(19)第4回中南米債務国会議モンテヴィデオ宣言(要旨)

(85年12月17日,モンテヴィデオ)

カルタヘナ・グループ外相及び経済担当相は16,17日の両日モンテヴィデオにて会合し,12,13日の両日行われた準備会議の報告書をテーク・ノートしつつ以下の宣日を採択した。

1.最近5年間にラ米の生活水準は10年前のレベルに後退した。我々の最大限の努力もデット・サービスの重圧及び高金利,ラ米産品価格の低下,(先進国による)補助金付き輸出,市場喪失等の国際情勢悪化の前には不十分であった。

かかる状況にかんがみ,ラ米の速やかなる経済成長が必要不可決である。右を達成するため,一連の緊急措置がとられるとともに,先進国により国際情勢の正常化をもたらすような構造調整が実施されることが必要である。

2.債務問題の解決における共同責任の原則及び債務国への資金流入の回復を通じての債務国の経済成長の必要性を認めたベーカー提案は有意義な一歩である。しかし同提案は次の理由により不十分である。

(1)融資額は債務支払いを履行し,かつ経済成長を確保するには十分とは言い難い。

(2)重要な諸問題が明確化されておらず,これらについてラ米債務国の参画が有益となろう。

(3)IMF及び世銀によるコンディショナリティーの及ぶ範囲を明確化する要がある。

(4)緊急融資を要するいくつかの国の情況を考慮していない。

(5)ドミニカ(共)等同提案の対象から除外されている中南米諸国が存在する。右に関連し,カルタヘナ・グループ諸国はしばしば国際金融界から見落とされがちな経済発展の遅れた国々との団結を表明する。これら諸国の債務繰り延べ条件はラ米の大国のそれより厳しいものであってはならない。

カルタヘナ・グループの提案する政治対話の枠内において,現在とられるべき政策及び行動につき理解に達することが不可欠であり,右にあたっては3.に述べる緊急措置の内容に重点がおかれるべきである。

3.ラ米経済の速やか,かつ大幅な成長は緊急の要請であり,その目標として今世紀末までにラ米地域の総生産を倍増させることを提案する。

暫定的な緊急措置の内容は以下のとおりである。

(1)実質金利の歴史的水準への引下げ及び銀行手数料の低減

また金利の変動が開発途上国に与える否定的効果を緩和するメカニズムを検討すること。

(2)資金の流入増大及び現行の債務と将来の債務の分離

前者の目的は,金利の正常化にある。この種の資金は現行の金利,債務レベル,国際価格等により生じた国際収支の不均衡をカバーしまた大幅の経済成長と外貨獲得を促進するための経済構造の改革を目的とする投資プログラムのために活用されねばならない。

後者については特に新規借款につき,その供与の優先度,返済期間,国際開発機関との結びつき等において,特別に取扱う方式を設定することが望ましい。右の如き取扱いにより,新規借款のために,より有利な条件が生まれ,かつ同借款は正常な金融条件の下に運用されることとなろう。同時に金融システムの正常化の結果として危険負担が軽減し,金利が大幅に引下げられることとなる。

(3)商業銀行借款の実質残高の維持

このため国際インフレと等しく,借款を増大しなければならない。

(4)資金の純移転の制限

本措置のためには,移転資金の最高額を経済成長の最低目標との関連において設定する要がある。

同様にそれぞれの国の開発及び経済社会上の必要性と両立する輸出収入との関連においてデット・サーヴィスに制限を設定することもできよう。

(5)国際開発機関の資金の大幅拡大

このため今後3年間に資金投下を年20%の割合で純増させることを提案する。

資金の柔軟な運用を含め,これら国際機関の立場,政策及び機構に大幅な変更をもたらすが,同目的の達成のためには,特定の国々を優遇しないよう配慮しなければならない。

同様に国際開発機関による現行のコンディショナリティーと経済成長の目標が両立するよう再審査し,更にこれら機関の借款残高の増大によりコンディショナリティーが強化されることを回避しなければならない。

(6)パリ・クラブ

工業国政府の具体的分担の下に,輸出保険の停止及びIMFと債務国との間の取極の存在を要求することなく,元本の多年度リスケ及び利息の元本繰り入れを促進しなければならない。

(7)IMF

輸出収入の減少が国際収支に与える影響のほか,交易条件の悪化,高金利の継続,天災等,ラ米経済に対する外因的な影響に対処しうるよう,IMF補償融資を拡大する。

この種融資は極く緩和されたコンディショナリティーをともなった中期貸付により拡大されなければならない。

(8)コンディショナリティー

外資の活用を大きく阻害するコンディショナリティーを回避する。またコンディショナリティーは現在の不均衡状態のデータを基礎としてはならない。

コンディショナリティーは,それぞれ国の政治,経済条件および目標に合致したものでなければならない。

IMFのコンディショナリティーは,生産の増大と雇用の拡大の要求に考慮を払わねばならず,同様に,それぞれの国の経済調整計画の策定とその実施能力を尊重したものでなければならない。

またIMFと世銀のコンディショナリティーの交差により生じている矛盾を回避しなければならない。

(9)国際貿易

国際市場への進出を阻害し,ないしはこれを不可能にしている保護措置,特に先進国の保護措置を撤廃することが不可欠である。

以上の措置がとられぬ場合,ラ米諸国は民主主義の確立を阻害するようなこれ以上の社会的政治的不安定を避けるべく資金移転を制限せざるをえないという最悪の状況に向かって追いこまれるであろう。

カルタヘナ・グループ結成以来,経済危機は依然続いているものの,いくつかの点については前進が見られた。ラ米の債務問題を避けて通ろうとしてきた債権国政府も今や応分の共同責任を認め,政治対話が開始されるに至った。

本宣言の趣旨に添って緊急措置のフォローアップを行うためのフォローアップ委員会を設置する。同委員会はアルゼンティン,ブラジル,コロンビア,メキシコ,ヴェネズエラによって構成され,暫定事務局の助力を得て次回会合までその職務を行うものとする。

満場一致により,次回会合をモンテヴィデオにて開催し,またそれまでの暫定事務局は引続きウルグアイ政府に置くものとする。

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