第8節 国際テロ(1987)

1. 航空機ハイジャック,爆破,暗殺,誘拐等の国際テロ事件は,86年度中も世界各地で多発し,特に国家による国際テロ支援の問題が大きな国際的関心を集めた。このような状況において,我が国は国際テロに断固反対するとの立場から,国際テロ防止のための国際協力に積極的に参加した。

2. 米国は,86年1月7日,リビアがウィーン,ローマ両空港爆破事件に関与したとして対リビア経済制裁を発表したのに続き,4月15日には,西ベルリンのディスコ爆破事件(4月5日発生)等のリビアのテロに対する自衛のための措置であるとしてリビアを爆撃し,また,EC諸国も4月に3回にわたる外相会議を開催してリビア問題につき協議を行い,リビア大使館員の削減等の対リビア措置に合意した。

かかる状況下で,5月に開催された東京サミットにおいては,リビア問題を含む国家支援テロの問題を中心に国際テロ問題が大きな政治問題として討議され,5日,我が国を含むサミット7か国首脳により「国際テロリズムに関する声明」が発出された。この中でサミット7か国は,国家支援テロを含むあらゆる形態のテロを非難し,テロ防止のための国際機関における協力の促進,情報交換の強化に合意するとともに,リビアを含むテロ支援国家に対する6項目の措置を発表した。

3. 9月に入るとパリにおける連続爆破事件が発生する等国際テロ事件は再び激化の様相を示した。10月24日,ロンドンのエルアル航空機爆破未遂事件に関する判決が言い渡されたが・英国は同日この事件へのシリアの関与が明確になったとしてシリアとの外交関係を断絶,米国及びカナダも在シリア大使を召喚,また,ECは,11月10日の外相会議においてシリアに対する武器売却の禁止,高官の往来停止等の対シリア措置を決定した。我が国も11月11日,英国をはじめとするEC諸国がかかる措置をとるに至った事情に理解を示すとともに,シリア政府が国際テロに反対する立場を具体的行動をもって示すよう働きかけていく旨の外務報道官談話を発表した。

4. なお,国際民間航空機関(ICAO)及び国際海事機関(IMO)においても国際テロ対策が大きな検討課題となっており,それぞれ空港テロ及びシー・ジャック事件を防止するための国際的合意文書作成の作業が行われており(第7節参照),我が国もこれに積極的に参加している。

 目次へ