(13)米・ソ首脳会談共同発表(仮訳)
(85年11月21日,ジュネーヴ)
ロナルド・レーガン=アメリカ合衆国大統領とミハイル・ゴルバチョフ=ソヴィエト連邦共産党中央委員会書記長は,相互の合意に基づき,11月19日から21日までジュネーヴにおいて会談した。米国側よりの会談の出席者は,ジョージ・シュルツ国務長官,ドナルド・リーガン大統領首席補佐官,ロバート・マクファーレン大統領補佐官,アーサー・ハートマン駐ソ大使,ポール・H・ニッツェ軍備管理担当大統領及び国務長官特別顧問,ロザンヌ・リッジウェイ欧州担当国務次官補,ジャック・マトロック国家安全保障担当大統領特別補佐官であった。ソ連側よりの出席者は,ソヴィエト共産党中央委員会政治局局員である,E.A.シェヴァルナッゼ外務大臣,G.M.コルニェンコ第一外務次官,A.F・ドブルイニン駐米大使,A・N・ヤコブレフ=ソヴィエト共産党中央委員会宣伝部長,L.M.ザミャーチン=ソヴィエト共産党中央委員会国際情報部長,A.M.アレクサンドロフ=ソヴィエト共産党中央委員会書記長補佐官であった。
これらの包括的討議は,米ソ関係及び現下の国際情勢の基本的諸問題を網羅した。
会談は率直かつ有益であった。いくつかの重要問題では,重大な相違が残っている。
それぞれの体制及び国際問題への取組み方の相違を認めつつも,両首脳は,双方の見解につきかなり理解を深めることが出来た。両首脳は,米ソ関係及び国際情勢全体を改善する必要性につき合意した。
この関連で双方は,現存する諸問題についての共通の基盤を求める双方の強い願望を反映して,継続する対話の重要性を確認した。
両首脳は,最も近い将来に再会することにつき合意した。書記長は米国大統領よりの訪米招請を受け入れ,米国大統領はソヴィエト共産党中央委員会書記長よりの訪ソ招請を受け入れた。これらの訪問の準備及びその時期は外交チャネルを通じて合意されることとなろう。
両首脳の会談では,いくつかの個別の問題において合意に到達した。合意された分野は,以下の頁に記載されている。
(安全保障)
双方は,枢要な安全保障問題についての討議を行い,平和の維持に対するソ連と米国の特別の責任を認識して,核戦争に勝者はなく,また,核戦争は決して戦われてはならないことにつき意見の一致をみた。双方は,ソ連と米国との間のいかなる紛争も破滅的な結果をもたらし得ることを認識しつつ,核戦争又は通常戦争の如何を問わず,両国間のいかなる戦争をも防止することの重要性を強調した。双方は軍事的優位の達成を求めない。
(核及び宇宙に関する交渉)
大統領と書記長は,核及び宇宙兵器に関する交渉について討議した。
双方は,1985年1月8日の米ソ共同合意で設定された任務を達成するため,即ち,宇宙における軍備競争を防止し,地上における軍備競争を終了させ,核兵器を制限,削減し,戦略的安定を強化するため,これらの交渉における作業を促進していくことにつき合意した。
米国とソ連が最近提示した諸提案に留意しつつ双方は,特に,適切に適用された米ソの核兵器の50彩削減に係る原則並びに中距離核戦力に係る暫定合意の考え方を含む共通の基盤が存在する諸分野において,早期に話し合いを進展させるよう呼びかけた。
これらの合意に関する交渉において,負うべき義務の遵守に関する効果的な検証措置が合意されよう。
(危機軽減センター)
双方は,ジュネーヴ交渉における問題点と進展を考慮しつつ,専門家レベルで核の危機を軽減するためのセンターの問題を検討することにつき合意した。双方は,ソ連と米国の間のホットライン近代化といった,かかる方向に向けての最近の措置に満足した。
(核拡散防止)
ゴルバチョフ書記長とレーガン大統領は,核兵器拡散防止条約に対するソ連と米国のコミットメント,及び他の国々とともに核拡散防止体制を強化し,就中,同条約の加盟国を増加させることにより条約の有効性を更に高めることへの双方の関心を再確認した。
双方は,最近行われた核兵器拡散防止条約再検討会議の全般的な前向きの成果に満足の意をもって留意する。
ソ連と米国は,核拡散防止条約第六条に従い,核兵器の制限と核軍縮に関する問題について誠実に交渉を行うとの,核拡散防止条約の下で双方が受け入れたコミットメントを再確認する。
双方は,引き続き国際原子力機関(IAEA)の強化を促進し,原子力エネルギーの平和利用の促進並びに保障措置の実施に関してIAEAの活動を支持していく考えである。
双方は,実務的かつ建設的に行われてきた核兵器拡散防止に関する米ソ間の定期協議の慣行を積極的に評価するものであり,将来もこの慣行を継続する意思を表明する。
(化学兵器)
安全保障問題討議の一環として,双方は,化学兵器の全面的かつ完全な禁止と,既に備蓄されている化学兵器の廃棄を支持することを再確認した。双方は,この問題に関する効果的かつ検証可能な国際協定を締結するため一層努力することにつき合意した。
双方は,検証問題を含めて,化学兵器禁止に係わる全ての側面に関して検討する専門家レベルでの二国間協議を強化することにつき合意した。双方は,化学兵器の拡散防止に関する対話を開始することにつき合意した。
(中欧兵力削減交渉)
双方はウィーン交渉(中欧兵力削減交渉)の重要性を強調し,積極的な成果のために努力する用意のあることを表明した。
(欧州軍縮会議)
双方は,ストックホルムにおける欧州軍縮会議の大きな重要性を認識し,その進展に留意しつつ,他の参加諸国と共に同会議の作業の早期かつ成功裡の完了を促進する意思を表明した。この目的のため,双方は,相互に受入れ可能な信頼及び安全保障の醸成措置を盛り込み,武力不行使の原則に具体的な表現及び効果を持たせる文書の必要性を再確認した。
(対話の過程)
レーガン大統領とゴルバチョフ書記長は,種々のレベルにおける対話の定期化及び対話の強化の必要性につき合意した。これには両国首脳間の会合と並んで,ソ連外務大臣と米国務長官,その他の省庁首脳間の定期的な会合も想定される。両首脳は,農業,住宅及び,環境保護等の分野の省庁の長が最近行った訪問が有益であったことにつき意見の一致をみている。
両首脳は,専門家レベルでの地域問題に関する意見交換が有益であったことを認識し,このような意見交換を定期的に続けることにつき合意した。
双方は,二国間の文化,教育,及び科学技術交流計画を拡大し,貿易,経済関係も発展させる意向である。米国大統領とソヴィエト共産党中央委員会書記長は,科学・教育・文化分野での接触及び交流協定の調印に立ち会った。
両首脳は,人道上の諸案件を協力の精神で解決することの重要性につき合意した。
両首脳は,両国民の間の理解が一層深められるべきであり,この目的のため旅行及び国民と国民の間の接触の拡大を奨励する。
(北太平洋航空路の安全)
両首脳はまた,米ソ両国が日本政府と協力して,北太平洋における航空路の安全を促進する一連の施策に合意し,それを実施するための措置を作成したことを満足の意をもって留意した。
(民間航空/領事館)
両首脳は,米ソ両国の代表団が航空業務再開のための交渉を開始したことを確認した。両首脳は,早期に互恵的な合意を達成したい旨の希望を表明した。この関連で,ニューヨークとキエフに総領事館を同時開設することにつき合意が達成された。
(環境保護)
双方は,共同研究と実際的措置により,地球的課題である環境保全に寄与することにつき合意した。この分野での既存の米ソ協定に沿って,来年モスクワとワシントンで具体的協力計画に関する協議が行われる。
(交流へのイニシアティヴ)
両首脳は,多くの科学,教育,医学,スポーツ分野(とりわけ,教育交流の発展と初等,中等学校教育指導ソフトウェア開発面での協力,米国内でのロシア語研究及びソ連国内での英語研究を促進する措置,ソ連と米国の高等教育機関の関連学部において歴史,文化,経済の特別講義を行うための毎年の教授交換,自然科学,技術,社会科学,人文科学の最優秀学生に対する一学年間の奨学金相互支給,各種スポーツの定期大会開催とスポーツ競技のテレビ放映増加)での,新しい形態を含めた交流と接触を拡大することの有用性につき合意した。双方は,ガン対策での協力を再開することにつき合意した。両国の関係機関に対し,これらの交流のための具体的計画作りが指示される。これにより発足した諸計画は,両首脳によって次回会談で検討される。
(核融合研究)
両首脳は,平和目的のための制御された熱核融合利用を目的とする研究の潜在的な重要性を強調し,これに関連して,全人類の利益のためにこの本来無尽蔵のエネルギー源の獲得のための国際協力を出来るだけ幅広く,実際的に発展させることを提唱した。