第5節 行財政問題

1. 我が国が85年の第40回国連総会で設置を提唱した国連賢人会議(通称G18)は,86年2月に設置され,4回の会合を経て,8月に71項目の勧告を含む報告書をとりまとめ総会に提出した。これを受け第41回国連総会は事務局職員の15%削減等賢人会議の諸勧告をほぼそのまま3年以内に実施することを求めるとともに,今後は国連の2年間予算の総額を計画調整委員会(CPC)において事前にコンセンサスで決定すること等を定めた決議案(41/213)を無投票採択した。

我が国は今次交渉の最大の難関であった予算決定手続問題等において各加盟国の立場を踏まえた調整案を提示する等,今次決議の採択に重要な役割を果した。

2. 加盟国からの分担金により賄われる国連の通常予算は・従来から一部加盟国の政治的理由等による不払いのため収入不足を来していたが,カセバウム法(国連機関における加重投票制の導入と米国の分担金支払いをリンク)及びグラム・ラドマン法(連邦財政収支の均衡を目的)の成立による米国の不払いのため,1986年より財政危機が顕在化した。

このため同年春には第40回総会再開会期が開かれ60百万ドルの節約措置を承認した。1987年も大幅な不払いが予測されたため,86年末の第41回総会では事務総長より,会議の短縮等85百万ドルに及ぶ節約措置が提案され,ほぼそのまま承認された。

3. 行財政問題にあっては,人事関係も重要な問題であり,第41回国連総会においても激しい議論が展開され,次の事項等について決議が成立した。

(1) 事務局職員の採用については,新規採用凍結の早期解除,部内競争試験(一般職から専門職への一種の登用試験)及び部外競争試験の統一基準による実施方法の検討等を事務総長に要請する旨の決議が成立した。

(2) 各国別の望ましい職員数の範囲は,従来,分担率要素(ウェイト56%),メンバーシップ要素(同36.8%)及び人口要素(同7.2%)の3要素を基に算定されているが,この算定基準を見直すことを内容とする決議案が提出されたものの,各国の合意に至らず,次期総会に先送りすることで決着した。なお,86年6月末現在,我が国の望ましい職員数が161名~217名であるのに対して,国連事務局に勤務する邦人職員数は101名である。

(3) 年金については,給与額を基にして年金基礎給を定める(米国連邦公務員の年金基礎給を平均20%上回るスケールを作成)方式の導入を内容とする決議が成立した。

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