(2) 第25回OECD閣僚理事会コミュニケ(仮訳)

(86年4月18日,パリ)

1. OECD(経済協力開発機構)の閣僚理事会は4月17日及び18日に開催された。本会合の議長はトルコのトゥルグット・オザール首相が努めた。副議長はオーストリアのフランツ・ウラニツキー蔵相及びフェルディナンド・ラッツィーナ公共経済・運輸相並びにポルトガルのペドロ・ピレス・デ・ミランダ外相及びミゲル・カディリエ蔵相であった。

2. 閣僚は,経済産業諮問委員会(BIAC)及び労働組合諮問委員会(TUAC)の各議長から失業率の水準,成長の必要性及び0且CD地域における製造業基盤を回復する必要性に関する共通の懸念を表明する共同の声明を聞いた。

3. 閣僚は,次の結論及び合意に到達した。

4. OECD諸国における全般的経済情勢は好転している。種々の懸念や困難が継続しているにもかかわらず,未来に対する自信を抱くに足る種々のよい根拠がある。インフレは大幅に低下し,いくつかの国においては,物価安定が殆ど達成されている。OECD地域の経済成長は,本年及び来年,3%乃至はそれ以上の率で増加し,大半の国に均等に拡大していくように見える。雇用の伸びは増加すると見込まれる。為替レートは,各国間に不均衡な競争状況を生ぜしめ,また,国際的な経常収支不均衡をもたらしていた水準から過去1年で大幅に動いた。金利は名目的には大幅に低下したが,インフレも下っているため,実質的にはさほど低下していない。しかしながら・失業特に若年失業率は依然として高率にある。閣僚は,多くの国において現在までの状況に大きな変化のないことに懸念を示した。

5. 石油価格の低下は,いくつかのエネルギー輸出国に対してはマイナスの影響をもたらすが,インフレを大幅に抑制し,石油輸入国の実質所得を向上させ,世界の経済活動に対し更なる刺激を全般的にあたえることにより,上記の順調な経済情勢に貢献している。より基本的には,OECD諸国は,自らの経済機能を改善し,国内の不均衡を減らし,更に,国際協力を強化するための協調的努力の恩恵を受け始めている。

6. OECD諸国政府は,インフレを再燃させることなく中期的により一層力強い成長の傾向を促進するため,これらの順調な諸条件を利用する所存である。この努力の成功は,現在の非常に高い失業の水準を大幅に下げるという優先度の高い課題に役立つであろう。また,それは開発途上国におけるより一層力強い成長及び国際的債務負担の軽減に貢献するであろう。また,特に世界的に生産能力過剰に悩まされているセクターで必要とされている構造調整を達成するための努力を容易にするであろう。更には,開放的な多角的貿易体制の強化によって都合のよい環境をも提供するであろう。世界経済にとって,右体制が効果的に機能することが基本的に重要である。

7. より一層力強い成長の傾向はOECD諸国の協調行動を通じて達成されよう。この点に関し,4つの広範な命題が確認される。

(i)  OECD諸国内及び諸国間のマクロ経済政策は,インフレを低く押さえ,国内の不均衡を除くことにより中期的な成長と雇用を支持するものである必要がある。右政策は,また,国際的な不均衡を減らすことに向けられる必要がある。更に,経済のファンダメンタルズをよりょく反映する水準での為替レートのより大きな安定を促進するよう実施される必要がある。

(ii)  構造政策は,生産活動の機会を拡大すること,柔軟性を増加すること,更には,インセンティブを改善することによって,機動性を高めることに向けられる必要がある。構造政策は又,貿易政策との関係においても捉えられる必要がある。国内市場に深刻な歪曲のある場合には,国内資源はより生産性の低い用途に向けられ経済の柔軟性は減少し,必然的にその歪曲は国際市場に溢れ出るのである。特定セクターへの政府補助金のもたらす貿易歪曲効果に対しより一層の注意が払われるべきである。

(iii)  効率化指向の政策を通じて,自国経済を調整し,成長を増加させる開発途上国の能力は,金融,貿易,投資,技術及びその他の分野におけるOECD諸国の諸政策と協力関係の改善により支援される必要がある。

(iv)  開放的な多角的貿易体制を強化し,規定と規律を強化し,出来る限り広汎な基盤にたった貿易自由化を促進する必要がある。このためには,多角的貿易体制を維持,強化し,拡張するためGATTにおいて包括的な新ラウンド交渉を開始する必要がある。

特定の行動方針は,次の通りである。

マクロ経済政策

8. 経常収支の不均衡は,依然として大きなものであるが,右不均衡が結果的に持続的経済拡大を損う危険性を軽減するために,各国間の経常収支に良好な均衡をもたらすことが不可欠である。このような不均衡が長く続けば続く程,その最終的是正は一層困難となろ九円滑な調整のためには,大幅な経常収支赤字を抱えている国では,生産が国内需要を超える速度で成長することが必要であり・大幅な黒字国にとってはその逆のことがあてはまる。後者においては,成長が少なくとも生産能力の伸びと調和することを確保するに足る国内需要がなければならず,そうすることによって世界の経済成長により多くの貢献をすることができる。昨年合意された政策の優先順位は,現在も適切なものである。優先順位には,米国の財政赤字削減,日本の内需拡大と輸入増の奨励,構造調整及びマクロ経済政策を通じ欧州諸国及び他の加盟国において成長を強化することが含まれている。これらの優先順位に沿った行動は現在実施されているところであり,また,今後ともこのような行動は一層強化されよう。このような意味で閣僚は中期の経済政策の一層の両立性と補完性の確保をめざし,協力を強化する必要性を協調した。この目標達成に必要な手続きと手法について積極的に研究すべきである。

9. 為替レートは,経常収支不均衡を減少させるための基本的政策行動を補完する上で,重要な役割を果たす。協調行動によって,為替レートの水準は,経済ファンダメンタルズとより整合性のある方向に変わってきている。これらの変化が,国際的調整プロセスにおいてその役割を十分に果たすことは,妨げられてはならない。適切な為替レートは国際的に両立する政策を通じて維持される必要があることを認識しつつ,このような目的の為の協力は継続されよう。国際通貨制度の機能を改善するための努力は強化されるべきである。

10. 公的支出と財政赤字を抑制することは,安定的な国内金融環境を確立するために不可欠であり,また,民間投資の拡大に資し,その結果,世界的な持続的成長を促進することとなる実質金利の持続的低下をもたらす上でも不可欠である。赤字が大きく,また,公的債務が著しく上昇している国においては(これは依然として大部分のOECD諸国にあてはまる),一層の赤字削減を遅らせることはできない。赤字削減は成長を改善するという目標と両立する形で探求されるべきである。このような赤字削減は,インセンティブを妨げる増税によるよりは,公的支出を一層強く抑制することによって,最も良く達成される。公的債務の対GNP比率の増大傾向が逆転し,財政赤字が大幅に減少して財政の柔軟性が回復した場合には,一層の赤字削減はそれほど緊急ではないかもしれない。かかる場合においては,公的支出抑制が引続き進めば,減税の余地が生れる。一般的に,中期的な財政目標は,公的債務の対GNP比率の上昇を回避し,その比率が異常に高い場合はその比率を下げる必要性という観点,社会保障制度の実効性を保つために人口構成の趨勢が持つ影響を充分に勘案する必要性という観点,及び国内貯蓄と投資の持続的均衡に貢献するという観点から立てられるべきである。更に,より一層強い成長と調整を促進するために税制改革に取り組むことが出来よう。

11. 石油価格の下落から得られるマクロ経済的利益は,より低い価格を通じ家庭及び企業に還元されることにより,恐らく最もよく実現されるであろう。いくつかの国では,例えば,財政赤字の削減のため,又は,効果的な公共投資を増やすため,過大と思われる他の税金を引き下げるため,又は石油・ガスの歳入減を代替させるために,増税を通じこの利益の一部を吸収することが適切であると考えた国もいくつかある。

12. ここ数年,金融政策の第一義的課題はインフレを下げこれを抑制することであった。多くのOECD加盟国において大幅な進展が見られた。インフレ再加速化の危険性は常に存在する。従って・金融当局は注意を払い続ける必要があろう。このような状況において・現在の金融政策の目的及び意図は持続的成長を支援するものであり,一層の金利低下の余地を生み出している。特に,石油価格低下のインフレ抑制的影響という観点から右にあてはまる。金利引き下げのタイミングに関する金融当局間の協力は,為替市場の好ましからざる反応を最小限にとどめるために役立ち得る。

構造政策

13. 持続的で良好な経済パフォーマンスは,柔軟性及び機動性を有する国民経済(財及びサービスの為の開放的かつ多角的な貿易制度,技術及びノウハウの急速な普及,及び効率的かつ国際的に統合された金融市場を通じて結び合わされている経済)を指向する構造的変化の継続したプロセスの中から生ずるものである。環境の保護・改善の継続は,このプロセスの不可分の一部であり,又,そうでなければならない。世界経済の望ましい発展を達成するには時間がかかり,又,いくつかの特定産業部門では,公的助成が産業による調整政策の追求の可能性を既に阻害しつつあるという事実に鑑み,効果的な構造改善に対する障害を克服する決意が必要であろう。構造政策に関する議論は以下の側面に焦点をあてた。

雇用

14. 失業は我々の最も貴重な資源すなわち人間の能力の浪費であり,この問題の解決はきわめて高い優先度を有する。成長,貿易,技術的及び構造的変化により創出された新たな雇用機会に迅速かつ効率的に対応する労働市場は,より機動的な経済とより高率の雇用創出にとって不可欠である。労働者側と経営者側双方の創造的関与がこの目標の達成にとって中心となる。賃金の適正化ほインフレの低下に貴重な役割を果たしてきた。適正化を継続することは,インフレなき成長と実質的生活水準の改善を維持することに資するであろう。賃金の決定は市場の状況,生産性の動向,及び現在起りつつあるインフレの低下を考慮しなければならない。労働市場のより良い機能を促進するための積極的な政策には,特に若年及び長期失業者の雇用機会へのアクセスの改善,労働者移動の促進,新規労働者の雇用を妨げる規定の修正,技能開発のための施策の強化,及び特に経済のニーズに対する教育及び訓練の対応力の改善が含まれる。

金融市場

15. 金融市場において生じつつある急速な構造変化は,より効率的に賃金を供給し,特定のニーズや選好により良く対応する金融市場の全般的能力を改善し,その結果,より力強い成長に貢献する。このプロセスは歓迎されるべきことではあるが,一方で政策に対する特別の意味をも有する。金融上の刺激をより強力に伝幡するためには,金融政策の遂行上,国際的により密接な協力が必要となる。同様に各国の監督規制及びプルーデンシャル・コントロール(経営諸比率規制)についての制度も国内金融市場における構造変化及び国際化の増大に適応する必要がある。特にこの点に関し各国の政策の国際的両立性の増大が必要である。

公的資源の配分

16. 財政赤字と政府支出の全体的規模を適正に抑制することに加えて,予算政策は政府の各種施策の効果と効率を改善することに向けられるべきである。このことは資源を優先度の高いニーズに弾力的に再配分することを意味する。更に,右は税率の引き下げ,課税対象の拡大,及び各種経済活動間の実効税率の差の縮小により租税構造を改善することも意味する。

技術

17. 過去10年間,OECD諸国の経済は諸活動間にかなりの変動を伴いつつ構造及び運営面で深大なる変化を経験してきた。情報処理のような技術開発は,多くの既存産業における製品及び生産工程を変化させるとともに全く新しい産業の成長を可能にしてきた。新技術の普及が成長及び雇用に対して可能なる最大限の貢献をなしうるためには,効果的な技術移転が促進されるとともに対応力のある教育・訓練制度と同様危険負担についての適切なる環境が必要である。知的所有権の適正な保護は技術の好ましい創造と普及に大きな貢献をする。又,かかる保護を世界的に強化するため協調行動が必要である。

農業

18. 農業に対する国内支援政策及び保護政策は,時に必要とされる構造調整を妨げることもあり,需要を超える世界的な供給増をもたらした。農業分野における技術革新が効果的な調整と調和しないならば,この問題は更に尖鋭化するであろう。OECDの検討は,関連する諸問題をより良く理解する上で貢献すべきである。閣僚は,農業政策のマクロ経済的及び社会的影響をも考慮しつつ,これらの問題に関する作業を強化するようOECDに要請した。閣僚は,多くの場合,現在の政策が財政負担の著しい増大を伴うのみならず,農業貿易面での対立を深刻化する危険をも伴い,その結果,より一般的に貿易上の緊張を悪化させる危険がある旨合意する。穀物貿易及び他のいくつかの農産品市場における最近の緊張関係の悪化につき強い懸念が表明された。かかる深刻な状況の下で,OECD諸国が,農民の福利を考慮しつつ構造調整を促進し,財政支出を削減し,市場の不均衡を是正し,かつ国際緊張をやわらげるために,農業に影響を有する政策の再調整に向けてたゆまぬ努力を払うことが緊急の課題である。

エネルギー

19. 相対的に低い石油価格の長期化により,長期的なエネルギー供給安全保障と将来のエネルギー市場の逼迫化の可能性に対する長期にわたる懸念が更に強まることもあろうが,現在のところエネルギー政策の分野で加盟国による新たな国際的行動の必要性はない。但し,いくつかの加盟国においては地域的,業種的あるいはその他の国内的理由により内部的調整が必要と判断される可能性はある。従って,1983年5月9日及び10日のOECD閣僚理事会で支持され(最近のIEA理事会で再確認され)た結論にてうたわれているエネルギー政策目標が再確認された。右結論は,今後決定されるかもしれない必要な調整を得つつ,引き続き実施されていくであろう。この目的のため,エネルギー政策目標が現在及び将来の市場状況のもとで達成されるかどうかを検討するためのベースとするため,中長期のエネルギー展望の評価の決定がなされていくであろう。

開発途上国との関係

20. 相互依存は現実である。OECD諸国における力強い経済パフォーマンスは開発途上国の成長にとって不可欠である。逆に開発途上国の経済パフォーマンスはOECD域内の成長に益々大きな影響を与えるであろう。より躍動的でかつより広範に共有された経済発展は,開発途上国及び先進国の双方における広範な政策にわたる行動を伴うものである。

21. 債務負担は多くの国にとって引続き厄介な問題であり,これらの国の開発プロセスを著しく阻害する。成長指向的な構造調整及び貿易の拡大は,この問題を解決し,その他の障害を克服するために不可欠である。OECD諸国は,困難な政治的・社会的状況下で多くの開発途上国がすでに実施している努力を歓迎し奨励する。また,OECD諸国は米国がソウルで行った債務問題に係る提案を実施するうえでの進展を歓迎する。更にOECD諸国は,この成長指向的債務戦略の目標をケースバイケースで実現するため,債務国,民間銀行,及び「国際金融機関」による協調的努力の継続を促す。債務国はIMF及び世界銀行と協力しつつ,持続的成長と持続しうる対外均衡を可能ならしめる包括的政策を発展させ,実施する必要がある。これは,国内貯蓄を動員し資本逃避を防ぎ,そして将来の資金フローにおいてより重要な役割を果たすべき銀行融資と対外直接投資を引きつけることによって,債務問題の改善に大きく貢献するであろう。

22. OECD諸国としては,開発途上国の政策を支援するような国際経済環境を促進することが必要である。従って,OECD諸国は,自国の成長と調整の機動性を改善し,効果的な調整政策を実施している国に対するケースバイケースでの輸出信用保険の再開についての協力を行ない,開発途上国における新規投資を奨励するための国際投資保証機構(MIGA)の創設を支持し,又,質量両面で十分な譲許的及び非譲許的な資金フローを提供するため努力しなけれぼならない。

23. 石油価格の動向はエネルギー輸入開発途上国を稗益している。しかし,多額の債務を負ったいくつかの石油輸出開発途上国の財政状況は悪化しており,債務戦略全体の中で適切な手段を通じて検討されなければならない。非石油一次産品価格の低下傾向は,より開放的で安定した市場及びこれら産品の貿易を歪曲する手段を除去するための行動及び一次産品依存型経済における生産と加工の多様化の必要性を高めている。これに対して国際社会の注意を高めることが必要とされている。

24. 最貧国,特にサハラ以南アフリカ諸国の窮状は引続き深刻な懸念をもたらしている。これら諸国にとっても,成長指向的な政策改革と構造調整措置に取り組むことが不可欠である。しかしながら,より改善され調整された援助計画を通じて,そのような努力を支持するために,今や特別の努力が必要とされている。OECD諸国は,最貧国の成長と重要な調整計画を支持するため,2国聞及び多国間双方のチャンネルを通じて追加的政府開発援助の提供に関し最善の努力を払う旨合意した。多国間援助はこの観点で極めて重要な役割を有している。このことから,世銀の「アフリカ基金」や最近創設されたIMFの「構造調整ファシリティー」が歓迎される。また,このことからIDAの大幅増資の重要性が導かれる。また,2国間援助供与国は,開発指向の計画に対し,柔軟かつ適時でより良く調整された資金支援を行うため,現在の援助政策及び慣行を改善していかねばならない。

25. 閣僚は,アフリカにおける危機的経済状況に関する来たるべき国連総会特別会期に期待している。この会期は・同大陸の問題の解決に関する今までの努力の完全なレビューに基づき,アフリカ諸国の政府と国際社会の協力を改善するための機会を提供する。更に,アフリカの中・長期的発展の更生をめざす将来行動の方向づけを行うための機会も提供する。

貿易政策

26. 閣僚は,包括的な新ラウンドの多角的貿易交渉を開始する必要性を積極的に是認した。閣僚は,この目的で9月に開催される閣僚会議のためにガットで行われている準備につき満足の意をもって留意した。OECD加盟国政府は,新ラウンド及びその開始にいたるプロセスを支援するために最善を尽くす決意である。先進国・開発途上国を問わず,全ての国は新ラウンドを早期に開始し,成功裡に完了することに利害関係を有している。交渉の一般的目的はガットの規定及び規律を改善し,対象範囲を拡張し・新分野に対するその適用を拡大し・一層の実質的な貿易自由化を促進し,他の国際経済政策の貿易面を検討することでなければならない。この点に関し,国際経済協力の他の分野における類似の努力は貿易自由化の目標達成に資するであろうことが認識された。閣僚は,貿易情勢の変化に対しガットを適切なものに維持する為の諸問題を含む交渉の為の包括的な議題を支持する。包括的な議題は均衡のとれた結果を達成する可能性を提供するであろう。新ラウンドでは,就中,サービス貿易並びに知的所有権及び対外直接投資の貿易関連面に関する諸問題につき検討が行われなければならない。右交渉は,その経済発展の段階にふさわしい方法で自由化プロセスに貢献すべき開発途上国が開放的かつ多角的な貿易体制により十分参加するようになるものでなければならない。

27. スタンドスティル及びロールバックに関する効果的なコミットメントは,積極的な交渉環境を創出し,貿易交渉の全般的目標達成を促進する為に必要である。従って,閣僚はOECD加盟国政府としては,全ガット締約国による効果的かつ信頼できるスタンドスティルに関する合意の作成に貢献し,右合意を適用するために意味のある監視プロセスを交渉当事国と協議する用意がある旨表明した。また,閣僚は新ラウンドの自由化目標の達成に貢献する為,保護的貿易措置のロールバックの重要性を協調した。

28. 既存の貿易制限を緩和及び撤廃するための行動に関する進捗状況が再度検討された。困難な経済情勢を背景に,保護主義的圧力が絶え間なく存在し,以前よりは著しく緩慢な度合ではあるが,貿易制限が引続き導入された。同時に,貿易自由化努力の結果,制限措置の撤廃・緩和が実施されている。その結果は控え目なものではあるが,それ自体有益な努力を意味するものであり,新しい多国間貿易交渉に対する信頼醸成に貢献しよう。保護主義的圧力の脅威が引続き存在することに対し,閣僚は,新規の制限的措置を回避し,貿易制限措置及び貿易歪曲措置を削減する努力を継続するというコミットメントを再確認した。より明確にいえば,国際繊維取極めの再交渉において可能な限り自由化に努力することを約した。何人かの閣僚はガット規制を繊維貿易に適用するという最終目的をもって上記の努力を行う旨約した。

29. 開発途上国を支援するために,閣僚は,新ラウンドにおける締約国が構造調整及びセクター計画の下で開発途上国が採用した貿易自由化措置に対し,ガットのコンテクストにおいて,適切な配慮を加える方策を探求するであろうとの希望を表明した。

サービス貿易

30. 閣僚はサービス貿易に関するOECDの広汎な活動についても再検討を行った。多角的交渉の新ラウンドにサービスを含めることは貿易自由化に大きく貢献するであろう。OECDにおける関連作業は積極的に継続されるべきである。この関連で閣僚は,関連する複雑な問題,特に各サービスセクターに対する一般的概念の適用に関し既存の概念的枠組の検討作業及び分析・統計作業を強化・拡大する必要性につき強調した。同様に,閣僚は,可能な限り多くのセクターにおいて自由化を促進するために,OECD加盟国間のサービス貿易に適用されうる経常貿易外取引自由化コード及び他の既存コードを拡大し,より効果的なものにすることが重要である旨強調した。

投資

31. 閣僚は,OECD加盟国は,先進国及び開発途上国の双方において直接投資に対する制限の一層の自由化を奨励する旨表明した。閣僚はOECDにおける投資政策の一層の自由化はこの重要な分野における広汎な多角的努力を成功させる上で貢献するであろうと表明した。との点に関し,閣僚は資本移動自由化及び内国民待遇に関するOECDのコードを強化する為の努力の改善が見られることを歓迎した。

結論

32. 資源の効率的配分を通じて国際的摩擦や不均衡を除去するためには,自由貿易体制のもとで更に市場開放を促進するとともに中長期的な視点にたった世界的構造調整を進めることが重要である。特に直接投資,技術交流等の産業協力及び共同研究開発等の国際協力は,世界的次元での構造調整を促進し,調和のとれた国際分業ひいては保護主義の抑制に資するため非常に重要である。

 目次へ