第2節 邦人の海外渡航

1. 概況

(1) 86年の海外渡航者は551万人に達したが,かかる飛躍的な伸びに伴い同年の旅券発行数も史上最高の268万件を記録した。

現在有効な旅券は約1,200万冊,即ち,国民10人に1人が旅券を所持していることになる。今や海外渡航は,一般国民の日常生活の一部として定着したと言っても過言ではない。

(2) 86年の旅券発行数は,対前年比11.6%増の268万7,495件(一般,外交,公用。ただし,在外公館発行分を除く)であった。

86年は,著しい円高によるツアー料金の引き下げや,現地旅行費用の割安感等から海外渡航熱が高まり,各月とも前年の発行数を上回った。特に9月,10月及び12月は前年同月比で20%以上の大幅な伸びを示した。

今後の旅券発行数の推移については,円高傾向のような積極的要因がある一方,これに伴う不況という消極的要因もあり予断し難いが,国民の海外渡航熱にはなお根強いものがあると考えられるので,当面は増加を続けていくと推測される。

2. 海外渡航の態様

(1) 86年の旅券の発行数を申請者の年齢別でみると,発行数全体に占める割合が,19歳以下8%,20歳代37%,30歳代20%で,30歳代までが全体の約3分の2を占めている。

(2) 目的別発行数では,観光目的のものが91%で圧倒的に多く,次いで業務渡航が7%である。

(3) 旅券申請書に記載された主要な渡航先別発行数では,米国(行き先はハワイ,グアム等が多い)が101万4,832件で圧倒的に多く,全体の38%を占めている。次いで台湾,韓国,香港,中国,シンガポール,フランス,オーストラリアの順となっている。

3. 旅券事務のOA化の現状

外務省としては,急増する旅券業務に対処するため65年にコンピューターを導入,69年以降は都道府県に順次端末機を設置して外務省と直結したデータ伝送を実施している。さらに84年にはデータ伝送と旅券発給事務の統合一貫処理システムを全都道府県に普及完成させた。

しかし,増大する事務量を円滑に処理するため,85年度より旅券業務のOA化の一層の推進を図るとともに,代理申請の拡大その他諸般の事務簡素化等合理化対策に取組んでいる。

 

 

 

 

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