」のための委任事項の拡大に留意し,これらの重要な分野での協力を増進させる作業計画を発展させるために同作業部会が払っている努力を支持した。 | |
人材養成(HRD) | ||
29. | アジア・太平洋地域の人々は,地域の唯一の最も重要な財産である。この地域のダイナミズムは人材のニーズの変化に反映されている。閣僚は,APECのHRD活動において成し遂げられた進展に満足の意を表明したが,急速の成長及び技術進歩に関係する貿易形態,産業の構造改革及びその他の経済的変化によって必要とされる訓練及び調整のニーズを特別に強調しつつ,引き続き優先的関心がこの作業に寄せられることを希望する。 | |
エネルギー協力 | ||
30. | 閣僚は,持続的な経済発展並びに環境保護のためには,確実で均衡の取れたエネルギー供給及び合理的なエネルギー使用が決定的に重要であることに留意した。閣僚は,エネルギー効率,石炭浄化技術及び再生可能なエネルギーに関する技術面及び政策面での交流を歓迎し,特にAPECのエネルギーに係る技術的なワークショップ及びセミナーのビジネス/民間部門よりの積極的な参加に勇気づけられた。 | |
海洋資源保全 | ||
31. | 閣僚は,海洋資源保全についてAPECのなしうる独自の貢献並びに,UNCEDに応え,APECが他の海洋資源保全関係の機構と協力することの重要性を確認した。 | |
電気通信 | ||
32. | 近代的で互換性のある通信網は,APECの諸経済を結合し,より近接化するための重要な構成要素である。閣僚は,「APEC諸経済の電気通信基盤と規制の現状」の第二版が完成したこと,作業部会が人材養成に重点を置いていること,そしてAPECの電子データの相互交換活動を調整する為の努力を賞賛した。 | |
漁 業 | ||
33. | 閣僚は,この地域の経済にとっての漁業の重要な役割に注目し,漁業管理,訓練ニーズの調査,漁業産品の衛生及び品質に関する規則,地域における漁業食品の貿易に関する市場情報の改善,及び養殖漁業におけるAPECのあり得べき役割についての作業部会の計画を支持した。 | |
運 輸 | ||
34. | 閣僚は,地域の成長と統合を促進するための効率的な運輸システムの重要性を強調した。閣僚は,地域運輸に関する情報を開発するための作業部会の努力を評価すると共に,インフラ面でのニーズを特定し,地域における旅客と貨物の移動を容易にする為の作業を加速するよう作業部会に要望した。 | |
観 光 | ||
35. | 閣僚は,作業部会による観光部門の持続的発展についての諸問題,及び観光と環境の関係に対処する上で達成された進展を歓迎した。 | |
参加問題 | ||
36. | 閣僚は,いくつかの経済地域と機構がAPECの活動に何らかの資格で参加することにつき引き続き関心を表明していることに留意した。閣僚は,APECが開放的で進化する活動形態であることを再確認し,APEC発展の現在の段階においては,基礎固めと有効性が主たる関心事項であるというバンコック閣僚会議で表明された見解を想起した。しかしながら,閣僚は,APECが,APECのニーズに応えると同時に地域の他の経済及び機構との間で建設的な相互作用を促進するような方法で新規参加の問題を検討する為のより体系的な方法を開発すべきであることも認めた。 | |
37. | 閣僚は,メキシコとパプア・ニューギニアのAPECへの参加を歓迎した。閣僚は,また,チリのAPECへの参加を認め,1994年の閣僚会議においてチリがAPECのメンバーとなることを待ち望むとともに,チリが,この間,作業部会の活動に参加することを奨励する。APECの効率性を増すことの重要性に着目し,閣僚はメンバーの追加の検討を3年間延期し,この間に高級実務者はAPECの参加資格についての政策を研究し,継続的に閣僚に勧告を行うことに合意した。 | |
38. | 閣僚は,APECの作業計画に,アジア・太平洋地域の非メンバーが参加することが,加盟メンバー及び非メンバーの双方にとり有益でありうることを再確認した。非メンバーとの協力を促進し,増大しつつある経済的相互依存より生じる課題に取り組むため,閣僚は,別添6に掲載されたAPEC作業部会の活動への非メンバーの参加に関する指針の提案を承認し,高級実務者に対し,互いの利益となる相互作用を促進するための他の潜在的な方法を見出すよう要請した。関連する機構については,高級実務者は,適切な連携関係を樹立するためのAPECを導くための検討事項を特定するべきである。高級実務者は第6回閣僚会議にこれらの課題に関する検討結果につき報告するよう指示された。 | |
民間部門の参加 | ||
39. | ビジネス/民間部門は,この地域のダイナミックな成長を促進する上で大きな役割を果たしてきた。特に作業部会を通じたビジネス/民間部門の関与は,APECの努力が現実の社会の挑戦と機会に適切に対応していることを確保している。閣僚は,本年,ビジネス/民間部門のAPECへの参加の拡大が進んだことを賞賛すると共に,各作業部会に対し,ビジネス/民間部門との関係を一層強化するよう指示した。閣僚は,APECの作業と関連する問題につきビジネス/民間部門,特にPECCの助言を求めていくことを表明すると共に,高級実務者に対し,新設された貿易投資委員会の作業を含むビジネス/民間部門との協力を拡大し深める方法につき検討するよう指示した。 | |
機構問題 | ||
APEC事務局 | ||
40. | 閣僚は,APEC事務局が成功裡に設置されたことを満足の意をもって留意すると共に,シンガポールが事務局に対して行った非常に寛大な支援及びボディ事務局長と事務局スタッフが1年目の活動に見せた際立つ努力に対し深甚なる謝意を表明した。閣僚は,参加メンバーの作業計画への協力関係を促進するに当たっての事務局の極めて重要な役割を強調した。閣僚は,作業部会に高級実務者の決定を伝えることを含めた情報の伝達,非メンバーによるAPECの活動への参加要請の調整,及びAPEC関連文書の出版・配布等のための中枢的調整機関として事務局が機能すべきことを強調した。事務局は,APEC予算の慎重な管理,中央基金の支出及びAPECの資金の責任ある使用を確保する効果的な財政管理の維持を引き続き優先していくべきである。 | |
予 算 | ||
41. | 閣僚は,作業部会の取りまとめ責任者(シェパード)とAPEC事務局の支援を得て,高級実務者が,財政運営及び管理に関連した一連の措置を考案し,施行した努力を支持する。閣僚は,1994年度APEC中央基金2百万ドルを承認すると共に,1993年度基金の残余は高級実務者が承認する1994年度の支出に転用できることを規定した。閣僚は予算・管理委員会に新しいメンバーからの拠出問題を検討するよう要請した。 | |
APEC機構 | ||
42. | 閣僚は,APECの限られた資源を効率的に管理するための提案を含む包括的な展望に関する声明を作成した韓国及びカナダの作業を称賛した。同様に,閣僚は,予算問題の運用及び管理,財政管理,及びAPEC作業部会の作業計画の管理について高級実務者を助言するための予算・管理委員会設置を指示した。1年目は,同委員会への参加はすべてのAPEC参加メンバーに開かれている。作業部会は,引き続き高級実務者に対し,直接報告を行う。閣僚は,高級実務者に対し,APEC機構に関連する提案を作成するために将来展望に関する声明を基礎として使うよう,また,その実効性と意思決定過程を改善するためのAPECの機構改革につき,1994年の閣僚会合で提言を行うよう指示した | |
今後のAPEC閣僚会議開催地 | ||
43. | バンコックにおける第4回閣僚会議において決定された通り,第6回閣僚会議は1994年にインドネシアで,第7回閣僚会議は1995年に日本で開催される。フィリピンとカナダは,それぞれ1996年と1997年に第8回及び第9回閣僚会議を主催する。 | |
その他の事項 | ||
44. | 更に閣僚は,グローブ94会合及び環境博覧会の関連で,1994年3月25-26日ヴァンクーヴァーにて,APECの環境問題担当大臣の会合を主催するというカナダの申し出を歓迎した。 | |
45. | 閣僚とその代表団は,米国政府の暖かい歓迎と行き届いた運営に対し,深甚なる感謝の意を表した。 |
(ロ) ウルグァイ・ラウンドに関するAPEC宣言(仮訳)
(93年11月19日 於シアトル)
ウルグァイ・ラウンドを12月15日までに成功裡に終結させることは世界の成長及び繁栄に不可欠な貢献であり,APEC閣僚は,そのための緊急の行動を呼びかける。APEC諸国・地域は,強化された多角的貿易体制が,APEC域内における貿易拡大のイニシアティブの基礎となることを確信する。
意思表明やコミットメントを行う時期は,いまや大幅に過ぎている。工業品及び農産品の市場アクセス並びにサービス分野における実質的な成果を確保するために,そして完成された「最終合意文書」案によってもたらされる強化されたルール及び規律のシステムを確保するために,具体的な行動が必要となっている。APEC諸国・地域は,残り少ない日々,この課題を達成するため,自らの役割を果たす用意がある。我々の貢献の内容は,具体的な経済的関心,及び,開発の多様な到達水準を反映すべきである。
我々は,世界人口の40パーセント弱及び世界貿易の40パーセントを占め,世界の中で最も経済的に強力で且つダイナミックな地域として,共同で,必要とされているジュネーブでの意見の一致を形成する手助けをすることにより,ラウンドが成功することを確保する決意である。したがって,
1. | 我々は,ウルグァイ・ラウンドの交渉参加国・地域が,ジュネーブにおいて,市場アクセスのオファーを改善するよう求める。交渉に参加しているAPEC諸国・地域は,貿易パートナー諸国より同等のコミットメントがあることを条件に,また,全ての分野におけるグローバルで且つ均衡のとれた成果の中で,以下に関し,最大限可能な範囲で参加する用意がある。 | |
(a) | 先に四極間で合意された分野において,関税及び非関税障壁の相互撤廃,引下げ,乃至ハーモニゼーションをオファーすること | |
(b) | APEC諸国・地域にとり特に重要な追加的分野において,関税及び非関税障壁の相互撤廃,引下げ乃至ハーモニゼーションをオファーすること | |
(c) | APEC諸国・地域が特に関心を有するモノ及びサービスについて市場アクセスの機会を拡大し且つ確保するため,我々の個々の二国間交渉の作業を加速すること | |
2. | 我々は,農業が,引き続き,グローバルで且つ均衡のとれた成果のための不可欠な要素であることを確保する。ブレア・ハウス合意は,既に「最終合意文書」案における農業テキストを弱めるものとなっており,この成果を更に弱めるようないかなる努力も,農業に関する総体として受入可能な成果を確保する能力を危うくする。成功裡の成果を得るためには,加工品を含む,農業貿易の自由化に関する可能な限り強力なパッケージも必要である。 | |
3. | 我々は,サービスに関し,既に交渉されたルールの強力な枠組みに伴うべき漸進的な自由化のプロセスを開始するため,最恵国待遇からの免除を最小限にしつつ,主要な分野における各々のオファーを,最大限可能な範囲で,レビューし改善することに合意する。 | |
4. | 我々は,「最終合意文書」案が,合意に基づく修正を最小限に止めつつ,最終合意の基礎を提供しなければならないことに合意する。このことは,ルール及び規律の多角的枠組みの強化,及び,紛争を解決するための有効な仕組みをもたらす。 |
ウルグァイ・ラウンドに参加しているAPEC諸国・地域によるステートメント(仮訳)
(93年11月19日 於シアトル)
APEC閣僚は,12月15日までにウルグァイ・ラウンドの終結を確保することへの強い目的意識を共有する旨既に世界に対し伝達した。ウルグァイ・ラウンドに参加しているAPEC諸国・地域は,いかなる最終成果においてもAPECの関心事項がより十分に反映されるよう7月の四極間の分野別イニシアティブを更に前進させることを通じ,市場アクセスに関する共同で且つ具体的な行動をとることにより,交渉においてリーダーシップを示す意向である。
貿易パートナー諸国より同等のコミットメントがあることを条件に,また,ラウンドの全ての分野におけるグローバルで且つ均衡のとれた成果の中で,我々は,以下の分野別イニシアティブに,最大限可能な範囲で参加する用意がある。
1. APECの提案
(a) 関税の相互撤廃に関する分野別イニシアティブ
エレクトロニクス: | オーストラリア,カナダ,香港,日本,韓国,マレイシア,フィリピン,シンガポール,タイ,米国 |
非鉄金属: | オーストラリア,カナダ,シンガポール,タイ,米国(注:この分野でのハーモニゼーションの代替案も検討されている。) |
紙: | オーストラリア,カナダ,香港,日本,韓国,ニュージーランド,シンガポール,米国 |
林産物(注1): | オーストラリア,カナダ,香港,ニュージーランド,フィリピン,シンガポール,タイ,米国 |
科学機器: | オーストラリア,カナダ,香港,日本,韓国,マレイシア,フィリピン,シンガポール,米国 |
玩具: | オーストラリア,香港,日本,韓国,シンガポール,米国 |
油糧種子: | オーストラリア,カナダ,ニュージーランド,マレイシア,フィリピン,シンガポール,米国 |
(注1) | このイニシアティブに熱帯広葉樹を含めるかは,主要輸出国の参加,及び,非関税障壁の解決にかかっている。 |
(b)ハーモニゼーション
水産物: | オーストラリア,カナダ,インドネシア,ニュージーランド,フィリピン,シンガポール,タイ,米国 |
非鉄金属: | オーストラリア,カナダ,日本,韓国,マレイシア,ニュージーランド,タイ,米国(注:この分野での関税相互撤廃という代替案も検討されている。) |
2. 1993年7月の四極間パッケージの対象分野へのAPEC諸国・地域の参加
(a) 関税の相互撤廃に関する分野別イニシアティブ
医薬品: | オーストラリア,カナダ,日本,韓国,マレイシア,ニュージーランド,フィリピン,シンガポール,米国 |
鉄鋼(注2): | オーストラリア,カナダ,香港,日本,韓国,ニュージーランド,シンガポール,米国 |
建設機械: | オーストラリア,カナダ,香港,日本,韓国,マレイシア,フィリピン,シンガポール,米国 |
農業機械: | オーストラリア,カナダ,香港,日本,韓国,フィリピン,ニュージーランド,シンガポール,タイ,米国 |
医療機器: | オーストラリア,カナダ,香港,日本,韓国,マレイシア,フィリピン,シンガポール,タイ,米国 |
家具: | オーストラリア,カナダ,香港,日本,韓国,フィリピン,シンガポール,タイ,米国 |
ビール: | オーストラリア,カナダ,香港,日本,ニュージーランド,シンガポール,米国 |
蒸留酒: | オーストラリア,カナダ,香港,日本(注3),ニュージーランド,シンガポール,米国 |
(b) ハーモニゼーション
化学品: | オーストラリア,カナダ,日本,韓国,マレイシア,フィリピン,シンガポール,米国 | |
(注2) | 多国間鉄鋼取極(MSA)の合意を前提とする。 | |
(注3) | 対象品目は,ウィスキー及びブランデーに関する合意を反映するものである。 |
(ハ) APEC貿易・投資枠組み宣言(仮訳)
(11月19日 於シアトル)
豪州,ブルネイ,カナダ,中国,香港,インドネシア,日本,韓国,マレイシア,ニュージーランド,フィリピン,シンガポール,チャイニーズ・タイペイ,タイ及び米国(以下総称的に゛メンバー ″と呼ぶ)の閣僚は,1993年11月17-18日,シアトルにて会合を行い,
1. | アジア・太平洋地域における開かれた地域主義と市場主導の経済的相互依存関係の更なる発展に向けて,APECを通じて活動することを決意し, | |
2. | 域内の貿易と投資の力強くかつダイナミックな成長を,一層の協力の強化と環境の整備を通じて活用したいとの各メンバーの期待を担い, | |
3. | ガットの諸原則が,国際貿易体制の土台であり,APECの下での経済協力の基礎であることを認識し,かつこれらの原則に対するコミットを維持しつつ, | |
4. | 協議とコンセンサスによって運営され,開かれた地域主義により特徴づけられ,ガットに体現される多国的貿易体制の強化にコミットするフォーラムとしての,APECの国際的な役割を発展させることを互いに決意し, | |
5. | ダイナミックな相互依存関係についてのAPECのヴィジョンと,国際的重要性をもつ貿易と投資の問題について積極的に共通の声でアジア・太平洋地域の共通の利益を代表できるAPECの能力を国際的に示し, | |
6. | 発展段階や社会政治体制の違いを認識し,開発途上にある諸経済のニーズに十分な考慮を払い, | |
7. | 貿易と投資と技術フローの間のリンクを認識し, | |
8. | 全ての参加メンバーの意見を尊重した開かれた対話とコンセンサスづくりにコミットし, | |
9. | 1992年9月11日にバンコックで確認された,以下の1991年11月14日のソウルAPEC宣言の目的を遂行することを決意し, | |
「・ | 地域住民の共通の利益のために地域の成長と発展を維持し,もって世界経済の成長と発展に貢献すること | |
・ | 地域経済と世界経済双方のために,財,サービス,資本及び技術のフローを奨励することを含め,経済的相互依存関係の進展に起因する積極的利益の増進を図ること, | |
・ | アジア・太平洋及び他の全ての諸経済のために,開かれた多角的貿易体制を推進・強化すること, | |
・ | 適用すべきガットの諸原則と合致し,かつ,他の諸経済を害することなく,財,サービスの貿易と投資における障壁を参加メンバー間で削減すること」 | |
10. | 成長の促進,雇用の創出,貿易と投資の拡大,技術の改善及び経済発展の推進に果たしたAPEC民間部門の重要な役割を認識し,貿易を歪曲する保護主義,特定の投資措置及びその他の差別的で制限的な慣行がAPECの諸経済からそのような利益を奪い取ることを認識し, | |
11. | 参加メンバーのガットの下での権利と利益を侵害することなく,かつガットの諸原則と整合的な方法で,地域の貿易と投資の諸問題をできる限り友好的かつ迅速に協議し解決することを切望し, | |
12. | 貿易と投資の自由化を促すためのAPECのメカニズムを創設し,この地域で上記の諸目的の達成を支援するために貿易問題に関する作業を進展させることが,APEC諸経済の利益となることを確信し, | |
一. APEC貿易投資委員会の設立 | ||
APECの閣僚の権威の下に,APEC貿易投資委員会(以下「委員会」と称する)が設立される。委員会は高級実務者会合(SOM)を通じて閣僚に報告を行う。 | ||
二. 目的 | ||
委員会の目的は以下の通りとする, | ||
1. | 国際貿易・投資問題に関し,APECとしての一貫性のある展望と発言を形成し,枢要な問題に関してメンバー間の協力の強化を図る。 | |
2. | 貿易を自由化し拡大する機会を追及し,投資のためのより開かれた環境を整備し,域内の財,サービス,資本,技術のフローの促進のためのイニシアティブを発展させる。これらの流れを域内及び世界的に拡大強化し,それを阻害する歪曲要因をガットの諸原則に従い軽減もしくは除去するため,この関連で重要な問題について協議し,コンセンサスの形成を図る。 | |
三. 活動範囲 | ||
1. | 閣僚は,貿易投資の問題における進捗状況をレヴゥーし,年次会議で委員会の作業計画を決定する。 | |
2. | 作業計画は以下のような諸問題への対応を含む。 | |
(a) | 世界経済の中でのAPEC諸経済の変化する相互関係に関連した政策課題。 | |
(b) | APEC域内での財,サービス,投資及び技術の移動に影響を与える障壁や歪み。 | |
(c) | 域内における貿易と投資のフローに影響を与える取引費用の削減。 | |
(d) | 個々のAPECワーキンググループや諸活動から発生する貿易及び投資政策上の課題。 | |
(e) | 貿易政策の展開,域内における貿易上の障壁の特定,及び地域に共通の利益をもたらす可能な解決策に対するAPECの民間部門の貢献を増進する方途。 | |
3. | 今次シアトルでの閣僚会議において,閣僚は委員会に対し最初の1994年ワークプログラムに取りかかるよう命じた。 | |
四. 委員会の構成 | ||
1. | 委員会は,各メンバーの貿易投資問題に責任を有する政策担当者によって構成される。 | |
2. | 委員会,委員会により決定される任期を務める,議長と副議長を選出する。 | |
3. | 委員会は各メンバーの合意する回数だけ開かれる。 | |
4. | 委員会は,明確に定義された任務を有し,委員会の作業を促進するために委員会と同時に又は別途開催される,臨時のもしくは常設の小委員会を設置することができる。 |
1994年APEC貿易投資作業計画
貿易政策対話 | 多角的貿易体制における動き,地域的貿易取極め,経済活動の世界規模化,その他の関連諸問題に関する貿易政策対話を継続する。 | ||
関 税 | APEC諸経済間の貿易取引を円滑化するための関税手続きの簡素化及び調和に努める。 | ||
投 資 | APEC地域における投資環境並びに,域外からの同地域への投資の流入及び域内投資を促進するために取りうる手段を検討する。 | ||
関税データベースと手引き書 | メンバーの関税率に関する地域電算データベース及び関税制度の透明性に関する試験的研究の実施により,経済界及びAPECメンバーの意思決定を支援する。 | ||
市場アクセスの行政的側面 | 域内貿易に影響を与える行政的措置,ウルグァイ・ラウンドの原則がこれらの措置に与える影響,及び域内の懸案に対処するために取りうる手段を検討する。 | ||
基準認証 | 国際基準に基づく基準,基準認証手続きの相互認定,及びハーモナイゼーションに関するAPECの役割を規定する。 | ||
中小金業 | APECにおける中小企業を取り巻く環境及びその域内貿易投資活動促進のために取りうる手段を検討する。 | ||
ウルグァイ・ラウンド | ウルグァイ・ラウンドの結果とこの地域に及ぼす影響をレヴューし,APEC域内における右結果の実施を支援する。 | ||
賢人会議 | 閣僚の指針に基づき,閣僚が選択した賢人会儀の提言に取り組む。 | ||
その他の問題の検討 | メンバーより提案されたその他の問題を検討する。 |
(10) APEC非公式首脳会議「APEC首脳の経済展望に関する声明」(仮訳)
(93年11月20日 於シアトル)
我々は,アジア・太平洋経済協力(APEC)というフォーラムの経済首脳が集まる初めての会議を開催した。冷戦後の時代において我々は,多様性に富む我々の経済の活力を活かし,協力を強化し,繁栄を促進するようなアジア・太平洋の新しい経済基盤を作る好機を有している。
我々の会議は,国際情勢の中でアジア・太平洋としての新たな声が出現していることを反映している。21世紀を迎える準備をするにあたり,世界の人口の4割,そのGNPの5割を占める我々の活力溢れる地域は,世界経済にとって重要な役割を果たし,経済成長と貿易拡大の途を率先していく。
我々の経済成長は,多角的開放貿易体制を基礎としてきている。このため,我々は12月15日までにウルグァイ・ラウンドを成功裡に妥結するため最大限努力することを誓約する。アジア・太平洋地域は,ジュネーブにおいて可能な限り力強い成果をもたらすため,率先して具体的な措置をとっていく決意である。強化されたGATT体制にAPEC経済が一層参加していくことも,地域協力を更に促進する。
我々の成功は,変化する状況に対する我々の社会の適応能力の賜であった。我々の経済は相互依存の方向に進んでおり,我々の間で一体感が育まれつつある。我々は,国民のための安定かつ繁栄した未来に対するコミットメントについて団結している。
我々は,我々の経済的相互依存関係及び経済的多様性を認識しつつ,アジア・太平洋経済の地域社会(a community of Asia-Pacific economies)の一つの姿を描いている。この社会においては,
・ | 開放性とパートナーシップの精神の深まりにより,急速に変化する地域及び世界経済の挑戦に対し,協力的な解決方法を見出していくことが可能となる, |
・ | 我々は,活力溢れる経済成長が持続し,世界経済の拡大に貢献し,開放的な国際貿易体制を支えるような人口20億の巨大な市場である, |
・ | 我々は,我々相互の貿易が域内及び世界との間で増加し,我々の間で,物,サービス,資本及び投資が自由に移動するため貿易と投資に対する障壁を引き続き削減する, |
・ | 我々国民は,より高い収入,高度な熟練技術を必要とし且つ高賃金の労働,及び,より頻繁な移動を通じて,経済成長がもたらす利益を分かちあう, |
・ | 教育及び訓練の改善は識字率を高め,経済成長の維持に必要な技術を提供し芸術と科学に貢献する考え方の共有を奨励する, |
・ | 電気通信及び輸送手段の発達は域内における時間と距離による壁を更に縮め,我々の経済を結び付け,その結果,物や人は,迅速かつ効率的に移動する, |
・ | 持続可能な成長を確保し,我々の国民に,より安全な未来を与えるために,空気,水及び緑地の質を保全し,エネルギー資源及び再生可能な資源を管理することにより,我々をとりまく環境は改善される。 |
我々は,この展望は,我々がこれを確実なものとするために積極的に協力することによって初めて実現することを認識している。我々は成功することを確信している。我々が共有するこの展望を,我々の地域の未来を発展させていくための指針とする考えである。
我々は,この地域に目に見える経済的利益をもたらすためのフォーラムとしてのAPECの引き続いての発展を支援していくことを改めて確認する。我々は,APECが,その経済対話を強化し,個々の作業プロジェクトを推進することを促す。我々の経済的活力を駆り立ててきた企業家精神と市場指向型政策は,APEC内部において引き続き育まれていく。
我々は,アジア・太平洋において自由な貿易を実現し,世界貿易の自由化を進め,この長期的な目標に向けて進んでいくために具体的な計画を打ち出していくという,APEC賢人会議の報告で提示されている挑戦を歓迎する。我々は,APECが,ウルグァイ・ラウンドの成果をさらに深化・拡大し,域内の貿易と投資の自由化を強化し,基準などの分野を含む域内協力を促進することを目的とした作業にとりかかるよう求める。
我々は,マクロ経済の動きや資本の流れを含む広範な経済問題を協議するため,APEC蔵相会合を開催することに合意する。我々は,このような議論がこの地域のインフレ無き成長を確保し,投資やインフラ整備に資金を調達し,資本市場の発展を促進するといったこの地域が直面するいくつかの挑戦に取り組む上で役立つと信ずる。
我々は,経済界の指導者に対し,域内貿易・投資を促進し,域内全般に亘るビジネス・ネットワークの更なる発展を奨励するため,APECが取り組むべき問題を特定することを目的とする太平洋ビジネス・フォーラムを創設するよう求める。我々はまた,APECに対し,中小企業に関する政策対話を強化するよう求める。
我々は,高等教育における地域協力を発展させ,主要な地域経済問題を検討し,労働者の技能を改善し,文化及び知的面での交流を促進し,労働力の流動性を高め,そして我々の地域の多様性に対する理解を醸成するために,APEC教育計画を創設し,もって我々の未来の世代に対する投資を行うことに合意する。我々は,APECが人材の養成,経営技術及び技能の交流の分野における相互の協力を促進するため,APECビジネス・ボランティアー計画を作ることで合意した。
APECのメンバーとして,我々は,国民のために安定,安全保障及び繁栄を実現するという共通の展望に基いて,我々の地域社会の精神を深めることにコミットしている。
APEC経済首脳
シアトル,ワシントン州
1993年11月20日