第9章 その他の活動

第1節 外交体制の整備充実

以上述べたような外交活動は,外務本省及び170の在外公館(大使館,総領事館,領事館,政府代表部)に働く3,968名(61年度末定員)の外務省職員によって支えられている。

ますます複雑かつ厳しさを加えつつある国際情勢の下で,総合的かつ機動的な外交の推進は不可欠であり,外務省は,本省及び在外公館の機構の強化,定員の増強,職員の研修,能率の向上等,各分野で外交実施体制の整備充実に努めてきている。

1. 機構・定員

(1) 機構に関する87年度予算で,法律職として国際花と緑の博覧会政府代表1人(特別職),省令職として企画官3人,地域調整官2人をそれぞれ設置することとした。また,政令職である経済局書記官1人の存置期限を5年間延長することした。

在外公館関係では,実館として在バハレーン大使館を設置することとした。

この結果,87年度末における我が国在外公館数(実館)は,大使館106,総領事館58,領事館2及び政府代表部5の合計171館となる。

(2) 外交機能強化のためには,外務省定員の増強が不可欠であるとの認識の下に,外務省では,「定員拡充5,000人計画」を策定し,努力を続けてきた。87年度には,特に,情報の収集・分析機能の強化,経済・経済協力事務の強化,在外公館の活動を支援する官房体制の強化,広報・文化活動の強化及び領事事務(邦人保護を含む)の強化等を重点事項として掲げ,厳しい予算・定員状況ではあったが,本省33名,在外公館104名,合計137名(定員削減計画による減員45名を差し引き,純増は92名)の増員が得られた。これは,外交体制強化の必要性について各方面の理解が深まったことの現われと考えられる。

この結果,外務省の87年度末の定員は,4,060名(本省1,663名,在外公館2,397名)となり,4千人の大台に達する。

2. 職員研修の実施状況

(1) 外務省研修所における研修

86年度新規入省者(85年度外務公務員1種,国家公務員1種及び専門職員採用試験合格者計67名,国家公務員III種試験合格者等70名)に対する初任研修,在外公館への赴任が予定されている他省庁出身職員120名及び外務本省職員231名並びにこれら在外赴任予定者等の夫人332名に対する赴任前研修に加えて,85年度に新規事業として開始した本省職員に対する中間語学研修及び休暇帰国中の在外公館職員に対する中間研修を各々39名,29名につき実施した。また,特殊語国への赴任予定者を中心とする一部の職員に対して必要に応じ随時語学研修を実施するとともに,本省職員に対する語学添削指導等を行った。今後とも上記の各種研修,特に赴任前及び中間研修の拡充を図る方針である。

(2) 在外における研修

82~84年度の外務公務員1種及び専門職員採用試験に合格した職員198名について,語学別に2年ないし3年間,外国の大学等における在外研修を実施した。

第2節 外交問題に関する記録の整理・刊行及び閲覧

外務省は,発足以来,鋭意外交記録の整理・編さん・保存に努めてきているが,さらに外交知識普及のためにも,71年には外交史料館を設立(東京都港区麻布台)し,外交記録の閲覧・展示等一般の要望にこたえている。

同館は,第2次世界大戦終結までの外交記録約4万8,000冊,徳川幕府と諸外国との交渉史料を収録した「通信全覧」・「続通信全覧」2,104巻,条約書約600件,国書・親書約1,100通などの史料及び戦後記録のマイクロ・フィルム170リールを所蔵している。

同館ではこれら史料を一般の閲覧に供するとともに,部外からの照会にも応じており,86年度の閲覧者数は約2,200名,外交史実等に関する主な照会件数は約500件であった。

また,同館展示室には,幕末からサン・フランシスコ平和会議までの代表的な国書・親書・条約原本・往復文書及び外交関係の写真等,貴重な史料が展示され,公開されている。
外務省はまた明治元年(1868年)以降の外交記録の中から主要文書を整理・編さんした「日本外交文書」を昭和11年(1936年)以来逐次刊行(外交史料館にて編さん・刊行)しており,昭和38年(1963年)には明治期の刊行を終え,86年度には「1935年ロンドン海軍会議経過報告書」及び「大正15年第2冊下巻」を公刊し,これで大正期も完結し,目下昭和期の編さん作業を進めている。この結果,田本外交文書」の総数は,各年次別本巻のほか,「日露戦争」,「ワシントン会議」,「満州事変」,「条約改正関係」,「移民問題」等の別巻を加えて164冊に達した。

さらに外務省は,戦後,外交記録公開に対する期待が国内に高まったことにかんがみ,原則として作成後30年を経た外交記録を事項ごとに審査の上,一部の例外,すなわち「国の重大な利益が害される場合」及び「個人の利益が害される場合」を除き,整理がつき次第,ある程度まとまった段階で順次公開することとし,76年以来,外交史料館にてマイクロ・フィルムにより一般の閲覧に供している。

かかる外交記録の公開は,外務省が自発的に行っているものであり,最近では85年3月25日,第8回目として,昭和28年までの主要な外交記録を公開し,目下これらに続く記録公開のための準備作業を鋭意進めている。

 

 

 

 

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