第6節 外国人の入国
1. 外国人の入国と査証の役割
86年1年間に202万人の外国人が来日した。これらの外国人は,国籍,入国目的等のいかんを問わず,原則として,来日前に我が国の在外公館で査証を取得しなければならないことになっている。このような査証制度は,外国人の入国について,国の安全や公安の維持,経済的な利益の保護,外交政策の実施などの観点から,あらかじめ審査し,入国の可否を決める必要があるとの考えから設けられているものであり,各国とも同様な制度を採っている。
最近,この制度の運用について簡易化と厳格化という二つの相反する流れがみられる。簡易化については従来から人的交流促進のため,観光目的などの短期旅行者に対し相互に査証を免除するという取極を結ぶことが行われているが,この1年間では86年2月にバルバドスと,86年5月にブルネイとそれぞれ取極を結んだ。これで我が国は,50か国とこの種の取極を結んだことになる。
他方,査証の厳格化については,最近我が国において不法残留や資格外活動を行う一部諸国人に対する査証発給が問題となっている。これらの外国人の入国の適正化については従来から努力してきているが,査証発給の厳正化だけでは解決できない。適切な国内的措置を講じつつ,関係相手国の協力を求める必要がある。
2. 査証の発給状況
我が国は,来日を希望する外国人に対し179か所の在外公館で査証(無旅券者に対しては渡航証明書)を発給している。86年の発給総計は,約120万件で,前年度比15.4%減になるが,この減少は,円高の進行の影響などによるものとみられる。査証発給件数を地域別に見ると,アジアが全体の63.9%,北米が28.1%で,この両地域だけで全体の9割以上を占めている。