(11)ユーレカに関する原則宣言(仮訳)
(85年11月6日,ハノーバー)
ユーレカは,1985年7月17日パリで開催された17カ国の閣僚及びEC委メンバーによる会議において設立された。
1985年11月5,6の両日ハノーバーにおける会議で18カ国の閣僚及びEC委メンバーは次の事項につき合意した。
I 目的
ユーレカの目的は,先端技術の分野における企業及び研究機関の緊密な協力を通じて世界市場における欧州の産業及び各国経済の生産力及び競争力を向上させ,もって,持続的な繁栄と雇用の基盤を強化することにある。ユーレカにより,欧州はその将来にとって重要な技術を修得及び開発し,重要な分野におげる能力を向上させることができる。
この目的は世界的規模の潜在的市場を有し先端技術を基盤とする生産,加工及びサービスの開発をねらいとしたプロジェクトについての産業・技術・科学面の協力を一層促進することによって達成されるであろう。
ユーレカのプロジェクトは民間の目的にかなうものであり,民間及び公共両セクターの市場に向けられる。
II 焦点及び基準
1.ユーレカのプロジェクトは当初情報・通信,ロボット,素材,製造,バイオテクノロジー,海洋技術,レーザ、環境保護及び運輸技術等の先端技術分野における生産,加工及びサービスに関して推進する。
ユーレカにはまた,現代の生活基盤のための技術的前提条件の創造及び国境を越えた問題の解決を目ざす重要な先端技術の研究開発プロジェクトも含む。
2.ユーレカは革新的な技術的生産,加工を行うような全ての有力な中小企業や小規模の研究所に対し門戸を開放している。
3.欧州の企業及び研究所間における技術の交流は,欧州産業の高度の技術水準を維持する上での必要条件である。
ユーレカのプロジュクトは,かかる交流を促進し拡大する。
4.ユーレカのプロジェクトは次の基準を満たすこととする。
-上記に掲げた目的に従うこと
-欧州の2カ国以上が参加(企業及び研究所)する協力であること
-協力してプロジェクトを実行することにより何らかの利益を得る見込みがあること
-先端技術を使用すること
-生産,加工またはサービスにおける重要な技術的進歩を図ることをねらいとすること
-参加者は,技術・運営の面で適切な資格を有すること
-参加企業は,十分な資金を拠出すること
III一般的条件
1.ユーレカは,参加国政府及びECから適切な支援を受ける。
2.大規模・均一,ダイナミックかつ対外的に開かれた欧州経済圏を創設することはユーレカの成功に不可欠である。
3.EC域内市場の完成及びEC・EFTAのルクセンブルク宣言の実施は,ユーレカの利益となる。このことは特に,ユーレカが現在進行中の次のような努力の加速化に結びつけられるべきことを意味する。
-初期の段階から共通工業規格を整備すること
-検査手順や認可制度をお互いに認めることにより,現存する貿易上の技術的障害を取り除くこと
-政府調達制度を自由化する
4.EC及びユーレカ参加国政府は,ユーレカに対する追加的支援措置の可能性につき検討する。
5.ユーレカの枠内における活動は,国際自由競争の原則に則って行われる。
IV プロジェクトの実施及び調整
1.プロジェクト
1・1ユーレカ・プロジェクトは,企業,研究所及び,可能な場合は潜在的ユーザー間の緊密な情報交換に基づき準備される。この関連で,しかるべき分野の工業組織を設立することは,実現可能なユーレカ・プロジェクトを選定する上で役立つであろう。
1・2参加国政府及びEC委は,情報交換を支援し,プロジェクトに関心を有する全てのものに情報を与える。
1・3ユーレカ・プロジェクトは,最終的には,関係者間の協議により決定される。関係企業や研究所は彼らの選定したグループでプロジェクトを実施する。
1・4ユーレカ・プロジェクトに参加するものは,個々のプロジェクトの特性に応じて,協力の形態を決定する。
参加グループは,同様に,プロジェクト運営のあり方の決定及びその運営のため独自の支援を行う責任を有する。
1・5ユーレカ・プロジェクトに参加する企業及び研究所は自己資金,資本市場及び利用可能な公共資金によりプロジェクトの資金調達を行う。
1・6プロジェクトに参加する企業,研究所が属する国の政府及び適正な場合EC委は,当該プロジェクトがユーレカの目的及び基準に合致するかどうか認定する。
これら政府は認定後高級代表者会議を通じグループ毎に共同で閣僚会議に報告を行う。かかる報告の中には,プロジェクトの説明,ユーレカの目的及び基準に合致しているか否かの分析,及び,第3者に対する追加的措置があるか否かの記述を含むものとする。
かかる追加的措置を必要とするプロジェクトについては,高級代表者会議のいずれかのメンバーの要求に基づき協議される。かかる手続きは,今後の経験を踏まえて再検討される。
1・7かかる通報の後であっても,プロジェクトの参加者が希望するならば,他のグループが追加的に当該プロジェクトに参加することができる。
2.組織
2・1ユーレカ閣僚会議が調整を行うこととし,同会議のメンバーは,参加国政府及びEC委の代表とする。
閣僚会議の終了に際し次回会議の議長を選出する。議長は作業の継続性を保証するものとする。
閣僚会議は,ユーレカの内容・機構及び目標を更に発展させるとともに,成果を評価する責任を有する。
2・2参加国及びEC委の高級代表者は,閣僚会議の任務遂行を補佐し,閣僚会議に通報されるプロジェクトの説明等同会議の準備を行うため,必要に応じて会議を行う。
高級代表者会議の議長は,次回閣僚会議の議長と同一国籍の者とする。
高級代表者は,各国の手続きに従い,次の事項に関し適切な措置を行う。
-自国における必要な情報の流れの促進。
-ユーレカ参加国の企業及び研究所間のコンタクトを図るとともに,所要の情報の付与,プロジェクト実施の促進。
-協力を行う旨の関心が表明された場合,他の高級代表者への右事実関係及び分野,技術生産,サービスの通報。
-ユーレカ・プロジェクトの準備状況に関する情報の他の高級代表者への通報。
-問題が生じた場合の他の高級代表者との協議及びプロジェクト資金問題に関する意見交換。
なお,ある特定のプロジェクトにつき協議する場合には,関係高級代表者を集めて会議を開催することができる。
2・3ユーレカの透明性及び効率性の向上を図るため,ユーレカ閣僚会議の責任のもとに小規模かつ柔軟性のあるユーレカ事務局又はタスクフォースを設置する。(注)
その任務は次のとおり。
-情報の収集・伝達を行う情報センターの役割りを果たす。
-企業や研究所のユーレカ・プロジェクトのパートナーとの連絡支援。
-閣僚会議及び高級代表者会議の支援。
-ユーレカに関する業務の継続性確保。
事務局の構成は,EC加盟国及び非EC加盟国のユーレカ参加状況を反映するものとする。ECとの関係及び参加国の産業界からの支援についても考慮に入れる。
(注)高級代表者会議は,1986年1月末までに,事務局を設置する方途につき検討する。
V ユーレカ,EC及び既存の欧州協力協定との関係
1.ユーレカ・プロジェクトは,COST,CERN,ESA等の2国間または多国間の既存の欧州における技術協力や,その発展したものにとってかわることを目指すものではなく,逆にそれを促進し,補完することを目指すものである。
2.ECは,例えばその独自の研究能力,研究開発計画及び財政組織等をもって,ユーレカにパートナーとして参加する。
3.EC及び参加国における適切な全般状況を作り出し,技術協力がよく伝わるような環境作りを行うことがユーレカイニシアティブの成功にとって特に必要である。