第4節 政府直接借款

1. 概況

我が国二国間政府開発援助の過半を占める政府直接借款(いわゆる円借款)は,開発途上国の開発資金需要に応えるための有効な援助手段として重要な役割を果たしている。

86年度の円借款供与実績は交換公文(E/N)締結額ベースでは,4,264億円であったが,これは対前年度実績の約4割減となっている。この背景には,開発途上国において一次産品価格の低迷等による経済状況の悪化または債務問題の深刻化等により経済開発計画の実施を見合わせ,このため新規の借入れを控えたことなどの事情等があったものと考えられる。

地域別シェアでは,アジア向けが75%から67%へ減少したのに対し,中南米,中近東向けは10~13%でほぼ横ばい,アフリカ向けは,85年度にその実施を決定した世銀の提案によるrアフリカ基金」との特別協調融資の供与実績が現われたこともあり,1%から9%へと増大した。

供与形態別では,従来より我が国は,道路,港湾,発電所及び通信施設等プロジェクト借款を中心に供与してきているが,商品借款については援助効果の速効性等のメリットもあり,被援助国の国際収支状況等を十分勘案しつつ対応することとしている。なお,86年度において,円借款供与総額(E/Nベース)の内,商品借款の割合は0.6%となっている。

上記のとおり,円借款をとりまく環境には厳しいものがあるが,我が国としては,被援助国の開発ニーズにも配慮しつつ,引き続き円借款の拡充に努める方針である。

2. 86年度供与実績の特徴

我が国は第3次中期目標の下で援助の量的拡充とともに質の改善を目標としているが,質の改善については,途上国側からの円借款の供与条件緩和要請等を踏まえ,87年1月から平均0.6%程度の金利引き下げを実施した。

また,我が国は,途上国の要望を考慮するとともに援助資金の効率的運用を図るとの観点から,1978年以降円借款の調達条件に関し一般アンタイ化に努めてきており,86年度には一般アンタイ化率は50.8%を示している。

他方,途上国における現在の困難な経済状況下で,開発需要に対応して円借款供与を行っていくためには,援助形態の多様化及び供与の弾力化を図ることが必要である。かかる観点から,円借款による内貨融資については,85年度では,同融資額は新規供与額のうちの4.6%にすぎなかったが,86年度には9.5%へと増大した。特に,86年度対インドネシア円借款においては,既往円借款案件にも内貨を充当するなど全供与額の26%の内貨融資を行った。

また,債務繰延べ措置をとる国に対しても当該国の具体的経済状況,我が国との相互依存関係等を考慮して円借款供与をケース・バイ・ケースで決定すべきであるとの考えである。かかる観点から,86年度には債務繰延べ期間中であるエクアドル,トーゴー,ギニア及びソマリアに対し新規に合計250億円の円借款供与を行った。

さらに86年9月,政府は総合経済対策において開発途上国の経済困難の下で少ない資本投下で重要な経済効果を生み出すことが期待される既存施設の活性化を図るための協力を推進することを決定し,これに基づき積極的に円借款供与を行っていくこととしている。

 

 

 

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