第4節 邦人の福祉

1. 海外子女教育

5月現在,海外の学齢子女(小・中学生)は,前年より約1,400名増加し,3万9,393名となった。このうち40%の子女が全日制の日本人学校に就学しており,38%が現地校などに通学するとともに補習授業校に通っており,残り22%がもっぱら現地校などに就学している。外務省は,文部省と協力し海外子女教育の充実強化に努めている。

(1) 援助の状況

外務省は,校舎建設・借料補助,現地採用教員の謝金補助等を行い,文部省は教員派遣,教材供与等の事業を行っている。なお,86年度の外務省の海外子女教育予算は約15億円であった。

(2) 日本人学校

日本人学校は,86年に,バルセロナ,メルボルンの2か所に新設され,合計80校となった。在籍児童生徒数は5月現在1万5,811名で,派遣教員数は968名に上っている。

(3) 補習授業校

補習授業校は,現地校などに通学する邦人子女に対し,週末等に国語を中心に補習授業を行っているものであり,5月現在112校となっており,在籍児童生徒数は1万5,086名である。

補習授業校の講師は,主として現地在留邦人であり,86年には1,144名となっている。

100名以上の児童生徒を有する大規模な補習授業校及び全日制に準じた授業を行っている補習授業校に対しては,予算の範囲内で専任教員が派遣されている。

2. 海外邦人医療対策

外務省は海外在留邦人の健康管理に資するため,72年以来医療事情の悪い地域に年間12チームの巡回医師団を派遣して在留邦人のための健康相談を行っている。86年度はアジア,アフリカ,中近東,中南米,南太平洋の約70都市を巡回し4,000人に近い在留邦人の健康相談を行った。なお,86年度は1チームをブラジル,アルゼンチン,パラグァイ,ボリビア及びペルー在住の原爆被爆者のための健康相談にあてた。

また,在留邦人の健康管理のための啓発事業の一環として81年度以来「熱帯地における健康管理」シリーズを刊行しているが,86年度は「ワンポイント・アドバイス」に加え「肝炎とその予防」を発刊,また,エイズの流行に鑑み,小冊子「エイズABC」を発刊し,世界各地の在留邦人に配布した。

3. 戸籍・国籍事務

日本国民は海外でも国内同様,日本の戸籍法の適用を受けることになっている。

特に出生,婚姻,死亡など身分関係に変動があった場合は,日本の本籍地の市区町村に戸籍上の届出を行うのと同様に最寄りの在外公館にその変動につき届出を行い,戸籍に記載されることが必要である。

海外在留邦人から各在外公館に対し届出のあった戸籍・国籍関係件数は86年度は16,635件であり,父母両系主義を採用した国籍法の改正を反映して,旧国籍法施行当時の59年度比35%の増加であった。国別にみると米国が最も多く5,234件で,件名別では出生届が多く5,451件であった。

4. 証明

在外公館では海外在留邦人の各種手続のために必要な署名証明,在留証明等の証明書を発給しているが86年度件数は計92,451件(前年比5.9%増)であった。これら証明の取扱件数は海外渡航者の増加,諸外国との経済,貿易関係の進展等に伴い,漸増傾向にある。

 

 

 

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