(4) 米・イラン関係に関するレーガン米大統領演説(要旨)
(86年11月13日,ワシントン)
1. 過去18ヵ月にわたって次の目的から米国はイランとの間で秘密の外交イニシアティヴを実施。
(1) イランとの新しい関係を作る。
(2) イラン・イラク紛争を終結に導く。
(3) 国家に支援されたテロ及び破壊工作を排除する。
(4) 全ての人質の安全な帰還を図る。
2.(1) 米国がレバノンでの米人質の釈放と引換えにイランに武器を輸送したとか,同盟諸国をないがしろにしテロリストと取引きせずとの政策を破った等の非難は全くのでたらめ。米国にはレバノンで米国民を人質にとっている者に対して譲歩はしておらず,今後もしない。米国は人質釈放と武器を交換していないし,今後もしない。
(2) デンマーク船の使用,スペイン,イタリア港の使用,戦闘機部品供与等のうわさはみな真実でない。
3.(1) 秘密協議の過程で・自分は,少量の防御的兵器及び防御的システムの部品のイランに対する移転を承認。自分の目的は,われわれの交渉者が私の承認の下に行動していることをテヘランに納得させ,米国には敵意を新しい関係に置き換える用意があるとのシグナルを送ること。右は全部で輸送機1機に収まる程度で,イラン・イラク両国間の軍事バランスに影響を与えず。
(2) われわれの接触相手は,相当なリスクを冒しており,対話を続行,拡大のためにわれわれの真剣な意図のシグナルを必要としていた。同時に,われわれは,関係促進の条件として,イランがあらゆる形の国際テロに反対すべき旨明確にした。イランのとり得る最も重要な措置は,レバノンの全ての人質の釈放を確保するため影響力を行使することである旨示唆。
(3) 若干の進展が既に見られており,米・イ接触開始以後,イラン政府が米国に対するテロ行為に関与したとの証拠なし。人質も帰還。われわれは,過去及び現在イラン政府が行っている努力を歓迎。
(4) (地理的重要性,石油の故にイランとの関係が米国にとり重要である旨指摘。他方,イランの政策により今日もなお不一致がある,とした上で)われわれは,イランの中心領土や特別の地位は求めず。イラン革命は歴史の事実であるが,米・イ両国の国益が永遠に対立する必要なし。
4.(1) 83年以来,西欧・中東及び極東の諸国が,米・イラン間の直接的接触を促進すべく仲介者としての役割を果たそうとしたが,米国に応じる用意があったにもかかわらず,いずれも実を結ばず。このような背景の下に,昨年イラン政府関係者との直接対話の可能性が伝えられ,われわれは,これに前向きに対応。
(2)(イ) 両国間の話し合いは,本年春まで継続,その進捗振りに応じ,われわれは,接触のレベルアップを要求。テヘランでの会合がアレンジされ,自分は,マクファーレン前安全保障担当補佐官に対し,秘密の任務遂行を要請し,明確な指示を付与,同人にイランに行き,米国政府の基本的目的と両国間の差異を明確にしつつ対話を開始するよう要請。
(ロ) 4日間の話し合いは友好的(civil fashion)に実施され,米国人は,悪い取り扱いは受けず。その後,対話は継続し,成果は一つ一つ積み上げられている。
(3) この機微なオペレーションは,関係者に多大なリスクが随伴。昨週の公表は,本件イニシアティヴ全体を危険にさらすもの。本件の如き秘密外交の先例としては,71年のキッシンジャー訪中の如き例あり。但し,現在,誤った噂の放置に対し沈黙を守ることがより好ましくない状況が生じた。
5.(1) われわれの努力は極めて微妙であり,政府関係者の関与は知る必要のある者に限定したが,関係閣僚には十分協議。自分が許可した行為は全て連邦法に合致。
議会の関係委員会は現在も今後も十分通報される。
(2) 米国がイラン・イラク紛争においてイラン寄りになったとの非難は根拠なし。われわれは常に両国の暴力を非難,また,一貫して両国の領土保全を確保する交渉による解決を要求。われわれのイラン政府に対する交渉開始は,一方を他方より指示する変更ではなし。むしろ,それはイラク同様イラン内における影響力とアクセスをある程度得,紛争に名誉ある終結をもたらすための外交的イニシアティヴ。
(3) テロリストの要求に屈服しないという確固たる米国の政策は堅持。われわれは武器または他の何も人質と交換しなかったし,これからもしない。