(23)EC委員会対日関係報告書(要旨)

(86年2月9日,ブラッセル)

1.経済統計の好ましからざる推移

(1)OECD統計によれば,1984年に350億ドルであった日本の経常収支黒字総額は,85年には450億ドル,86年には580億ドル,87年には620億ドルを超えると予想され,貿易黒字幅も右に伴って増加すると見込まれる。

(2)G-5の決定により円の価値は上昇してはいるが,対ドル25%の上昇に対し,対ECUは7%である。

(3)日本政府がとった諸措置の実際の効果は不確実であり,内需拡大措置の輸入への効果は限られたものでしかなく,3年にわたるアクション・プログラムもポジティブではあるも,短期的な効果は見込めないであろう。

(4)構造的なECの対日赤字は,83年140億ECU,84年165億ECU,85年189億ECU(ECの国内総生産の0.32%)と絶えず増加している。

2.日本当局の政治的意図

(1)日本の各当局の主要先進諸国との貿易黒字問題に対する態度は,かなり変化していると感じられる。構造改革の必要性は,最高レベルの中曽根総理によって認識されており,「国際協調のための経済構造調整」のための研究グループは,貿易不均衡是正に必要な構造改革に関する勧告を3月に提出する予定である。

3.EC委の提案

EC委員会は,国際自由貿易体制の維持には可能な分野において,日・EC間の関係が改善されることが必要であるとの考えに基づき,次の提案をする。

(1)対話及び協力を強化すること。

日・米・欧の三極のうち,欧・米,日・米の関係が進んでいるのに比して現在までのところ日欧関係は余りにも弱い。EC委は,既存の協議の枠組(年次閣僚協議ハイレベル協議,各種専門家会合)に加えて,日・EC関係の推移をフォローし,適切な勧告を行う任務をもった,EC委員長及び日本の総理の個人代表によって構成される「監視グループ(UNGROUPEDESURVEILLANCE)」の創設を提案する。EC委は,科学技術分野においては,核融合,バイオ・テクノロジー新素材及び若年研究者の交換について,日・EC協力の重点分野(LESPOINTSCENTRAUX)として日本との協力を進めたいと希望している。また,投資及び産業技術交流の増大を積極的に奨励することによって産業協力を推進するとともに,経済政策のより緊密な協調及び通貨面での協力が図られなければならない。

(2)日・EC経済関係の均衡回復のため,日本市場開放への圧力を継続すること。

ECの基本的な方針は,日本の輸入増大により貿易の均衡を達成することにある。

そのためにEC委は3年間のアクションプログラムの実施を注意深くフォローする。また,EC委は,日本市場への参入の妨げとなっている障害を,迅速に除去するため,特定の産品について協議(POURPARLERSSURDESPRO-DUITSPARTICULIERS)の開始を提案する。

EC委は,日本政府に対して,数量的な輸入目標の設定を要求し続ける。

EC委は,通貨及び経済政策の枠組の中で,内需を刺激するための強力な措置がとられることを要求する。

EC委は,ガット・ニューラウンドにおいて,日本が輸入性向を高めない限り,日本に対していかなる譲歩も行わないことを提案する。かかる観点に立って,EC委員会は,今後数カ月の間(AUCOURSDESPROCHAINSMOIS),GATT23条2項手続の再開の妥当性,得失及びかかる行動がどの程度締約国の支持を取りつけられるかにつき検討する。かかる行動はガット・ニューラウンドの枠内に組み込まれよう。

EC委は,欧州金融機関が,日本の金融機関がEC域内で享受しているのと同等の対日市場アクセスを与えられるよう要請するであろう。右は,日・EC経済の一層の相互浸透のための基本的条件の一つである欧州の対日投資の増大を容易にするであろう。

EC委は,日本の対欧投資がより高い付加価値を伴う生産活動に向けられることに固執する。

(3)ECとして対日市場への貿易促進の努力をすること。EC委は,1987年度予算において,欧州の輸出及び投資を促進するために共同体の活動を強化するための諸提案を行うとともに,その実施のために,十分な人材が確保されるべきことを要求する。

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