(2) 第18回ASEAN経済閣僚会議プレス・リリース(骨子)
(86年8月30日,マニラ)
1. ASEAN経済協力
経済閣僚は,ASEAN域内の経済協力と経済発展の促進に向けてASEAN経済閣僚委員会の活動状況をレヴューし,各種経済関係協カプログラムが進展をみているとする一方,来たるASEAN首脳会議に向けてASEAN経済協力を一層促進するため新しいイニシアティヴとして次の措置を検討すべきこととした。また,経済担当政府関係幹部(SEO)に対し,これらイニシアティヴを検討の上次期経済閣僚会議に先立ち提言を行うよう指示した。
(1) ASEAN域内特恵関税の改善と関税の一括もしくはセクター・ベースによる引下げ
(2) ASEAN域内の非関税障壁の凍結(スタンド・スティル)及び軽減(ロール・バック)
(3) ASEAN域内における投資の促進
(4) 工業合弁事業の拡充
(5) 商品部門及びサーヴィス部門,特に海運,銀行,保険,観光分野における協力強化
(6) 情報の交換と国家開発計画及び開発目標の調整(harmonization)
(7) ASEAN経済協力の進展振りを効果的にモニターするための指標の開発また,ASEAN域内自由貿易構造についても討議されたが,更に検討されることになろう。
2. 域内貿易拡大
経済閣僚は,ASEAN銀行審議会(ASEAN Banking Council)の提言を入れ,フィリピン産品の輸出に当たりASEAN各国通貨の使用を認めたフィリピン中央銀行の決定を歓迎した。
3. 域内投資拡大のための民間協力
経済閣僚は,ASEAN域内の経済結合を育成するための措置を検討・勧告するためのASEAN商工会議所の14人グループ(Group of Fourteen)の設置を歓迎した。
4. 対ADB(アジア開発銀行)及び対EEC関係の強化
経済閣僚は,ADB及び欧州投資銀行の協力を得てASEANにおけるEECの投資を促進するため対話の場を確立する可能性につき検討することに合意した。
5. ASEAN緊急米備蓄の強化
経済閣僚は,ブルネイのASEAN Food Security Reserve Agreementへ3,000トンの米の備蓄決定を評価した。ブルネイの参入により緊急米の備蓄は5万トンから5.3万トンに増大した。
6. ASEAN工業合弁事業の奨励
経済閣僚は,次のASEAN工業合弁事業(AIJV)産品を承認・確認した。
(1) 自動車用ランプ(マレイシア,フィリピン)
(2) オートバイ用電気部品(マレイシア,タイ)
経済閣僚は,AIJV産品の特恵関税に対するマージンを50%から75%に引き上げることに合意し,このためASEAN工業合弁事業基本協定の補足協定に仮署名すると共にAIJV産品の承認手続の簡略化に合意した。
7. ASEAN建設業界の育成
経済閣僚は,世銀・ADB等国際金融機関による融資プロジェクトについてASEANの建設業者に機会を与える目的でASEAN建設業者指名リストに関する協定(Agreement on Preferential Shortlisting of ASEAN Contractors)を承認,仮署名した。
8. 観光促進
経済閣僚は,クアラルンプールにASEAN観光情報センターを開設することを承認した。
9. 域内関税の引下げと非関税障壁の撤廃
経済閣僚は,ASEAN域内の貿易促進のためASEAN域内特恵関税(PTA)を補完するためASEAN特恵関税クオータ・スキームを承認すると共に,PTAの除外品目リストの対象品目を縮小する必要性を強調した。
また,非関税障壁の撤廃が域内貿易の促進に貢献するとの認識に立って,非関税障壁の軽減,撤廃を図ることを合意し,COTT(貿易観光委員会)が域内非関税障壁の凍結,軽減を図るための措置をとることに合意した。
10. ASEAN一次産品
経済閣僚は,一次産品市況の低迷に懸念を表明するとともに工業先進国に対しASEAN一次産品の需要拡大策をとるよう引き続き要請して行くことに合意した。
開発途上国の危機は主として主要先進国の政策に起因するもので,これら長期にわたる問題は新ラウンドにおいて取り上げるべきものである。
11. 日・ASEAN関係
経済閣僚は,日・ASEAN関係をレヴューし,経済問題に関し日本と建設的な対話が持たれているとする一方,急激な円高がASEANの債務負担を悪化させており,日本政府に対し適当な措置をとるよう要請することとした。
12. 新ラウンド
経済閣僚は,プンタデルエステのGATT閣僚会議で討議される諸問題,特に熱帯産品,農産品貿易,新規問題等について共通のアプローチをとることで合意した。更にGATT加盟国の支持を得て,9月に新ラウンドを打ち出すためGATT加盟国に協議を継続するよう求めた。
13. 次回ASEAN経済閣僚会議の開催等
次回ASEAN経済閣僚会議は87年2月26-28日までシンガポールで開催することとあわせ,第3回首脳会議の準備のため右会議直前にマニラにおいて特別経済会議を開催することに合意した。