(7)南アフリカ共和国のアパルトヘイト改革に関するボータ大統領演説(要旨)
(85年8月15日,ダーバン)
1.総論
(1)暴力を否定し,平和的交渉による問題解決を呼びかけ,南アフリカ国内のすべての人種グループによる協力と共同責任を通じての平和と繁栄を訴える。
(2)国外からの圧力に対しては,南アフリカの諸問題は南アフリカ人の発意で南アフリカ人が解決すべきことであって,このため外国人の容喙は許さず,かつ南アフリカ人が最善と考える方策の遂行が外部の圧力で妨げられてはならない。
2.各論
(1)ホームランド政策の修正:黒人ホームランドの独立は強制せず,南アフリカの市民権を希望する者には南アフリカ人共通の市民権が付与される。
(2)黒人の都市流入規制:本規則法は時代遅れでかつ運用に経費がかかるのでその改善を検討する。
(3)黒人の政治的権利:全南アフリカ人が国政に参加できるような将来の機構については関係者との協議によって決められるべきである。但し,1人1票制は独裁と混乱を招来するので南アフリカ問題の解決にならず,これを拒否する。また,白人,カラード,インド系に次ぐ黒人のための第4院の設置については現実的な解決策とは思われない。
(4)黒人指導者ネルソン・マンデラの釈放:同人が暴力による南アフリカの変革の主張を放棄すれば同人の釈放を検討する。
(5)非常事態宣言の撤廃:非常事態宣言は36の地区,南アフリカ国土全体の14%が対象となっているにすぎない。本件は暴力行為が下火になれば緩和されるもので,現在その方向に動きつつある。