(9)フランスにおけるゴルバチョフ=ソ連共産党書記長の演説

(要旨)

(85年10月3日,パリ)

1.今日はわれわれ代表団の訪問2日目である。ソ仏2国間関係および国際情勢の焦眉の諸問題に関する重要な会議が行われ,意見交換が始まった。もちろん,ミッテラン大統領その他の仏政治家との会談結果を総括するのはまだ早い。しかし,双方がソ仏関係の発展に新たなはずみを与え,存在する現実を見定めて国際問題に関する両国の立場をより接近させようという希望を表明していることは明らかである。

2.仏大統領との会談及び今日のあなたがたへの演説において,私はソ連の外交政策の本質と主要方向が仏国内でより良く,十分に理解されることを目指している。どの国の外交政策でもそうであるが,ソ連の外交政策は第1に国内の要求によって決定されている。

3.簡単にこの問題に触れておきたい。ソ連政府の存続期間中にわが国がいかに長く,多くの点で困難な道を歩んできたかをあなたがたは知っていると思う。帝政ロシアからわれわれは極端な経済的立ち遅れを受け継いだ。人口の4分の3は文盲であった。極めて短期間でソ連は高い水準の国民文化を持った強力なあらゆる点で近代的な国家になった。われわれは失業に終止符を打ち,住民,医療サービス,教育の無料提供といった社会福祉を国民に保障した。ソ連の経済発展を物語る若干の数値を挙げてみよう。戦後の期間だけでわが国の国民所得は16倍以上も増大し,工業生産高は24倍以上も伸びた。同じ期間にソ連国民の実収入は6倍も増えた。

4.われわれは自らの成功に対する誇りに自己満足してはいない。われわれは,現段階で社会の向上した成熟さが多くの点で内容的に新たなはるかに大規模な課題をわれわれの前に提起していることを理解している。われわれはわれわれの活動に存在する欠陥存在する困難と問題点,時には十分深刻なそれをよく認識している。今日われわれが自らに課している主要課題は「社会の社会的,経済的発展の加速化」という短い文句で表すことができる。

5.これは多くのこと-国民経済の科学的,技術的基盤,経営法,人間自身とその意識,技能,資格-がより高い水準に引き上げられることを必要としている。要するに,われわれは社会の質的に新たな状態に至る道を歩み始めている。

われわれの主要課題は,経済をより効率よく躍動的にし,国民生活を精神的により豊かに,より活発に,より意義深いものにし,社会主義国民自治政府を発展させることである。

6.確固たる平和のみならず安定した正常な国際情勢がこれらの目的達成の最大の条件であることは理解するにかたくない。われわれの外交政策を決定しているのはこれらの先決条件である。こうした政策においてもちろんわれわれは他の諸国民の利益と要求,現代のあらゆる現実を十分考慮するように努力している。

7.われわれの多面的で矛盾した世界は世紀末と一千年の区切りに急速に近づいている。世界には複雑な政治的,経済的,社会的問題がありすぎる。互いに自らの法則に従って存在し,発展している2つの社会体制の地球上での共存は長い間現実となっている。

8.しかし,もう1つの現実にも目を向けなければならない。この現実は,各国,各大陸の相互連絡,相互依存が増々緊密になっている,ということである。これは世界経済の発展,科学技術の進歩,情報交換の加速化・人間と事物の動き,要するに人類文明全体の発展の必然的な条件である。

9.残念ながら文明の成果がつねに人々にとって利益となるわけではない。科学技術の成果はまたあまりにもしばしぼ,あまりにも積極的に人間破壊の手段の創造のために,より恐ろしい型の兵器の開発と備蓄のために利用されている。

10.こうした条件下で,ハムレットの有名な「生きるべきか死ぬべきか」という問いはすでに個人の前にではなく,人類の前に提起されている。これはグローバルな問題に発展している。これには唯一の答えしかあり得ない。すなわち人類と文明は何としてでも生き残らなければならない。しかしこれは,われわれが共存すること,互いの利益の尊重という難しい技術を習得してこの小さな地球上で生活することを学んで初めて保障され得る。われわれはこれを平和共存政策と呼んでいる。

11.われわれは,わが国家の安全と平和的活動を侵害するいかなる試みに対しても破壊的打撃を与えるに十分な力を持っている。しかしわれわれはイデオロギーの正しさ,各国民が自らの意志で選んだ体制の優位性を証明することができるのは武力によってではなく,唯一もっぱら模範の力によってであると思っている。これはわれわれが固く確信するところである。

12.私は昨日大統領に,世界政治における2つの潮流の闘争のわれわれの観点について述べた。われわれは,国際共同体が直面している課題が,地上および宇宙におけるますます新型で破壊力のある兵器の開発と備蓄によって解決され得るという意見は,どんなにそれが正当化されようとも極めて危険であると考えている。われわれはまた,国際緊張を維持し,悪化させる行為を危険とみなしている。われわれが現在の趨勢を止めなければ,明日はこの巨大な慣性の力を克服できなくなる。話し合うことは一層困難となろう。

だからこそ,今すぐに,軍拡競争の「地獄の列車」を制止するのに手遅れになる前に,軍備削減を開始し,国際情勢を改善し,諸国民の平和協力を発展させることが重要であるとわれわれは考えるのである。これは双方にとって利益があり,またすべての人の課題である。だれもこれを回避することはできない。

13.周知の通り,ソ連はアピールするのみならずこの方向で活動している。

われわれは中距離ミサイルの欧州配備増強を一方的に中断し,米国に同じ対応を求めた。われわれは一切の核爆発を中止し同じ対応を米国に求めた。当然ながら,われわれは他の核保有国にも同じことを要請している。

14.ソ連は中欧での双方の兵力と軍備の削減に着手すること,そして手始めにソ米両国の兵力を削減することを提案している。その際,われわれは米国よりも大幅に兵力を削減する用意がある。

15.宇宙についていえば,われわれはそれを平和目的にのみ利用することを主張し,それについて合意に達することを強く呼びかけている。というのも,宇宙への軍拡競争の移動は核戦力削減を客観的に不可能にするからである。ご承知の通り,われわれは宇宙空間の平和的開発での国際協力に関する提案を国連に提出した。

16.今度は,ソ連がとっている新たな行動についてあなた方にお知らせしたい。これらの行動は,軍拡競争の破壊的プロセスを停止させ,人類に覆いかぶさっている戦争の脅威を取り除くという,同じ目的を追求するものである。

(1)われわれは数日前,米政府に対し,双方の攻撃用宇宙兵器を全面禁止すること,および互いの領土に到達し得る核兵器を実に大幅に,つまり50%削減することについて合意することを提案した。

換言すれば,われわれは,軍拡競争を停止させるばかりでなく,軍備のレベルを大幅に引き下げ,同時に宇宙での軍拡競争を防止するという,今年初めに双方がジュネーブ交渉の目的として合意したまさにその課題を実際に解決することを提案しているのである。

これが戦略的安定と相互信頼をどれほど強化するかを説明する必要はあるまい。

私は,ジュネーブのわが国代表団にはこの問題に関する具体的指示と,米側に詳細な説明を行う権限が与えられた,と報告することができる。

私は,これを語るのは,西側ではわれわれの提案に関して数多くの間違った説とばかばかしいうわさがすでに流布されており,従っていまや若干明確にしておく必要があるからである。

(2)欧州の中距離核兵器に関して述べよう。中距離核兵器の相互削減(われわれに対してたびたび語られているように,西欧もそれに大きな関心を抱いている)に関する合意を容易にするため,宇宙兵器および戦略兵器の問題と直接関連させないで,別個に然るべき協定を締結することが可能であるとわれわれは考える。こうした方法は実際的であるとわれわれには思える。

これに関連して,欧州の戦力バランスにおけるフランスと英国の核戦力の位置付けといった問題に関するわれわれの立場を説明することが必要であると思う。

この戦力(仏英の核戦力)は急速に増大しており,われわれはそれに目をふさぐことはこれ以上できない。フランス側は,フランスの核戦力についてはフランスの参加なしには討議されるべきでない,と指摘してきた。これはもっともである。

それゆえ,いまやわれわれの間(ソ仏間)でこのテーマに関する直接的な対話を開始し,共同の努力によって,受け入れることのできる解決策を見出すことを試みるべきである。ソ連はフランスとの,およびもちろん英国との,そのような直接の対話の用意がある。

ここで強調したいのは,われわれはフランスの安全保障上の利益を最も注意深く考慮するだろうということである。現在,同国の軍備削減の問題は提起されていないとわれわれは思っている。

(3)ご存知のように,われわれは中距離ミサイルの欧州配備の凍結を宣言した。ソ連が欧州ゾーンに実戦配備しているSS20ミサイルの数は現在243基である。

これは,この数が,われわれが米中距離ミサイルの欧州配備に対抗してわれわれのミサイルの追加配備を開始した時点である1984年6月のレベルに正確に一致していることを意味する。その際に追加配備されたSS20ミサイルは,いまでは実戦配備の状態を解除されており,これらのミサイルを配備するための固定建造物は向こう2ヵ月以内に撤去される。これは検証可能である。しかし,米国自身の国土に関するわれわれの対抗措置は引き続き効力を保っている。

また,この場合のわれわれの「欧州ゾーン」という用語の意味も説明しておきたい。それは,西欧にある目標を破壊し得る中距離ミサイルが配備されている地域(ゾーン)のことである。

さらに付言したいのは,われわれは古い,大変強力なSS5ミサイルをすでに完全に撤去した。またSS4ミサイルの撤去を続けている。これは,ソ連の欧州ゾーンの中距離ミサイル数が10年前と比べて,あるいは15年前に比べてさえ,大幅に減少したことを意味する。このような自主的な制限を行うに当たってわれわれが従ったのは,欧州の安全の幅広い利益である。いま欧州は米国によるこれに対応する行動,すなわち欧州大陸への米中距離ミサイルの一層の配備の停止を期待する権利をもっている,と私は思う。

17.ソ連の行動が真剣なものであることがおわかりになったと思う。われわれの最近の諸提案はこれまでの提案と一体になって建設的かつ現実的な措置のパッケージを構成しており,それらの実現は国際関係発展における真の転換-平和,安全,諸国民間の協力に寄与する転換をもたらすであろう。これは,平和を脅かす一触即発の国際情勢を健全化するわれわれのプログラムともいうべきものである。私は,われわれの提案に応えて西側も自分のなすべきことをなすよう期待している。

18.われわれの提示しているプログラムの実現は,核兵器の禁止と完全な廃絶,核戦争の脅威からの人類の完全な解放というすべての国の国民がかくも願い,彼らにとってかくも重要な目的に向かっての大幅な前進を意味するであろう,と強調したい。

19.核戦争に勝者はあり得ない。責任ある政治家のすべてがこれに同意しているように思える。いまやこのことから実際的な結論を引き出し,核軍拡競争を停止すべき時である。われわれは,誠実な,現実的に物事を考える政治勢力,社会活動家のすべて,自分の祖国,自分の生命,自分の子供と孫の生命を尊く思うすべての人々が,この要求を支持するものとわれわれは考える。

20.化学兵器の全面禁止とそのストックの廃棄がますます焦眉の課題になっている。

ジュネーブの軍縮会議でソ連は然るべき条約の作成に積極的に参加している。われわれは,検証の問題も含めて一連の重要な問題で交渉相手に歩み寄っている。私は,確実な検証に関して合意することは全く可能だと確信している。

21.ついでにいえば,ここでは次のような考えがおのずから頭に浮かんでくる。それは,核兵器拡散防止について合意に達することができたのであれば,なぜ同じ方法を化学兵器に適用しないのか,という考えである。それは化学兵器の全面禁止を目指す努力の全般的な進路の中で可能である。ソ連は化学兵器拡散防止に関する国際条約の作成に参加する用意がある。われわれはまた,化学兵器から解放された地帯を欧州中央部に創設するために全力を尽くす用意がある。

22.私はいま欧州の心臓ともいえるパリで発言しており,それゆえ,欧州の安全に関するいくつかの本質的な問題について,またソ連がそれらの問題をどう見ているかについて語らないわけにはいかない。

23.最も全般的な問題から始めよう。欧州の安全とはいったい何だろう。それは戦争と戦争の危険が存在しないことである。欧州諸国民が選んだ社会的な道の相違にもかかわらず,諸国民の運命の相互の結びつき,からみ合いが欧州では特に強く感じられる。地理的な密度,軍備の過度の飽和のせいで,欧州は,他のどの大陸よりも武力紛争に対し,ましてや核紛争に対してぜい弱である。

24.ということは,欧州の安全は軍事的手段や軍事力によっては確保し得ないということである。これは全く新しい状況であり,それは数百年あるいは数千年にもわたって形成されてきた伝統,思考様式と行動様式からの離脱を意味する。人間の思考は新しいものに一朝一夕では適応することはできない。それはすべての人についていえる。われわれもそれを感じている。われわれは思考を改めること,なじみになった多くのもの-その中には政治的分野のものも,もちろん軍事的分野のものも含まれる-を新しい現実に完全に適合させることに着手した。われわれは,こうした思考の再編が西欧およびそれ以外の地域でも行われることを望みたい。

25.いまのところ,報復に対する恐怖が戦争と軍事力行使を妨げる障害の1つになっている。しかし,恐怖だけの上に恒久平和を築けないことは万人が知っている。だが問題は,恐怖に代わるもの,武力行使や威嚇に代わるものを何に求めるべきかということである。

26.われわれは,いわゆる「スターウオォーズ」での新兵器の使用を打開策にしょうとする試みがいま行われているのを目にしている。これは幻想,しかも極めて危険な幻想である。楯と矛を改良することの中に安全保障問題の解決を見いだそうとするのは幼稚すぎる。欧州の安全は国際安全と同様に,平和共存,緊張緩和,軍縮,信頼の強化と国際協力の発展によってのみ達成できる。

27.これは長く困難な道であり,またそれは数十年間にわたり積み重ねられてきた相互のさい疑心,不信,偏見の克服が必要とされている。しかし,われわれが生きることを求めるなら,他に道はない。いかに長い道であろうとも,最初の一歩-それはしばしば最も困難なものだが-を踏み出さなければならない。われわれはこのことを理解しており,われわれ自身・そしてあなたがたのために,この使命の達成を確かなものにしたい。私がすでに述べてきた諸提案の動機は,まさにここにあるのである。

28.このことはまた,軍事面での相互信頼の問題という重要問題を討議しているストックホルム会議にもあてはまる。われわれにそう思えるように,将来の合意の輪郭はそこで徐々に形づくられ始めている。それには武力不行使の原則により具体的な,最大限の効力を与えることが含まれている。

29.われわれの大陸を含めて世界の様々な地域に,そして北部欧州とバルカン半島に非核地帯を設置するという考えは,ますます大きく広まっている。われわれはこの構想を支持しており,そのために必要とされる適切な保障に参加する用意がある。

われわれは,2つの軍事・政治グループに分けへだてているラインの両側に沿って核兵器のない回廊地帯を創設するという構想は有益であると考えている。われわれはまた,核兵器を所有せず,その国土に核兵器を持たない国は,国際法に基づいてその安全が確実に保障され,それらの国に対して核兵器が決して使用されないと保障される十分な権利があると考えている。

30.欧州における協力の多くの局面はヘルシンキ最終文書に記録されている。われわれは,同文書が重要な達成物であり,その重要性は依然として完全に失われていないと考えている。ヘルシンキ合意が達成された10周年を迎える時,全欧州のプロセスにおいてすべての参加国がその合意の継続を宣言した。ソ連はこれに最も積極的に参加する用意がある。欧州のすべての国は,各国の経験に応じてヘルシンキ・プロセスに貢献した。このことは欧州の人々の共通の財産であり,それは共同の努力によって守られ,強められなければならない。

31.欧州の政治的気候は東西間の経済関係の発展にかかっている。ここではまた新しいアプローチが必要である。今日,各国が直面している工業,技術,科学の発展の任務の解決は,労働の国際分業の効果的活用によってより容易なものにすることができる。ソ連は新しい形の協力の探求を含めて,それを行う用意がある。

32.コメコンとEECの間のより実務的な関係の確立はわれわれにとって有益なものである。コメコン諸国はこの面で建設的なイニシアチブをとってきた。重要なのは具体的成果を生み出すことである。われわれは具体的な国際問題においてと同様に,EEC諸国と共通の言葉を見出す用意がある。

33.全欧州諸国の努力を結集せずに,わが大陸上の環境の保全と改善といった焦眉の問題を真に解決することもまた不可能であろう。その多くの地域では,比ゆ的にいえば足下の地面は熱くなり始めており,激しくはないまでも酸性の雨が空から降り,一方空自体は煤煙のせいで見ることができない。欧州の川と海はみじめな状態を呈している。かつてわれわれは十分な将来の展望をもたずに行動し,現在国家的な枠組みでは全く解決できないような問題を生み出してしまった。ここに真にわれわれすべてが大陸の共通の運命を認識するようにならなければならない分野がある。

34.共通の努力による過去の文化遺産の保存,欧州という人類文明の発祥地の1つを豊かにし合う文化交流,これは考慮に値しないであろうか。われわれは数日後にブダペストで開かれる「文化フォーラム」のような非凡なイベントを興味をもって準備している。互いの生活に関する情報の拡大,互いの共感と尊重の意識の啓発もまたこの分野に属している。互いの言語の相互研究はこの観点から非常に重要である。

生徒,学生,教師の広範な交流は有望な事である。若い世代が互いに対して正しい認識を持つことは極めて重要である。なぜなら平和な欧州を築くのは彼らだからである。新旧の災いに対する闘争での努力の蓄積は極めて重要な課題である。

35.ソ連は人権の保障を極めて重要視している。この問題を偽善と憶測,他国に対する内政干渉の試みから解放する必要がある。こうした問題は移住労働者の地位,雑婚,家族の再結合と同様に現在の欧州ではかなり深刻である。われわれは,すべての国家の主権を十分に尊重しながら積極的かつ人道的な精神にのっとってこうした問題にアプローチすることに賛成である。

36.紳士,淑女の皆さん。

現在の情勢下においては,中世の狂信者を見習わず,イデオロギーの相違を国家間関係にまで拡大させないことが特に重要であると確信している。これらの関係における安定性とこれが政治情勢の影響をできるだけ受けないことが欧州全体の安定性をも強化することになろう。

37.例えば,組織としてのワルシャワ条約と北大西洋同盟の間に何らかの形での交流を確立する可能性について永久にタブーが存在するとはわれわれは思っていない。

2つの障害が存在する条件下においても,現在の対立の激しさを緩和しうるような妥協案を生み出すことは可能であるとわれわれはみている。

38.もちろん,東西間のより高度な政治対話を発展させ,首脳会談を含む各種レベルでの定期会談,政治協議,科学,文化団体の広範な交流といったこうした対話のすべての既成の形態を利用することは今日,かってないほどに重要である。

39.われわれは,議員交流の発展もまた非常に重要な事と考えている。これは特に強調しておきたい。これは当然,フランスとの議員交流の発展をも含んでいる。仏上下両院議員はモスクワで歓迎されることを保障されている。私はソ連最高会議を代表してこのことを述べておく。

40.われわれの欧州政策は反米志向ではない。われわれは西欧ぽかりでなく米国とも良好な関係をもちたいと思っている。中国,日本その他の国々(RP注=演説で中国と日本が出てくるのはここだけ)についても全く同様である。

41.われわれがとっているのはメッテルニヒ流の「力のバランス」の政策,ブロックと反ブロックを作り,「枢軸」と「三国同盟」を結成する政策ではなく,全地球的なデタント,世界の安全強化と国際協力発展の政策である。われわれは現実主義者であり,西欧と米国を結びつけている歴史的,政治的,経済的きずながいかに強固であるかを理解している。

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